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「フラウィアン! 失礼します!」
ベッドで横たわっていたらしいフラウィアンは驚きにその身を起こした。
「レン!? どうしてここに!?」
俺が部屋の中に入ると、ここまで案内してくれた護衛騎士が早々に扉を閉めて、俺はフラウィアンと二人きりになった。
フラウィアンは俺に駆け寄ろうとしたが、その動きは少しぎこちなく、顔は熱を持っているように少し赤かった。
「レン……あの、すみません……」
フラウィアンは俺に手を伸ばしかけて、それから拳を作って床に視線を落とした。
「どうして謝るんですか? フラウィアンは俺を助けてくれたんでしょう?」
「しかし、あのように意識のないレンに行う行為では……」
「必要以上の行為だったのですか? その行為がなくても、俺は助かった?」
「それは……でも、もっと冷静に考えられれば、何かいい案があったのかも……」
しょぼんっと垂れた耳と尻尾が見えるようだった。
フラウィアンはいつだって俺を守ってくれるのに、しょうがないくらいに可愛い時があるのだ。
王子である彼には神々の加護の恩恵が必要なのだから、そんな彼に自分の心を預けてしまうのはなんだか悔しいけれど、彼は違わずに俺のことを大切にしてくれるような気がする。
それなら、彼の言葉を嬉しかったと思う自分に素直になってもいいのかもしれない。
「俺は……フラウィアンの言葉、嬉しかったですよ」
「言葉、ですか?」
「好きだと、言ってくれたでしょう? 神々からの加護を受けた俺と結婚することによってフラウィアンは加護の恩恵にあやかれるから、必要に応じて俺との婚姻を望んでくれていることはわかっています。それでも、好きだと言ってくれた言葉が嬉しかったです」
フラウィアンは俺の顔を少し呆然とした様子で見つめた。
「……私はずっと、レンと結婚したいと言っていたと思うのですが?」
なんだか、フラウィアンの声に少し苛立ちが混ざっているような気がする。
「はい……神の加護の恩恵にあやかれるからですよね?」
「違います!」
いつも穏やかなフラウィアンにしては大きな声だった。
「私はレンが召喚されたあの日、レンに一目惚れしたんです!」
「……え?」
思わぬフラウィアンの言葉に驚く。
「でも、あなたの隣にはあの女性がいたから、一度は諦めようと思いました! でも、あなたは純潔の神からも加護をもらっていたから、絶対にあなたを他の者に取られたくなくて、すぐにでも婚姻したいと父に言いました。しかし、父からは聖女様の意向を無視することはできないと言われて、婚約の間にレンに私を好きになってもらおうと必死だったのに……まさか、これまでずっと誤解されていたなんて……」
フラウィアンは頭が痛いというように額を押さえた。
「えっと……すみません」
まさか、これまでずっと俺のことを好きでいてくれたとは……頬が熱い。
「でも、私の言葉が嬉しかったということは、レンは少しは私のことを好きになってくれたのですか?」
フラウィアンの手がゆっくり俺に伸びてくる。
「そ、それは……」
「できれば、私と結婚してもいいと思うくらいの、好きだと嬉しいのですが?」
フラウィアンの手が、熱を持った俺の頬に触れて、俺の顔を覗き込んでくる。
「フラウィアンに婚約の話をされてから、俺はずっとフラウィアンと結婚すると思っていましたから、今更、諦めるとか言われても、困りますけど……」
「できれば、レンにももっとはっきりとした言葉で言ってほしいです……」
それは恥ずか死ぬからもうちょっと待てほしい……
「でも、この真っ赤になった顔も可愛いので、今日はこれで満足しておきます」
フラウィアンの両手に顔を包まれて、少し上向かせられる。
「口付けをしても?」
いつもは神聖力に当てられて酩酊状態の時にする行為の許可を求められて俺は動揺した。
自分の気持ちを言葉にできないなら、行動で示してほしいということだろうか?
俺はぎゅっと目を瞑って、勢いに任せてフラウィアンの唇に唇を触れた。
パッとすぐに離したが、恥ずかしくて目は瞑ったままだった。
しかし、フラウィアンが静かすぎて怖くなり、目をそっと開けてみた。
フラウィアンはその顔を赤くして、俺のことを凝視していた。
「……え? どうしたの?」
「いえ……レンからしてくれるとは思っていなかったので、少し驚きました」
フラウィアンの言葉に俺の顔は先ほど以上に熱くなる。
もしや、俺は墓穴を掘ったのだろうか?
先ほどのフラウィアンの言葉にはただ頷いて、彼からのキスを待つのが正解だったようだ。
「えっと……昨日は、また、光の神に触れられてしまったのですか?」
フラウィアンは赤い顔のまま俺の手を握ってソファーまで連れていき、俺をソファーに座らせてから自分も隣に座った。
「いえ、昨日は闇の神に頭を撫でられてしまって」
「……闇の神、ですか?」
一瞬にしてフラウィアンの顔の赤みは引き、声が聞いたこともないくらいに低いものになった。
「またレンは神を誑かしたのですか?」
「誑かしてない! 誑かしたことなどこれまで一度もない!」
「また無自覚ですか?」
少し不機嫌になってしまったフラウィアンだったが、はーっと深いため息をついてから俺のことを抱きしめた。
「私は神にもレンのことを取られたくないのですから、気をつけてください」
「気をつけて、一番安全な闇の神の傍にいたんだけど……」
闇の神が俺に触れることなど一度もなかったから完全に油断していた。
「私もレンと一緒に神域に行けたなら、守ってあげられるのですが」
「フラウィアンが神域に行けたら俺の仕事がなくなっちゃうよ?」
「レンは私のそばにいてくれたらそれでいいのです」
拗ねたようなフラウィアンの言葉に俺は思わず笑ってしまった。
「いつもしっかりしているフラウィアンがそんなことを言うなんて思わなかった」
「子供っぽいことを言う私は嫌いですか?」
「いや、可愛いと思う」
素直にそう言って、フラウィアンの背中に腕を回してみたが、すぐにフラウィアンは俺の肩を押して俺の顔を覗き込んできた。
「やっぱり、私からもキスがしたいです!」
今度こそ、俺は間違わずにそっと目を閉じた。
「好きです。レン」
優しい声と共に、唇が落ちてきた。
フラウィアンからゆっくりと唇が重ねられ、そして、舌が口内に入り込んできて、その熱さに俺は慌ててフラウィアンの体を離した。
「フラウィアン! 熱があるのではないですか?」
「風邪ではありませんから、移ることはないですよ?」
「そういうことではありません! 横にならないと!」
そうフラウィアンをベッドに連れていって横にならせると、フラウィアンは俺の手を引っ張って、抱きしめてきた。
「フラウィアン! 今は休んでください!」
「これは、昨日、レンから受け取った神聖力の影響ですから、レンと一緒にいた方が早く落ち着くはずです」
「俺のせいで……」
「心配させたくて言ったんじゃありません。レンに甘やかしてほしくて伝えたのですから、私のことを抱きしめてください」
可愛いことを言ってくる婚約者の背中に腕を回して、俺は瞳を閉じた。
これまで何度も恋人を奪われてきたけれど、この温もりは絶対に奪われたくない。
それに、神様公認なら、きっと大丈夫に違いない……
その後、俺とフラウィアンは聖王から正式に婚姻の許可証を得ることができた。
そして、大聖堂で結婚式を挙げることになるのだが、そこでジェラルドが俺に告白をして、フラウィアンには宣戦布告をして大騒ぎになったりするが、それはまた別の話……
********
ひとまず短編完結です。
この後のお話もちょっと考えていたりしたのですが、糖度が急速に減りそうだったので、とりあえずやめておきました(笑)
糖度高めの番外編とか書ければ、更新したいですね。
ベッドで横たわっていたらしいフラウィアンは驚きにその身を起こした。
「レン!? どうしてここに!?」
俺が部屋の中に入ると、ここまで案内してくれた護衛騎士が早々に扉を閉めて、俺はフラウィアンと二人きりになった。
フラウィアンは俺に駆け寄ろうとしたが、その動きは少しぎこちなく、顔は熱を持っているように少し赤かった。
「レン……あの、すみません……」
フラウィアンは俺に手を伸ばしかけて、それから拳を作って床に視線を落とした。
「どうして謝るんですか? フラウィアンは俺を助けてくれたんでしょう?」
「しかし、あのように意識のないレンに行う行為では……」
「必要以上の行為だったのですか? その行為がなくても、俺は助かった?」
「それは……でも、もっと冷静に考えられれば、何かいい案があったのかも……」
しょぼんっと垂れた耳と尻尾が見えるようだった。
フラウィアンはいつだって俺を守ってくれるのに、しょうがないくらいに可愛い時があるのだ。
王子である彼には神々の加護の恩恵が必要なのだから、そんな彼に自分の心を預けてしまうのはなんだか悔しいけれど、彼は違わずに俺のことを大切にしてくれるような気がする。
それなら、彼の言葉を嬉しかったと思う自分に素直になってもいいのかもしれない。
「俺は……フラウィアンの言葉、嬉しかったですよ」
「言葉、ですか?」
「好きだと、言ってくれたでしょう? 神々からの加護を受けた俺と結婚することによってフラウィアンは加護の恩恵にあやかれるから、必要に応じて俺との婚姻を望んでくれていることはわかっています。それでも、好きだと言ってくれた言葉が嬉しかったです」
フラウィアンは俺の顔を少し呆然とした様子で見つめた。
「……私はずっと、レンと結婚したいと言っていたと思うのですが?」
なんだか、フラウィアンの声に少し苛立ちが混ざっているような気がする。
「はい……神の加護の恩恵にあやかれるからですよね?」
「違います!」
いつも穏やかなフラウィアンにしては大きな声だった。
「私はレンが召喚されたあの日、レンに一目惚れしたんです!」
「……え?」
思わぬフラウィアンの言葉に驚く。
「でも、あなたの隣にはあの女性がいたから、一度は諦めようと思いました! でも、あなたは純潔の神からも加護をもらっていたから、絶対にあなたを他の者に取られたくなくて、すぐにでも婚姻したいと父に言いました。しかし、父からは聖女様の意向を無視することはできないと言われて、婚約の間にレンに私を好きになってもらおうと必死だったのに……まさか、これまでずっと誤解されていたなんて……」
フラウィアンは頭が痛いというように額を押さえた。
「えっと……すみません」
まさか、これまでずっと俺のことを好きでいてくれたとは……頬が熱い。
「でも、私の言葉が嬉しかったということは、レンは少しは私のことを好きになってくれたのですか?」
フラウィアンの手がゆっくり俺に伸びてくる。
「そ、それは……」
「できれば、私と結婚してもいいと思うくらいの、好きだと嬉しいのですが?」
フラウィアンの手が、熱を持った俺の頬に触れて、俺の顔を覗き込んでくる。
「フラウィアンに婚約の話をされてから、俺はずっとフラウィアンと結婚すると思っていましたから、今更、諦めるとか言われても、困りますけど……」
「できれば、レンにももっとはっきりとした言葉で言ってほしいです……」
それは恥ずか死ぬからもうちょっと待てほしい……
「でも、この真っ赤になった顔も可愛いので、今日はこれで満足しておきます」
フラウィアンの両手に顔を包まれて、少し上向かせられる。
「口付けをしても?」
いつもは神聖力に当てられて酩酊状態の時にする行為の許可を求められて俺は動揺した。
自分の気持ちを言葉にできないなら、行動で示してほしいということだろうか?
俺はぎゅっと目を瞑って、勢いに任せてフラウィアンの唇に唇を触れた。
パッとすぐに離したが、恥ずかしくて目は瞑ったままだった。
しかし、フラウィアンが静かすぎて怖くなり、目をそっと開けてみた。
フラウィアンはその顔を赤くして、俺のことを凝視していた。
「……え? どうしたの?」
「いえ……レンからしてくれるとは思っていなかったので、少し驚きました」
フラウィアンの言葉に俺の顔は先ほど以上に熱くなる。
もしや、俺は墓穴を掘ったのだろうか?
先ほどのフラウィアンの言葉にはただ頷いて、彼からのキスを待つのが正解だったようだ。
「えっと……昨日は、また、光の神に触れられてしまったのですか?」
フラウィアンは赤い顔のまま俺の手を握ってソファーまで連れていき、俺をソファーに座らせてから自分も隣に座った。
「いえ、昨日は闇の神に頭を撫でられてしまって」
「……闇の神、ですか?」
一瞬にしてフラウィアンの顔の赤みは引き、声が聞いたこともないくらいに低いものになった。
「またレンは神を誑かしたのですか?」
「誑かしてない! 誑かしたことなどこれまで一度もない!」
「また無自覚ですか?」
少し不機嫌になってしまったフラウィアンだったが、はーっと深いため息をついてから俺のことを抱きしめた。
「私は神にもレンのことを取られたくないのですから、気をつけてください」
「気をつけて、一番安全な闇の神の傍にいたんだけど……」
闇の神が俺に触れることなど一度もなかったから完全に油断していた。
「私もレンと一緒に神域に行けたなら、守ってあげられるのですが」
「フラウィアンが神域に行けたら俺の仕事がなくなっちゃうよ?」
「レンは私のそばにいてくれたらそれでいいのです」
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「子供っぽいことを言う私は嫌いですか?」
「いや、可愛いと思う」
素直にそう言って、フラウィアンの背中に腕を回してみたが、すぐにフラウィアンは俺の肩を押して俺の顔を覗き込んできた。
「やっぱり、私からもキスがしたいです!」
今度こそ、俺は間違わずにそっと目を閉じた。
「好きです。レン」
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フラウィアンからゆっくりと唇が重ねられ、そして、舌が口内に入り込んできて、その熱さに俺は慌ててフラウィアンの体を離した。
「フラウィアン! 熱があるのではないですか?」
「風邪ではありませんから、移ることはないですよ?」
「そういうことではありません! 横にならないと!」
そうフラウィアンをベッドに連れていって横にならせると、フラウィアンは俺の手を引っ張って、抱きしめてきた。
「フラウィアン! 今は休んでください!」
「これは、昨日、レンから受け取った神聖力の影響ですから、レンと一緒にいた方が早く落ち着くはずです」
「俺のせいで……」
「心配させたくて言ったんじゃありません。レンに甘やかしてほしくて伝えたのですから、私のことを抱きしめてください」
可愛いことを言ってくる婚約者の背中に腕を回して、俺は瞳を閉じた。
これまで何度も恋人を奪われてきたけれど、この温もりは絶対に奪われたくない。
それに、神様公認なら、きっと大丈夫に違いない……
その後、俺とフラウィアンは聖王から正式に婚姻の許可証を得ることができた。
そして、大聖堂で結婚式を挙げることになるのだが、そこでジェラルドが俺に告白をして、フラウィアンには宣戦布告をして大騒ぎになったりするが、それはまた別の話……
********
ひとまず短編完結です。
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