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第九章 剣と使徒
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翌日の朝。
トランタニア領へと走る馬車の中で私は
ため息をついていた。
「レジナスさんが来れなくなるなんて残念です。
大丈夫かなあ・・・。」
「正確には遅れるというお話です。僕たちが
孤児院を訪問しているうちか、遅くとも農作地に
加護を付けるまでには間に合うかと。」
私の向かいにちょこんと礼儀正しく座るエル君が
補足してくれる。今朝、出発の準備をしていたら
部屋を訪れたレジナスさんに頭を下げられたのだ。
なんでも大声殿下の即位式に出られない他国の
大使が二日後突然訪れることになり、リオン様も
レジナスさんもその対応に追われる事になったとか。
とりあえずやれるだけの準備をしたら昼までには
王宮を出て、私達を追ってくれるらしい。
孤児院の訪問はともかく農作地や牧場予定地の
訪問については、リオン様の補佐で土地管理や
領地争いの仲裁にも入った事があってあちこちの
地理にも詳しいレジナスさんの話も聞きたかったから
残念だ。早く合流が出来るといいけど。
「2人で一緒に頑張りましょうねエル君!」
気持ちを切り替えてそう笑いかければ、
「頑張るのはユーリ様です。僕はそれを補佐する
だけですから。頑張って下さい。」
2回も頑張れって言われた。え?他力本願は
やめろってことかな?
「レジナスさんがいない今、エル君だけが
頼りなんですよ⁉︎冷たいこと言わないで下さい!」
自分より歳下の子に必死で抗議した。
一応騎士さんや行政官の人達も同行してくれてるけど
何かあった時に気軽に頼れるのはレジナスさんか
エル君しか私にはいないのだ。
そうしたら、さすがのエル君もちょっと困ったように
眉を寄せて、仕方ないですねと言った。
「ユーリ様はたまに僕より子供っぽくなりますけど
本当に僕より歳上なんですか?」
そう聞かれたけどアラサーから10歳児に
なったかと思えば突然12歳くらいに成長して
みたりと私だって自分で自分のアイデンティティが
迷子状態なのだ。たとえ歳下だろうと頼れる時は
頼りたくもなる。
エル君にそんな私の事情は説明できないけど、
そういうわけだから、ちょっとくらいは頼っても
いいじゃない。
「歳上ですよ、なんならユーリお姉ちゃんって
呼んでもいいんですよ?でもいくら歳上でも
子供ですからね、不安な時は人に頼ったって
いいんです!」
開き直ったら、おねえちゃん・・・と呟いた
エル君はそれまで呆れたように冷たく見つめていた
私からぷいと視線を外した。
「バカなこと言わないで下さい。ユーリ様は
僕の主で、僕はユーリ様の剣です。」
そのまま黙って馬車の外を見つめてしまったけど
よく見ればその頬はうっすらと赤い。
あのエル君が照れている・・・⁉︎
もしかしてお姉ちゃんが欲しかったのかな⁉︎
それとも私のことをお姉ちゃん呼びしてみたいと
思ってくれたとか⁉︎
ふおぉ!と一瞬でテンションが上がった。
こんな天使みたいに可愛い子にお姉ちゃんって
呼ばれたら嬉しいんだけどな⁉︎
にこにこでエル君を見守っていたら
「ユーリ様、笑顔がうるさいです。もっと
落ち着いて下さい。じゃないと領主代行様の前で
転んだりますよ。」
辛辣な注意をされた。うざいってことか。
でもそれも反抗期の子供みたいで可愛い。
「エル君は可愛い子だっていうのが段々と
分かってきたので何を言われても怖くないですよ!」
「護衛に可愛いとかない、有り得ない・・・」
私の言葉に、外を見ながらエル君はいつものように
深くかぶりを振ったけど全然気にならない。
だって、頭を振るエル君は耳もほんのり赤くなって
いたからね。これは完全に照れている。
エル君の思わぬ可愛さを見つけて、レジナスさんが
いない不安で気が重くなっていたのがすっかり
解消されてしまった。我ながら現金だ。
その後も馬車は順調に進み、予定通りの時間に
トランタニア領に着いた。領主様の館の前に
馬車が停まると痩せ型で背の高い、50歳前後の
男の人が出迎えてくれた。
「ようこそ、ユーリ様。私は領主代行のシオンと
申します。この度は癒し子様自らこのトランタニアに
おいで頂き土地に加護まで授けていただけるなど、
どんなに感謝してもしきれません。
誠にありがとうございます!」
感激したようにニコニコと微笑むその顔は
目が細いのでなんだかキツネっぽい。
あのケモ耳付きの魔狐のコートを着たらよく
似合いそうだ。そんなことを考えながら挨拶を
交わしていたら、シオンさんはふと私の後ろに
目を向けた。キツネみたいな目をすがめた先に
佇んでいるのはエル君だ。
「そちらの方はユーリ様のお付きの方ですか?」
そういえば私は何とも思わないけど、こちらの
世界ではエル君みたいな真っ白な人は嫌な目で
見られることもあるんだっけ。
「はい、私の従者でとても良い子なんです!」
仲良しアピールでぱっとエル君と手を繋いだ。
こうすればどんなに珍しい容姿でも癒し子に
気に入られてると分かって虐められないはず。
突然手を握られたエル君は驚いたのか固まって
しまったけど、そのまま嫌がらずに大人しく
しておいてくれた方が仲良しアピールはしやすい。
「今日は従者のエル君もずっと一緒なんです、
よろしくお願いします‼︎」
こんな小さい子が私の護衛と言ってもシオンさんは
信じられないだろう。そう思ってエル君の手を
握ったまま紹介すれば、シオンさんもそれ以上
特に何を言うでもなくそうですか、と館の中へと
案内してくれた。
まだじっとエル君を見ているその目には、若干
好奇の視線は感じるけど嫌悪感は浮かんでいない。
良かった。
ほっとして館へと入ると、そのままシオンさんや
領内の有力者だと言う人達、私に同行してきた
行政官さんも交えた昼食会は滞りなく終わり
孤児院へと訪問に向かった。
それは白くて立派な三階建ての建物だ。
「本当に大きくて立派な所なんですね!」
仕事で外せないシオンさんとは昼食会で別れ、
代わりに案内してくれるトランタニアの領事官さんが
笑顔で頷き説明してくれる。
「領主様の配慮で保護された子供達の数に合わせて
改築や増築をしていたらこんなに大きくなって
しまいまして。他にもいくつか同じような孤児院が
領内にはあります。学び舎まで併設した孤児院は
領内ではここだけですが、ゆくゆくは他の孤児院も
近くに学び舎を建てようという話が出ていますよ。」
学校は読み書きだけでなく縫製やお料理なども
希望すれば習えるらしく、そこで手に職を付けて
立派に巣立つ孤児も多いという。どうやら
この学校は学問を習うだけでなく職を得るための
職業学校のようでもあるらしい。
「さきほどの昼食会でも若い侍従や侍女が
多いと思いませんでしたか?彼ら彼女らも、
孤児院出身でして。領主様は自らもそうして
身寄りのない者達に職を与え、他の貴族や
他領にも紹介状を書いて若い子達が働けるよう
支援なさっておりました。シオン様もそれを
引き継いでおられます。おかげさまでトランタニアは
人材には困りませんがお恥ずかしい話、その反面
教育のための資金繰りが厳しいのです。」
なるほど。土地はまだまだ開拓途中で収穫できる
農作物やお金になるようなものは少ない。
資金の工面はなかなか難しいんだろうなあ。
私の考えている牧場がうまくいけばいいんだけど。
「そんなに優しい領主様に会えないのは残念です。
こちらにはあまり戻って来ないんですか?」
もし会えたら、私の力で治せたかもしれないのに。
「前は年に何度か戻られて、その度に自分の保護した
孤児達とも交流するのを楽しみにして
おられたんですが、こちらに滞在中に体調を
崩すことが増えまして今は年に一度戻られれば
良い方です。やはり最近まで魔物が出ていた
程ですから、こちらは空気が悪いんでしょうね。」
その分シオン様が立派に務めてくれていますが
それでも領主様になかなか会えないのは残念です、と
領事官さんは話してくれた。
そんな説明を受けていたら、その間にもちらちら
こちらの視界に映るものがある。子供達の頭だ。
孤児院の中を歩きながら話していたんだけど、
背後や横の方から視線を感じていたんだよね・・・。
私達が気になって見に来ているらしい。
「こら!おとなしく待ってなさいと言ったでしょ⁉︎」
施設について一緒に説明してくれていた孤児院の
院長先生についに見つかってしまう。
ごめんなさーい、と声を揃えてぞろぞろと
数人の子供達が悪びれることなく笑顔を浮かべて
私達の前に現れた。
「だって早く見たかったんだもん!」
「この人が癒し子様ですか⁉︎」
「こんにちは‼︎」
「お花どうぞ‼︎」
見つかってしまえば後は開き直ってわあわあと
私を取り囲むように声をかけて来る。
エル君はと言えば、護衛なのに危険はないと
判断したのかそんな私を数歩離れたところから
静かに見守っていた。
「えーと、ありがとうございます!ユーリって
言います、よろしくお願いしますね。」
子供のパワーに圧倒されてやっと名乗れば、
子供達も口々によろしくお願いしまぁす!と
返してくれた。かわいい。
「さあ、講堂に戻りなさい!これからユーリ様が
素敵なプレゼントをくださいますよ。」
院長先生に促されて子供達はパタパタと走り出す。
そう、これから孤児院の講堂で子供達の見てる前で
籠やワイン樽に加護を付けてみせるのだ。
講堂に入るとそこにはたくさんの子供達が
待っていた。風邪や体調不良で見に来られない
子達以外はみな集まって来たらしい。中には
大人も混じっているから、あれはここで働いている
人達だろうか。体調不良の子達には帰る前に
癒しの力を使って治してあげよう。そう思いながら
子供達に改めて挨拶をして皆の前で大きな
ピクニックバスケットに額を寄せる。
いつものように祈れば、額にふんわりと熱を感じて
それと同時に子供達から歓声が上がった。
明るい金色の光に包まれた籠の中からパンや
お菓子が湧いて出てくる様子は子供達の心を
がっちり掴んだみたいで、気分はマジシャンだ。
子供だけでなく大人も目を丸くして驚いて
くれたので目の前で実演して見せて良かった、
楽しんでくれたかな?
バスケットは3個、ワイン樽は2つあったので
順番に加護を付けていく。
「癒し子様とイリューディア神様のご加護が
ついた食べ物と飲み物ですよ。みんな感謝して
大切に口にしなさい。」
院長先生の声にはぁい、とかわいい声がまた
上がった。
トランタニア領へと走る馬車の中で私は
ため息をついていた。
「レジナスさんが来れなくなるなんて残念です。
大丈夫かなあ・・・。」
「正確には遅れるというお話です。僕たちが
孤児院を訪問しているうちか、遅くとも農作地に
加護を付けるまでには間に合うかと。」
私の向かいにちょこんと礼儀正しく座るエル君が
補足してくれる。今朝、出発の準備をしていたら
部屋を訪れたレジナスさんに頭を下げられたのだ。
なんでも大声殿下の即位式に出られない他国の
大使が二日後突然訪れることになり、リオン様も
レジナスさんもその対応に追われる事になったとか。
とりあえずやれるだけの準備をしたら昼までには
王宮を出て、私達を追ってくれるらしい。
孤児院の訪問はともかく農作地や牧場予定地の
訪問については、リオン様の補佐で土地管理や
領地争いの仲裁にも入った事があってあちこちの
地理にも詳しいレジナスさんの話も聞きたかったから
残念だ。早く合流が出来るといいけど。
「2人で一緒に頑張りましょうねエル君!」
気持ちを切り替えてそう笑いかければ、
「頑張るのはユーリ様です。僕はそれを補佐する
だけですから。頑張って下さい。」
2回も頑張れって言われた。え?他力本願は
やめろってことかな?
「レジナスさんがいない今、エル君だけが
頼りなんですよ⁉︎冷たいこと言わないで下さい!」
自分より歳下の子に必死で抗議した。
一応騎士さんや行政官の人達も同行してくれてるけど
何かあった時に気軽に頼れるのはレジナスさんか
エル君しか私にはいないのだ。
そうしたら、さすがのエル君もちょっと困ったように
眉を寄せて、仕方ないですねと言った。
「ユーリ様はたまに僕より子供っぽくなりますけど
本当に僕より歳上なんですか?」
そう聞かれたけどアラサーから10歳児に
なったかと思えば突然12歳くらいに成長して
みたりと私だって自分で自分のアイデンティティが
迷子状態なのだ。たとえ歳下だろうと頼れる時は
頼りたくもなる。
エル君にそんな私の事情は説明できないけど、
そういうわけだから、ちょっとくらいは頼っても
いいじゃない。
「歳上ですよ、なんならユーリお姉ちゃんって
呼んでもいいんですよ?でもいくら歳上でも
子供ですからね、不安な時は人に頼ったって
いいんです!」
開き直ったら、おねえちゃん・・・と呟いた
エル君はそれまで呆れたように冷たく見つめていた
私からぷいと視線を外した。
「バカなこと言わないで下さい。ユーリ様は
僕の主で、僕はユーリ様の剣です。」
そのまま黙って馬車の外を見つめてしまったけど
よく見ればその頬はうっすらと赤い。
あのエル君が照れている・・・⁉︎
もしかしてお姉ちゃんが欲しかったのかな⁉︎
それとも私のことをお姉ちゃん呼びしてみたいと
思ってくれたとか⁉︎
ふおぉ!と一瞬でテンションが上がった。
こんな天使みたいに可愛い子にお姉ちゃんって
呼ばれたら嬉しいんだけどな⁉︎
にこにこでエル君を見守っていたら
「ユーリ様、笑顔がうるさいです。もっと
落ち着いて下さい。じゃないと領主代行様の前で
転んだりますよ。」
辛辣な注意をされた。うざいってことか。
でもそれも反抗期の子供みたいで可愛い。
「エル君は可愛い子だっていうのが段々と
分かってきたので何を言われても怖くないですよ!」
「護衛に可愛いとかない、有り得ない・・・」
私の言葉に、外を見ながらエル君はいつものように
深くかぶりを振ったけど全然気にならない。
だって、頭を振るエル君は耳もほんのり赤くなって
いたからね。これは完全に照れている。
エル君の思わぬ可愛さを見つけて、レジナスさんが
いない不安で気が重くなっていたのがすっかり
解消されてしまった。我ながら現金だ。
その後も馬車は順調に進み、予定通りの時間に
トランタニア領に着いた。領主様の館の前に
馬車が停まると痩せ型で背の高い、50歳前後の
男の人が出迎えてくれた。
「ようこそ、ユーリ様。私は領主代行のシオンと
申します。この度は癒し子様自らこのトランタニアに
おいで頂き土地に加護まで授けていただけるなど、
どんなに感謝してもしきれません。
誠にありがとうございます!」
感激したようにニコニコと微笑むその顔は
目が細いのでなんだかキツネっぽい。
あのケモ耳付きの魔狐のコートを着たらよく
似合いそうだ。そんなことを考えながら挨拶を
交わしていたら、シオンさんはふと私の後ろに
目を向けた。キツネみたいな目をすがめた先に
佇んでいるのはエル君だ。
「そちらの方はユーリ様のお付きの方ですか?」
そういえば私は何とも思わないけど、こちらの
世界ではエル君みたいな真っ白な人は嫌な目で
見られることもあるんだっけ。
「はい、私の従者でとても良い子なんです!」
仲良しアピールでぱっとエル君と手を繋いだ。
こうすればどんなに珍しい容姿でも癒し子に
気に入られてると分かって虐められないはず。
突然手を握られたエル君は驚いたのか固まって
しまったけど、そのまま嫌がらずに大人しく
しておいてくれた方が仲良しアピールはしやすい。
「今日は従者のエル君もずっと一緒なんです、
よろしくお願いします‼︎」
こんな小さい子が私の護衛と言ってもシオンさんは
信じられないだろう。そう思ってエル君の手を
握ったまま紹介すれば、シオンさんもそれ以上
特に何を言うでもなくそうですか、と館の中へと
案内してくれた。
まだじっとエル君を見ているその目には、若干
好奇の視線は感じるけど嫌悪感は浮かんでいない。
良かった。
ほっとして館へと入ると、そのままシオンさんや
領内の有力者だと言う人達、私に同行してきた
行政官さんも交えた昼食会は滞りなく終わり
孤児院へと訪問に向かった。
それは白くて立派な三階建ての建物だ。
「本当に大きくて立派な所なんですね!」
仕事で外せないシオンさんとは昼食会で別れ、
代わりに案内してくれるトランタニアの領事官さんが
笑顔で頷き説明してくれる。
「領主様の配慮で保護された子供達の数に合わせて
改築や増築をしていたらこんなに大きくなって
しまいまして。他にもいくつか同じような孤児院が
領内にはあります。学び舎まで併設した孤児院は
領内ではここだけですが、ゆくゆくは他の孤児院も
近くに学び舎を建てようという話が出ていますよ。」
学校は読み書きだけでなく縫製やお料理なども
希望すれば習えるらしく、そこで手に職を付けて
立派に巣立つ孤児も多いという。どうやら
この学校は学問を習うだけでなく職を得るための
職業学校のようでもあるらしい。
「さきほどの昼食会でも若い侍従や侍女が
多いと思いませんでしたか?彼ら彼女らも、
孤児院出身でして。領主様は自らもそうして
身寄りのない者達に職を与え、他の貴族や
他領にも紹介状を書いて若い子達が働けるよう
支援なさっておりました。シオン様もそれを
引き継いでおられます。おかげさまでトランタニアは
人材には困りませんがお恥ずかしい話、その反面
教育のための資金繰りが厳しいのです。」
なるほど。土地はまだまだ開拓途中で収穫できる
農作物やお金になるようなものは少ない。
資金の工面はなかなか難しいんだろうなあ。
私の考えている牧場がうまくいけばいいんだけど。
「そんなに優しい領主様に会えないのは残念です。
こちらにはあまり戻って来ないんですか?」
もし会えたら、私の力で治せたかもしれないのに。
「前は年に何度か戻られて、その度に自分の保護した
孤児達とも交流するのを楽しみにして
おられたんですが、こちらに滞在中に体調を
崩すことが増えまして今は年に一度戻られれば
良い方です。やはり最近まで魔物が出ていた
程ですから、こちらは空気が悪いんでしょうね。」
その分シオン様が立派に務めてくれていますが
それでも領主様になかなか会えないのは残念です、と
領事官さんは話してくれた。
そんな説明を受けていたら、その間にもちらちら
こちらの視界に映るものがある。子供達の頭だ。
孤児院の中を歩きながら話していたんだけど、
背後や横の方から視線を感じていたんだよね・・・。
私達が気になって見に来ているらしい。
「こら!おとなしく待ってなさいと言ったでしょ⁉︎」
施設について一緒に説明してくれていた孤児院の
院長先生についに見つかってしまう。
ごめんなさーい、と声を揃えてぞろぞろと
数人の子供達が悪びれることなく笑顔を浮かべて
私達の前に現れた。
「だって早く見たかったんだもん!」
「この人が癒し子様ですか⁉︎」
「こんにちは‼︎」
「お花どうぞ‼︎」
見つかってしまえば後は開き直ってわあわあと
私を取り囲むように声をかけて来る。
エル君はと言えば、護衛なのに危険はないと
判断したのかそんな私を数歩離れたところから
静かに見守っていた。
「えーと、ありがとうございます!ユーリって
言います、よろしくお願いしますね。」
子供のパワーに圧倒されてやっと名乗れば、
子供達も口々によろしくお願いしまぁす!と
返してくれた。かわいい。
「さあ、講堂に戻りなさい!これからユーリ様が
素敵なプレゼントをくださいますよ。」
院長先生に促されて子供達はパタパタと走り出す。
そう、これから孤児院の講堂で子供達の見てる前で
籠やワイン樽に加護を付けてみせるのだ。
講堂に入るとそこにはたくさんの子供達が
待っていた。風邪や体調不良で見に来られない
子達以外はみな集まって来たらしい。中には
大人も混じっているから、あれはここで働いている
人達だろうか。体調不良の子達には帰る前に
癒しの力を使って治してあげよう。そう思いながら
子供達に改めて挨拶をして皆の前で大きな
ピクニックバスケットに額を寄せる。
いつものように祈れば、額にふんわりと熱を感じて
それと同時に子供達から歓声が上がった。
明るい金色の光に包まれた籠の中からパンや
お菓子が湧いて出てくる様子は子供達の心を
がっちり掴んだみたいで、気分はマジシャンだ。
子供だけでなく大人も目を丸くして驚いて
くれたので目の前で実演して見せて良かった、
楽しんでくれたかな?
バスケットは3個、ワイン樽は2つあったので
順番に加護を付けていく。
「癒し子様とイリューディア神様のご加護が
ついた食べ物と飲み物ですよ。みんな感謝して
大切に口にしなさい。」
院長先生の声にはぁい、とかわいい声がまた
上がった。
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