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第十三章 魔国への道
アレク、バルVSヤクシャ、ヤクシニー①
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結界に閉じ込められたアレクとバルは、舌打ちの一つもしたかった。
二対二の戦いで、普通に結界が発動されるとは思わなかった。
「この結界、一対一じゃねぇのかよ」
実際に口に出したバルと、出さずとも苦々しい顔を隠そうともしないアレクに、ヤクシャもヤクシニーも面白そうに笑った。
「まあ、普通はそうだな」
「色々と試してね、二対二で発動できるようになったの。大変だったのよ?」
バルが今度ははっきり舌打ちした。
発動できない、と油断したのが悪いと言えば確かにそうだが、元々一対一で戦うための結界であったはずなのだから、発動できないと思うのが普通だろう。
「あんたたち、格闘技で戦うのか」
今度はアレクが口を開く。
ヤクシャとヤクシニーの構え。それは初めて出会って戦った魔族、ポールとパールの構えとそっくりだ。
「アホか。戦う前に何でそんなこと教えなきゃならん……と思ったが、構え見りゃ分かるか。その通りだ」
「あんたたち、確かポールやパールとも戦ってるんだっけ? あいつら、私たちの真似してたからね、何となく似てるでしょ。その割に、連携に関しては全く興味なかったようだけど」
「あいつら、戦闘狂だからなぁ。一対一はつまらん、大勢を相手にするから楽しいんだ、とか言ってた、危ない奴らだった」
「ボコボコにしてやるから、まとめてかかってこい、なんて啖呵を切ってたわねぇ」
あの二人の思い出話はどうでもいいが、いともあっさり認められて、アレクの警戒感が増していく。
戦闘スタイルについて、こんなにも真っ正直に答えが返ってくるとは思わなかった。
「真似」と言った。つまりは、こちらの二人が本家本元だ。四天王となど呼ばれている事からも、ポールとパールよりもずっと実力は上だろう。
「なるほど分かった。……もう話すことは何もない。さっさと始めよう」
「まあまあ、そう慌てるな。二対二で戦う場合の、勝利条件を教えておく」
アレクの言葉に対して、ヤクシャが真面目に切り出した。
「これはあくまで、二人でチームを組んでの戦いだ。だから、一人が負けてももう一人が勝てば、そのチームの勝利。どちらかのチームが二人とも死ぬか降参したら、結界は壊れる」
その解説に、アレクとバルは一瞬目を合わせる。つまりは、二人とも倒れない限り負けはないし、二人とも倒さなければ勝ちはない。
その内容が嘘とは思わない。結界が生成されるまではともかく、結界の中での戦いはいつでも平等だった。
だから、その勝利条件も信じて問題ないだろう。
「足を引っ張るなよ、バル」
「それはこっちのセリフだな、アレク」
軽口を叩く。
それで少し緊張がほぐれたような気がした。
「理解したな? んじゃあ、行くぜ」
ヤクシャがそう言った途端、ヤクシャの姿はアレクのすぐ目の前にあった。
「んなっ!?」
「はやいっ……!?」
そして、ヤクシニーの姿も、バルのすぐ目の前だった。それぞれに拳が放たれて、バルとアレクが同時に躱した……。
「…………!?」
「…………!」
二人の背中が、トンとぶつかった。たいした衝撃ではない。怪我をするようなものじゃない。
だが、距離が近い。もう少し距離を離さないと、腕がぶつかって剣が振りにくい。
お互いにそれを悟り、離れようとするが……。
「させっかよ!」
「させないわよ!」
ヤクシャとヤクシニーの拳が再度振るわれ、失敗に終わった。
文字通りに背中が触れあっている状態のアレクとバルは、忌々しそうに正面にいるヤクシャやヤクシニーを睨み付ける。
それで相手がどうにかなるはずもない。再び一足飛びに拳が振るわれた。
「ちっ」
アレクは舌打ちした。
反射的に剣を振るって……肘がぶつかって動きが鈍る。同時に、背中にぶつかった衝撃は、バルの肘か。
剣を振るのは諦めて、腕で防御する。だが続けて、連続で拳が振るわれる。
(防御は、無理だ!)
とっさに判断して、アレクは横に避ける。
だが……。
「ぐあっ!?」
「バルっ!」
ヤクシニーの拳は、そのままバルの背中を攻撃した。
簡単な事だ。
アレクとバルは背中合わせになっていたのだから、アレクが避けてしまえば、攻撃はバルに命中してしまう。
「くそっ……!」
アレクは毒づいて、ヤクシャに向かって剣を振るう。簡単に避けられるが、ヤクシャとバルの間に入り込むことには成功した。
だが、それは結局また、バルと背中合わせになった事を意味する。
幸いなのは、少し間を開けられた、ということだろうか。これで、何とか剣を振れる。
「あーあ、お仲間さん、可哀相にな。あんたが避けたせいで、背中から攻撃食らっちゃったんだぜ?」
「あなたも避けていいわよ? お仲間の背中が攻撃されてもいいならね」
ヤクシャとヤクシニーに嘲笑混じりに言われるが、わざわざ真面目に取り合う必要はない。後ろの仲間に声を掛ける。
「バル、平気か? 悪い」
「気にすんな、大丈夫だ」
状況は悪い。
自分たちは目の前にいる敵しか見えない。けれど、相手は敵も味方もその視界に入れられる。動きを合わせて連携することができるのは、敵側だけだ。
(どうやって、この状況を打開する?)
アレクの額に、汗が流れた。
二対二の戦いで、普通に結界が発動されるとは思わなかった。
「この結界、一対一じゃねぇのかよ」
実際に口に出したバルと、出さずとも苦々しい顔を隠そうともしないアレクに、ヤクシャもヤクシニーも面白そうに笑った。
「まあ、普通はそうだな」
「色々と試してね、二対二で発動できるようになったの。大変だったのよ?」
バルが今度ははっきり舌打ちした。
発動できない、と油断したのが悪いと言えば確かにそうだが、元々一対一で戦うための結界であったはずなのだから、発動できないと思うのが普通だろう。
「あんたたち、格闘技で戦うのか」
今度はアレクが口を開く。
ヤクシャとヤクシニーの構え。それは初めて出会って戦った魔族、ポールとパールの構えとそっくりだ。
「アホか。戦う前に何でそんなこと教えなきゃならん……と思ったが、構え見りゃ分かるか。その通りだ」
「あんたたち、確かポールやパールとも戦ってるんだっけ? あいつら、私たちの真似してたからね、何となく似てるでしょ。その割に、連携に関しては全く興味なかったようだけど」
「あいつら、戦闘狂だからなぁ。一対一はつまらん、大勢を相手にするから楽しいんだ、とか言ってた、危ない奴らだった」
「ボコボコにしてやるから、まとめてかかってこい、なんて啖呵を切ってたわねぇ」
あの二人の思い出話はどうでもいいが、いともあっさり認められて、アレクの警戒感が増していく。
戦闘スタイルについて、こんなにも真っ正直に答えが返ってくるとは思わなかった。
「真似」と言った。つまりは、こちらの二人が本家本元だ。四天王となど呼ばれている事からも、ポールとパールよりもずっと実力は上だろう。
「なるほど分かった。……もう話すことは何もない。さっさと始めよう」
「まあまあ、そう慌てるな。二対二で戦う場合の、勝利条件を教えておく」
アレクの言葉に対して、ヤクシャが真面目に切り出した。
「これはあくまで、二人でチームを組んでの戦いだ。だから、一人が負けてももう一人が勝てば、そのチームの勝利。どちらかのチームが二人とも死ぬか降参したら、結界は壊れる」
その解説に、アレクとバルは一瞬目を合わせる。つまりは、二人とも倒れない限り負けはないし、二人とも倒さなければ勝ちはない。
その内容が嘘とは思わない。結界が生成されるまではともかく、結界の中での戦いはいつでも平等だった。
だから、その勝利条件も信じて問題ないだろう。
「足を引っ張るなよ、バル」
「それはこっちのセリフだな、アレク」
軽口を叩く。
それで少し緊張がほぐれたような気がした。
「理解したな? んじゃあ、行くぜ」
ヤクシャがそう言った途端、ヤクシャの姿はアレクのすぐ目の前にあった。
「んなっ!?」
「はやいっ……!?」
そして、ヤクシニーの姿も、バルのすぐ目の前だった。それぞれに拳が放たれて、バルとアレクが同時に躱した……。
「…………!?」
「…………!」
二人の背中が、トンとぶつかった。たいした衝撃ではない。怪我をするようなものじゃない。
だが、距離が近い。もう少し距離を離さないと、腕がぶつかって剣が振りにくい。
お互いにそれを悟り、離れようとするが……。
「させっかよ!」
「させないわよ!」
ヤクシャとヤクシニーの拳が再度振るわれ、失敗に終わった。
文字通りに背中が触れあっている状態のアレクとバルは、忌々しそうに正面にいるヤクシャやヤクシニーを睨み付ける。
それで相手がどうにかなるはずもない。再び一足飛びに拳が振るわれた。
「ちっ」
アレクは舌打ちした。
反射的に剣を振るって……肘がぶつかって動きが鈍る。同時に、背中にぶつかった衝撃は、バルの肘か。
剣を振るのは諦めて、腕で防御する。だが続けて、連続で拳が振るわれる。
(防御は、無理だ!)
とっさに判断して、アレクは横に避ける。
だが……。
「ぐあっ!?」
「バルっ!」
ヤクシニーの拳は、そのままバルの背中を攻撃した。
簡単な事だ。
アレクとバルは背中合わせになっていたのだから、アレクが避けてしまえば、攻撃はバルに命中してしまう。
「くそっ……!」
アレクは毒づいて、ヤクシャに向かって剣を振るう。簡単に避けられるが、ヤクシャとバルの間に入り込むことには成功した。
だが、それは結局また、バルと背中合わせになった事を意味する。
幸いなのは、少し間を開けられた、ということだろうか。これで、何とか剣を振れる。
「あーあ、お仲間さん、可哀相にな。あんたが避けたせいで、背中から攻撃食らっちゃったんだぜ?」
「あなたも避けていいわよ? お仲間の背中が攻撃されてもいいならね」
ヤクシャとヤクシニーに嘲笑混じりに言われるが、わざわざ真面目に取り合う必要はない。後ろの仲間に声を掛ける。
「バル、平気か? 悪い」
「気にすんな、大丈夫だ」
状況は悪い。
自分たちは目の前にいる敵しか見えない。けれど、相手は敵も味方もその視界に入れられる。動きを合わせて連携することができるのは、敵側だけだ。
(どうやって、この状況を打開する?)
アレクの額に、汗が流れた。
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