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「精霊の森に行ったのにエノクがいなくて驚いた」
パルミラ領の領主邸を訪れたガルフレッドが言った。
「ゼノビアの領地にいるならそう連絡してほしかったぜ。無駄に精霊の森探しちまった」
ガルフレッドの言葉にゼノビアは「ごめんごめん。忘れてたわ!」と笑う。
かなり重要な連絡だったような気がするのだが?
というか、僕はガルフレッドの後ろにいる存在が気になって仕方ないのだが……
「でも、精霊の森を見つけてからこっちに来たのでしょう? 誰の案内もなかったのに精霊の森を見つけるのが随分早かったのね」
「一週間くらいは森を彷徨ったぞ?」
「たった一週間で……」
オスカーが何やらショックを受けている。
そんなことよりも、誰かガルフレッドの後ろにいる存在について聞いてはくれないだろうか?
「私はエノクにとって必要な存在として精霊たちに認められて精霊の森に入れてもらったと思っていたのだけど、私、自惚れてた!?」
「オスカーは何言ってんだ?」
本当にオスカーは何を言っているのだろうか?
いま大切なのはガルフレッドの後ろにいる存在だと思うのだが?
「繊細な男心をガルフレッドが傷つけたのよ」
「え? 俺?」
オスカーの男心が傷ついたとかそんな話はどうでもいい。
ガルフレッドの後ろからこちらを覗き込んでくる四つの目、今はそれが一番重要なことじゃないだろうか?
精霊の森で初めて会った時は木陰から、その後は扉の影からよくこうやってこっちの様子を伺っていた。
これはやっぱり、あれか?
僕が聞かないといけないってことだよね?
ものすごく気まずいんだけど……
「えっと……ネルとミラは、どうしてここにいるのかな?」
ずっとガルフレッドの後ろで不貞腐れていた二人は、僕の言葉にますます不貞腐れてしまったようで、不機嫌な顔が全開だ。
「ああ、エノクに会いたいって言うから、連れてきたんだ」
ネルとミラはガルフレッドの後ろに引っ込んでしまい、二人の代わりにガルフレッドが答えた。
「族長は許してくれたの?」
「族長? 森の民のか? 話なんてしてないぞ?」
「族長に何も話さずにここに来ちゃったの!?」
「大丈夫。精霊に伝言をお願いしたから」
「エノクだって、私たちに何も言わずに森を出たじゃない!」
「ネルとミラが相談もなしに森を出たら族長が心配するだろ!?」
僕が森を出たことによって、きっと族長をはじめとした森の民たちはほっとしたはずだ。
でも、ネルとミラがいなくなったら、今頃、森の民たちはパニック状態じゃないだろうか?
二人は族長の子供だけれど、森の民たちみんなで育てているような存在だったのだから。
「いいんだ!」
「いいのよ!!」
ネルとミラが何か激情を吐き出すように大きな声で言った。
「エノクとエノクのお母さんを守ってくれなかったお父さんのことなんて好きじゃない!」
「エノクとエノクのお母さんに酷いことしておいて自分たちは平和に暮らしてるなんて変だもの!」
二人の大きな声に驚き、そして、二人の言葉に僕は困惑した。
「……それ、どういうこと?」
ネルとミラの話に僕は驚き、そして納得した。
僕の母親は森の民だった。
それも、ネルとミラのお母さんの姉だったという。
好奇心旺盛で森の外の世界に興味のあった僕の母親はある時、森との境界で傷ついた男性を拾ったのだという。
それが僕の父親だったらしい。
僕の実の父親は成人直後に旅に出たらしい。
そして、旅先で僕の母親と出会ったのだ。
二人は恋に落ちて、僕が生まれた。
公爵家の跡取りが平民の女性を娶ることは難しかっただろうが、森の民の女性となると話は違ったのだろう。
しかし、父親は若くして亡くなってしまった。
そして、母親は赤子の僕を連れて、精霊の森に戻ろうとした。
それを追い返したのが今の族長、ネルとミラの父親だと二人は教えてくれた。
「森の民は間違ったことをした!」
「エノクとエノクのお母さんを守るべきだったのに!」
ネルとミラが目に涙を溜めながら本気で怒ってくれている。
「そうだね……僕も実の母と一緒に精霊の森で育ったら幸せだったと思うよ」
ネルとミラみたいになんの心配もせずに精霊に守られて……記憶にはないけど、二人の母親に似た美しい母親と一緒に暮らしているところを想像すれば、それはとても幸せなことだっただろうとは思う。
ネルとミラが泣きながら怒ってくれることに傷ついた心が少しばかり癒されたような気がする。
二人が怒ってくれるからか、僕の心に怒りはない。
「でも、族長の考えもわかる」
精霊の森は閉ざされた場所だ。
精霊に守られる代わりに外の者は入れない。
その掟が、僕の母親の行動のせいで破られてしまう。
外から入ってきた異物によりどんな変化が起きるかわからない。
だから排除した。
家族のため、森の民全体のために必要な決断だったのだろう。
もちろん、そのせいで僕と僕の生みの親は不幸になった可能性が高い。
しかし、元はといえば父親が早くに死んでしまったことが原因で、その前の原因は森の民だった母親が愛してはいけない人を愛したことだと言えないことでもない。
それが急に戻って来られても森の民たちも困っただろうし、優しい人たちだから母親と僕を追い出したことを長いこと思い悩んでいたのではないだろうか?
パルミラ領の領主邸を訪れたガルフレッドが言った。
「ゼノビアの領地にいるならそう連絡してほしかったぜ。無駄に精霊の森探しちまった」
ガルフレッドの言葉にゼノビアは「ごめんごめん。忘れてたわ!」と笑う。
かなり重要な連絡だったような気がするのだが?
というか、僕はガルフレッドの後ろにいる存在が気になって仕方ないのだが……
「でも、精霊の森を見つけてからこっちに来たのでしょう? 誰の案内もなかったのに精霊の森を見つけるのが随分早かったのね」
「一週間くらいは森を彷徨ったぞ?」
「たった一週間で……」
オスカーが何やらショックを受けている。
そんなことよりも、誰かガルフレッドの後ろにいる存在について聞いてはくれないだろうか?
「私はエノクにとって必要な存在として精霊たちに認められて精霊の森に入れてもらったと思っていたのだけど、私、自惚れてた!?」
「オスカーは何言ってんだ?」
本当にオスカーは何を言っているのだろうか?
いま大切なのはガルフレッドの後ろにいる存在だと思うのだが?
「繊細な男心をガルフレッドが傷つけたのよ」
「え? 俺?」
オスカーの男心が傷ついたとかそんな話はどうでもいい。
ガルフレッドの後ろからこちらを覗き込んでくる四つの目、今はそれが一番重要なことじゃないだろうか?
精霊の森で初めて会った時は木陰から、その後は扉の影からよくこうやってこっちの様子を伺っていた。
これはやっぱり、あれか?
僕が聞かないといけないってことだよね?
ものすごく気まずいんだけど……
「えっと……ネルとミラは、どうしてここにいるのかな?」
ずっとガルフレッドの後ろで不貞腐れていた二人は、僕の言葉にますます不貞腐れてしまったようで、不機嫌な顔が全開だ。
「ああ、エノクに会いたいって言うから、連れてきたんだ」
ネルとミラはガルフレッドの後ろに引っ込んでしまい、二人の代わりにガルフレッドが答えた。
「族長は許してくれたの?」
「族長? 森の民のか? 話なんてしてないぞ?」
「族長に何も話さずにここに来ちゃったの!?」
「大丈夫。精霊に伝言をお願いしたから」
「エノクだって、私たちに何も言わずに森を出たじゃない!」
「ネルとミラが相談もなしに森を出たら族長が心配するだろ!?」
僕が森を出たことによって、きっと族長をはじめとした森の民たちはほっとしたはずだ。
でも、ネルとミラがいなくなったら、今頃、森の民たちはパニック状態じゃないだろうか?
二人は族長の子供だけれど、森の民たちみんなで育てているような存在だったのだから。
「いいんだ!」
「いいのよ!!」
ネルとミラが何か激情を吐き出すように大きな声で言った。
「エノクとエノクのお母さんを守ってくれなかったお父さんのことなんて好きじゃない!」
「エノクとエノクのお母さんに酷いことしておいて自分たちは平和に暮らしてるなんて変だもの!」
二人の大きな声に驚き、そして、二人の言葉に僕は困惑した。
「……それ、どういうこと?」
ネルとミラの話に僕は驚き、そして納得した。
僕の母親は森の民だった。
それも、ネルとミラのお母さんの姉だったという。
好奇心旺盛で森の外の世界に興味のあった僕の母親はある時、森との境界で傷ついた男性を拾ったのだという。
それが僕の父親だったらしい。
僕の実の父親は成人直後に旅に出たらしい。
そして、旅先で僕の母親と出会ったのだ。
二人は恋に落ちて、僕が生まれた。
公爵家の跡取りが平民の女性を娶ることは難しかっただろうが、森の民の女性となると話は違ったのだろう。
しかし、父親は若くして亡くなってしまった。
そして、母親は赤子の僕を連れて、精霊の森に戻ろうとした。
それを追い返したのが今の族長、ネルとミラの父親だと二人は教えてくれた。
「森の民は間違ったことをした!」
「エノクとエノクのお母さんを守るべきだったのに!」
ネルとミラが目に涙を溜めながら本気で怒ってくれている。
「そうだね……僕も実の母と一緒に精霊の森で育ったら幸せだったと思うよ」
ネルとミラみたいになんの心配もせずに精霊に守られて……記憶にはないけど、二人の母親に似た美しい母親と一緒に暮らしているところを想像すれば、それはとても幸せなことだっただろうとは思う。
ネルとミラが泣きながら怒ってくれることに傷ついた心が少しばかり癒されたような気がする。
二人が怒ってくれるからか、僕の心に怒りはない。
「でも、族長の考えもわかる」
精霊の森は閉ざされた場所だ。
精霊に守られる代わりに外の者は入れない。
その掟が、僕の母親の行動のせいで破られてしまう。
外から入ってきた異物によりどんな変化が起きるかわからない。
だから排除した。
家族のため、森の民全体のために必要な決断だったのだろう。
もちろん、そのせいで僕と僕の生みの親は不幸になった可能性が高い。
しかし、元はといえば父親が早くに死んでしまったことが原因で、その前の原因は森の民だった母親が愛してはいけない人を愛したことだと言えないことでもない。
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