【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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番外編

ご注文は子猫ですか? 12

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エヴァン様を追いかけて走る私の後ろでマリーさんの、ユーリ様!という声が聞こえたけど

「ごめんなさい!」

振り向かずにまっすぐにその後を追う。

「あの方もそこまで王都に土地勘はなさそうなので、昨日と同じ路地裏に刺客を誘い出そうとしていると思います」

私と一緒に走ってくれているエル君がその道筋から判断してそう私に教えてくれた。

なるほどそれなら刺客の攻撃パターンも読みやすくて対応しやすいだろう。その頃には走る私達の後に護衛の騎士さん達もバタバタと駆けつけ始めていた。

「どうされましたかユーリ様!」

「何が問題でも!?」

「誰かに追われているんですか?」

口々に心配される。あぁ~違うんです、騒ぎを起こしちゃってごめんなさい。

心の中で謝りながらちらりと見れば、明らかに昨日よりも騎士さん達の数が多い。

そりゃそうだよね、レジナスさん万が一に備えて護衛も巡回の騎士さんも人数を増やすって言ってたし。それにシグウェルさんまで

『ユーリは何をしでかすか分からないから』

なんてことも言ってたっけ。

あの時はそんなまさか、10歳女児姿の時ならまだしも元の姿に戻ってまでそんな落ち着きのないことはしませんよ?なんてちょっと思ったりしたけど、私自身よりもレジナスさんの方が私のことをずっと良く分かっているみたいだ。

私の後ろにはざっと15人以上の騎士さん達が列をなしてついて来ていて、さすがのエル君も

「過保護過ぎだし狭い路地を走るのにも邪魔過ぎ。レジナス様はユーリ様の専属護衛としての僕の能力を信じてないんですか?」

なんて眉を顰めている。

いや、むしろ信用されてないのはエル君よりも私の行動・・・とは思ったものの、我ながらそれを口に出すのはさすがにはばかられた。

なので代わりにこの際、騎士さん達にお願いをする。

「昨日の猫攫いです!今度は・・・ええっと、猫を助けようとした人を襲ってるみたいなので、た、助けてください・・・っ!」

あっち!とエヴァン様の駆けて行った先を指差しながら話す。

さすがに王宮の賓客がなぜか街にいて刺客に襲われていますとは言えなかったのでそれらしいことをうそぶいた。

すると騎士さん達も顔色を変える。

「昨日俺たちが取り逃した奴か!!」

「同じ失敗はしねぇ!」

「今度こそ捕えるぞ!!」

「あっちは昨日と同じ行き止まりだ!」

と色めきたって気合いが入った。

私はといえば全力で走りながら喋る、なんて体力皆無な自分にとってはこの上なくキツいことをしたので、すでに息が上がってきていた。

だからそんな私を騎士さん達は次々に追い抜いていきながらユーリ様はお戻りください、なんて気にかけてくれたけどそうはいかない。

もしエヴァン様が刺客を誘い込んで応戦しようとしているなら怪我をする危険がある。

何しろ裸足で体には布を巻いているだけ、武器はお店の箒一本だ。

きっと私の加護の力も役立てるはず。

あっという間に昨日と同じように騎士さん達全員に追い抜かれてその後ろ姿すら見えなくなってしまい、

「ここを曲がれば昨日と同じあの場所・・・!」

と何とか路地裏の小径の角を曲がった時だ。突然目の前にレンガ造りの壁が行く手を阻むように立ち塞がっていた。

「えっ、あれっ!?」

昨日は確かこの先が少し開けた行き止まりになっていて、積み重ねられた木箱の上でミルクが毛繕いをしていたのに。

「なんで?こんな壁、ありました!?」

ぺたぺた触ってみても確かにひんやりと冷たいレンガの感触だけどおかしい。

だってエヴァン様や私を追い抜いて行った騎士さん達は一体どこに?

まさか転送魔法か何かで別の場所に行っちゃった?

焦る私に、同じように壁に触れていたエル君が

「ユーリ様。これ、結界魔法だと思います」

と言う。

「え?魔法!?でもどう見てもただの壁ですよ?触った感触も・・・!」

結界ってもっとこう、目に見えない透明なものとか薄い膜みたいなものじゃないの?少なくとも今まで私がこの世界で見たことがあったり自分で張った結界はそういうものだった。

「誰にも邪魔されないように戦うための戦闘用の結界・・・の一種だと思います。中に人を閉じ込めたまま、大きな攻撃用魔法を使っても結界の外には被害が及ばないようにするための」

実地訓練や任務で同じようなものを僕も何度か使われたことがあります、なんて物騒なことまで言っている。

エル君、訓練や任務でそんな結界が必要なほど危ない魔法に晒されたりしてたの!?一体今までどんな所にいたの?え、それって誰に文句を言えばいいのかな、大声殿下?

言いたいことも聞きたいこともいっぱいあるけど、とりあえずは目の前の問題を処理しなければいけない。

「じゃあこれ、エル君なら壊せるんですか?」

「出来ますけど、これを壊すと多分中で応戦中のエヴァン様や護衛騎士、刺客の魔法や攻撃の被害が街中にまで及びます。」

「ええ!?」

「これを張ったのはエヴァン様を捕えようとした刺客じゃなくて、エヴァン様本人だと思います。街中に被害を出さずに刺客を捕らえようとしたんじゃないですか?昨日はあっという間に逃げられてしまいましたから、閉じ込めて捕えるつもりなんだと思います」

だとしたら結界を破壊するのは良くない。壊さずになんとかこの中に入らないと。でもどうやって?こうしている間にもエヴァン様や騎士さん達が怪我をしているかも。

焦ってぐっと拳を握りしめた私に

「ユーリ様の力なら何とか出来るんじゃないですか?」

エル君が意外なことを言った。

「え?何でですか?魔物の魔力で作られていないものなら浄化して解除とかはムリですよ!?」

「ユーリ様、猫の姿のエヴァン様に加護を付けようとしてあの人の魔法まで解除してしまいましたよね。それと同じです。ユーリ様の持つ力なら浄化しなくても他人の魔法を解除したり無効化出来るんじゃないですか?」

だからその要領でこの結界を越えられるのでは、とエル君は言った。

「た、確かに・・・?」

理屈では出来そうな気はする。だけどエヴァン様の猫魔法を解除してしまったようにこの結界を解除してしまったら、結局街に被害が出るのでは?

そう迷った私に更にエル君は進言する。

「だから解除するんじゃなくて、僕らだけが中に入れるようにすり抜けるようには出来ませんか?ユーリ様、よく言ってるじゃないですか。『魔法はイメージだ』って。ユーリ様の今までの魔法の学びの努力やその加護の力を持ってすれば、この結界を壊さずにすり抜けることは簡単じゃないですか?」

その言葉にハッとする。そうか。そういえばぶよんとした結界や硬い鏡の中を通り抜けて別世界に行く、みたいなのは色んなファンタジー映画や漫画で見たことがある。その要領でイメージすればいいんだろうか。

「エル君、すごいです!魔導士は嫌いなのに私よりもちゃんと魔法のことが分かってる!!」

「ユーリ様、いつも魔導士団長のあんなに無理難題をいう魔法の訓練にもついていってるからその理論は分かっているはずなのに、焦って忘れているだけですよ」

それだ!と手放しで褒めれば珍しくエル君が謙遜めいたことを言った。ていうかあれ?もしかしてちょっとだけ私のこと褒めてくれた?

確かにいつも魔導士院でシグウェルさんの無茶振りな魔法実験に私が応えている時も、難しい護符を何枚も書かされてる時も、よく分からない魔法理論みたいな勉強を教わってる時も、護衛だから私の側でそれを全部見てきてるもんね。

「エル君、今シグウェルさんのスパルタにもめげずに魔法の勉強頑張ってて偉いって私のこと褒めました!?」

思わず食い気味にそう聞けば

「一言一句、全然違います。僕そんな事言いました?なんでそう変換したんですか?」

安定の塩対応をされた。でもいいもん。エル君のツンなところはちゃんと分かっている。

そして自分の頑張っているところをこんな感じでも評価してくれるのは嬉しい。

今までの焦りが消え、ほんのりと心の中が温かくなる。

エル君が今までの私の経験を見て信じてくれた、私なら出来るっていう期待に応えなきゃ。

人の作った結界を壊さずに通り抜けるなんてやったことはないけれど、きっと出来る。

だって元の世界のエンタメの想像の世界ではそんなシーン、散々見てきたんだから。

魔法はイメージ。基本的なそれをもう一度心の中でしっかりと復唱して深呼吸した。

「よし!行きますよ!!」

「うわ!?」

エル君の小さな手をぎゅっと握りしめて、その手を取ったまま壁へと向かう。

突然の手繋ぎにエル君が驚いたように上げた、年相応の少年らしい声は初めて聞いた。

そのまま壁に額をつけて、元の世界で見たことのあるファンタジー映画の1シーンを思い浮かべる。

水の中に沈んでいくように透明な膜を通り抜ける、そんなイメージ。

すると硬かったはずの目の前の壁がほんのりと熱を持ち、わずかに柔らかな弾力を帯びた感触がする。

そのままずずっ、と吸い込まれるように壁の中に引き込まれていく。

これならいける。エル君の手を握りしめたまま、どうか私達をエヴァン様のいるこの向こう側へ行かせて欲しいと強く願った。








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