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20 誘惑
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翌朝、朝食後に僕が街に行こうとするとオスカーもついてくると言った。
ちなみに、昨夜騒がしかった領主一族はゼノビア以外は公務で忙しいそうだ。
ゼノビアは魔法書を使いたくてウキウキしていたそうで、魔法書を使う練習がてら魔物討伐をしてくると出かけてしまったらしい。
「いいよ。一人で行けるよ。むしろ、ゼノビアについていかなくてよかったの?」
「初めての場所だと迷子になるかもしれないだろう? ゼノビアは強いから問題ない」
「迷子になることよりも暗殺者に狙われている人と一緒に行動する方が心配だよ!」
「エノク、なかなか言うようになったじゃないか!」
はっはっはっと笑いながらオスカーは僕の背中をバンバンと叩く。
ばか力で叩くのをやめてほしい。
「エノク様、タルトタタンを焼いて待っていますわ」
朝食でお腹は満たされたはずなのに、思わずじゅるりと涎が垂れそうになった。
「タルトタタン……」
なんて魅惑的な響きなんだ……
「気をつけて行ってきてくださいまし。お早いお帰りをお待ちしておりますわ」
ニーナにそう見送られて我に帰る。
僕はお菓子を食べるために精霊の森から出てきたわけじゃないんだ!
なんか、精霊たちもニーナのお菓子を喜んでいる感じはしたけど、違うんだ!
この領地がいいところなら、僕はここで工房を持って、魔法書で稼いで、独り立ちをする!!!
領主一族はいい人たちのようだから、きっといい領地なのだろうとは思うけれど。
そう決意を新たに街に出たのに、6時間後にはちゃんと屋敷に戻って、お茶の時間にタルトタタンを食べている自分がいた。
どうしてだろう。
やはり、タルトタタンという魅惑的すぎる響きのせいだろうか?
罪な響き、タルトタタン。
「明日こそは、宿を……」
「明日は久しぶりにチョコレートが入手できそうだと料理長が言っておりましたわ。エノク様はチョコレートはお好きですか?」
「大好きです!!」
チョコレートは市井にはなかなか出回らない高級品だ。
ゼノビアが最初に持ってきてくれたチョコレートが数年ぶりに食べたチョコレートだった。
その前に食べたのは確か……魔法学園のパーティーだったかな?
弟は家でいつでも食べれたけれど、出来損ないの僕にはチョコレートは出なかったから。
「明日、チョコレートを食べたら、街に宿をとります!」
「明日はチョコレートケーキ、明後日はチョコレートムース、明々後日はチョコレートのタルトにしようかと思うのですが、いかがですか?
「いいと思います!!」
思わず全力で答えてしまった。
美味しいタルトタタンを食べたばかりだというのに、もう口の中がチョコレートを待っている。
「今日はタルトタタンで我慢してくださいね」
「我慢だなんて、タルトタタンもすごく美味しいです!」
「もう一ついかがですか?」
「いただきます!!」
僕はお菓子を求めてここまでやってきたのだろうか?
そんなはずはないのだが、それでもいいような気がしてきた。
お菓子を求めて転々と旅をするのもいいかもしれない。
それもまた世捨て人らしい。
旅を続けていれば迷惑をかける人もおらず、いろんなお菓子に出会えるかもしれない。
あれ、でもちょっと待って。
人見知りの僕じゃ、行った先々で魔法書を売り込むのは難しいのではないだろうか?
下町の人たちにならまだしも、貴族に金貨20枚とかで売りつけるのは難しいだろう。
お金がなければお菓子なんて高級品は入手できない。
……やはり、オスカーをカモに魔法書を高額で買ってもらって、お菓子を買うしかないということか?
なかなか世知辛い。
ちなみに、昨夜騒がしかった領主一族はゼノビア以外は公務で忙しいそうだ。
ゼノビアは魔法書を使いたくてウキウキしていたそうで、魔法書を使う練習がてら魔物討伐をしてくると出かけてしまったらしい。
「いいよ。一人で行けるよ。むしろ、ゼノビアについていかなくてよかったの?」
「初めての場所だと迷子になるかもしれないだろう? ゼノビアは強いから問題ない」
「迷子になることよりも暗殺者に狙われている人と一緒に行動する方が心配だよ!」
「エノク、なかなか言うようになったじゃないか!」
はっはっはっと笑いながらオスカーは僕の背中をバンバンと叩く。
ばか力で叩くのをやめてほしい。
「エノク様、タルトタタンを焼いて待っていますわ」
朝食でお腹は満たされたはずなのに、思わずじゅるりと涎が垂れそうになった。
「タルトタタン……」
なんて魅惑的な響きなんだ……
「気をつけて行ってきてくださいまし。お早いお帰りをお待ちしておりますわ」
ニーナにそう見送られて我に帰る。
僕はお菓子を食べるために精霊の森から出てきたわけじゃないんだ!
なんか、精霊たちもニーナのお菓子を喜んでいる感じはしたけど、違うんだ!
この領地がいいところなら、僕はここで工房を持って、魔法書で稼いで、独り立ちをする!!!
領主一族はいい人たちのようだから、きっといい領地なのだろうとは思うけれど。
そう決意を新たに街に出たのに、6時間後にはちゃんと屋敷に戻って、お茶の時間にタルトタタンを食べている自分がいた。
どうしてだろう。
やはり、タルトタタンという魅惑的すぎる響きのせいだろうか?
罪な響き、タルトタタン。
「明日こそは、宿を……」
「明日は久しぶりにチョコレートが入手できそうだと料理長が言っておりましたわ。エノク様はチョコレートはお好きですか?」
「大好きです!!」
チョコレートは市井にはなかなか出回らない高級品だ。
ゼノビアが最初に持ってきてくれたチョコレートが数年ぶりに食べたチョコレートだった。
その前に食べたのは確か……魔法学園のパーティーだったかな?
弟は家でいつでも食べれたけれど、出来損ないの僕にはチョコレートは出なかったから。
「明日、チョコレートを食べたら、街に宿をとります!」
「明日はチョコレートケーキ、明後日はチョコレートムース、明々後日はチョコレートのタルトにしようかと思うのですが、いかがですか?
「いいと思います!!」
思わず全力で答えてしまった。
美味しいタルトタタンを食べたばかりだというのに、もう口の中がチョコレートを待っている。
「今日はタルトタタンで我慢してくださいね」
「我慢だなんて、タルトタタンもすごく美味しいです!」
「もう一ついかがですか?」
「いただきます!!」
僕はお菓子を求めてここまでやってきたのだろうか?
そんなはずはないのだが、それでもいいような気がしてきた。
お菓子を求めて転々と旅をするのもいいかもしれない。
それもまた世捨て人らしい。
旅を続けていれば迷惑をかける人もおらず、いろんなお菓子に出会えるかもしれない。
あれ、でもちょっと待って。
人見知りの僕じゃ、行った先々で魔法書を売り込むのは難しいのではないだろうか?
下町の人たちにならまだしも、貴族に金貨20枚とかで売りつけるのは難しいだろう。
お金がなければお菓子なんて高級品は入手できない。
……やはり、オスカーをカモに魔法書を高額で買ってもらって、お菓子を買うしかないということか?
なかなか世知辛い。
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