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第十一章 四天王ジャダーカ
鏡の作り方
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馬の手配が出来たから間もなく出発する、と連絡があり、休憩中の一行は立ち上がる。
「暑いなぁ……」
夏も後半に入ったとは言え、まだ暑い。
リィカは無意識に、首に巻いているスカーフに手をかけて外そうとして……、周囲に見られていることに気付いて、手を離す。
隷属の首輪の痕が、痛々しく見えるからと巻いているスカーフ。
まだ巻いておけ、とユーリに今朝言われたばかりだ。
(うーん……。でも、暑い)
痛々しいと言われても、自分じゃ見えない。
今朝、試しに水面に映して見てみたが、よく分からなかった。
(やっぱり、鏡が欲しいなぁ)
日本じゃ当たり前にあった鏡。
あれがあれば、一発で分かる。
泰基を見る。
視線を感じたらしい泰基と目が合う。
「泰基、ちょっと……」
腕を引っ張って、皆から離れた。
※ ※ ※
「何だ、リィカ」
腕を引かれながら、泰基はリィカに問いかける。
行動が唐突だ。
リィカの行動より、自分を射殺しそうな目で見ているアレクと、ショックを受けた顔をしている暁斗が気になっているのだが。
「ねぇ、鏡なんて持ってないよね?」
行動が唐突なら、質問も唐突だ。その内容を泰基が理解するのに一瞬の間が必要だった。
「……持ってるわけないだろ。なんだ、突然」
「首回りがどうなってるか、見たい。日本から持ち込んでないかなって思って」
なるほど、そういうことかと思う。
気持ちは分かる。
だが、大きな問題がある。
「……俺が常に鏡を持ち歩いているとでも、思ってるのか?」
「まっっったく思ってないけど。でも、万が一って事もあるし。やっぱりダメかぁ」
落ち込むリィカに、悪かったな、と憮然とつぶやく。
万が一の可能性で自分を連れ出すな、と文句を言いたいのはこちらなのだ。
「ねぇ、鏡ってどうやって作るの?」
だが、リィカはまだ話を続けるつもりらしい。
いい加減、戻りたい。
アレクと暁斗の表情に、気付いて欲しい。
それに気付けるようなリィカなら、そもそも皆のいる前で、自分一人を引っ張り出すような事はしないのだろうが。
「そんなこと知るか。欲しければ、百均にでも行けば売ってるしな」
「うわ~、百均懐かしい……じゃなくて! この世界のどこに、百均なんてあるの!」
だから知るか、と思う。
それにしても、懐かしいという単語が出てくるとは。
日本にしかない鏡の話のせいなのか、凪沙の面が強く出てきているのだろうか。
それをリィカは特に変わった様子もなく、話している。
「そうじゃなくて! 魔道具で鏡って作れない?」
「…………………は……?」
意表を突かれた。
凪沙が表に出ているんじゃなく、融合しているんだろうか。
鏡の作り方なんか知らない。おそらくガラスをどうにかして作っているんだろう、程度に想像するだけだ。
それを魔道具とは。
「……魔法の鏡でも作るのか? この世界で一番美しい人は誰、とか聞くのか?」
「聞かない!! なんで、そんな事聞かなきゃなんないの! 大体、それ童話でしょ!」
怒るリィカだが、真っ先に思い浮かべてしまったのがそれだったのだから、しょうがない。
「ただ普通に! 普通の鏡が欲しいの!」
「ああ、うん、悪かった」
ふざけたつもりはなかったが、結果的にそうなった。
真面目に考える。
金属じゃなく、魔法で、魔道具で鏡を作るとすると。
「……可能性があるとするなら、水、か? 水鏡なんて言葉もあるくらいだし、映し出せるのは水だけだ」
「そっか。そうだよね。やっぱり泰基すごい! よしっ!!」
ガッツポーズなんぞして、意気揚々とリィカは皆の元に戻る。
追いかけつつ、泰基はリィカの後ろ姿を眺める。
思わず笑みが零れ出た。
確かに、そこにいるのはリィカだ。
だが、日本の話をしているとき、久しぶりに凪沙と話をしたような感覚に、泰基はどうしようもなく嬉しくて、その余韻が残っていたのだ。
アレクと暁斗に、何を話していたんだ、と詰め寄られるまでの短い時間、泰基はその余韻に浸っていた。
「暑いなぁ……」
夏も後半に入ったとは言え、まだ暑い。
リィカは無意識に、首に巻いているスカーフに手をかけて外そうとして……、周囲に見られていることに気付いて、手を離す。
隷属の首輪の痕が、痛々しく見えるからと巻いているスカーフ。
まだ巻いておけ、とユーリに今朝言われたばかりだ。
(うーん……。でも、暑い)
痛々しいと言われても、自分じゃ見えない。
今朝、試しに水面に映して見てみたが、よく分からなかった。
(やっぱり、鏡が欲しいなぁ)
日本じゃ当たり前にあった鏡。
あれがあれば、一発で分かる。
泰基を見る。
視線を感じたらしい泰基と目が合う。
「泰基、ちょっと……」
腕を引っ張って、皆から離れた。
※ ※ ※
「何だ、リィカ」
腕を引かれながら、泰基はリィカに問いかける。
行動が唐突だ。
リィカの行動より、自分を射殺しそうな目で見ているアレクと、ショックを受けた顔をしている暁斗が気になっているのだが。
「ねぇ、鏡なんて持ってないよね?」
行動が唐突なら、質問も唐突だ。その内容を泰基が理解するのに一瞬の間が必要だった。
「……持ってるわけないだろ。なんだ、突然」
「首回りがどうなってるか、見たい。日本から持ち込んでないかなって思って」
なるほど、そういうことかと思う。
気持ちは分かる。
だが、大きな問題がある。
「……俺が常に鏡を持ち歩いているとでも、思ってるのか?」
「まっっったく思ってないけど。でも、万が一って事もあるし。やっぱりダメかぁ」
落ち込むリィカに、悪かったな、と憮然とつぶやく。
万が一の可能性で自分を連れ出すな、と文句を言いたいのはこちらなのだ。
「ねぇ、鏡ってどうやって作るの?」
だが、リィカはまだ話を続けるつもりらしい。
いい加減、戻りたい。
アレクと暁斗の表情に、気付いて欲しい。
それに気付けるようなリィカなら、そもそも皆のいる前で、自分一人を引っ張り出すような事はしないのだろうが。
「そんなこと知るか。欲しければ、百均にでも行けば売ってるしな」
「うわ~、百均懐かしい……じゃなくて! この世界のどこに、百均なんてあるの!」
だから知るか、と思う。
それにしても、懐かしいという単語が出てくるとは。
日本にしかない鏡の話のせいなのか、凪沙の面が強く出てきているのだろうか。
それをリィカは特に変わった様子もなく、話している。
「そうじゃなくて! 魔道具で鏡って作れない?」
「…………………は……?」
意表を突かれた。
凪沙が表に出ているんじゃなく、融合しているんだろうか。
鏡の作り方なんか知らない。おそらくガラスをどうにかして作っているんだろう、程度に想像するだけだ。
それを魔道具とは。
「……魔法の鏡でも作るのか? この世界で一番美しい人は誰、とか聞くのか?」
「聞かない!! なんで、そんな事聞かなきゃなんないの! 大体、それ童話でしょ!」
怒るリィカだが、真っ先に思い浮かべてしまったのがそれだったのだから、しょうがない。
「ただ普通に! 普通の鏡が欲しいの!」
「ああ、うん、悪かった」
ふざけたつもりはなかったが、結果的にそうなった。
真面目に考える。
金属じゃなく、魔法で、魔道具で鏡を作るとすると。
「……可能性があるとするなら、水、か? 水鏡なんて言葉もあるくらいだし、映し出せるのは水だけだ」
「そっか。そうだよね。やっぱり泰基すごい! よしっ!!」
ガッツポーズなんぞして、意気揚々とリィカは皆の元に戻る。
追いかけつつ、泰基はリィカの後ろ姿を眺める。
思わず笑みが零れ出た。
確かに、そこにいるのはリィカだ。
だが、日本の話をしているとき、久しぶりに凪沙と話をしたような感覚に、泰基はどうしようもなく嬉しくて、その余韻が残っていたのだ。
アレクと暁斗に、何を話していたんだ、と詰め寄られるまでの短い時間、泰基はその余韻に浸っていた。
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