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第1章 城下町アルテアへようこそ
ep.1 ほんの少しの前世の記憶
しおりを挟むずっと昔から、何故か動物に好かれる体質だった。
元々動物の事が大好きだった私はそんな自分の体質が嬉しかったし、神様からいいものを授かったなと手放しで喜んでいたのである。
だけど、小さい頃から猫だけがどうしても苦手だった。
好きなのに、苦手。矛盾してるかもしれないれけど、まん丸の瞳にふわふわな可愛いフォルムが好きで、小さくて鋭い歯と爪が怖かったのだ。
それから何年か経って、私は道路に取り残されていた怪我をした動物を助け際、車に轢かれて世を去る事になる。
私が覚えている前世の記憶は、動物に関する事だけ。ただそれだけしかないのだ──
◇◇◇◇◇◇◇◇
朝日が昇る。生まれ育った場所にあった森のような、静かで澄んだ空気とはまた少し違って、活気のある賑やかで楽しげな外の声が窓から漏れてきた。
「結局……あの時とっさに助けた動物は何だったんだろ……」
あふ、と欠伸を1つしてカーテンを開ければ、目の前に広がるのは巨大な城下町アルテア。
精霊動物と共に生きるテスカ王国の中心部である。
「故郷の空気も好きだけど、やっぱりここの雰囲気も素敵だな」
朝露に光る太陽が、森のような私の翡翠色の瞳にキラキラと反射した。
「……っと。のんびりしている場合じゃないや!」
早く支度しないと、訓練を終えた騎士達に朝食を全部食べられてしまう。
私はまだ着慣れない団服に身を包み、栗色の髪の毛をサクッと梳かしてハーフアップにまとめると、慌てて部屋を出たのだった。
メル・アシュレー、17歳。
この春からテスカ王国精霊騎士団所属となった、ちょっと訳ありの、前世の記憶持ちである。
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