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第十一章 四天王ジャダーカ
暁斗の想い
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パタンと閉まった扉を、暁斗はジッと見つめていた。
けれど、何も言わずに踵を返して歩き出す。
その様子を、泰基は気遣わしげに、バルとユーリは困惑した様子で見ていたのだが、暁斗は気付かなかった。
「勇者殿!」
歩く四人の前から姿を現したのは、ルベルトスだった。
その後ろにリヒトーフェン、そしてトラヴィスがいる。
一行を見て、ルベルトスが僅かに目を細める。
「あとの……アルカトルの王子と、あの少女は?」
「リィカがアレクに話があるみたいだから、二人で部屋にいます」
ルベルトスの問いに、暁斗がいち早く口を開いた。
普段なら、皇子との会話を自分から進んでするなどしない。
けれど、ルベルトスに関しては譲れなかった。
「二人!!?」
暁斗の答えに、ルベルトスが目をむく。
その様子を見て、暁斗の機嫌が急降下していく。
「そうですけど。何か問題?」
「当たり前だ! だ、男女が、二人で部屋に籠もるなど……ぃてっ!」
ムッとした暁斗の言葉に、ルベルトスは叫び返す。が、その途中でリヒトーフェンに拳骨を喰らっていた。
「申し訳ありません、勇者様。……あの少女の怪我は、治ったのでしょうか?」
「そ、そうだ! それで様子を見ようと思って……!」
リヒトーフェンの言葉に被せてくるルベルトスに、最初からそう言え、と暁斗は思いつつ、ユーリに視線を向ける。
「治したのは、僕じゃなくてタイキさんじゃないですか」
ユーリは視線を受けて苦笑しつつも、説明は自分の責任だと思ったのか、ルベルトスに向き直った。
「一番ひどかった左腕は、経過を見る必要がありますね。全く動かせなかったのが動くようにはなりましたが、違和感があると言っていました。数日は様子を見ようと思っています」
「そ、そうか」
ルベルトスは頷いて、わざとらしくオホンと咳をする。
「ぜひ彼女を見舞いたいのだが……」
「今はダメ。二人の邪魔しないで」
暁斗の返答は、にべもない。
「リィカの事をどう思おうと自由だけど、でも二人の間に割り込まないで。リィカの側にいるのは、アレクじゃなきゃ認めないから」
ルベルトスが明らかに鼻白んだ。
暁斗は、そのままルベルトスを無視して通り過ぎようと思ったが、それより早くリヒトーフェンが口を開いた。
「本当に、重ね重ね申し訳ありません。落ち着きましたら、今後の予定を決めたいのです。トラヴィス殿も交えて、皆様方六名と話をしたい。都合を合わせますので、ご連絡頂けると有り難く存じます」
丁寧に頭を下げる。
そして、ルベルトスを軽く睨んだ。
「では殿下。行きましょう」
「……………………………ああ」
非常に不満そうな顔だったが、ルベルトスは逆らうことなく、リヒトーフェンと一緒に去っていった。
それを見送った暁斗は、無言のまま、与えられた部屋……隣の部屋だが、そこに入っていく。
泰基が後に続き、何となくバルとユーリも後に続いて入っていく。
「バルとユーリは、別の部屋じゃん。なんで来るの?」
暁斗が入ってきた二人に、不思議そうに問いかける。
部屋は、リィカが一人部屋。その両脇に、暁斗と泰基の二人部屋、アレク・バル・ユーリの三人部屋がある。
配置だけ見るとリィカがVIP扱いだ。
実際の所、砦にいるのが男だけ、という事実があり、リィカの扱いに悩んだルバドール帝国側に提案して、そういう部屋の配置にさせてもらった、という経緯がある。
「なんでと言われても、何となく、としか言えませんが……」
暁斗に問われて、ユーリも不思議そうに答える。
だが、バルは暁斗を窺うように見ていた。
「アキトは、それでいいんだな?」
「それ?」
バルの問いの意味が分からず、暁斗は聞き返す。
「アキトだって、リィカのことが好きなんだろ。だが、二人の間には割り込まない。それでいいんだな、と聞いてんだ」
「…………………………え……」
暁斗の顔が一瞬で真っ赤になった。
とんでもないことを、言われた。
「な、んで……すき……って……」
「そこかよ。見りゃ分かんだろ」
バルがツッコむ。
余計に混乱する暁斗の耳に、呆れた父の言葉が飛び込んできた。
「だから、気付いてないのは天然鈍感娘くらいだと教えてやっただろ。他の皆は気付くくらい、お前の態度はあからさまだったぞ」
「あ……え……」
何も言葉が出てこない。
リィカのことが好きだと自覚して、飛び出した時。
父が追い掛けてきたことも、父に気持ちがバレていたことも驚いて恥ずかしくて混乱した。
そう言われれば、他の皆も気付いてるという話もしていた気がするが、あまりの混乱ぶりに、記憶がどこかに飛んでいた。
「……あ、の、アレクにも、気付かれてる……?」
「そりゃそうだ」
「むしろ、気付かれてないと思っていた事に驚きです」
おそるおそる聞いた暁斗の質問に、容赦ないくらいズバッとバルとユーリに返されて、暁斗は泣きたくなった。
「……どうしよう」
「だから、今さらだ。そんな分かりきった事実を、今頃になって悩むな」
「……分かりきった事実なの……?」
父の言葉に、ますます暁斗は泣きたくなった。
このまま逃げ出したいくらいの気持ちになって、実行しようかと本気で思いかけたとき。
――コンコン
ノックがされて、入ってきたのはアレクだった。
「――なぜ、バルもユーリもこっちの部屋にいるんだ?」
開口一番の疑問は、暁斗の最初の疑問とよく似ていた。
それで、暁斗も思い出す。
「そういえば、結局なんでこっちに来たの?」
問えば、バルが大きなため息をついた。
「……何でもねぇよ。何となくだ。――リィカはどうした?」
前半は暁斗に言って、後半はアレクに問いかけたバルに、アレクは不思議そうにしながらも、答えた。
「寝たよ。それで部屋に行こうかと思ったら、気配がこっちに集まっていたから、来たんだが」
「――あ、そうだ。アレク。あの皇子殿下と大将って人から、話があったんだ」
「話?」
暁斗がそれを口にすれば、アレクは訝しげに顔をしかめた。
けれど、何も言わずに踵を返して歩き出す。
その様子を、泰基は気遣わしげに、バルとユーリは困惑した様子で見ていたのだが、暁斗は気付かなかった。
「勇者殿!」
歩く四人の前から姿を現したのは、ルベルトスだった。
その後ろにリヒトーフェン、そしてトラヴィスがいる。
一行を見て、ルベルトスが僅かに目を細める。
「あとの……アルカトルの王子と、あの少女は?」
「リィカがアレクに話があるみたいだから、二人で部屋にいます」
ルベルトスの問いに、暁斗がいち早く口を開いた。
普段なら、皇子との会話を自分から進んでするなどしない。
けれど、ルベルトスに関しては譲れなかった。
「二人!!?」
暁斗の答えに、ルベルトスが目をむく。
その様子を見て、暁斗の機嫌が急降下していく。
「そうですけど。何か問題?」
「当たり前だ! だ、男女が、二人で部屋に籠もるなど……ぃてっ!」
ムッとした暁斗の言葉に、ルベルトスは叫び返す。が、その途中でリヒトーフェンに拳骨を喰らっていた。
「申し訳ありません、勇者様。……あの少女の怪我は、治ったのでしょうか?」
「そ、そうだ! それで様子を見ようと思って……!」
リヒトーフェンの言葉に被せてくるルベルトスに、最初からそう言え、と暁斗は思いつつ、ユーリに視線を向ける。
「治したのは、僕じゃなくてタイキさんじゃないですか」
ユーリは視線を受けて苦笑しつつも、説明は自分の責任だと思ったのか、ルベルトスに向き直った。
「一番ひどかった左腕は、経過を見る必要がありますね。全く動かせなかったのが動くようにはなりましたが、違和感があると言っていました。数日は様子を見ようと思っています」
「そ、そうか」
ルベルトスは頷いて、わざとらしくオホンと咳をする。
「ぜひ彼女を見舞いたいのだが……」
「今はダメ。二人の邪魔しないで」
暁斗の返答は、にべもない。
「リィカの事をどう思おうと自由だけど、でも二人の間に割り込まないで。リィカの側にいるのは、アレクじゃなきゃ認めないから」
ルベルトスが明らかに鼻白んだ。
暁斗は、そのままルベルトスを無視して通り過ぎようと思ったが、それより早くリヒトーフェンが口を開いた。
「本当に、重ね重ね申し訳ありません。落ち着きましたら、今後の予定を決めたいのです。トラヴィス殿も交えて、皆様方六名と話をしたい。都合を合わせますので、ご連絡頂けると有り難く存じます」
丁寧に頭を下げる。
そして、ルベルトスを軽く睨んだ。
「では殿下。行きましょう」
「……………………………ああ」
非常に不満そうな顔だったが、ルベルトスは逆らうことなく、リヒトーフェンと一緒に去っていった。
それを見送った暁斗は、無言のまま、与えられた部屋……隣の部屋だが、そこに入っていく。
泰基が後に続き、何となくバルとユーリも後に続いて入っていく。
「バルとユーリは、別の部屋じゃん。なんで来るの?」
暁斗が入ってきた二人に、不思議そうに問いかける。
部屋は、リィカが一人部屋。その両脇に、暁斗と泰基の二人部屋、アレク・バル・ユーリの三人部屋がある。
配置だけ見るとリィカがVIP扱いだ。
実際の所、砦にいるのが男だけ、という事実があり、リィカの扱いに悩んだルバドール帝国側に提案して、そういう部屋の配置にさせてもらった、という経緯がある。
「なんでと言われても、何となく、としか言えませんが……」
暁斗に問われて、ユーリも不思議そうに答える。
だが、バルは暁斗を窺うように見ていた。
「アキトは、それでいいんだな?」
「それ?」
バルの問いの意味が分からず、暁斗は聞き返す。
「アキトだって、リィカのことが好きなんだろ。だが、二人の間には割り込まない。それでいいんだな、と聞いてんだ」
「…………………………え……」
暁斗の顔が一瞬で真っ赤になった。
とんでもないことを、言われた。
「な、んで……すき……って……」
「そこかよ。見りゃ分かんだろ」
バルがツッコむ。
余計に混乱する暁斗の耳に、呆れた父の言葉が飛び込んできた。
「だから、気付いてないのは天然鈍感娘くらいだと教えてやっただろ。他の皆は気付くくらい、お前の態度はあからさまだったぞ」
「あ……え……」
何も言葉が出てこない。
リィカのことが好きだと自覚して、飛び出した時。
父が追い掛けてきたことも、父に気持ちがバレていたことも驚いて恥ずかしくて混乱した。
そう言われれば、他の皆も気付いてるという話もしていた気がするが、あまりの混乱ぶりに、記憶がどこかに飛んでいた。
「……あ、の、アレクにも、気付かれてる……?」
「そりゃそうだ」
「むしろ、気付かれてないと思っていた事に驚きです」
おそるおそる聞いた暁斗の質問に、容赦ないくらいズバッとバルとユーリに返されて、暁斗は泣きたくなった。
「……どうしよう」
「だから、今さらだ。そんな分かりきった事実を、今頃になって悩むな」
「……分かりきった事実なの……?」
父の言葉に、ますます暁斗は泣きたくなった。
このまま逃げ出したいくらいの気持ちになって、実行しようかと本気で思いかけたとき。
――コンコン
ノックがされて、入ってきたのはアレクだった。
「――なぜ、バルもユーリもこっちの部屋にいるんだ?」
開口一番の疑問は、暁斗の最初の疑問とよく似ていた。
それで、暁斗も思い出す。
「そういえば、結局なんでこっちに来たの?」
問えば、バルが大きなため息をついた。
「……何でもねぇよ。何となくだ。――リィカはどうした?」
前半は暁斗に言って、後半はアレクに問いかけたバルに、アレクは不思議そうにしながらも、答えた。
「寝たよ。それで部屋に行こうかと思ったら、気配がこっちに集まっていたから、来たんだが」
「――あ、そうだ。アレク。あの皇子殿下と大将って人から、話があったんだ」
「話?」
暁斗がそれを口にすれば、アレクは訝しげに顔をしかめた。
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