【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

ダンス・ウィズ・ハビーズ 5

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結局呪いの赤い靴・・・もといダンスを覚えるための魔道具を身に付けての練習は、その後も魔導士院を訪れる度に続けられた。

というか、なんなら魔導士院に行かなくても奥の院でのダンスレッスンの時間にもシグウェルさんはたまにふらりと現れては私にあの赤い靴を履かせてはダンスの練習に付き合っていた。

いくらこっちがあの靴から逃げてもシグウェルさんがパチンと指を弾けばあっという間に足元があの靴に履き替えられてしまっていたので逃げようもない。

「シグウェルさん、基礎体力訓練は面倒くさがってサボるのに同じような運動のダンスの練習はするんですか!?」

わざわざあの赤い靴を持って来なくても、こっちもサボってくれていいんですよ?と遠回しに言ってみても

「うっとおしい男どもの中に入って埃まみれになるだけの訓練と、こうして君と向かい合って見つめあいながら手を合わせて踊る時間が同じだとでも?君、随分と自分の魅力を過小評価しているんだな」

ふ、と僅かに甘さをにじませた目を細めてそう言われてしまった。

相変わらず顔が良い。その綺麗な顔で私とのダンスの練習時間を大事に思ってくれているらしい事を言われてしまうと思わずうぐ、と二の句を告げなくなる。すると

「それに前にも言ったがこの靴の効力がいつまで続くのかも気になる。かれこれ数十時間は使ったはずだがまだ魔法は切れないようだ。こうなると君がダンスを覚える方が早いのか魔法の効力が切れる方が早いのかを最後まで見届けたいからな。この先も出来る限りこの靴を使って君の練習に付き合おう」

とこともなげに言われてしまった。

えーと、それって私とのダンスの練習時間は大事だけどそれと同じくらい魔法の靴のことも気になるってことで・・・結局シグウェルさんは魔法バカってことだ。

これは本当にダンスを覚えるまでは靴から解放してもらえないと悟った私はいつになく必死になってダンスを覚えた。

最終的にはリオン様にも

「すごいよユーリ、完璧だ。シグウェルが魔法でユーリの練習の補助をしているらしいとは聞いていたけど、珍しくその魔法が良い方に働いたみたいだね」

と感心されてしまうくらいには上達した。

「ええ、まあ・・・」

あれが良い方に働いたっていうかどうかは謎だ。

そう思っている間にも、くるくるとターンを繰り返して踊りながら更にリオン様に

「一体どんな魔法を使ったの?」

なんて聞かれたけれど。ステップを覚えるまで脱げない呪いの赤い靴を履かされていたんです、なんて実は今の今までリオン様とレジナスさんには言えないでいた。

忙しい二人にわざわざそんな愚痴を聞かせるのはどうよ?それくらいならさっさとダンスのステップを覚えればいいかな、と私なりに気を遣っていたのだ。

だから結局

「音楽に合わせて体が動きやすくなるような魔法?みたいな?」

と物凄くあやふやでフワッとした説明しか出来なかった。それでもリオン様はそんな私の説明に納得してくれて、

「ふうん?そんな魔法もあるんだね。何にせよこんな風にユーリが緊張せずに会話をしながら楽しく踊れるなら僕も嬉しいよ。ね、レジナス」

と練習する私達を見守っていたレジナスさんを見やれば、レジナスさんもいつものあの生真面目な顔で

「踊り続ける体力も大分ついてきたようですし、これならもし本番で疲労から多少ふらついても俺達がうまくフォローすれば最後まで踊り切れるでしょう」

と頷いてお墨付きをくれた。う、嬉しい。あの赤い靴と必死に格闘して練習した甲斐があった。

・・・と、そんなあれこれをダンスの練習とドレスの試着や打ち合わせのためにシェラさんに会った時に話していたら

「ですがユーリ様、練習も結構ですがそのせいでお体に疲労が溜まっているようですよ?」

と言われてしまった。

「え?そうですか?一応ダンスのレッスンがあった日は侍女さん達も毎日のマッサージはいつもよりも念入りにしてくれてるんですけど」

それはもう餅でもこねてるの?ってくらい私の体をあちこち捏ねまわしてくれるので私自身、付きたてのお餅になった気分で気持ち良く施術されている。

体力を付けるため、なるべく自分に癒しの力も使わないでいるので侍女さん達のそのマッサージは毎回ありがたく受けている。

だけどシェラさんはついさっきまでドレスの様々な見本用の布をあてていた私の首の後ろ・・・うなじのあたりを指先でとんと軽くつくと

「侍女達の施すマッサージは貴族のご令嬢方用の体を優しく揉みほぐし老廃物を流すものです。いつもならそれで良いのですが・・・よろしいですか?少し強く押しますよ」

そう言って二本の指でうなじの少し上のあたりをぐぐっと押した。

途端に痛気持ちいい感覚がうなじだけでなくこめかみの辺りや肩周りにも広がる。

これっていわゆるツボ押しみたいなやつだ。

「ふわぁ・・・!」

気持ち良さに思わず声が出る。確かにこの痛気持ち良いくらいの強さの刺激はいつものマッサージにはない。

ていうか今は疲れを感じていないはずだったのに気持ちいいと思ったということは、シェラさんの言うように体の奥の方はまだ疲れているんだろうか。

シェラさんも、思わず声が出た私に気を良くしたのか

「もしよろしければそのまま大きく手を上げてゆっくりと肩を回していただけますか?」

と今度は肩を掴むようにしながら言った。

その言葉に素直に従って、五回ほど肩を大きく回せば今度はうなじから少し下がった辺りの背骨をぐっと押されるようにされる。

そのまま息を吐きながら限界まで後ろへ首を倒すようにと指示されて、

「はい、では今度は大きくあーんと口を開けながら反ってみてください。さっきよりももう少し後ろへのけ反れるはずですよ」

言われた通りにあーんと口を開ければ、これ以上は後ろに反れないと思っていたのに本当にあとほんの少しだけ首が後ろにのけ反る。ええー、何これ不思議。

「はい、結構です。どうですか?さっきよりも少し体が軽くなっていませんか?」

パッと体からシェラさんの手が離れてそう言われて、試しにもう一度肩を大きく回してみるとさっきよりも軽い。あと首周りも。

「すごいです、毎日マッサージしてもらってるから疲れなんか溜まってないと思ったのに!」

「ただでさえダンスの練習で一定の姿勢を保ち続けるのは初心者には大変なことですのに、ユーリ様はそれを集中的に続けてこられましたからね。それに体力作りも同時にされておりましたでしょう?思っている以上に体に負荷がかかっているんですよ」

にこにこと笑いながらシェラさんはそう教えてくれた。

「あーんって口を開けたら更に首が反ったのはなぜですか?」

「ああ、あの姿勢で口を開けると体の力が抜けるからです」

なるほど。まるで整体の先生みたいなシェラさんは

「これはどちらかというと騎士団で騎士達が行うストレッチに近いですが、だからと言って騎士風のマッサージのために尊い御身を伴侶でもない騎士団の他の男どもに触らせるなど絶対に嫌ですので。必要であればいつでもオレがお世話いたしますよ」

とアピールも欠かさない。

「え?騎士団に関係するならレジナスさんでも出来るんじゃないですか?」

「ユーリ様の柔らかなお体に合った繊細な力加減のマッサージをあの男が出来るものですかねぇ・・・。慣れないことに己が固まって、いつまで経っても寝そべったままのユーリ様とそれを見つめ続けるレジナスという図しか想像出来ませんが」

とシェラさんは肩をすくめた。散々な言われようだけど何となく分かる気がする。

「オレならばこうしてダンスの練習とご衣装の打ち合わせをしつつ、ついでに毎回ユーリ様のお疲れをほぐして差し上げられますよ」

「えっ、いいんですか?」

久しぶりに受けた整体マッサージもどきの気持ち良さとシェラさんの甘い言葉に揺れる。

「勿論です。このところユーリ様をより美しい花嫁にするための準備であちこちへ出掛けてばかりでなかなかご一緒出来る時間を取れませんでしたからね。四人の中でダンスの合わせの練習時間もオレが一番取れていませんし、良い機会です」

「私のためにそんなに頑張って遠くまで材料を取り寄せに行かなくてもいいんですよ?もう充分過ぎるほど材料は揃ってるんじゃ・・・」

何しろシェラさんはリオン様にお金を出させて東国から職人を呼び寄せ新しい織物工房を建てさせたり南の島から真珠を取り寄せたり、鉱山を採掘させて良質な大ぶりのオパールを取り寄せたりしているのだ。

この準備だけで一体どれほどの労力とお金がかかっているのか、申し訳ないながらも恐ろしくて詳細は聞けない。

だけどそんな私に構わずシェラさんは

「ユーリ様の一生に一度の婚礼です。皆の記憶に残りユーリ様ご自身にも満足していただけるものでなくては」

なんて言いながら今度は私の髪に赤い花と白い花を交互に当てている。

「それは何ですか?」

「リオネルの港町に買った無人島に月光花の原種がありましたでしょう?これはそれを更に改良したものです」

そう教えられてああ、あれか・・・と思い出す。

月明かりを集めて自らが発光する月光花は鮮やかな赤色が原種だ。

ユリウスさんはそれを研究して白い色の月光花を作っていたっけ。

ユリウスさんのおうち、バイラル家の夕食会に招かれた時もその庭には研究中の白い月光花がほのかに輝きを放っていてキレイだった。

「でもそれがなんでここに?」

奥の院の庭園に植えようとするならまだしも、なぜそれを私に合わせているのか。

するとシェラさんは当たり前のように

「ユーリ様の夜会でのドレスの飾りに使おうと思いまして。ユリウス副団長には今までよりもより花弁が多く鮮やかに発光する月光花の改良を頼んでおりましたが何とか間に合いそうで良かったです」

やはり白ですかね、なんて頷きながらそう説明してくれたけど。

「職人さん達だけでなくユリウスさんまで巻き込んでたんですか!?いつの間に!?」

言われてみればユリウスさんちの庭園で見た月光花よりも花びらが多い気がする。

それに鮮やかに発光、ということはリオネルの無人島にあったあの原種そのものも掛け合わせてあるはず。

まさかわざわざ遠い南東のリオネルから月光花の原種も取り寄せた?

「ユリウスさんに謝らないと・・・!」

ただでさえ魔導士団での自分の仕事がある上にシグウェルさんのお守りまでしている忙しい人だ。

そんな人に何を頼んじゃってるんだろう。

だけど青くなった私にシェラさんは不思議そうに小首を傾げた。

「ユーリ様のお役に立てる光栄を嫌がる者などおりませんよ。それなのになぜユーリ様が謝る必要が?現にユリウス副団長も泣いて喜び了承して何度も頷いておりました」

いやいや、賭けてもいいけどそれ絶対にシェラさんに脅されて泣いていただけだと思うから。

最近はユリウスさんに会う度、シグウェルさんのあの赤い靴ホントに何とかなりませんか!?って泣きついていたけど実はそれどころじゃなかったなんて。

今度ユリウスさんに会う時はお詫びの品をたくさん持っていかなくちゃ、と心ひそかに固く誓ったのだった。
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