3 / 7
結婚してと言われ続けたら、意識してしまうんだ
しおりを挟む
「あっ、カーくん、いたー!」
その声に、俺はため息をついた。
「二十も年上の男を君付けするな」
「いいの! カーくんはカーくんだもん!」
俺の言うことなんか気にもしないで、腕に抱き付いてきた女の子。今、十三歳だ。俺の幼なじみの娘なのだが、いつも俺に絡んでくる。
「ということで、カーくん、あたしと結婚しなさい!」
「……またそれか。懲りないな」
「カーくんが頷くまで言い続けるもん!」
「……はぁ」
まだ五歳の頃から、なぜか俺と結婚すると言い始めたこの子は、十三歳になった今でも言い続けている。
正直、いい加減にして欲しいと思う。
俺の幼なじみでありこの子の父親は、世界一と言われる魔法の使い手だ。結婚して娘が産まれたとき、「俺より魔法が強い男じゃないと、娘の相手として認めない」と公言した。アホかこいつは、と思った。
で、アホな幼なじみの娘もアホだった。わずか五歳で、二十も年上の、父親と同年の男に結婚を申し込むんだから、アホで十分だろう。
それを真に受けた幼なじみは、怖かった。五歳の子どもの言うことを本気にするなと思ったが、それ以降、何かというと俺を睨んでくる。恋愛が絡むと友情は簡単に壊れるらしい……と考えて、何か違うよなとため息をつく。
「ねぇカーくん、結婚しようよー」
「子どもが、まだ早い」
「子どもじゃないもん。もう赤ちゃんだって産めるようになったもん。ね?」
「ね、じゃない」
またため息をつきたくなる。こいつは、自分の言っていることを分かっているんだろうか。
「どうやって赤ん坊ができるのか、知ってるのか」
「好き合ってる男の人と女の人のところに、神様が遣わした鳥が飛んできて、赤ちゃんをくれるんでしょ? お母さんから聞いたもん」
「やはりまだ子どもだな」
「なんでよっ!」
そんな子供だましの話を信じている時点で、十分に子どもだ。
全く、と思う。本当にいい加減にして欲しいのだ。結婚しようと言い続けるこの子も、睨んでくる幼なじみも。――何よりも、結婚結婚と言い続けられて、意識してしまっている自分も。
俺は手を伸ばす。背中に手を回して抱きしめた。
「か、かかかかかか、カー、くん?」
「なんでいつも自分から抱き付いてくるくせに、慌ててるんだ?」
「だ、だだだだ、だって……」
俺がこんな行動を起こしたのは初めてだ。だから、慌てるのも分からないではないが、本当に結婚するつもりがあるなら、この程度で動揺されても困る。
「早く大人になれよ。待っててやるから」
「――う、うん、分かった!」
本当はまだ早いと分かってる。この子がもう少し大人になって、それでも俺がいいんだと言うまで、待つべきだと分かってる。
けれど、ただ無邪気なだけだったはずの笑顔に、艶が入り始めたのはいつだったか。その仕草が女性っぽくなり始めたのは、いつからだったか。
まだまだ子どもだ。でももう自分のことを自分で決められる年齢だ。だからもう、俺もごまかして逃げるのは終わりだ。
抱きしめる腕に力を込めれば、緊張してか体が強張ったのが分かったけれど、抵抗する様子はない。耳まで真っ赤になっているのが少し面白くて、可愛い。
このままでもう少し、と思っていたら、影が差した。一体どうやって察しているのか、やはり来た。
「おい、何してるんだ?」
「まずは、その手の上にある、物騒なものを消せ」
この子の父親。俺の幼なじみ。今その手に、一発で国を滅ぼせる威力のある魔法を発動させているこいつを、さてどうしたものかと考えを巡らせるのであった。
ーーーーー
(おまけ)
「お父さん、ジャマっ!」
「じゃ……っ!?」
「カーくん、デートしよー」
「……お、おう。(娘の一言、つよいな……)」
その声に、俺はため息をついた。
「二十も年上の男を君付けするな」
「いいの! カーくんはカーくんだもん!」
俺の言うことなんか気にもしないで、腕に抱き付いてきた女の子。今、十三歳だ。俺の幼なじみの娘なのだが、いつも俺に絡んでくる。
「ということで、カーくん、あたしと結婚しなさい!」
「……またそれか。懲りないな」
「カーくんが頷くまで言い続けるもん!」
「……はぁ」
まだ五歳の頃から、なぜか俺と結婚すると言い始めたこの子は、十三歳になった今でも言い続けている。
正直、いい加減にして欲しいと思う。
俺の幼なじみでありこの子の父親は、世界一と言われる魔法の使い手だ。結婚して娘が産まれたとき、「俺より魔法が強い男じゃないと、娘の相手として認めない」と公言した。アホかこいつは、と思った。
で、アホな幼なじみの娘もアホだった。わずか五歳で、二十も年上の、父親と同年の男に結婚を申し込むんだから、アホで十分だろう。
それを真に受けた幼なじみは、怖かった。五歳の子どもの言うことを本気にするなと思ったが、それ以降、何かというと俺を睨んでくる。恋愛が絡むと友情は簡単に壊れるらしい……と考えて、何か違うよなとため息をつく。
「ねぇカーくん、結婚しようよー」
「子どもが、まだ早い」
「子どもじゃないもん。もう赤ちゃんだって産めるようになったもん。ね?」
「ね、じゃない」
またため息をつきたくなる。こいつは、自分の言っていることを分かっているんだろうか。
「どうやって赤ん坊ができるのか、知ってるのか」
「好き合ってる男の人と女の人のところに、神様が遣わした鳥が飛んできて、赤ちゃんをくれるんでしょ? お母さんから聞いたもん」
「やはりまだ子どもだな」
「なんでよっ!」
そんな子供だましの話を信じている時点で、十分に子どもだ。
全く、と思う。本当にいい加減にして欲しいのだ。結婚しようと言い続けるこの子も、睨んでくる幼なじみも。――何よりも、結婚結婚と言い続けられて、意識してしまっている自分も。
俺は手を伸ばす。背中に手を回して抱きしめた。
「か、かかかかかか、カー、くん?」
「なんでいつも自分から抱き付いてくるくせに、慌ててるんだ?」
「だ、だだだだ、だって……」
俺がこんな行動を起こしたのは初めてだ。だから、慌てるのも分からないではないが、本当に結婚するつもりがあるなら、この程度で動揺されても困る。
「早く大人になれよ。待っててやるから」
「――う、うん、分かった!」
本当はまだ早いと分かってる。この子がもう少し大人になって、それでも俺がいいんだと言うまで、待つべきだと分かってる。
けれど、ただ無邪気なだけだったはずの笑顔に、艶が入り始めたのはいつだったか。その仕草が女性っぽくなり始めたのは、いつからだったか。
まだまだ子どもだ。でももう自分のことを自分で決められる年齢だ。だからもう、俺もごまかして逃げるのは終わりだ。
抱きしめる腕に力を込めれば、緊張してか体が強張ったのが分かったけれど、抵抗する様子はない。耳まで真っ赤になっているのが少し面白くて、可愛い。
このままでもう少し、と思っていたら、影が差した。一体どうやって察しているのか、やはり来た。
「おい、何してるんだ?」
「まずは、その手の上にある、物騒なものを消せ」
この子の父親。俺の幼なじみ。今その手に、一発で国を滅ぼせる威力のある魔法を発動させているこいつを、さてどうしたものかと考えを巡らせるのであった。
ーーーーー
(おまけ)
「お父さん、ジャマっ!」
「じゃ……っ!?」
「カーくん、デートしよー」
「……お、おう。(娘の一言、つよいな……)」
3
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ダメンズな彼から離れようとしたら、なんか執着されたお話
下菊みこと
恋愛
ソフトヤンデレに捕まるお話。
あるいはダメンズが努力の末スパダリになるお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる