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第十章 カトリーズの悪夢
魔法封じの仕組み①
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魔族と大量の魔物に襲来されて、一晩が経過して、朝になった。
泰基は、寝ている暁斗を起こさないように、天幕の外に出る。
泰基自身もぐっすり寝た。
気持ちいいくらいの目覚めだった。
昨晩、寝る前にステラに言われた言葉について、暁斗に言った。
気にするな、と。
『うん、気にしてないよ。リィカが怒ってくれなかったら、どうだったか分かんないけど』
あっけらかんとした暁斗の返事に、力が抜けて、ホッとした。
その後、あっさり寝てしまった暁斗に続いて、泰基も眠りについたのだ。
「んー」
体を大きく伸ばす。
何となく疲れが残っている気がする。
年だな、とつい考えてしまう。
「今日は、ラクダに乗って移動になるのか?」
誰に聞くわけでもないが、声に出る。
今日からの予定がどうなるのか、その話は全くしていなかった。
「できれば、一日くらいは休みたいですね」
返事が返ってくるなど想像していなかったので、泰基は驚いてしまった。
しかし、それがユーリだと分かって、すぐ気を緩める。
「どうしたんだ、こんな朝早く?」
「一応それ、僕の質問でもあるんですが。タイキさんに用があって来たんです。会えて良かった」
ユーリの言葉とともに、ジャラッという金属音がした。
見れば、ユーリが何やら物騒な物を持っている。
「僕一人だと問題ですし、アレクに睨まれそうなので。タイキさん、一緒にリィカの所に行ってくれませんか?」
何かを企んでいそうなユーリの笑みに、泰基は顔が引き攣った。
※ ※ ※
リィカは、一人用の天幕で目を覚ました。
自分だけ一人で天幕を使う事に引け目を感じたが、男女を一緒にするわけにいかない、ということくらい分かる。
よく寝た、はずだ。
疲れて、あっさりと眠りについた。
色々夢を見ていたような気もするが、よく覚えていない。
自分の顔を触れてみたら、頬に何かが乾いた跡がある。
泣いていたんだろうか。
実はヨダレだ、というオチではないことを祈る。
そのまま頬をムニムニ動かす。
ほぐれた感じがしたら、笑顔を浮かべてみる。
鏡がないから成功しているか分からないが、しっかり笑えているだろう。
「――よしっ」
小さく気合いを入れた。
「リィカ、起きてますか?」
外からユーリの声がしたのは、このときだった。
「どうしたの?」
天幕の入り口を開ければ、ユーリだけじゃなく、泰基もいた。
中に入れて、と言われて、招き入れる。
リィカの視線は、ユーリでも泰基でもなく、ユーリの持っている物騒な物に向いていた。
その視線に、ユーリも当然気付いているんだろう。
薄ら笑いを浮かべられて、リィカは逃げたくなった。
「リィカも見るのは初めてですか? これが、魔封じの枷ですよ」
ブッ、と噴き出した。
大きい輪が一つ。
そして、その輪から伸びる鎖が30㎝ほど。
伸びた鎖の反対側には、小さい輪が二つ。
大きい輪は首に嵌めて、小さい輪は両手首に嵌めるらしい。
両手をただ戒められるだけではなく、首輪から伸びる鎖のせいで、両腕の自由を完全に奪われる仕組みになっている。
どこか嬉々として説明をするユーリに、リィカは逃げたい気持ちが増していく。
自分が入口側にいたら、きっと逃げていた。
けれど、残念ながら、リィカはベッドに腰掛けていて、入り口はユーリと泰基の背中側にある。
なぜこんな所に座ってしまったんだろう。
泰基だったら逃がしてくれるだろうか、と思って見たら、視線を逸らされた。
「ケルー少将に無理を言って借りてきたんです」
トラヴィスの家名を口にしながら、なおもユーリは嬉々としている。
「……あの、なんで、そんなの、借りてきたの?」
聞きたくないけれど、聞かないわけにいかない。
そんな思いでリィカが聞けば、ユーリは待ってましたとばかりに、笑みを浮かべた。
「魔封陣の中で、僕たちは魔法を使えましたよね。使える条件は、詠唱も魔法名すら口に出さずに魔法を使うこと」
なぜ今さらのことを言うのか分からないが、リィカはコクンと頷く。
ユーリはニヤリと笑った。
「どうしてその条件で魔法を使えるのか。他にも条件があるのか。今後のためにも、検証する必要があるでしょう?」
「……えっと、うん」
それはそうだろう。
また似たような状況にならないとも限らない。
知っておいたほうが良いだろう。
だが、ユーリの浮かべる笑みが怖い。
「ですよね? なのでリィカ、これ嵌めて下さい」
「……………」
ジャラッという音とともに言われたその意味を、一瞬理解できなかった。
「え…………ええぇぇ…………っ………!!」
理解して、叫ぼうとした言葉は、泰基の手で遮られた。
いつの間にか近寄ってきた泰基が、リィカの口を塞いでいた。
「諦めてくれ、リィカ。…………俺も嵌められるのはゴメンだ」
後半は小声だったが、リィカにはしっかり聞こえた。
フゴフゴ抗議するが、泰基の口を塞ぐ手は緩まない。
ユーリが、にっこり笑ってリィカに寄ってきた。
ジャラッという音が、リィカの耳にやけに響いた。
泰基は、寝ている暁斗を起こさないように、天幕の外に出る。
泰基自身もぐっすり寝た。
気持ちいいくらいの目覚めだった。
昨晩、寝る前にステラに言われた言葉について、暁斗に言った。
気にするな、と。
『うん、気にしてないよ。リィカが怒ってくれなかったら、どうだったか分かんないけど』
あっけらかんとした暁斗の返事に、力が抜けて、ホッとした。
その後、あっさり寝てしまった暁斗に続いて、泰基も眠りについたのだ。
「んー」
体を大きく伸ばす。
何となく疲れが残っている気がする。
年だな、とつい考えてしまう。
「今日は、ラクダに乗って移動になるのか?」
誰に聞くわけでもないが、声に出る。
今日からの予定がどうなるのか、その話は全くしていなかった。
「できれば、一日くらいは休みたいですね」
返事が返ってくるなど想像していなかったので、泰基は驚いてしまった。
しかし、それがユーリだと分かって、すぐ気を緩める。
「どうしたんだ、こんな朝早く?」
「一応それ、僕の質問でもあるんですが。タイキさんに用があって来たんです。会えて良かった」
ユーリの言葉とともに、ジャラッという金属音がした。
見れば、ユーリが何やら物騒な物を持っている。
「僕一人だと問題ですし、アレクに睨まれそうなので。タイキさん、一緒にリィカの所に行ってくれませんか?」
何かを企んでいそうなユーリの笑みに、泰基は顔が引き攣った。
※ ※ ※
リィカは、一人用の天幕で目を覚ました。
自分だけ一人で天幕を使う事に引け目を感じたが、男女を一緒にするわけにいかない、ということくらい分かる。
よく寝た、はずだ。
疲れて、あっさりと眠りについた。
色々夢を見ていたような気もするが、よく覚えていない。
自分の顔を触れてみたら、頬に何かが乾いた跡がある。
泣いていたんだろうか。
実はヨダレだ、というオチではないことを祈る。
そのまま頬をムニムニ動かす。
ほぐれた感じがしたら、笑顔を浮かべてみる。
鏡がないから成功しているか分からないが、しっかり笑えているだろう。
「――よしっ」
小さく気合いを入れた。
「リィカ、起きてますか?」
外からユーリの声がしたのは、このときだった。
「どうしたの?」
天幕の入り口を開ければ、ユーリだけじゃなく、泰基もいた。
中に入れて、と言われて、招き入れる。
リィカの視線は、ユーリでも泰基でもなく、ユーリの持っている物騒な物に向いていた。
その視線に、ユーリも当然気付いているんだろう。
薄ら笑いを浮かべられて、リィカは逃げたくなった。
「リィカも見るのは初めてですか? これが、魔封じの枷ですよ」
ブッ、と噴き出した。
大きい輪が一つ。
そして、その輪から伸びる鎖が30㎝ほど。
伸びた鎖の反対側には、小さい輪が二つ。
大きい輪は首に嵌めて、小さい輪は両手首に嵌めるらしい。
両手をただ戒められるだけではなく、首輪から伸びる鎖のせいで、両腕の自由を完全に奪われる仕組みになっている。
どこか嬉々として説明をするユーリに、リィカは逃げたい気持ちが増していく。
自分が入口側にいたら、きっと逃げていた。
けれど、残念ながら、リィカはベッドに腰掛けていて、入り口はユーリと泰基の背中側にある。
なぜこんな所に座ってしまったんだろう。
泰基だったら逃がしてくれるだろうか、と思って見たら、視線を逸らされた。
「ケルー少将に無理を言って借りてきたんです」
トラヴィスの家名を口にしながら、なおもユーリは嬉々としている。
「……あの、なんで、そんなの、借りてきたの?」
聞きたくないけれど、聞かないわけにいかない。
そんな思いでリィカが聞けば、ユーリは待ってましたとばかりに、笑みを浮かべた。
「魔封陣の中で、僕たちは魔法を使えましたよね。使える条件は、詠唱も魔法名すら口に出さずに魔法を使うこと」
なぜ今さらのことを言うのか分からないが、リィカはコクンと頷く。
ユーリはニヤリと笑った。
「どうしてその条件で魔法を使えるのか。他にも条件があるのか。今後のためにも、検証する必要があるでしょう?」
「……えっと、うん」
それはそうだろう。
また似たような状況にならないとも限らない。
知っておいたほうが良いだろう。
だが、ユーリの浮かべる笑みが怖い。
「ですよね? なのでリィカ、これ嵌めて下さい」
「……………」
ジャラッという音とともに言われたその意味を、一瞬理解できなかった。
「え…………ええぇぇ…………っ………!!」
理解して、叫ぼうとした言葉は、泰基の手で遮られた。
いつの間にか近寄ってきた泰基が、リィカの口を塞いでいた。
「諦めてくれ、リィカ。…………俺も嵌められるのはゴメンだ」
後半は小声だったが、リィカにはしっかり聞こえた。
フゴフゴ抗議するが、泰基の口を塞ぐ手は緩まない。
ユーリが、にっこり笑ってリィカに寄ってきた。
ジャラッという音が、リィカの耳にやけに響いた。
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