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二の国(前編)
赤い眼
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数時間後、もう日も沈みかけている時間。
俺と探偵は裏通りを歩いていた。
「そういえば、お名前お聞きしていなかったですよね?」
探偵は面倒くさそうに頭をかきながら答えた。
「別に名前とかあんま名乗ってないんだけど、この国の人はヨロズって呼んでるね
『何でも屋』だからさ」
ヨロズははと気づいたようにこちらに視線を向けた。
「そういやあんたあたしを『探偵』として尋ねてたの?
よくあたしを答える人がいたね
あたしは探偵しかやらない訳じゃないからさ」
そういえばそうだ。
俺に教えてれた人物はもしかしたらヨロズに探偵を頼んだことがあるのかもしれない。
ただ、正直なところ顔に特徴も無かったのであまり覚えてはいなかった。
なんて、気を紛らわせていても今後の予定が変わるわけではない。
俺らは今からエルフの子どもを誘拐する。
姉が拐われた男のする事じゃあないな。
しかし、ヨロズが今から辞めるなんて言い出す訳がない。
そして、この女は確実に姉に繋がる情報を持っているはずだ。
「お、あいつだな」
ヨロズの声でふと我に帰る。
そこにはどこか寂しげに歩く女児がいた。
あどけない顔に尖ったエルフの耳は似合わないな、なんて悠長に思った。
「ほら、あんたみたいなナヨナヨしたのでもアイツくらい抑えられんだろ」
作戦は俺が主体となる。
俺が女児に近づき、抑え込んで体の自由を奪う。
その後ヨロズと二人で両手両足を持って裏路地に運び、そこにいる依頼者に引き渡すとの事だった。
俺は足音を堪えて女児に近づいていく。
気配を殺したはずなのに女児はくるりと振り返ると俺を視認した。
心臓がうるさい。
俺はただの通行人、通行人、通行人。
言い聞かせて歩を進める。
女児も前を向き直して歩き出した。
この瞬間しかないと俺は駆け足で近づき女児の頭を後ろから掴むようにして地面に倒す。
女児が驚いたようにこちらを見つめて、力の限り抵抗し、そして諦めたように絶望の眼差しを俺に向けた。
その瞬間、女児の目は真っ赤に染まった。
涙を流したとか、そんなもんではない。
白眼も黒目もなく完全に紅くなった目は夜闇の中で鈍く光っている。
「離れろ!!」
先ほどから静観していたヨロズが狂ったように声を荒げる。
俺も本能的に女児から手を離して離れる。
よく見ると女児の身体は電気が走るかのように光っている。
女児は四つん這いになり、こちらを赤い目で睨んで歯を見せて威嚇していた。
「ビーストだ」
そう呟くヨロズの声は深い絶望に満ちていた。
俺と探偵は裏通りを歩いていた。
「そういえば、お名前お聞きしていなかったですよね?」
探偵は面倒くさそうに頭をかきながら答えた。
「別に名前とかあんま名乗ってないんだけど、この国の人はヨロズって呼んでるね
『何でも屋』だからさ」
ヨロズははと気づいたようにこちらに視線を向けた。
「そういやあんたあたしを『探偵』として尋ねてたの?
よくあたしを答える人がいたね
あたしは探偵しかやらない訳じゃないからさ」
そういえばそうだ。
俺に教えてれた人物はもしかしたらヨロズに探偵を頼んだことがあるのかもしれない。
ただ、正直なところ顔に特徴も無かったのであまり覚えてはいなかった。
なんて、気を紛らわせていても今後の予定が変わるわけではない。
俺らは今からエルフの子どもを誘拐する。
姉が拐われた男のする事じゃあないな。
しかし、ヨロズが今から辞めるなんて言い出す訳がない。
そして、この女は確実に姉に繋がる情報を持っているはずだ。
「お、あいつだな」
ヨロズの声でふと我に帰る。
そこにはどこか寂しげに歩く女児がいた。
あどけない顔に尖ったエルフの耳は似合わないな、なんて悠長に思った。
「ほら、あんたみたいなナヨナヨしたのでもアイツくらい抑えられんだろ」
作戦は俺が主体となる。
俺が女児に近づき、抑え込んで体の自由を奪う。
その後ヨロズと二人で両手両足を持って裏路地に運び、そこにいる依頼者に引き渡すとの事だった。
俺は足音を堪えて女児に近づいていく。
気配を殺したはずなのに女児はくるりと振り返ると俺を視認した。
心臓がうるさい。
俺はただの通行人、通行人、通行人。
言い聞かせて歩を進める。
女児も前を向き直して歩き出した。
この瞬間しかないと俺は駆け足で近づき女児の頭を後ろから掴むようにして地面に倒す。
女児が驚いたようにこちらを見つめて、力の限り抵抗し、そして諦めたように絶望の眼差しを俺に向けた。
その瞬間、女児の目は真っ赤に染まった。
涙を流したとか、そんなもんではない。
白眼も黒目もなく完全に紅くなった目は夜闇の中で鈍く光っている。
「離れろ!!」
先ほどから静観していたヨロズが狂ったように声を荒げる。
俺も本能的に女児から手を離して離れる。
よく見ると女児の身体は電気が走るかのように光っている。
女児は四つん這いになり、こちらを赤い目で睨んで歯を見せて威嚇していた。
「ビーストだ」
そう呟くヨロズの声は深い絶望に満ちていた。
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