【完結・番外編更新】魔法書の創り手 〜無属性で落ちこぼれの烙印を押された僕が魔法書を創ったら、なぜか最強たちの中心にいた件〜

はぴねこ

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04 オスカー

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「やっと会えた!」と聖騎士は嬉しそうな表情を見せた。

 ……いや、仲間に裏切られてまだ聖騎士である可能性は低いだろうか?
「元」聖騎士か?

 元(?)聖騎士は前回会った時よりも薄汚れてなんだかボロボロだった。

「どうして、ここに?」

 また殺されかけて逃げてきたのだろうか?
 そう心配になったが、その前に匂いが気になって僕は鼻を摘んだ。

「どれだけお風呂に入ってないんですか!? 臭い! くさすぎます!! さっさと生活魔法で綺麗にしてください!!」
「すまない。私は生活魔法は使えなくて」
「いいから早くしろ!!」

 僕は思わず生活魔法の魔法書を元(?)聖騎士に投げつけた。

 生活魔法は属性に関係なく使える初級魔法だが、使えない貴族はたくさんいる。
 特に身分が高い貴族は身の回りのことを自分で行うことがないため、生活魔法の詠唱を覚えることはない。
 魔法は通常、詠唱と杖で発動するため、詠唱を覚えていなければどんなに簡単な魔法でも使えないのだ。

 その点、魔法書はイメージして魔力を流し込めば、自動的にその魔法が書かれたページが開かれて魔法陣が形成され、魔法が発動される。
 僕が作っているものなので自画自賛みたいになるが、ものすごく便利だと思う。

 それにしても本当に臭い。
 徐々に匂ってきたことに気づいても自分の匂いだし、徐々に濃くなっていく匂いに鼻は徐々に慣らされて本人はさして気になっていないのだろうが、こちらの鼻は曲がりそうに臭いのだ!
 そんな状態で人に会いに来るな!!



「本当に申し訳なかった」

 生活魔法の浄化魔法で綺麗になった元(?)聖騎士はしょんぼりした様子で謝罪した。

 とりあえず、しょんぼり元(?)聖騎士を家の前に立たせておくのなんだったので家の中に入れて、お茶を出してみた。
 お茶とは言っても、紅茶なんて買えないから薬草茶だ。
 前世ではハーブティーと呼ばれていたようだ。

 元(?)聖騎士は喉が渇いていたのか、しばらく静かにお茶を飲んでいた。
 ごくごくと喉を鳴らして一気に飲んだりしないところに生まれの良さが出ているような気がする。

 まともに水も飲めていなかったのだろうかと僕は呆れた。

「その魔法書あげるので、もうそんな状態で来るのやめてください!」

 生活魔法の魔法書があれば、体を清潔にすることも、きれいな水を飲むこともできる。

「代金は払う」

 そう言った聖騎士は硬貨の入っていると思われる革袋をテーブルの上に置いた。

「こんなにいらないよ!」

 中身が銅貨ばかりの可能性を考えて革袋の中を一度チラリと見たけれど、中には金貨が詰まっていた。
 商人に引き続きの金貨なので金貨自体には驚かないが、その枚数が異常だ。
 少なくとも、革袋の中には金貨が20枚は入っていそうだった。
 魔法書に関して僕は過小評価しすぎていたのかもしれない。

「前回の風属性の魔法書の代金も入っている」
「……役に立った?」
「ああ。ものすごく役に立ったぞ。おかげで生きてる」

 自分の魔法書が役に立ったことが素直に嬉しい。

「それはよかった。それで、今日はどうしたの? また逃げてきたとか?」

 逃げて森を彷徨ったのだろうか?

「いや、あの後、色々あって、少し落ち着いてからずっとこの森を探していたんだ」
「ずっとって……精霊の森は意図的に見つけることはできないだろう?」
「だから、運よく偶然に見つかるまでずっとだ」
「なんという執念……それで、なんの用があったんだ?」
「次に会えたら魔法書の作り方を教えてくれるって言っていただろう?」
「そんなことは言っていないけど?」

 どうしてそういう解釈になったのだろうか?
 それに、そのためだけに何日も森の中を彷徨うというのも異常行動ではないだろうか?

「もしかして、ヤバい人?」
「それは心の中に留めておくべき言葉じゃないのか?」

 思わず心の声が声になって口から出ていた。
 ヤバい人にはヤバい人か聞いてはいけない。
 激情するかもしれないし、もしくは、自分がヤバいことを認識していないかもしれない。

「君は何者なんだ?」 
「素性を明かさなければいけないほど親しい関係ではないですが?」

 ヤバい人には名乗ってはいけない。
 住んでいる場所が特定されているのはまずいけど、精霊の森は何度も入れる場所ではない。
 ……すでに2回入ってきてはいるけれど。

「それはそうだが……それなら、お互いに一つずつ質問していくというのはどうだろう?」
「僕は別に聖騎士さんのことを知りたいとは思っていないのですが?」
「今は聖騎士ではない。オスカーと呼んでくれ」

 どうやら、「元」聖騎士で正解だったようだ。

「君には、魔法書を売る客が必要なのではないか? 私は太客になるぞ」

(確かに)と内心思いながら金貨の入った革袋を見る。
 しかし、ヤバい太客はやはりただのヤバい人だろう。
 いつ入ることが許されるかもわからない精霊の森に入るために何ヶ月も森を彷徨うなんて異常だ。

「別に、お客さんと親しくなる必要はないと思うのですが?」
「そんなに貴重なものを売るのに、相手の素性を知らなくてもいいというのか? 君が魔法書を売った相手がその魔法書を使って罪もない人を殺すかもしれないのに?」

 そんなことを言っていては武器職人は何も作れなくなってしまうと思ったが、確かに僕も魔法書で純粋な子供や動物なんかが殺されるのは嫌だ。

「僕の魔法書には精霊の言葉が使われ、精霊の力が流れています。だから、邪な心の持ち主が使った場合、その力は自分に跳ね返ってきます」
「精霊の言葉?」

 オスカーが怪訝な表情になる。
 これできっとオスカーももう僕のところには来ないだろう。

 精霊が独自の言葉を使うことなど誰も知らない。
 僕が精霊の言葉を聞くことができ、読み書きもできるなど、これまで信じてくれた人はいなかった。
 きっとオスカーも僕を変人だと思ったはずだ。

「精霊は言葉を使い、それを君は理解することができるのか?」

 僕はにこりと笑った。
 まだ貴族だった頃によくしていた作り笑いだ。
 ここをすぐに立ち去る人に返答を返す必要はないだろう。

「そうか、だから、魔法書は誰にも真似できないと言っていたんだな」

 オスカーは「そうか、なるほど」と何度も頷き、魔法書の表紙を丁寧な仕草で撫でた。

「疑わないの?」

「嘘つき」だとか「頭がおかしい」とか、罵られる覚悟をしていたのに。

「魔法書を見ていなければ信じるのに時間がかかったかもしれないが、実際に私はこの魔法書に何度も助けられたんだ。疑うはずないだろう?」

 オスカーは当然のようにそう言って、さわやかに笑った。

 誰かに認めてもらおうなんて、そんな期待はもうとうの昔になくなっていたと思ったのに、心の中がじわりと熱くなった。
 胸の中の熱につられて目の奥も熱くなる。

 僕は慌てて立ち上がり、オスカーにお茶のおかわりを淹れた。


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