平等

鶴野オト

文字の大きさ
1 / 1

平等

しおりを挟む
この世は不公平だ。
ガタンガタンと電車が揺れる。
悲鳴にも近い女子の話し声が聞こえる。
同じクラスの女子達だ。
ボソボソと聞こえてくる声はクラスの端でいつも話してる男子集団だ。
最悪だ、何故こんなに知り合いが乗っているのだ。
まあ、学校帰りだから当然と言えば当然か。
騒ぐ女子に話す男子、そして俺は一人、スマホを見つめている。
特に何をやっているわけでもない。
ただ意味もなくSNSを眺めているだけである。
何か話が盛り上がったのか、男子達が少し大きな声をあげる。
女子達は嫌そうな顔をして男子達を見ている。
先程まで自分達が騒いでいた記憶は消えてしまったのだろうか。
もう、最悪だ。
この世は、不公平だ。
俺はため息をついた。
もちろん、誰にも聞かれないようにとても小さな音で。

『それ』は突然現れた。
何の予兆もなかった。
車両の端からピチャンという水音が響いた。
たまたま車両が静かな時だったので、皆がそちらに目を向けた。
落ちた白い水滴はみるみるうちに膨らんで、人型の怪物へと変貌した。
真っ白な体躯をしていて顔はのっぺらぼうだったが、ただ口だけは付いていた。
体が白いせいか、異様に赤く見える口を開く。
まるで笑うかのように。

電車の乗客は誰一人として微動だにできなかった。
突然なにか起きた時は叫んだりできないのだと知った。
怪物はカースト中位の男子達の中で、最も近くにいた者の肩を引き寄せる。
そしてぱっくりと開いた赤い口で頭を、食べた。
見事に頭のみが外れた「さっきまで人だった者」はバタリと音を立てて倒れる。
ようやく皆は状況を理解し、叫び声を上げながら怪物から離れるように逃げる。
別の車両へ移ろうとしたが、ここは端の車両であった。
乗客は皆一様にビックリした顔のまま怪物の方を振り返る。
怪物は静かにゆっくりと一歩一歩我々の方へ進んできていた。
そして、驚きすぎて力が入らない様子だったカースト上位の女子の頭を、食べた。
そして再び乗客へと歩いてきた。
まるで何かの仕事をしているかのような、何の感情も感じられない歩き方だ。

俺はこの状況で意外なことにも冷静であった。
徐々に近づいてくる怪物と、増えていく遺体をじっくりと眺めていた。
怪物は選り好みをせず、自分に近いものから順番にただただ食べていった。

『もしかして、これこそが平等なのではないか?』

俺の頭をチラリと掠めたその考えはぶくぶくと広がり、それに違いないと確信した。
この世は不公平だ。
見かけがいいもの、話が面白いもの、身長が高いもの、声が大きいもの…そんな奴らだけが得をして、なぜか普通にしているだけの俺ばかりが損をしている。
しかしどうだ?この怪物は全ての乗客を平等に扱っているのではないか?
俺は無性に嬉しくなって笑顔になった。

怪物はもうほとんど俺の前まで来ている。

いや、怪物ではなく、これは神なのかもしれない。
俺の後ろにいた誰かに背中を押されて俺は奴の前に出る。
俺は笑顔のまま、神のような奴の顔をウットリと見つめる。
奴はやはり、何の感情も見せずに俺の頭を食べた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...