【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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第九章 剣と使徒

6

トランタニア領のホラン孤児院。

リオン様が私に視察をして欲しいと言ったそこは、
領内でも一番大きな孤児院だ。

身寄りのない子供達が50人前後暮らしていて、
学校も作ってあり孤児院の子達以外でも、
貧しかったり身寄りがないけど勉強をしたい
子供達も学べるようにしてある。

領主様はお年を召していて数年前から病気療養の
ために田舎の空気の良い所へ行っていて、
年若い後継者は別の領地でまだ領地経営諸々を
学んでいる最中らしい。

そのため現在のトランタニア領は、長年領主様に
仕えていた信頼する人を領主代行として残し
運営されているという。

その人は福祉関係の政策に熱心だった領主様の
意志を引き継いで身寄りのない孤児や貧しい
子供たちの保護にも力を注いでいるらしい。

「だから領主代行を立ててからもトランタニア領に
身を寄せる孤児も多くて、孤児院の補修費用や
運営補助金の申請も国に上がって来ていてね。」

リオン様が説明してくれる。資料を見ると
領地の大半は森林と荒地だ。最近やっと魔物が
出なくなったので孤児も含めて領民達が荒地を
少しずつ開拓しているところらしい。

「まあ見ての通り土地が痩せていて財政収入に
乏しい領地だから補助をするのは構わないんだけど
それとは別に一度ユーリに、その土地に豊穣の
加護の力を使ってもらえないかと考えたんだ。
農地に向いた、耕しやすく栄養のある土地になれば
領民のやる気も違ってくるだろうし、開拓して
豊かな土地が広がればその分孤児達も小作民として
そこに定住できる。そうして農作物の収穫量が
増えれば、ゆくゆくは国の補助に頼らずとも
やっていけるだろう?だから土地に加護を付けて
ついでに孤児院にも国からの寄付や食料を渡しがてら
ユーリには視察もしてもらおうかと考えたんだ。
癒し子が訪れたとなれば何かと淋しい思いを
している孤児達も気持ちが明るくなるのではと
思ってね。どうかな?」

なるほど。なんだったら加護を付けた土地を
開拓した後にダーヴィゼルドから例のジャージー牛
もどきを分けてもらって牧場を作るのもいいかも。

そうだ、そうしたら王都から半日しかかからない
距離のそこでもおいしいミルクやアイスが作れる。

ミルクからはバターやチーズも出来るから、
おいしいチーズケーキやラクレットがいつでも
食べられるようになるかも知れない!

白パンに溶けたチーズをたっぷりかけて食べたら
それはもう名作アニメ劇場の世界だ。おいしそう。

それに牛だけじゃなく羊も放牧するのはどうかな?
陛下じゃないけど、暖かい羊毛の服や寝具を作って
それも収入に出来ないだろうか。

そういえば昔遠足で行ったマザー牧場には
綺麗なピンク色の花畑が視界いっぱいに広がって
いたのも印象的だった。あんな風にできれば、
他から観光客も呼べないかな。

トランタニア領には身を寄せている孤児や
身寄りのない人も多いみたいだし雇用創出も
出来そうだ。そのためにも、まずは私が荒地に
加護を付けなければ。

「行きます!行って土地が豊かになるような
加護をつけますからダーヴィゼルドの牛さん達を
連れてきて牧場を作りましょう!そうすれば
おいしいアイスやチーズケーキがいつでも
食べられそうです‼︎」

「え?そこまで考えたの?もしかしてユーリ、
今お腹がすいてる?」

リオン様が目の前のお菓子を私に差し出してきた。
いや、違いますよ。お腹がすいてるから食べ物の事を
考えてこういう発想になった訳じゃないんだけど。

牧場を作って牛から取れる酪農製品や羊の
羊毛から作る衣類の話、ついでに花畑のことまで
話してみる。それを聞いたリオン様はなるほどねぇ、
と頷いた。

「軌道に乗るまでは少し時間がかかるかも
しれないけど面白い話だね。やってみたいなら
その件は向こうにも話は通しておくよ。
ユーリが視察に訪れる頃は牧場に良い場所も
見つけておいてくれるんじゃないかな。」

相変わらず癒し子のやりたい事はあっさりと
許可がおりる。それだけに失敗は出来ないから
責任重大だ。

「出発はいつですか?」

「向こうとのやり取りをもう少し詰めてからに
なるけど、数日中にはお願いすることになると
思うよ。今回は近場だから日帰りの予定なんだ。
だから同行者は護衛のエルに騎士が二人、
それから孤児院の補助金を出すに当たってそれが
適正かを確認するための行政官が二人随行するよ。」

てことは、初めてリオン様もレジナスさんも
一緒じゃないんだ。大丈夫かな。

そんな私の不安を感じ取ったのか、リオン様は
くすりと笑うと頭を撫でてくれた。

「本当は僕も行きたいところだけど、近場で日帰りの
視察にまで着いていくのではユーリの成長を
妨げる気がしてね。それでも心細かったら、
念のためレジナスだけでも同行させようか?」

その言葉に安心する。
やっぱり私は思ったよりもレジナスさんのことを
頼りにしているみたいだ。

「エル君が護衛してくれてレジナスさんまで
一緒について来てくれるならすごく嬉しいです!
よろしくお願いします‼︎」

そう言ってエル君とレジナスさんに笑いかければ、
相変わらずエル君は無表情で一度私に頭を
下げると視線を外した。つれないなあ。

レジナスさんは静かに頷いてくれて特に表情に
変わりはないけど、その耳は赤いような気がする。

そんなレジナスさんを、リオン様は面白いものを
見るようににこにこと眺めていた。



「えーっと、トランタニア領の領主様の館には
最初だけ挨拶に行けばいいんでしたよね?
孤児院に行って、領主代行様が加護を付けるのを
希望している土地と、牧場のために選定してくれて
いるはずの土地に加護を付けたら帰りは領主様の
館には挨拶に寄らないでそのまま真っ直ぐ
帰って来るんですよね?」

自分の部屋で視察の流れをエル君に確認する。

いよいよ明日の朝トランタニア領に出発するのだ。

こくりとエル君が頷く。

「はい。お昼頃に向こうに着くので、領主様の館で
簡単な昼食会を兼ねて領主代行の方にご挨拶を
することになっています。領主代行様も急な
仕事が入ってしまったためにその後の孤児院の
視察やユーリ様が土地に加護を付ける現場には
同行できず、それを残念に思っていると
聞きました。」

なるほど、着いた最初しか領主代行様とは
会えないなら後は私のする事が終わればそのまま
帰って来ていいんだね。昼食会さえきちんと
お行儀良くしていれば後は気楽そうだ。
そもそもが半日程度のスケジュールだし、
あっという間に終わりそう。

「孤児院には大きな籠とワイン樽を準備して
くれるように伝えてあるんですよね?」

大丈夫ですとまたエル君は頷いた。

孤児院には豊穣の力を使って、例のパンやお菓子が
なくならない籠と中身が減らないワイン樽を
寄付しようと思っている。それから、こちらからの
持ち込みで乾燥させたリンゴの砂糖漬けの
大きな壷も寄付として置いてくるつもりだ。

「エル君も食べてみましたか?砂糖漬けと
ただ乾燥させたのと、どちらが好きですか?」

「僕は普通の方が好きです」

男の子に砂糖漬けのドライフルーツは甘過ぎたかな。
ドライフルーツにしたリンゴは、マールの町長
ヨセフさんが私のお見舞い用にたくさん
贈ってくれた金のリンゴだ。

悪くなる前に試しに皮付きのままただ乾燥させた
ものと乾燥させてから砂糖漬けにしたものの
2種類のドライフルーツにしてみた。

そのどちらも、乾燥してもあの疲労が取れる
効果は変わらなかった。

むしろ乾燥させることで甘みがぎゅっと凝縮されて、
砂糖漬けの方は刻んでパウンドケーキに入れたり
紅茶に入れてフルーツティーにしても美味しかった。

これは孤児院への良いお土産になるだろうと、
寄付用の壷を準備してそれにも豊穣の加護を付けた。
これなら孤児院の子供達にいつでも甘くて
おいしいドライフルーツを楽しんでもらえる。

「道中のおやつ用にも少し持って行きましょう!」

ウキウキで小さめの革袋の中に自分の分の
ドライフルーツにしたリンゴを入れていると、

「ユーリ様、遠足じゃないんですよ・・・」

エル君がまた冷たい目で私を見て来た。
うーん、仲良くなるにはまだもう少しかかりそうだ。





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