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23.ダンジョンが消えて
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二日連続の更新です。
前話でダンジョン編は終了です。
これからは、妹との決着だったり、ハインリヒとの関係だったりがメインの話になります。
ーーーーーーーーーーー
ハインリヒ様が無事にダンジョンの核を壊して帰還した。
その事実が嬉しくて嬉しくて、つい抱き付いて、抱き締められている事に気付いて顔が熱くなった。
慌てふためいて離れようとして……気付いたのは血の匂い。
「ハインリヒ様! 怪我は!?」
「……あ、やば」
ハインリヒ様の服には血がべったりとついていた。
目を見開いた。
「どこ!? 怪我はどこ!?」
「待ってくれ、怪我はどこもしてない。これは魔獣の返り血だ。倒すときに首を落としたから。それより、マレンの服も……」
怪我はないという言葉に半信半疑だったが、最後の言葉に疑問が浮かんだ。
そして、ハッとなって自分の服を見下ろす。
そりゃあ、抱き付いて抱き締められればこうなるよね、と言うしかない。血がべったりついていた。
ちなみに、今着ている服は学校の制服である。
「……うわぁ、どうしよう。血って落ちにくいのに」
「諦めて新しいのを買おうぜ。俺はもう洗うのは諦めた」
「……お前らな。貴族は、洗うなんていう考えには、なかなか行き着かないものだぞ」
突如、私とハインリヒ様以外の声が割り込んできた。
そちらに目を向ければ、いたのはシルベスト殿下。そしてもう一人は剣術科の生徒だったはずだ。
すっかり存在を忘れていた、と思って、慌てて話しかけた。
「で、殿下もダンジョンに乗り込んでいらっしゃったのですね」
何とか笑顔を作って言ったけど、殿下は何だか皮肉げな笑みを浮かべた。
「ようやく我々のことを認識してくれて、結構なことだ。ハインのことしか眼中にないのは我が国の将来としては結構なことだが、この状況で怪我の有無も聞かないのは、回復術士としてはどうなんだ?」
「も、申し訳ありません!」
表情と同じく嫌みっぽく言われたけど、内容は全くもってその通りなので、何も言い返せない。
「そ、それで、殿下、お怪我はございませんか?」
「かすり傷程度だ。治療は不要」
「――あ、は、はい」
不機嫌に言い放たれて、反射的に頷く。
そしてもう一人に視線を向ける。
名前を呼びかけようとして……知らない事に気付く。
「あ、あの、私はマレンと申します。メクレンブルク伯爵家の長女です。お怪我はございませんか?」
「は、はい。ありません。かすり傷程度です。――僕はミルコと申します。父は騎士の称号を頂いておりますが、僕自身は平民ですので、その、敬語で話して頂く必要はありません」
ここが辺境だったら「いやいやそんなことは」とか言い出してた。
関係はよく分からないけど、ハインリヒ様がダンジョンに乗り込むのに一緒に連れて行ったんだから、それなりに強さはあるはずだ。
十分に敬語で話す理由はあるんだけど、ここが王都である以上、貴族のマナーに従うべきだろう。
「分かったわ。じゃあ、そうさせてもらうわね」
頷いた。
かすり傷程度という自己申告だけど、問題なく立っているし、信じて問題ないだろう。
校庭で戦っていた四人を見る。
へたり込んでいるけど、私が見ている事に気付くと軽く手を振ってきた。
戦っている様子をずっと見ていたわけだし、治療を必要とする怪我はないはずだ。
「シルベスト殿下、この後はどうなさいますか?」
「ああ。ダンジョンがなくなったことは分かっただろうしな。王城に行って、父に報告しなければな。……その前に、避難している奴らに問題ない事を伝えるのが先か」
その言葉に、学校の最上階を見上げようとして、すぐその必要がないことが分かった。
「シルベスト殿下! ハインリヒ様!」
クラリッサ様が校舎から出てきたからだ。
息が僅かに切れているところを見ると、きっとダンジョンが消えるのを見て、走っておりてきたんだろう。
「クラリッサか。ちょうど良かった。ダンジョンの心配はなくなったと伝えろ。その後の対応は先生方にお任せする。とりあえず全員家に帰すべきとは思うが。我らは王城へ行って報告しに行く」
クラリッサ様からしたら唐突とも思える話じゃないかと思うけど、さすが将来の王妃様だ。
全く動揺することなく頷いた。
「承知致しました。学校内の連絡と今後の方針についてはお任せ下さいませ」
「うむ」
淑女の礼をしたクラリッサ様に、シルベスト殿下は満足そうに頷いた。
「では行くぞ、ハインリヒ。ミルコとマレン嬢もな」
「え、私も行くんですか!?」
「ぼ、僕もでございますか!?」
ハインリヒ様だけだと思っていたのに、名指しされてしまった。ミルコも同じように驚いている。
「お前らが来ないでどうする。行くぞ」
「マレン、行こう。ミルコも」
ハインリヒ様に手を取られた。
何かを疑問に思う間もなく、手を引かれる。
手を繋いでる、という事実に気付くまでに、若干の時間が必要だった。
「は、ハインリヒ様! 手……!」
「……ああ」
そっぽを向いているハインリヒ様の横顔が、赤い。
前に手を繋いだときもこうだったな、と思う。
ハインリヒ様の手は、大きくてゴツゴツしている。
剣を振る、男の人の手だ。
そう考えたら、ちょっとドキドキしてきた。
さっき抱き締められたことも思い出したら、一気に心拍数が上がった。
うわまずいどうしよう。
意識したら、何か急に色々恥ずかしくなってきた。
前話でダンジョン編は終了です。
これからは、妹との決着だったり、ハインリヒとの関係だったりがメインの話になります。
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ハインリヒ様が無事にダンジョンの核を壊して帰還した。
その事実が嬉しくて嬉しくて、つい抱き付いて、抱き締められている事に気付いて顔が熱くなった。
慌てふためいて離れようとして……気付いたのは血の匂い。
「ハインリヒ様! 怪我は!?」
「……あ、やば」
ハインリヒ様の服には血がべったりとついていた。
目を見開いた。
「どこ!? 怪我はどこ!?」
「待ってくれ、怪我はどこもしてない。これは魔獣の返り血だ。倒すときに首を落としたから。それより、マレンの服も……」
怪我はないという言葉に半信半疑だったが、最後の言葉に疑問が浮かんだ。
そして、ハッとなって自分の服を見下ろす。
そりゃあ、抱き付いて抱き締められればこうなるよね、と言うしかない。血がべったりついていた。
ちなみに、今着ている服は学校の制服である。
「……うわぁ、どうしよう。血って落ちにくいのに」
「諦めて新しいのを買おうぜ。俺はもう洗うのは諦めた」
「……お前らな。貴族は、洗うなんていう考えには、なかなか行き着かないものだぞ」
突如、私とハインリヒ様以外の声が割り込んできた。
そちらに目を向ければ、いたのはシルベスト殿下。そしてもう一人は剣術科の生徒だったはずだ。
すっかり存在を忘れていた、と思って、慌てて話しかけた。
「で、殿下もダンジョンに乗り込んでいらっしゃったのですね」
何とか笑顔を作って言ったけど、殿下は何だか皮肉げな笑みを浮かべた。
「ようやく我々のことを認識してくれて、結構なことだ。ハインのことしか眼中にないのは我が国の将来としては結構なことだが、この状況で怪我の有無も聞かないのは、回復術士としてはどうなんだ?」
「も、申し訳ありません!」
表情と同じく嫌みっぽく言われたけど、内容は全くもってその通りなので、何も言い返せない。
「そ、それで、殿下、お怪我はございませんか?」
「かすり傷程度だ。治療は不要」
「――あ、は、はい」
不機嫌に言い放たれて、反射的に頷く。
そしてもう一人に視線を向ける。
名前を呼びかけようとして……知らない事に気付く。
「あ、あの、私はマレンと申します。メクレンブルク伯爵家の長女です。お怪我はございませんか?」
「は、はい。ありません。かすり傷程度です。――僕はミルコと申します。父は騎士の称号を頂いておりますが、僕自身は平民ですので、その、敬語で話して頂く必要はありません」
ここが辺境だったら「いやいやそんなことは」とか言い出してた。
関係はよく分からないけど、ハインリヒ様がダンジョンに乗り込むのに一緒に連れて行ったんだから、それなりに強さはあるはずだ。
十分に敬語で話す理由はあるんだけど、ここが王都である以上、貴族のマナーに従うべきだろう。
「分かったわ。じゃあ、そうさせてもらうわね」
頷いた。
かすり傷程度という自己申告だけど、問題なく立っているし、信じて問題ないだろう。
校庭で戦っていた四人を見る。
へたり込んでいるけど、私が見ている事に気付くと軽く手を振ってきた。
戦っている様子をずっと見ていたわけだし、治療を必要とする怪我はないはずだ。
「シルベスト殿下、この後はどうなさいますか?」
「ああ。ダンジョンがなくなったことは分かっただろうしな。王城に行って、父に報告しなければな。……その前に、避難している奴らに問題ない事を伝えるのが先か」
その言葉に、学校の最上階を見上げようとして、すぐその必要がないことが分かった。
「シルベスト殿下! ハインリヒ様!」
クラリッサ様が校舎から出てきたからだ。
息が僅かに切れているところを見ると、きっとダンジョンが消えるのを見て、走っておりてきたんだろう。
「クラリッサか。ちょうど良かった。ダンジョンの心配はなくなったと伝えろ。その後の対応は先生方にお任せする。とりあえず全員家に帰すべきとは思うが。我らは王城へ行って報告しに行く」
クラリッサ様からしたら唐突とも思える話じゃないかと思うけど、さすが将来の王妃様だ。
全く動揺することなく頷いた。
「承知致しました。学校内の連絡と今後の方針についてはお任せ下さいませ」
「うむ」
淑女の礼をしたクラリッサ様に、シルベスト殿下は満足そうに頷いた。
「では行くぞ、ハインリヒ。ミルコとマレン嬢もな」
「え、私も行くんですか!?」
「ぼ、僕もでございますか!?」
ハインリヒ様だけだと思っていたのに、名指しされてしまった。ミルコも同じように驚いている。
「お前らが来ないでどうする。行くぞ」
「マレン、行こう。ミルコも」
ハインリヒ様に手を取られた。
何かを疑問に思う間もなく、手を引かれる。
手を繋いでる、という事実に気付くまでに、若干の時間が必要だった。
「は、ハインリヒ様! 手……!」
「……ああ」
そっぽを向いているハインリヒ様の横顔が、赤い。
前に手を繋いだときもこうだったな、と思う。
ハインリヒ様の手は、大きくてゴツゴツしている。
剣を振る、男の人の手だ。
そう考えたら、ちょっとドキドキしてきた。
さっき抱き締められたことも思い出したら、一気に心拍数が上がった。
うわまずいどうしよう。
意識したら、何か急に色々恥ずかしくなってきた。
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