氷結王子と呼ばれる騎士団長と契約結婚をすることになったのですが、どうやら一目惚れされているらしいです?

新 星緒

文字の大きさ
35 / 41

10・4 脱出しよう

しおりを挟む
『生きてここを出たければ、おとなしくしていろ』とモレノは言った。だけど、『取引材料だから殺さない』とも言った。

 そちらの言葉に賭けよう。無茶をして見つかっても、殺されないと思いたい。
 彼らが私がおとなしくしていると思っているうちに、逃げる。

 立ち上がり、部屋を見渡す。魔法がかかっているようには見えないけれど、彼らがあれだけ自信満々なのだから、魔術師たちが魔法で私をみつけるのは難しいのだろう。

 次に左手にはめた指輪を見る。ランベルト様がくださった、『彼をまとう』指輪。これには魔法がかかっている。
 ランベルト様だって、自分の変化が世間にどのように思われているかは、わかっている。彼が私を大切にすればするほど、私が彼の弱点になり敵に狙われることも。

 だからもしものときに、私のいる場所がランベルト様にわかるようになっているのだ。ただ、モレノたちの魔道具が、これにも影響を及ぼしているかもしれない。だからその機能には期待はしていない。
 私が今、すべきことは――

 ブルーダイヤのバラ模様を扉の鍵があるあたりに向ける。
 深呼吸をして。

「解放。氷柱攻撃」

 言い終えると指輪が青い光を放ち、むっつのブルーダイヤが宙に浮かんだ。瞬く間にノエルの背丈ぐらいありそうな巨大なツララになり、切っ先を扉に向けて驀進ばくしんする。
 激しい音を立てて、次々とツララが扉を貫いた。

 むっつの穴があいた扉が、キィ……と物悲し気な音を立ててゆっくりと開く。

 ゴクリと唾を呑み込む。
 どうしよう。予想以上に派手なことになってしまった。

 ブルーダイヤにランベルト様の使う魔法攻撃術がしこまれている、と聞いていた。私がキーワードを口にすれば発動する。とも。
 でもまさか、こんなに威力があるものだなんて思わなかったのだ。だってダイヤ、指先に余裕で乗るような小さいサイズだったもの。こんなに巨大化するなんて思わないじゃない?

 絶対にいまの破壊音、誰かの耳に届いたよね?

 でも、だからこそ急いで逃げないとダメか。小走りに扉に駆け寄り、部屋の外を見渡す。
 やはり地下らしくて窓はない。壁にひとつだけついている燭台の明かりで、なんとか様子がわかる。この部屋が地下のどんづまり。正面に進むと階上に上がる幅の広い階段がある。それから扉が左にひとつ。
 ツララは真正面の階段に刺さって幾分か壊しているけど、使えないことはなさそうだ。
 そして人は誰もいない。降りて来る気配もない。

 もしかして。魔力なしの私がここから逃げ出せると考えていないから、いまの爆音もほかのところから聞こえたと勘違いしているとか?
 なんでもいいや。早く逃げよう。

 通路に出ると、なにか武器になるものでもないかと扉をひとつ開けてみた。なんだかよくわからない品物が雑多に置いてある。禁制品の魔道具置き場かもしれない。使い方も安全性もわからないから、武器にしようがない。
 
 諦めて、階段を上る。その途中で全身に奇妙な感覚がした。なにか抵抗力があるものの中を進んでいるような、そんな感覚だ。それが消えた瞬間、頭上から騒がしい音が聞こえてきた。叫び声にドタバタとした足音、そして剣を交える音。

 助けが来ているのかもしれない!
 モレノの魔道具で地下と階上の音が分断されていたのかも。
 でも、理由も原因もどうだっていい。
 ランベルト様が助けに来てくれているかもしれない。
 モレノたちがもし、危険な魔道具を持っていたら……!

 階段を駆け上がろうとしたそのとき、誰かがすごい勢いで駆けおりてきた。

「お前っ、なぜ出ている! って、なんだこのツララは!?」
 そう叫んだのはモレノだった。
「お前、魔法は使えないんじゃ……。まあいい、来いっ!」
 手首を掴まれ、引っ張られた。倒れこみそうになったところで、首に腕を回される。苦しいけれど彼のもう片方の手には短剣がある。抵抗しようがない。
 恐ろしくて膝がふるえてうまく歩けない。だけどモレノも確実に焦っている。

「死にたくなかったら、おとなしくしていろ」
 そのまま引きずられるように階段を上がる。モレノは
「くそっ、なんでここがバレたんだ。魔道具は完璧なはずなのにっ」と、吐き捨てるように呟いている。

「元々お前を捕まえるために、怪しい建物をピックアップしていたからだ!」
 そんな叫び声がして、階段の上がり切ったところに人影が現れた。王立騎士団のステファンさんだった。
「ストラーニ団長、こちらにミレーナ様が!」と、彼が声を上げる。

「おおっと、近寄るなよ」とモレノ。「大事な令嬢を死なせたくないだろう? 下がれ、俺たちを通らせろ」  
 ステファンさんはそれに従い、モレノと私は階段を上り切る。出た場所は、またしても通路のどんづまりだった。ただ住居の地階に出たらしく、明るい日差しが入っている。

「ミレーナ!」
 ランベルト様が角から飛び出してきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。 でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!! 超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。 しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。 ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。 いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——? 明るく楽しいラブコメ風です! 頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★ ※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。 ※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!! みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*) ※タイトル変更しました。 旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』

処理中です...