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公爵家の真相
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〔 Side 第二王子 アレクシス 〕
「おい……!?」
横抱きに抱えたリィカルナの重みが、突如増した気がした。
首がガクッと下がった。
※ ※ ※
俺は、アレクシス・フォン・アルカトル。
このアルカトル王国の第二王子だ。
国立アルカライズ学園の卒業パーティーの、翌々日。
俺は、国王である父と、王太子である兄アークバルトと共に、父の執務室にいた。
そこで迎えた客は、カルビン・フォン・ロドムともう一人。
カルビンは別にいい。リィカルナとの婚約破棄の件で、来る予定になっていた。
問題は、もう一人だ。
クリフォード・フォン・ベネット。
今、牢に閉じ込めているベネット公爵の下の息子。そして、カルビンの元婚約者であるリィカルナの弟だ。
父が、カルビンに目を向けた。
「なぜ、この者を連れてきた?」
その声は厳しい。
そう。
クリフォードを連れてきたのはカルビンだ。
「それが……その……」
「僕が、王城に入ろうとしているロドル伯爵の馬車を見つけて、強引に乗り込んだんです。
――お願いします。どうか、姉様の母様を助けて下さい」
カルビンの言葉を遮って、クリフォードが話し出す。
国王陛下から声を掛けられたわけでも何でもなく、話し始めるなど、無礼以外の何者でもない。さすが、ベネット公爵の息子。
だが、最後の言葉に、そうした感想が吹き飛んだ。
よく見れば、クリフォードは切羽詰まった顔をしている。
「どういうことだ?」
父が、クリフォードに問いただした。
それを受けて、クリフォードが語った。
リィカルナが、腹違いの姉であること。
リィカルナの母親は平民の女性で、ベネット公爵が視察で回った時に、気まぐれに手を付けた女性の子供であること。
娘が欲しかったベネット公爵がリィカルナを引き取り、母親を人質代わりに言うことを聞かせ、何かミスをすれば母親が罰をうけていた事。
受けた罰の結果、母親は現在ひどく衰弱していること。
それなのに、今回のベネット公爵とリィカルナが拘束を受けた事に関して、ユインラムが罰として、まだまだ寒い中、外で頭から水を掛けられ続けているらしい。
「お願いします。このままだと、姉様の母様が死んでしまいます。もし死んじゃったら、姉様の心がもちません。お願いします、助けて下さい!」
平伏して、クリフォードが叫んでいた。
リィカルナ自身も、卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられて退場を命じられたことを、ユインラムに恥をかかせた、として罰を受けていた。
食事も休む事も、服を纏うことも許されず、寒い中をずっと立たされていたらしい。
クリフォードの話は、今まで見てきたベネット公爵家の姿とはあまりに隔離しすぎていて、すぐに信じられることではなかった。
「間違っちゃねぇかもな、その話」
「ミラー団長……」
外から割り込んできた声に、俺はその主の名前を呼ぶ。
普段なら近づいていれば気付けたが、思った以上にクリフォードの話に呆然となっていたようだ。
ミラー団長は、このアルカトル王国の騎士団の団長だ。
近隣に敵無し、と言われるほどの剣の腕前で、この国の軍のトップだ。
俺も、剣の腕ではミラー団長に追いついてきた、とは思っているが、経験の差なのか、まだまだ負けてしまうことが多い。
父が、無言のまま問いかけるようにミラー団長を見る。
ミラー団長は、軽く一礼した。
「陛下。リィカルナがこのままだとまずいです。今日一日放っておけば、おそらく死んでしまうでしょうね」
「どういうことですか!?」
ミラー団長の言葉に、真っ先に反応したのはクリフォードだ。
団長にしがみついている。
「昨日、牢に閉じ込めてすぐ、ベネット公爵がリィカルナに暴力を振るった、と報告がありましたよね。そのまま放っておけ、という話になりましたが」
「えっ!?」
しがみつくクリフォードに目も向けず、ミラー団長は父に話を続ける。
クリフォードの顔が真っ青になった。
「おい……!?」
横抱きに抱えたリィカルナの重みが、突如増した気がした。
首がガクッと下がった。
※ ※ ※
俺は、アレクシス・フォン・アルカトル。
このアルカトル王国の第二王子だ。
国立アルカライズ学園の卒業パーティーの、翌々日。
俺は、国王である父と、王太子である兄アークバルトと共に、父の執務室にいた。
そこで迎えた客は、カルビン・フォン・ロドムともう一人。
カルビンは別にいい。リィカルナとの婚約破棄の件で、来る予定になっていた。
問題は、もう一人だ。
クリフォード・フォン・ベネット。
今、牢に閉じ込めているベネット公爵の下の息子。そして、カルビンの元婚約者であるリィカルナの弟だ。
父が、カルビンに目を向けた。
「なぜ、この者を連れてきた?」
その声は厳しい。
そう。
クリフォードを連れてきたのはカルビンだ。
「それが……その……」
「僕が、王城に入ろうとしているロドル伯爵の馬車を見つけて、強引に乗り込んだんです。
――お願いします。どうか、姉様の母様を助けて下さい」
カルビンの言葉を遮って、クリフォードが話し出す。
国王陛下から声を掛けられたわけでも何でもなく、話し始めるなど、無礼以外の何者でもない。さすが、ベネット公爵の息子。
だが、最後の言葉に、そうした感想が吹き飛んだ。
よく見れば、クリフォードは切羽詰まった顔をしている。
「どういうことだ?」
父が、クリフォードに問いただした。
それを受けて、クリフォードが語った。
リィカルナが、腹違いの姉であること。
リィカルナの母親は平民の女性で、ベネット公爵が視察で回った時に、気まぐれに手を付けた女性の子供であること。
娘が欲しかったベネット公爵がリィカルナを引き取り、母親を人質代わりに言うことを聞かせ、何かミスをすれば母親が罰をうけていた事。
受けた罰の結果、母親は現在ひどく衰弱していること。
それなのに、今回のベネット公爵とリィカルナが拘束を受けた事に関して、ユインラムが罰として、まだまだ寒い中、外で頭から水を掛けられ続けているらしい。
「お願いします。このままだと、姉様の母様が死んでしまいます。もし死んじゃったら、姉様の心がもちません。お願いします、助けて下さい!」
平伏して、クリフォードが叫んでいた。
リィカルナ自身も、卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられて退場を命じられたことを、ユインラムに恥をかかせた、として罰を受けていた。
食事も休む事も、服を纏うことも許されず、寒い中をずっと立たされていたらしい。
クリフォードの話は、今まで見てきたベネット公爵家の姿とはあまりに隔離しすぎていて、すぐに信じられることではなかった。
「間違っちゃねぇかもな、その話」
「ミラー団長……」
外から割り込んできた声に、俺はその主の名前を呼ぶ。
普段なら近づいていれば気付けたが、思った以上にクリフォードの話に呆然となっていたようだ。
ミラー団長は、このアルカトル王国の騎士団の団長だ。
近隣に敵無し、と言われるほどの剣の腕前で、この国の軍のトップだ。
俺も、剣の腕ではミラー団長に追いついてきた、とは思っているが、経験の差なのか、まだまだ負けてしまうことが多い。
父が、無言のまま問いかけるようにミラー団長を見る。
ミラー団長は、軽く一礼した。
「陛下。リィカルナがこのままだとまずいです。今日一日放っておけば、おそらく死んでしまうでしょうね」
「どういうことですか!?」
ミラー団長の言葉に、真っ先に反応したのはクリフォードだ。
団長にしがみついている。
「昨日、牢に閉じ込めてすぐ、ベネット公爵がリィカルナに暴力を振るった、と報告がありましたよね。そのまま放っておけ、という話になりましたが」
「えっ!?」
しがみつくクリフォードに目も向けず、ミラー団長は父に話を続ける。
クリフォードの顔が真っ青になった。
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