ショタ魔王と第三皇子

梅雨

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魔王城の生活

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「ごめん......離婚だけはやめてニオ~」

寝ぼけているより面倒かもしれない。
結婚一日目で離婚は余程のことがないとしない気がするけど、そんなこと考えるスペースが今のアルにはないんだろう。腰にへばりついて離れようとしない。

「しない、しないから着替えるぞ」

俺は自分の着替えがどこにあるか分からないけど、アルの服の場所は分かる。
この広い部屋の壁半分以上はありそうなクローゼットがずっと視界の隅に鎮座しているからだ。あそこまで大きいと圧がすごい。
昨日は色々あって疲れていたせいでそこまで気にかける余裕がなかったけど、改めて見ると部屋の至る所からブルジョアな輝き。幼少期以外は基本山羊小屋のような場所で過ごしていたから、貴族感溢れるこの部屋に少し萎縮してしまう。
けれど今日も明日もここが自分の寝室になるのだ。物の場所を覚えておかないと。

「着替えとかっていつもランハートが決めてるのか?」
「そうだよ~。ニオの着替えも置いといてくれてるはずだよ。えーっと......あ、ほらあそこ」

アルが指差したテーブルの上。きっちり畳まれた服が三着並んでいた。俺の分と、アルの分、ともう一つは。

「......」

言葉を失った。自分でも顔を引き攣ってるのが分かる。
雑にバッと広げた三着目の服は男性が着るにはフリルの比率が多く、人を選ぶ花柄に大部分が肌を透かして見せる生シースルー生地。
女性の着るネグリジェという服だろう。初めて見た。

「わぁ、それ着るの?きっと似合うよ」
「着ない。絶対着ない」

これを着て城内を歩けとか本気で言ってるならランハートの解雇話をアルにプレゼンする。
一つでもおふざけを用意しておかないと気が済まないのだろうか。アルがあぁいう魔族に育たないでほしいと切実に思う。

「これは本来夜に着る服だし。俺が着るものじゃない」
「ニオ夜になったら切るの?」
「俺の着るものじゃないって。それより早く着替え」

ほら、と服を渡すとアルは首を傾げる。受け取ることはせずじーっとただ差し出された服を眺めているだけだ。

「待て、アルって朝自分で着替えてないの?」
「いつもはね~ランハートやフォルカが着せてくれる。あ、フォルカはランハートと同じお手伝いさん」
「一人で着替えたことないんだな」

貴族の子はメイドやら執事に囲まれて着替えるのが当たり前なのは何処も一緒なんだな。身の支度を一人でやることは本来ない。
俺もしてほしいって一言言えばメイドや執事を用意してくれただろうけどしなかったな。烏滸がましいし。

「よしアル。着替え覚えよう。ランハートがやってくれてるの毎日見てるだろ」
「え」
「え?」

起きているように見えて寝ぼけている。
きっとアルが気付いたときには着替えが完了していたんだろう。俺を誘拐する時も手際良かったし。

「一から教える」
「わーい、ニオよろしく~」

アルは手を広げたまま固まっている。
寝着のボタンに手をかけるわけでもなく、軽く結われた髪を解くわけでもない。脱がせてほしい、言わないだけでそういうオーラが漂っているのが分かる。
これは苦労するな、とアルのボタンを一つ外して見せた。


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