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第七章:追録 ヨナスの夢は夜開く

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「・・・ユーリ、大丈夫?」

リオン様の声にはっとして目を瞬く。
あれ?私、何してたんだっけ。
眠ってたのをリオン様に起こされたのかな。

キョロキョロと周りを見回せば、
どうやらいつもリオン様と一緒に朝食を
取っている部屋のようだった。

目の前のローテーブルには一口大のパイや
カナッペ、果物などの軽食と飲み物が乗っている。

そして私は・・・長椅子でくつろぐリオン様の、
開いた両膝の間にがっちりと固定されて
座っていた。
背中はしっかりとリオン様の胸板に預けられている。

リオン様は薄手のシャツ一枚で、胸のボタンも
3つほど開けているせいかその意外と筋肉質な
胸板の感触を感じてしまって何だかどぎまぎする。

「えっ、今って何してたんでしたっけ⁉︎」

「ユーリが少し大きくなったから、新しい
座り方と食事の仕方に慣れようね、ってことで
その練習をしていたところじゃないか。」

大丈夫?何だかぼんやりしていたけど。
リオン様にそう言われてあれ?と思う。

そうだっけ?ついさっきまで、リオン様じゃない
別の誰かと一緒にいたような気がする。
そんな気がするのに、でも誰といたかまでは
思い出せない。何でだろう。

「もう食べなくていいの?」

突然耳元でリオン様の囁くような声がした。
あまりの近さにくすぐったいのと驚いたので
首をすくめる。本当は立ち上がりたいけど、
リオン様の前に膝で挟まれるように
座らせられている上に、私のお腹の前で
リオン様は両手を組んでいるので身動きが取れない。

仕方がないので、そのままの体勢で後ろを
振り向きリオン様を仰ぎみる。

「はい、もう充分なので自分の席に戻っても
いいですか?お茶は自分の椅子に座って飲みます!」

「・・・何もそんなに急がなくても。
僕、今朝はまだ時間に余裕があるんだよね。」

少しいじけたような言い方をしたリオン様が
にこりと微笑んで私の髪を撫でた。

「そうなんですか。だからこんなにゆっくり
してるんですね。」

いつもならすでに側にいるはずのレジナスさんの
姿が見えないのもそのせいなのか。
ふーんと思っていたら

「だからね、ユーリ。」

・・・ん?リオン様の声色が怪しくなった。
これは私に何かしようとしている時の声だ。

「時間もあることだし、少しだけ大人になった
ユーリに僕も慣れさせて。」

「え?どういう意味ですか?」

リオン様の言ってることの意味が分からなくて
きょとんとしてしまう。

ふふ、と微笑んだリオン様は私の前で組んでいた
手をほどくと、その左手に私の左手を重ねた。

「・・・腕が少し長くなって、指もほっそりと
長くなったね。でも手はまだまだ僕より小さい。」

あ、そういうこと。前の私からどれくらい
成長したか確かめたいのかな?
びっくりした、声が不穏だったから何を
されるかと思った。

「私がどんなに大きくなってもリオン様に
追いつくわけないじゃないですか。」

「そうなんだけどね。髪も伸びたよね。」

左手を離されて、かわりに髪の毛を一筋手にした
リオン様はそこに口付けを一つ落とした。
さすが王子様、ちょっとした仕草も絵になるなあ。

・・・なんて、のんきに思っていたら
くいとあご先を取られて上に向けられると
後ろから顔を覗き込まれた。

「目元も少し大人びたし、頬も子どもらしい
丸みが消えて女の子っぽくなった。」

じいっと私の瞳の中を見つめられる。
距離の近さに恥ずかしくなったので視線を外して
目を伏せたら、

「その恥ずかしそうな顔がかわいい。」

そう言って微笑んだ気配がしたと思ったら
突然リオン様が口付けて来た。
視線を外していたので完全に不意打ちで
避けることもできなかった。

ちゅっ、と軽い音がして唇が離れると
まだ私のあご先を手に捉えたまま
リオン様は私に眩しい笑顔を見せる。

「唇の柔らかさは前と同じなのかな?
それとも前と変わっているのかな。
ついこの間までのユーリには口付けたことが
ないから違いが分からなくて残念だ。」

だからこの先成長した時に違いが分かるように、
今のユーリの唇の感触を忘れないように
しておきたいね。

そう言ったリオン様はもう一度軽く私に
口付けた。

突然立て続けに二度も口付けをされて思考が止まる。

あっ、これはもしかしてよくない流れでは。
慌てて前を向いたけど、あご先にかかっている
リオン様の指はまだそのままだ。

「あれ?顔を見せてくれないの?
恥ずかしくなっちゃった?」

そう言うと、その指先を私のあごから首筋へと
つうっと滑らせて撫でられた。
その手つきがなんだか思わせぶりで
ひゃ、と思わず肩をすくめる。

「ここ、弱いの?」

左耳のすぐ後ろでリオン様の囁く低い声がして、
私を後ろから抱きすくめたままその右手が
右の耳たぶを一度きゅっとつまんでから
首筋を伝って鎖骨までもう一度撫で下ろした。

その声と、指先が首を辿る行為にぞわぞわして
おかしな気分になる。
逃げられないリオン様の膝の間で身じろげば、

「ユーリ、かわいい。そんなに良い反応を
されると思わなかった。ね、顔を見せて。」

頬に軽く口付けられると膝の間に座っていたのを
ひょいと抱え上げられてリオン様の右膝の上に
私の顔が見えるよう横座りさせられた。

座る私の背中には、リオン様の片腕が回されて
しっかりと私を支えてくれているけど、
逃げられないとも言える。

背中を支えていないもう片方の手は、
いつの間にか服の隙間から入り込んでいて
私の鎖骨のすぐ下・・・胸の上あたりの
肌に直接触れて私の鼓動を確かめるように
そっと添えられていた。
いっ、いつの間に⁉︎

「あれ?ドキドキしてる?」

悪戯っぽい微笑みで、添えられた手の人差し指が
すり、と優しい手つきでそこを撫でてくるけど
・・・そりゃそうでしょう!

そこから少しでも下にさげられ左右どちらかに
手を動かされればまだまだささやかとは言え、
私の胸の膨らみに触れてしまうのだ。

「赤くなっててかわいいね。瞳も潤んでいて
金色が溶けたみたいに輝いてるよ。」

そう言うと、胸元に置いた手をそのままに
顔を寄せられてまた口付けをされた。

柔らかく優しい口付けは、リオン様の唇が
私の下唇を食むようにきゅっと挟んで来たので
驚いて思わず薄く口を開いてしまった。

すると、そうするのが分かっていたように
当たり前のようにするりとリオン様の舌が
私の口の中に入って来る。

「っ・・!はっ・・・」


そう思って、やっぱりって何だ?と思う。

誰かにそんな事を言われたような気がする。
でも、思い出そうと思っても思い出せない。
ていうか、リオン様のせいで何も考えられない。

さっきまでの優しいやんわりとした口付けは
どこに行ったのかというくらい、私の口の中を
好きにするリオン様の舌の動きは強引で執拗だ。

舌の裏から歯列をなぞられて上顎まで、
私の弱いところや反応するところを探りながら
口の中を余すところなく触れられる。

ぐり、と私の舌を強く押されれば、押されたのは
舌なのになんだかお腹の奥の方が押されたみたいに
痺れてきゅんとする。何で?
訳もわからず、リオン様の服を握りしめた。

舌を吸い上げられて、流し込まれた唾液を
反射で飲み込んで頭がぼんやりしたあたりで
ようやくリオン様の唇が離れる。

「すごく色っぽい。そうしていると、元の
大きな姿のユーリがここにいるみたいだよ。」

蕩けるようにうっとりとした笑顔でリオン様は
そう言っているけど、言葉が頭に入って来ない。

ただ、回らない頭でふと気付けば私の胸元に
添えられていただけだったはずのリオン様の手は
いつの間にかほんの少し下の位置に降りると
大きく開いていて、やわやわとささやかで小さな
私の胸の膨らみを優しく揉みしだき、
その形の良い親指と中指は私の両胸の先を
しっかりと捉えていた。

「片手で両方に届いてしまうってことは、
まだまだユーリの体は小さいんだね。
早くもっと大きくなって。じゃないとこの先に
進めないし、もっと良いことができないよ。」

私の目を見つめながらそう言って、リオン様の
指先は捉えていた私の両胸の先をくるりと
円を描くように、器用にも両方同時に撫で上げると
そのままそこをきゅっと強く押し込んだ。

「ふぁっ・・・⁉︎」

今までに経験のない刺激を素肌に受けたのに
驚いて背中がびくりと反り返り、そのせいで
自分からリオン様の指先と手の平に胸を
押し付ける格好になってしまって、それが
更に強い刺激を私の体に与えた。

そのままそっと指先を離されれば、それを
追いかけるように私のささやかな胸の先が
硬く立ち上がったのが自分でも分かって、
恥ずかし過ぎて顔がみるみる熱を持つ。

「本当にかわいい良い反応をするよね。」

ちゅっと額に軽く口付けられる。
な、なんてことをするんだ・・・!

口の中に、胸の先に。様々な刺激を与えられて
こちらの身が持たない。

「も、やめてくださ・・・」

息も絶え絶えにそうお願いすれば、

「ごめんね、ユーリがかわいくてつい色んな表情を
見たくなったんだ。もっと僕に良い顔を見せて。」

言葉を途中で遮られて、ふんわりといつもと
同じような微笑みをされた。
こっちの話を全然聞いてない・・・!

それどころか、

「ね、口を開けて?」

逆にお願いしてくる始末だ。たった今まで
私の胸を撫でていた、その男性らしい大きな
親指が今度は私の唇の形を優しくなぞると、
くち。という密やかな水音をたてて指が私の
口の中に入り込む。

親指だけでなく、人差し指もそこにはいつの間にか
入り込んでいて、二本の指で私の舌を挟み
指先で擦られ、優しく引っ張られた。

「んっ・・・‼︎」

その刺激にびくんと肩が揺れて、思わず口を
開ければ指先に挟まれ引っ張られた舌は
開いた口の中からリオン様に差し出すように
その小さな赤い舌先を覗かせてしまう。

「いい子だからそのまま舌を出していてね。」

微笑みだけはどこまでも優しげなのに、
その言動はなんだか過激で物騒だ。
やっぱりリオン様にはSっ気がある・・・‼︎

それなのに、リオン様のあの青い瞳に捉えられて
お願いされるとなぜか言うことを聞いてしまう。
いつから私はこうなってしまったんだろう。
回らない頭でぼんやり考えるけど何も
思い浮かばない。

ぼうっとしたまま、口を開けて震える舌先を
差し出している私にリオン様は、

「やっぱり舌もまだまだ薄くて小さいね。
口の中も狭くて小さいし、そこがかわいいけど
出来ることには限度があるなあ。」

意味はよく分からないけれど、不穏当なことは
理解できる何事かを呟いた。

え、怖い。一体私に何をさせるつもりなんだろう。
そう思っていたら、差し出したままの舌に
リオン様の舌が絡み付いてきた。

一度強く吸い上げられて離されれば、
ぼんやりして開いたままの口の端から
唾液が流れ落ちる。

「とりあえず、今のユーリにしてあげられることは
口付けくらいだし、それならせめてそれだけでも
気持ち良くなれるように僕が頑張ればいいか。
あとはもっと大きくなった時の楽しみに
取っておくよ。」

私の口の端から流れる唾液を舌で舐めとり、
そう言ったリオン様は私の耳元で更にそっと囁く。

「だからユーリ、大きくなったらその分
お返しで僕をうんと気持ち良くさせてね。」

待っているよ。そう言われてそのまま深く
口付けられれば、もう何も考えられずに
リオン様にその体を預けるだけだ。

リオン様の右膝の上に座らされていたはずが、
気付けばいつの間にかそのまま長椅子の上に
押し倒されていた。私に覆い被さるように
体の上にいるリオン様の服の裾を、深い口付けと
再び胸へと与えられ始めた刺激を耐えるように
必死でぎゅっと掴む。

そして瞑った目の奥、何も見えていないはずの
私の視界には紫色の霧のようなものが広がる。

ー・・・さあ、もう少しだ。

楽しげに嗤いそう言う誰か女の人の声が
何も考えられなくなっている私の頭の片隅に
聞こえたような気がした。



























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