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第二章 旅の始まりと、初めての戦闘
完治
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ユーリの《全快》の光が消えれば、もうアレクの傷はなくなっていた。
「……なおったの?」
リィカが小さく聞く。
ユーリが笑顔で答えた。
「ええ、もう大丈夫です。ここまでだいぶ消耗はしているから、目が覚めるまではもう少し掛かるでしょうけど、心配はいりません」
「……良かった」
そうつぶやいてアレクを見たリィカは、今にも泣きそうながらも笑顔だった。
そんな様子を後ろから見ていたフロイドは、リィカに声を掛ける。
「これをどうぞ。差し上げますよ」
渡された紙を見れば、地下にあった魔方陣が描かれていた。
「一応見比べてみましたが、同じだと思います。ぜひお役立て下さい」
「ありがとうございます、フロイドさん。本当に、色々お世話になって……」
言いかけて、リィカがハッとする。
「……そう言えば、フロイドさん。通ってるんですよね。帰らなくていいんですか?」
外を見れば、もう暗い。
「ええ。今日はアレクさんのこともありましたし、泊まろうと思っていましたから、気にしなくていいですよ。他の皆様方も、今日はこちらに泊まっていって下さいね。私は食事の用意をしてきますので」
「手伝います」
リィカがそう申し出たが、フロイドはそれを断る。
「久しぶりにお仲間と再会したのでしょう? 色々積もる話もあるでしょうから、ゆっくりして下さい」
そう言って、フロイドは出て行った。
食事の用意をしながら、フロイドは考えていた。
仲間だといううちの二人。
黒い髪に黒い目。あまり見ない色だ。そして、かつて召喚された勇者であるシゲキ様も、同じく黒い髪に黒い目だった、と言われている。
アレクの髪の色も黒いが、治療中に、黒ではなく、金色が濃すぎて黒に見えているだけだと気付いた。
ユーリは金髪。もう一人の男性も、少し色は暗めだが、金髪だ。
金髪は、王族や貴族に良く見られる髪の色。
リィカは、平民によくある髪色だが、見せた魔法はすごかった。
そして、あの魔方陣について説明していたときの、リィカの様子を思い出すと、彼らが単なる冒険者などではない、という結論に行き着く。
(不思議なものですね)
かつて、勇者を帰すための研究をしていたこの僻地にある教会に、勇者様ご一行が立ち寄るのだから。
一方、フロイドが出て行くのを見て、ユーリが口を開いた。
「リィカ、それは?」
視線は、先ほどフロイドがリィカに手渡していた紙にあった。
リィカは口ごもって、泰基と暁斗を見たが、真剣な目をして口を開いた。
「あの、あまり期待はしないで聞いて欲しいんだけど」
そして、フロイドから聞いた話を、語り始めた。
「……帰れるってこと?」
ポツッと、暁斗がつぶやく。
「かもしれない。でも、わたし魔方陣についてあまりよく知らなくて……。ユーリは、知ってる?」
「……僕もよく知りません。一般的に知られている魔方陣といえば、勇者様を召喚する、召喚の魔方陣でしょうが……」
それにしても、いつ、だれが、どうやって作ったのかは、まったく伝えられていない。
「鍵は、その『森の魔女』とやらかもしれませんね。聞いたこともありませんが、旅をしながら探してみましょうか」
バルとユーリが頷くと、暁斗が申し訳なさそうに口を開いた。
「……いいの? 魔王を倒さなきゃいけないのに」
「いいだろ別に。旅の目的が一つじゃなきゃいけねぇ、なんてことはねぇよ」
言われた暁斗が、口を噤んでうつむく。
そんな暁斗に、気になったリィカが何かを聞こうとして、そこで食事の用意ができたとフロイドから声がかかった。
食事を終えて、リィカがアレクの側に付いていると言い出した。
それを止めたのが、フロイドだ。
「確かにアレクさんの傷は大変なものですが、リィカさんだってそのためにどれだけ無茶をしましたか? はっきり申し上げますが、あなただっていつ倒れてもおかしくありませんよ。もうアレクさんは治ったのです。今度はリィカさんがご自分をしっかり治す番ですよ」
リィカは昼間に寝たから大丈夫、と言い返そうとして、結局はフロイドの視線に負けて、素直に休む事にした。
次の日の朝。
リィカ達は旅支度を調えていた。
アレクはまだ目を覚まさないが、半日ほど歩けば街があると聞いて、そこに行くことにした。
もともとこの教会は、そんなに人が泊まることを想定されていない。
食料ももうほとんど残っていない、と言うことで、出発を決めた。
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
リィカがフロイドに頭を下げる。
「いえ、あまりお力になれませんでしたが。馬も、申し訳ありません。お貸しできれば、本当はいいんですが……」
申し訳ないと謝るフロイドに、リィカは慌てて手を振った。
フロイドは、その街から馬で通ってきているらしい。
その馬を借りてしまえば、今度はフロイドが帰れなくなる。
「リィカさん、まだあなたは万全ではありませんからね。街に着いたら、数日はゆっくり休んで下さいね?」
何度もそう念押しされた。
ちなみに、アレクは今バルが抱えている。
意識のないアレクをどうやって連れてきたんだ、と聞かれて、実際にやってみせたリィカに、一同は大爆笑した。
どっからどう見ても、お姫様抱っこである。
それはリィカだって分かっていたが、他に方法がないのだから、しょうがない。
「上級魔法をずっと発動し続けたって、大変でしたね」
ユーリはそう慰めを口にしたが、笑いながら言っているので全く意味がない。
バルは、アレクが気の毒になったらしい。
「女に、そうやって抱えられるって、結構ショックだぞ」
とつぶやいていた。
今は、「もう治ってんだからいいだろ」と言って、まるで荷物のように肩に担いでいる。
「ありがとうございました」
最後にもう一度お礼を言って、一同は教会を出発した。
「……なおったの?」
リィカが小さく聞く。
ユーリが笑顔で答えた。
「ええ、もう大丈夫です。ここまでだいぶ消耗はしているから、目が覚めるまではもう少し掛かるでしょうけど、心配はいりません」
「……良かった」
そうつぶやいてアレクを見たリィカは、今にも泣きそうながらも笑顔だった。
そんな様子を後ろから見ていたフロイドは、リィカに声を掛ける。
「これをどうぞ。差し上げますよ」
渡された紙を見れば、地下にあった魔方陣が描かれていた。
「一応見比べてみましたが、同じだと思います。ぜひお役立て下さい」
「ありがとうございます、フロイドさん。本当に、色々お世話になって……」
言いかけて、リィカがハッとする。
「……そう言えば、フロイドさん。通ってるんですよね。帰らなくていいんですか?」
外を見れば、もう暗い。
「ええ。今日はアレクさんのこともありましたし、泊まろうと思っていましたから、気にしなくていいですよ。他の皆様方も、今日はこちらに泊まっていって下さいね。私は食事の用意をしてきますので」
「手伝います」
リィカがそう申し出たが、フロイドはそれを断る。
「久しぶりにお仲間と再会したのでしょう? 色々積もる話もあるでしょうから、ゆっくりして下さい」
そう言って、フロイドは出て行った。
食事の用意をしながら、フロイドは考えていた。
仲間だといううちの二人。
黒い髪に黒い目。あまり見ない色だ。そして、かつて召喚された勇者であるシゲキ様も、同じく黒い髪に黒い目だった、と言われている。
アレクの髪の色も黒いが、治療中に、黒ではなく、金色が濃すぎて黒に見えているだけだと気付いた。
ユーリは金髪。もう一人の男性も、少し色は暗めだが、金髪だ。
金髪は、王族や貴族に良く見られる髪の色。
リィカは、平民によくある髪色だが、見せた魔法はすごかった。
そして、あの魔方陣について説明していたときの、リィカの様子を思い出すと、彼らが単なる冒険者などではない、という結論に行き着く。
(不思議なものですね)
かつて、勇者を帰すための研究をしていたこの僻地にある教会に、勇者様ご一行が立ち寄るのだから。
一方、フロイドが出て行くのを見て、ユーリが口を開いた。
「リィカ、それは?」
視線は、先ほどフロイドがリィカに手渡していた紙にあった。
リィカは口ごもって、泰基と暁斗を見たが、真剣な目をして口を開いた。
「あの、あまり期待はしないで聞いて欲しいんだけど」
そして、フロイドから聞いた話を、語り始めた。
「……帰れるってこと?」
ポツッと、暁斗がつぶやく。
「かもしれない。でも、わたし魔方陣についてあまりよく知らなくて……。ユーリは、知ってる?」
「……僕もよく知りません。一般的に知られている魔方陣といえば、勇者様を召喚する、召喚の魔方陣でしょうが……」
それにしても、いつ、だれが、どうやって作ったのかは、まったく伝えられていない。
「鍵は、その『森の魔女』とやらかもしれませんね。聞いたこともありませんが、旅をしながら探してみましょうか」
バルとユーリが頷くと、暁斗が申し訳なさそうに口を開いた。
「……いいの? 魔王を倒さなきゃいけないのに」
「いいだろ別に。旅の目的が一つじゃなきゃいけねぇ、なんてことはねぇよ」
言われた暁斗が、口を噤んでうつむく。
そんな暁斗に、気になったリィカが何かを聞こうとして、そこで食事の用意ができたとフロイドから声がかかった。
食事を終えて、リィカがアレクの側に付いていると言い出した。
それを止めたのが、フロイドだ。
「確かにアレクさんの傷は大変なものですが、リィカさんだってそのためにどれだけ無茶をしましたか? はっきり申し上げますが、あなただっていつ倒れてもおかしくありませんよ。もうアレクさんは治ったのです。今度はリィカさんがご自分をしっかり治す番ですよ」
リィカは昼間に寝たから大丈夫、と言い返そうとして、結局はフロイドの視線に負けて、素直に休む事にした。
次の日の朝。
リィカ達は旅支度を調えていた。
アレクはまだ目を覚まさないが、半日ほど歩けば街があると聞いて、そこに行くことにした。
もともとこの教会は、そんなに人が泊まることを想定されていない。
食料ももうほとんど残っていない、と言うことで、出発を決めた。
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
リィカがフロイドに頭を下げる。
「いえ、あまりお力になれませんでしたが。馬も、申し訳ありません。お貸しできれば、本当はいいんですが……」
申し訳ないと謝るフロイドに、リィカは慌てて手を振った。
フロイドは、その街から馬で通ってきているらしい。
その馬を借りてしまえば、今度はフロイドが帰れなくなる。
「リィカさん、まだあなたは万全ではありませんからね。街に着いたら、数日はゆっくり休んで下さいね?」
何度もそう念押しされた。
ちなみに、アレクは今バルが抱えている。
意識のないアレクをどうやって連れてきたんだ、と聞かれて、実際にやってみせたリィカに、一同は大爆笑した。
どっからどう見ても、お姫様抱っこである。
それはリィカだって分かっていたが、他に方法がないのだから、しょうがない。
「上級魔法をずっと発動し続けたって、大変でしたね」
ユーリはそう慰めを口にしたが、笑いながら言っているので全く意味がない。
バルは、アレクが気の毒になったらしい。
「女に、そうやって抱えられるって、結構ショックだぞ」
とつぶやいていた。
今は、「もう治ってんだからいいだろ」と言って、まるで荷物のように肩に担いでいる。
「ありがとうございました」
最後にもう一度お礼を言って、一同は教会を出発した。
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