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番外編①
ある男の話①
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とある男はボロボロになった国を眺めていた。
国を守るために囲むようにある高い塀がこの崩壊した国を眺める一番のスポットというのは皮肉なモノだ。
風が男の髪を揺らして耳をくすぐる。
男の耳はエルフのように尖ってはいなかった。
男は自分の生きてきた人生を振り返っていた。
百五十年という一人の人間が過ごすには長い長い時間だ。
男が過去を振り返ると嫌でも思い出すのは最愛の娘、そして妻の顔だ。
笑顔なんて思い出せない。
男が思い出せるのは引きちぎられるかのように殺された娘の遺体の顔とその横で自殺した妻の遺体の顔だ。
女神の統治どころか、エルフもいなかった時代の話だ。
男はとある組織の幹部、というかナンバーツーだった。
男のいた組織は化け物を倒し、人民の命を守るものであった。
男はあまり正義の心は強く無かったが、その組織の一員として必死に働いていた。
その組織のトップは、行き場をなくした男に居場所を与えてくれたからだ。
なぜ行き場がなかったかはまた今度語るとしよう。
それはさておき、この世界には『能力者』という存在がいる。
ごく稀に生まれてくる人間で、化け物の力の一部を行使できる。
例えば、ゾンビの能力者は超再生能力と毒を操る力を得る。
化け物対策組織としては退治するべきか守るべきか議論になったのち、『討伐対象』であると決められていた。
そして、神の悪戯とでもいうのだろうか男と妻の間に生まれた娘はこの能力者であった。
そのことに妻は気がついていた。
しかし、男には伝えていなかった。
男が仕事とプライベートの間で葛藤することが火を見るよりも明らかだったからだ。
しかし、男は組織の資料の中に自分の娘を発見した。
そして、娘がゾンビの能力者であることを悟り、走って家に帰る。
ただ思い出しているだけなのに、頭が痛い。
その後、男が見た光景が先ほどから頭をチラつく二つの遺体だ。
男は決めた。
自分の所属したいる組織を使い倒してでも化け物を中心とした世界を作る。
人間が化け物を退けるのではなく、化け物が攻めてきたら人間が逃げざるを得ないような世界を作り上げてみせる。
一度は成功しそうであった。
しかし、世界はやはり意地が悪い。
男に力を与えた存在の協力もあり、それは失敗に終わった。
しかし、諦めるわけにはいかない。
男はボロボロになった一の国を見て確信する。
きっと今回は成功する。
男は立ち上がり、はだけていた黒い着物を直す。
外していた深い笠を拾い上げ、しっかりと顔を覆う。
すっかり虚無僧の見た目になった男は誰からも見えない口元を歪ませて不敵に笑った。
国を守るために囲むようにある高い塀がこの崩壊した国を眺める一番のスポットというのは皮肉なモノだ。
風が男の髪を揺らして耳をくすぐる。
男の耳はエルフのように尖ってはいなかった。
男は自分の生きてきた人生を振り返っていた。
百五十年という一人の人間が過ごすには長い長い時間だ。
男が過去を振り返ると嫌でも思い出すのは最愛の娘、そして妻の顔だ。
笑顔なんて思い出せない。
男が思い出せるのは引きちぎられるかのように殺された娘の遺体の顔とその横で自殺した妻の遺体の顔だ。
女神の統治どころか、エルフもいなかった時代の話だ。
男はとある組織の幹部、というかナンバーツーだった。
男のいた組織は化け物を倒し、人民の命を守るものであった。
男はあまり正義の心は強く無かったが、その組織の一員として必死に働いていた。
その組織のトップは、行き場をなくした男に居場所を与えてくれたからだ。
なぜ行き場がなかったかはまた今度語るとしよう。
それはさておき、この世界には『能力者』という存在がいる。
ごく稀に生まれてくる人間で、化け物の力の一部を行使できる。
例えば、ゾンビの能力者は超再生能力と毒を操る力を得る。
化け物対策組織としては退治するべきか守るべきか議論になったのち、『討伐対象』であると決められていた。
そして、神の悪戯とでもいうのだろうか男と妻の間に生まれた娘はこの能力者であった。
そのことに妻は気がついていた。
しかし、男には伝えていなかった。
男が仕事とプライベートの間で葛藤することが火を見るよりも明らかだったからだ。
しかし、男は組織の資料の中に自分の娘を発見した。
そして、娘がゾンビの能力者であることを悟り、走って家に帰る。
ただ思い出しているだけなのに、頭が痛い。
その後、男が見た光景が先ほどから頭をチラつく二つの遺体だ。
男は決めた。
自分の所属したいる組織を使い倒してでも化け物を中心とした世界を作る。
人間が化け物を退けるのではなく、化け物が攻めてきたら人間が逃げざるを得ないような世界を作り上げてみせる。
一度は成功しそうであった。
しかし、世界はやはり意地が悪い。
男に力を与えた存在の協力もあり、それは失敗に終わった。
しかし、諦めるわけにはいかない。
男はボロボロになった一の国を見て確信する。
きっと今回は成功する。
男は立ち上がり、はだけていた黒い着物を直す。
外していた深い笠を拾い上げ、しっかりと顔を覆う。
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