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学園創設編
130 我が国の王子 01(第二補佐官視点)
しおりを挟む「こんにちは。第二補佐官」
城の廊下を前方から王子が歩いて来たので、私は他の者同様に立ち止まり、廊下の隅で頭を下げました。
王子がルシエンテ帝国で1年間学ぶことになったり、その後も帝国周遊に出てしまったりして、城に勤務していてもなかなか王子に会うことができないため、こうして廊下ですれ違うことさえ貴重になっています。
魔塔主の転移魔法で時折帰ってきていることは知っているので、皆驚きはないですが、貴重なお姿を拝見できたという感動はあります。
王子が前を通り過ぎたらそのお姿を目に止め、今日も一日頑張ろうと思っていたのですが、まさかのお声をかけていただきました。
というか、私のことを知ってくださっていたことに驚きです。
「王子、私のことを知っておられるのですか?」
思わずそう聞いてしまいました。
王子は不思議そうなお顔をされ、「いつも父上の執務室でお仕事されているのですから当然です」という回答に私は感動して頭を下げました。
「私は一度も王子と言葉を交わしたことがなかったものですから、存在を認識されていたことに驚きました」
「父上や宰相、第一補佐官が手を止めて私と話をしている間も他の補佐官の方々はお仕事を続けてくださっているではないですか。気づかないわけがありません」
私は感動のあまり泣きそうになった。
いつもいつも王子と話す第一補佐官が羨ましかったのですが、私たちの働きぶりをちゃんと見てくださっていたなんて!!
「それで、第二補佐官のアルノルト・コルベ卿にご相談がありまして」
私の存在だけでなく、名前まで知っていただいていたことに感動しすぎて動悸がします。
思わず自分の胸元をギュッと握ると「大丈夫ですか?」と王子に顔を覗き込まれました。
お優しい!!
「大丈夫です。私などの名前まで知っておいてくださって、感動のあまり動悸が激しくなっただけです」
「動悸ですか? どこかで休んだ方がいいですね。相談はまた後にしましょう」
「いえ! 今お話をお聞きしたいです!! 動悸とは言いましても、体力回復のポーションを一気飲みした時のようなものですからご心配には及びません!!」
「そうですか?」と心配そうに眉尻を下げてくださるリヒト王子が尊い。
私としてはこの場ですぐにでもリヒト王子のお話をお聞きしたかったのですが、リヒト王子の乳母であるヴィント侯爵の目が、リヒト王子をいつまで立たせておくのかと問うてきていたので、我々は移動することにしました。
私は自分の考えの至らなさを深く深く反省しました。
「第二補佐官にご相談なのですが」
私は初めて入ったリヒト王子の勉強部屋に緊張した状態のまま勧められたソファーに座りました。
「はい!」
「第四補佐官はどのような方ですか?」
「第四補佐官ですか? 若く……元気が取り柄な者です」
本当はやる気に満ちているとか言いたかったのですが、やる気には満ちていないので、嘘は言えません。
「そうですか」とリヒト王子が微笑まれました。
間近で見るリヒト王子の微笑みが尊過ぎます!
しかも、この微笑みが向けられている先が自分などと……
これは夢なのでしょうか?
「魔法学園を作るために現在、ライオス・ティニにどこに学園を作るのか、どのような授業が必要なのかなどの素案を考えてもらっているのですが、原案の形まで持っていきたいので、補佐官を一人貸していただきたいのです。第四補佐官は適任でしょうか?」
「あの、恐れながら、なぜ、第四補佐官なのでしょうか?」
これはリヒト王子と関われるまたとないチャンスです。
「第三補佐官は出産のために長期休暇を取り、ご実家の領地に戻られる予定ですよね?」
第三補佐官は補佐官の中で唯一の女性で、昨年結婚し、少し前に妊娠がわかったところです。
「第五補佐官は内定しているものの、まだ就任していませんし、急に専門的なことを任せるのは荷が重いでしょう」
リヒト王子の言うことは最もなのだが、一人お忘れではないだろうか?
「あの、私ではダメなのでしょうか?」
「第二補佐官は第一補佐官の右腕ではないですか? そのような人物を私がお借りするのは気が引けます」
私は再び、リヒト王子の言葉に感動した。
まさか、私のことをそのように評価してくださっていたとは!
「いえ! 私がいなくとも、第一補佐官は大丈夫です! 第四補佐官もいますし、第五補佐官もきっと第一補佐官の厳しい指導によりすぐに成長するでしょう! どうぞ、私にお役目をお与えください!!」
「本当ですか? 第二補佐官なら頼りになりますね」
「では、私はこれから王と第一補佐官にこの旨を報告し、許可を取って参ります!」
仕事が忙しくて反対される可能性もありますが、リヒト王子との貴重な接点は絶対に他の補佐官には譲りません!!
そう気合を入れたのですが、リヒト王子が笑顔のまま言いました。
「許可ならもう取ってあります」
「えっと……それは第四補佐官に対しての許可ですか?」
「いいえ。できれば第二補佐官のような優秀な方にご協力いただきたかったので、私が説得できたらという条件で許可は取ってあります」
「では、なぜ第四補佐官のことを聞かれたのですか?」
まさか、私を焦らして味方に取り込もうとでも思われたのでしょうか?
だとしたら、リヒト王子は我々が思っているよりもお腹の中がちょっとだけ黒いのかもしれません……
美しく可憐な容姿なのにも関わらず腹黒いとか、なんですかそれ?
それはそれですごく良い気がします!
しかし、私の質問にリヒト王子は照れたように微笑まれました。
「私がお願いしたら大抵の臣下は断れないでしょう。その点、第四補佐官は自由気ままなところがあるので、嫌なら断ってくれるでしょうし、それに、第二補佐官に断られるのも悲しいので、ちょっと卑怯ですが、遠回しに言ってみました」
心臓が潰れるかと思った。
照れた笑顔と控えめなセリフのダブルパンチで一瞬呼吸できませんでした。
リヒト王子は年齢に見合わずとても大人びた方だと思っていましたが、なんなのでしょうか?
この可愛さは!?
「誠心誠意お仕えいたします!!」
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