ショタ魔王と第三皇子

梅雨

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番外編 キュロとルベル

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「あぁ待ってくだサイ‼︎両腕とか刻むの勿体ナイ‼︎もういっそ意識だけを保たせ互いをバラバラに」
「ユーティカ」

調子に乗ったユーティカに、ずっと変わらない表情のまま一連の現場を眺めていた魔王様が名前を呼んだ。
呼んでもらえたことが嬉しかったのか、ハイと元気に振り返ったユーティカが石のように固まる。メドゥーサに睨まれた男のようだ。
殺気もなにも発していない。ただ真っ直ぐに瞳を見つめたままの魔王様は言い知れない威圧感がある。

「やめろ。不愉快だ」

そんな様子は一切無いにも関わらずそう告げた魔王様に、陽気に鼻歌まで歌っていた蜘蛛は首を縦に振るしかないようだった。

「......ハイ。魔王様」

ルベルを俺に向かって放り投げ、ユーティカはそっぽを向いて紙に殴り書きをし始める。

「キュロ、ごめんね」
「まおうさま」
「ランハート、タバサを呼んでくれ。緊急だ」
「かしこまりました」

急いで玉座の間を出て行くランハートの姿を見送った後、魔王様が今度は分かりやすく蔑んだ視線をユーティカに向けていた。

「ユーティカ」
「ハイ。なんでショ」

母が子を怒るような構図だが、子の方は一切悪びれもなく当然の仕事をしたまでだと満足げな表情で顔を上げた。
良い結果を得られたのだろう、これは大発見だと爛々としている表情に畏怖の念すら覚える。
ユラユラ身体を揺らし、たまに不気味な笑い声を発するユーティカに対し、深いため息を吐いた魔王様に恐れ多くも同情する。

「その蜘蛛を今すぐ吐き出せ。耳障りだ。声を発することを今から五年禁ずる。あと......研究室から三十年は出てくるな。いいな」
「......‼︎」

五年間とはいえ意思疎通の手段を奪うのは危ないのではと思ったが、その倍以上誰かとの接触をさせない命令が出た。
五年も三十年も俺から見ればそう変わらないけれども。蜘蛛の魔族であるユーティカには罰に値する年数なのだろう。
心底嬉しそうに承諾したユーティカはジェスチャーを駆使して感謝を表現していた。何がそんなに嬉しいのか理解できない。
何度か乾嘔を繰り返して口から数十匹の蜘蛛を吐き出したと思えば、嗄れた呼吸音だけが彼の喉から発せられる。
腹の底がしれない。薄気味悪い蜘蛛の魔族。彼への怒りは腹の底でずっと渦巻いたままだ。

「タバサの治療が終わったら、すぐに彼を魔族へと迎え入れよう。その後に、キュロの元へ向かわせる。だから安心して」
「はい」
「......それに、よく自らの仕事をこなしたね。もう一人前って僕は認めるよ」
「ありがとう、ございます」
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