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番外編 ルキウス視点
僕は男に生まれたにも関わらず、父には似ず、母によく似ていた。
男の子は幼少期には母親に似るものだと言うが、それは幼少期の話のはずだ。
成長するにつれ、体格や顔つきなど、父親に似るものだと思っていた。
しかし、僕は10代になっても父親に似る気配は全くなく、母親似のままだった。
それでも、辺境の領地にいる間はよかった。
うちの領地は田舎だし、魔物がよく出る場所でもあるから他の貴族はわざわざ来ない。
冒険者や旅商人がよく滞在する街でもあるから経済的には潤っている方だが、魔物を恐れて貴族はいなかった。
そのため、僕の容姿をとやかく言うような人間はいなかった。
しかし、貴族の義務として王都の学校に通い始めると、僕の容姿は人目を引いた。
「ルキウス様は今日も麗しいわ」
「あれほど可憐な人を見たことがない」
「ぜひ、お近づきになりたい」
多くの令嬢が寄ってきて、さらに令息まで寄ってきた。
そして、僕のモテっぷりに嫉妬した令息から嫌がらせを受けることもあったし、僕が素っ気ない対応をしたことに不満を抱いた令嬢からも嫌がらせを受けることもあった。
一番面倒だったのは、我が国で王族の次に力のある公爵家の令嬢と令息が僕を婚約者にすると言って姉弟で争い始めたことだった。
「ルキウス! 君は私の婚約者になるだろう!?」
「いいえ! ルキウス様はわたくしの婚約者になるのです!」
「僕はパルミラ領を継がねばなりませんので、公爵家のご令嬢やご子息をお迎えすることはできません」
「ルキウスはうちに嫁げばいいだろう!」
「そうよ! 王都に屋敷を建てて一緒に暮らしましょう!」
「我が家を継ぐのは僕だともう決まっておりますので」
幸い、妹たちには家を継ぎたいという者もいなかったので、僕は家督を継ぐというのを公爵家の者たちの求婚を断るのに使っていた。
他の貴族たちは魔物の多いパルミラ領を継がねばならないという話で大体は引いてくれたが、公爵家の二人は自分のわがままは全て叶うと勘違いしていて非常に面倒くさかった。
二人のことが面倒くさすぎて、僕はものすごく頑張って飛び級して、卒業まで四年かかるところを二年で終わらせた。
そして、早々に平和なパルミラ領へと戻った。
それなのにも関わらず、公爵家の姉弟と他の貴族の令嬢や令息がわざわざパルミラ領へとやってきた。
僕は本当にうんざりしてある策を練った。
領地を案内するというていで公爵家の二人と他の令嬢令息をつれて魔物がよく出る森へと向かい、魔物から彼らを守るフリをして目を負傷したことにした。
彼らは僕の目が美しいと散々褒めていたので、この目を無くしてしまおうと思ったのだ。
もちろん、本当に傷を負うつもりなどなかったから、魔物から毒を受けたことにして、公爵家の二人と令嬢令息がいる間は包帯で目を隠し、数ヶ月後に「完治した」という連絡を公爵家に送った。
すぐに公爵家の二人は再びパルミラ領にやってきたが、彼らが美しいと誉めてくれた私の目は後遺症で糸目になってしまったと嘆いて見せた。
僕の糸目を見て、彼らは王都へと帰っていった。
本当に僕の見た目だけが好きだったようだ。
糸目な僕を好きになってくれないなら別に誰とも結婚しなくてもいいと思い、両親にもそのように宣言した。
幸い、その数年後にはすぐ下の妹とさらにその下の妹が早々に結婚して子供を産んでくれた。
妹たちの次男や長女、さらに下の男の子や女の子でもいいからパルミラ領を継ぎたいという子に後を継がせればいいと思っていた。
僕の苦労を知っていた両親も僕に結婚を強要することはなかったし、妹たちも協力的だった。
おおらかな両親と妹たちで本当に良かった……いや、活発すぎる妹たちをおおらかと評するのはなにか違うかもしれない。
僕に寄ってくる貴族たちがいなくなり、魔物の問題以外はパルミラ領は平穏で平和だった。
しかし、突然、一番下の妹の婚約者である第四王子のオスカーがパルミラ領にやってきた。
その姿はボロボロで、明らかに何者かに襲われて逃げてきたことがわかった。
我々はすぐにオスカーを保護し、パルミラ領で匿う覚悟をしたのだが、一週間ほどその身を休めたオスカーはまたすぐに森の中に入ると言う。
「ゼノビアと婚約した段階で家族のようなものなのだから遠慮せずに匿われていろ」
「いや、遠慮しているわけではないんだ。ただ、森の中で出会った少年に再び会って、話がしてみたい」
詳しく聞けば、パルミラ領に逃げてくる途中でオスカーは精霊の森に迷い込み、一人の少年に出会ったそうだ。
精霊の森の話は吟遊詩人や旅商人、それから冒険者から聞いたことはあるが、実際に行ったことがあるという者があまりにも少なく、伝説上の話だと思われていたり、極度の緊張状態による幻覚だとされる説があった。
実際、精霊の森に入ったというオスカーは仲間に殺されそうになって逃げ込んだ森の中で精霊の森に入ったと言う。
精霊の森に入った瞬間、空気が澄み渡り、それまでの森とは違うと不思議とわかったそうだ。
それ以上の緊張状態はないというほどの状態で、そこが精霊の森だとわかったと……やはり、精霊の森とは極度の緊張状態が見せる幻覚なのではないだろうか?
そう僕は考えたが、ゼノビアはオスカーを信じているようだった。
オスカーが森に入って3ヶ月後、オスカーから精霊の森に入ることができたとゼノビアに伝書鳩で連絡が来た。
暗殺者から身を隠しながらの森での3ヶ月の生活でとうとう気が狂ったのだろうかと僕は思ったが、オスカーに会いに行ったゼノビアは清々しい表情で屋敷に戻ってきた。
そして、驚くことにゼノビアも精霊の森に入ることができたと言う。
ゼノビアの様子がいつもと違っているようなことはなく、特に狂気は感じない。
つまり、精霊の森は実在していたということだろうか?
「オスカーは探し出すのに3ヶ月もかかったのに、どうしてゼノビアはすぐに入れたんだ?」
知り合いが精霊の森にいれば、他の者も入ることができるということだろうか?
しかし、それならばもっと精霊の森に関する記録が残っていてもいいはずだ。
「そんなの知らないし、どうでもいいわ。オスカーも無事だし、オスカーが会いたいと言っていた子もとてもチャーミングだったんだから、それで十分よ」
精霊は純粋な存在で、同様に純粋なものを好むと聞く。
ゼノビアが精霊の森に入れたのはこの天性からの天真爛漫さのおかげかもしれない。
何度か精霊の森に通ったゼノビアは、精霊の森にいるエノクという少年を弟にしたいと言い出した。
推定年齢は12歳で、ムー王国の公爵家の出らしいのだが、公爵家では愛情らしい愛情を注がれていなかったようだ。
オスカーとゼノビアが精霊の森から連れ出したエノクはほっそりとして色白な少年だった。
エノクは、初対面の僕の顔を不躾に感じるほどにじっと見つめていた。
糸目になってからそんなにまじまじと僕の顔を見つめる者などいなかったのに。
エノクが屋敷を出てしまった日に、どうしてエノクがあんなに僕の顔を見つめていたのかがわかった。
エノクは僕に幻影魔法の魔法陣を描いた魔石を残してくれていた。
魔石に魔力をこめれば、これまでよりもずっと少ない魔力で幻影魔法をかけることができた。
エノクは最初に出会った時点で、僕が自分の顔にかけている幻影魔法に気づいたのだ。
姿を変えても、本当の僕のことをちゃんと見てくれるエノクを僕は気に入った。
それまではゼノビアから聞いていた話によりエノクに同情して家族になろうとしていただけだが、同情ではなく、本当にエノクをそばに置きたいと思った。
一度も僕の本当の姿を見たことがないのにも関わらず僕の本当の姿を見抜く人になんて、きっとこの先も出会えないだろう。
さらに、エノクに一瞬だけ僕の本当の姿を見せても、それでエノクの態度が変わることもなかった。
これに関してはニーナへの態度で薄々感じてはいたが、エノクは見た目や地位にはそれほど興味がないようだった。
いや、それほどというか、全くと言ってもいいほどに興味がないのかもしれない。
そんなエノクをニーナも気に入っているようだし、あの偏屈エルフのグラーツまでエノクに興味を持っていた。
僕がエノク争奪戦に勝てるかどうかはまだわからないけれど、勝利の暁にはエノクを手に入れられるのならば挑戦するしかないだろう。
男の子は幼少期には母親に似るものだと言うが、それは幼少期の話のはずだ。
成長するにつれ、体格や顔つきなど、父親に似るものだと思っていた。
しかし、僕は10代になっても父親に似る気配は全くなく、母親似のままだった。
それでも、辺境の領地にいる間はよかった。
うちの領地は田舎だし、魔物がよく出る場所でもあるから他の貴族はわざわざ来ない。
冒険者や旅商人がよく滞在する街でもあるから経済的には潤っている方だが、魔物を恐れて貴族はいなかった。
そのため、僕の容姿をとやかく言うような人間はいなかった。
しかし、貴族の義務として王都の学校に通い始めると、僕の容姿は人目を引いた。
「ルキウス様は今日も麗しいわ」
「あれほど可憐な人を見たことがない」
「ぜひ、お近づきになりたい」
多くの令嬢が寄ってきて、さらに令息まで寄ってきた。
そして、僕のモテっぷりに嫉妬した令息から嫌がらせを受けることもあったし、僕が素っ気ない対応をしたことに不満を抱いた令嬢からも嫌がらせを受けることもあった。
一番面倒だったのは、我が国で王族の次に力のある公爵家の令嬢と令息が僕を婚約者にすると言って姉弟で争い始めたことだった。
「ルキウス! 君は私の婚約者になるだろう!?」
「いいえ! ルキウス様はわたくしの婚約者になるのです!」
「僕はパルミラ領を継がねばなりませんので、公爵家のご令嬢やご子息をお迎えすることはできません」
「ルキウスはうちに嫁げばいいだろう!」
「そうよ! 王都に屋敷を建てて一緒に暮らしましょう!」
「我が家を継ぐのは僕だともう決まっておりますので」
幸い、妹たちには家を継ぎたいという者もいなかったので、僕は家督を継ぐというのを公爵家の者たちの求婚を断るのに使っていた。
他の貴族たちは魔物の多いパルミラ領を継がねばならないという話で大体は引いてくれたが、公爵家の二人は自分のわがままは全て叶うと勘違いしていて非常に面倒くさかった。
二人のことが面倒くさすぎて、僕はものすごく頑張って飛び級して、卒業まで四年かかるところを二年で終わらせた。
そして、早々に平和なパルミラ領へと戻った。
それなのにも関わらず、公爵家の姉弟と他の貴族の令嬢や令息がわざわざパルミラ領へとやってきた。
僕は本当にうんざりしてある策を練った。
領地を案内するというていで公爵家の二人と他の令嬢令息をつれて魔物がよく出る森へと向かい、魔物から彼らを守るフリをして目を負傷したことにした。
彼らは僕の目が美しいと散々褒めていたので、この目を無くしてしまおうと思ったのだ。
もちろん、本当に傷を負うつもりなどなかったから、魔物から毒を受けたことにして、公爵家の二人と令嬢令息がいる間は包帯で目を隠し、数ヶ月後に「完治した」という連絡を公爵家に送った。
すぐに公爵家の二人は再びパルミラ領にやってきたが、彼らが美しいと誉めてくれた私の目は後遺症で糸目になってしまったと嘆いて見せた。
僕の糸目を見て、彼らは王都へと帰っていった。
本当に僕の見た目だけが好きだったようだ。
糸目な僕を好きになってくれないなら別に誰とも結婚しなくてもいいと思い、両親にもそのように宣言した。
幸い、その数年後にはすぐ下の妹とさらにその下の妹が早々に結婚して子供を産んでくれた。
妹たちの次男や長女、さらに下の男の子や女の子でもいいからパルミラ領を継ぎたいという子に後を継がせればいいと思っていた。
僕の苦労を知っていた両親も僕に結婚を強要することはなかったし、妹たちも協力的だった。
おおらかな両親と妹たちで本当に良かった……いや、活発すぎる妹たちをおおらかと評するのはなにか違うかもしれない。
僕に寄ってくる貴族たちがいなくなり、魔物の問題以外はパルミラ領は平穏で平和だった。
しかし、突然、一番下の妹の婚約者である第四王子のオスカーがパルミラ領にやってきた。
その姿はボロボロで、明らかに何者かに襲われて逃げてきたことがわかった。
我々はすぐにオスカーを保護し、パルミラ領で匿う覚悟をしたのだが、一週間ほどその身を休めたオスカーはまたすぐに森の中に入ると言う。
「ゼノビアと婚約した段階で家族のようなものなのだから遠慮せずに匿われていろ」
「いや、遠慮しているわけではないんだ。ただ、森の中で出会った少年に再び会って、話がしてみたい」
詳しく聞けば、パルミラ領に逃げてくる途中でオスカーは精霊の森に迷い込み、一人の少年に出会ったそうだ。
精霊の森の話は吟遊詩人や旅商人、それから冒険者から聞いたことはあるが、実際に行ったことがあるという者があまりにも少なく、伝説上の話だと思われていたり、極度の緊張状態による幻覚だとされる説があった。
実際、精霊の森に入ったというオスカーは仲間に殺されそうになって逃げ込んだ森の中で精霊の森に入ったと言う。
精霊の森に入った瞬間、空気が澄み渡り、それまでの森とは違うと不思議とわかったそうだ。
それ以上の緊張状態はないというほどの状態で、そこが精霊の森だとわかったと……やはり、精霊の森とは極度の緊張状態が見せる幻覚なのではないだろうか?
そう僕は考えたが、ゼノビアはオスカーを信じているようだった。
オスカーが森に入って3ヶ月後、オスカーから精霊の森に入ることができたとゼノビアに伝書鳩で連絡が来た。
暗殺者から身を隠しながらの森での3ヶ月の生活でとうとう気が狂ったのだろうかと僕は思ったが、オスカーに会いに行ったゼノビアは清々しい表情で屋敷に戻ってきた。
そして、驚くことにゼノビアも精霊の森に入ることができたと言う。
ゼノビアの様子がいつもと違っているようなことはなく、特に狂気は感じない。
つまり、精霊の森は実在していたということだろうか?
「オスカーは探し出すのに3ヶ月もかかったのに、どうしてゼノビアはすぐに入れたんだ?」
知り合いが精霊の森にいれば、他の者も入ることができるということだろうか?
しかし、それならばもっと精霊の森に関する記録が残っていてもいいはずだ。
「そんなの知らないし、どうでもいいわ。オスカーも無事だし、オスカーが会いたいと言っていた子もとてもチャーミングだったんだから、それで十分よ」
精霊は純粋な存在で、同様に純粋なものを好むと聞く。
ゼノビアが精霊の森に入れたのはこの天性からの天真爛漫さのおかげかもしれない。
何度か精霊の森に通ったゼノビアは、精霊の森にいるエノクという少年を弟にしたいと言い出した。
推定年齢は12歳で、ムー王国の公爵家の出らしいのだが、公爵家では愛情らしい愛情を注がれていなかったようだ。
オスカーとゼノビアが精霊の森から連れ出したエノクはほっそりとして色白な少年だった。
エノクは、初対面の僕の顔を不躾に感じるほどにじっと見つめていた。
糸目になってからそんなにまじまじと僕の顔を見つめる者などいなかったのに。
エノクが屋敷を出てしまった日に、どうしてエノクがあんなに僕の顔を見つめていたのかがわかった。
エノクは僕に幻影魔法の魔法陣を描いた魔石を残してくれていた。
魔石に魔力をこめれば、これまでよりもずっと少ない魔力で幻影魔法をかけることができた。
エノクは最初に出会った時点で、僕が自分の顔にかけている幻影魔法に気づいたのだ。
姿を変えても、本当の僕のことをちゃんと見てくれるエノクを僕は気に入った。
それまではゼノビアから聞いていた話によりエノクに同情して家族になろうとしていただけだが、同情ではなく、本当にエノクをそばに置きたいと思った。
一度も僕の本当の姿を見たことがないのにも関わらず僕の本当の姿を見抜く人になんて、きっとこの先も出会えないだろう。
さらに、エノクに一瞬だけ僕の本当の姿を見せても、それでエノクの態度が変わることもなかった。
これに関してはニーナへの態度で薄々感じてはいたが、エノクは見た目や地位にはそれほど興味がないようだった。
いや、それほどというか、全くと言ってもいいほどに興味がないのかもしれない。
そんなエノクをニーナも気に入っているようだし、あの偏屈エルフのグラーツまでエノクに興味を持っていた。
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