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第十九章 婚約者として過ごす日々
長期休暇初日
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「良く来たね、リィカ嬢」
「今日からお世話になります」
長期休暇一日目。
王宮を訪れたリィカは、アークバルトに挨拶をしていた。
この長期休暇の間、リィカは王宮に泊まって生活をしていくことになる。レーナニアからあった"慣れるため"というのもあるが、それだけではない。
第二王子の婚約者となったからには、色々知っておかなければならないこと、学ばなければならないことがある。ましてやリィカは元平民だから、知らないことも多い。その勉強のためのお泊まりでもある。
そう聞かされて、テストから解放されたと思ったら、また勉強漬けの毎日になるのかと少しウンザリしつつ、頑張ろうと気合いを入れてきた。
本来なら国王にしなければならない挨拶は、忙しいからとアークバルトになったが、気になるのは後ろに控えているもう一人の人物である。初めましてのはずだ多分、と思うが誰なのか。
リィカの視線に気付いて、アークバルトが苦笑した。
「悪いね。どうしても彼が君に顔を通しておきたいと言うものだから、同席させた。コーマック・フォン・ライアン伯爵。魔法師団の副師団長だ」
「お初にお目にかかります、リィカ嬢」
右手を左胸に当てて頭を下げる男性を見る。まだ若い。とは言っても、自分たちよりは年上だろうが。
(この人が、ライアン伯爵)
名前は何度も聞いた。魔法師団の副師団長。そして、かつて建国王であるアベルと共に旅をした仲間の、子孫。
「リィカ・フォン・ベネットと申します。お目にかかれて光栄です、ライアン伯爵閣下」
挨拶を返しながら、魔力を探る。ユーリがかつて「魔力はまあ多い方」と言っていたが、確かにそんな印象を受ける。
「こちらこそ、お会いできて嬉しく思います。何かしらの事情があるとは伺っておりますが、魔法師団への指南の件、前向きにご検討頂けるとありがたく存じます」
「ライアン伯爵、その事情は、リィカ嬢自身にも現時点ではどうすることもできないことだ。その件がどうにかなれば、引き受けてくれるそうだから、もう少し待て」
答えたのはリィカではなく、アークバルトである。リィカとしては、答えてくれて助かったというところだ。だが、ライアンは不満そうだった。
「その事情とやらを、教えては頂けないのですか?」
「ああ」
「……レイズクルス師団長は知っているということは」
「お前以上に教えるわけにはいかないから、安心しろ」
「……そう致します」
複雑そうにしながらも頷いたライアンは、リィカに頭を下げて出て行った。それを何となく見送る。何というか、魔法師団の確執のようなものを、垣間見てしまった気分だ。
「全く。何かを話すなら、レイズクルスよりライアンの方が信頼できるというのに。よほど、頭を押さえ込まれているんだろうね」
アークバルトが苦笑しながら、リィカに話しかける。
「まあでも、国としても魔法師団の実力向上は喫緊の課題だからね。なるべく早いうちに、指南に入って欲しい、というのは私たちの本音でもある。――ということで、リィカ嬢、まずはそちらの目処をたててくれ」
「……え? あの、勉強じゃないんですか……?」
そう言われていたのだ。頑張ってやるぞと思ってきたのだが。
「勉強は後からでもできるからね。慌てなくても、現時点でリィカ嬢は基本的なことはできている。まだまだ勇者一行の名前は強いから、当分はそれでどうとでもなるよ。魔封じの方が優先だ」
「……はい、分かりました」
複雑な気持ちでリィカは頷いた。勉強漬けの毎日を送りたいわけではないが、せっかくの気合いが空回りした気分だった。
「今日からお世話になります」
長期休暇一日目。
王宮を訪れたリィカは、アークバルトに挨拶をしていた。
この長期休暇の間、リィカは王宮に泊まって生活をしていくことになる。レーナニアからあった"慣れるため"というのもあるが、それだけではない。
第二王子の婚約者となったからには、色々知っておかなければならないこと、学ばなければならないことがある。ましてやリィカは元平民だから、知らないことも多い。その勉強のためのお泊まりでもある。
そう聞かされて、テストから解放されたと思ったら、また勉強漬けの毎日になるのかと少しウンザリしつつ、頑張ろうと気合いを入れてきた。
本来なら国王にしなければならない挨拶は、忙しいからとアークバルトになったが、気になるのは後ろに控えているもう一人の人物である。初めましてのはずだ多分、と思うが誰なのか。
リィカの視線に気付いて、アークバルトが苦笑した。
「悪いね。どうしても彼が君に顔を通しておきたいと言うものだから、同席させた。コーマック・フォン・ライアン伯爵。魔法師団の副師団長だ」
「お初にお目にかかります、リィカ嬢」
右手を左胸に当てて頭を下げる男性を見る。まだ若い。とは言っても、自分たちよりは年上だろうが。
(この人が、ライアン伯爵)
名前は何度も聞いた。魔法師団の副師団長。そして、かつて建国王であるアベルと共に旅をした仲間の、子孫。
「リィカ・フォン・ベネットと申します。お目にかかれて光栄です、ライアン伯爵閣下」
挨拶を返しながら、魔力を探る。ユーリがかつて「魔力はまあ多い方」と言っていたが、確かにそんな印象を受ける。
「こちらこそ、お会いできて嬉しく思います。何かしらの事情があるとは伺っておりますが、魔法師団への指南の件、前向きにご検討頂けるとありがたく存じます」
「ライアン伯爵、その事情は、リィカ嬢自身にも現時点ではどうすることもできないことだ。その件がどうにかなれば、引き受けてくれるそうだから、もう少し待て」
答えたのはリィカではなく、アークバルトである。リィカとしては、答えてくれて助かったというところだ。だが、ライアンは不満そうだった。
「その事情とやらを、教えては頂けないのですか?」
「ああ」
「……レイズクルス師団長は知っているということは」
「お前以上に教えるわけにはいかないから、安心しろ」
「……そう致します」
複雑そうにしながらも頷いたライアンは、リィカに頭を下げて出て行った。それを何となく見送る。何というか、魔法師団の確執のようなものを、垣間見てしまった気分だ。
「全く。何かを話すなら、レイズクルスよりライアンの方が信頼できるというのに。よほど、頭を押さえ込まれているんだろうね」
アークバルトが苦笑しながら、リィカに話しかける。
「まあでも、国としても魔法師団の実力向上は喫緊の課題だからね。なるべく早いうちに、指南に入って欲しい、というのは私たちの本音でもある。――ということで、リィカ嬢、まずはそちらの目処をたててくれ」
「……え? あの、勉強じゃないんですか……?」
そう言われていたのだ。頑張ってやるぞと思ってきたのだが。
「勉強は後からでもできるからね。慌てなくても、現時点でリィカ嬢は基本的なことはできている。まだまだ勇者一行の名前は強いから、当分はそれでどうとでもなるよ。魔封じの方が優先だ」
「……はい、分かりました」
複雑な気持ちでリィカは頷いた。勉強漬けの毎日を送りたいわけではないが、せっかくの気合いが空回りした気分だった。
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