ショタ魔王と第三皇子

梅雨

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デートの準備

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すぐに寝衣から用意された普段着に着替え、ネタ枠で置かれているメイド服の上にお断りだとメモを置いて寝室を出る。
二階はいつも一階より静かで、魔族とすれ違うことがない。
それでもメイドや魔族達にはすれ違う度に挨拶される。見知った顔でもないので会釈以上にうまく返せない。これにも早く慣れたいものだ。
東の庭園へは近からずとも遠からずの距離で、朝食をまだ摂ってない身体には少し過ぎた運動量を必要とした。迷うような道ではないにせよ、ポワポワの案内が恋しい。

「ポワポワって普段どこにいるんだ」

なんて純朴な疑問に頭を使っていると、聞いたことのある声がした。東の庭園に到着したようだ。相変わらず一歩踏み込めば花が光の粒となって霧散する。この光景はこれ以上ないくらい美しい。
さて、キュロはどこにいるか。
広々とした庭園はあまり障害物がなく、見通しがいい。何者かがいればすぐ分かりはずと見回すと、蔦の絡んだ小さなガゼボに二人分の影が見えた。近付くとティースプーンでひたすらに紅茶をかき混ぜるキュロと、可愛らしいリボンの付いたバスケットを片手に鼻歌を歌うフォルカの姿。

「あら?奥方様」
「遅いとは言わないけどもう少し早く来れないの。フォルさんの方が早かった」
「人間とアタシ達じゃそりゃスピードは違うわよ。仕方ないじゃないの」

背の向こうで畝ねる尾でどれほどのスピードが出るのか気になる。

「フォルカはどうしてここに?」
「奥方様達の朝食届けに来たの」
「料理長直々に......なんか申し訳ないな」
「何言ってるの。奥方様のお食事を用意してお届け出来る。これ以上の名誉はないわ。あんまりね?」

嬉しいことを言ってくれる。
フォルカは魔王城にいる魔族の中で知っている限りだと一番優しいし、誰よりも人間という種族に友好的だ。

「ありがとう。それと奥方様はちょっとな。ニオでいいよ」
「あらそう?そっちの方が近くていいわ。仲良しって感じ」

うふふと頰に手を置いて笑うフォルカが急に見えなくなった。
凄まじい風が吹き荒れて花を散らし、身体が浮きそうになる。と言うか浮いた。キュロがすぐに俺の腰に蔦を巻きつけてくれていたおかげで地に足ついたままだったけれど、なかったらまたタバサさんのお世話になっていたことだろう。
少し弱まった風になんとか目を開けると、強風のなか根を張ったまま長い髪に顔を打たれ続けるキュロとびくともせず朝食の入った籠を抱えるフォルカが見えた。ちょっと怖い。
この強風は稲妻の如き速さで現れた金色の鳥のせいだ。
弱まったのは留まるために速度を落としたおかげだろうか。彼の羽ばたきが終われば、もう風は起きない。フォルカの肩に留まった鳥は耳打ちをして首を傾けている。
名前は確かスパルナ、連絡用にアルが最近創ったらしいコピーらしいけど、それでもこの風起こしだけはもう少し抑えて創って欲しかった。

「あらそう?それなら私の出番ね」
「何呼ばれた?」
「えぇ」
「じゃあとっととソレ持って帰って。ついでに魔王様に文句言っといて。竜種喰える化け物のコピーそこら中に撒くなって。気が気じゃないんだけど」
「了解‼︎会えたら言っておくわ」

ボサボサになった髪を手櫛でほぐしながらキュロは不機嫌剥き出しにフォルカを、というよりフォルカの肩に留まる鳥を睨んでいた。
キュロの背後で生え出した植物は、研がれた剣より鋭く悍ましい色をしていた。多分、貫かれればイチコロ系だ。
そんな物騒なものが蠢いているのも梅雨知らず、手に持っていた籠を置いて小さくお辞儀をしたフォルカはスパルナを鷲掴みにした。

「じゃあアタシはこれで。頑張ってね、ニオ様」

強風を起こさないためだろうが、絵面が。これから食べますといった図になっていて......やっぱり怖い。去っていくフォルカの笑い声がまたそれを助長している。

「捕食前みたい。もう喰ってくれればいいのに」
「目の前で喰われたら俺流石に気絶しちゃうかも」




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