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第九章 剣と使徒
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レジナスさんがまだ合流して来ないまま、
すでに私は目的の3つ目である牧場予定地まで
着いてしまった。
私と一緒に王宮から同行していた2人の行政官さんは
孤児院に残って国からの補助金支給のための書類を
作ったり手続きをしたりしているから、もし
レジナスさんが孤児院に行けば私達はもう農地や
牧場予定地へ向かったと教えてくれるはずだ。
早く追いついて来ないと、この牧場予定地にも
加護を付け終わって王宮へ帰っちゃうよ。
そう思っていたらエル君に話しかけられた。
「曇ってきたし空気も湿ってきた気がします。
雨が降るかも知れませんから、早くした方が
いいと思います。」
空を見上げれば確かにさっきよりも雲が出ている。
「でもここ、見た感じだと水場がないので水場も
確認しておきたいんですよね・・・。」
目の前の景色をぐるりと見る。
雄大に広がる草がまばらに生えた土地には
小高い丘もあり、納屋らしい小さな小屋が一つ。
ところどころに小さな森林が見えている。
本当は小さな小川でも流れていてくれれば
魚釣りも楽しめるかもしれないと思うのは
流石に欲張りだろうか。
同行してくれている領事官さんがえーと、と言って
簡単な地図を見せてくれる。
「今いるここのすぐ近くにある森の中に確か
泉があったと思います。もし水場をご希望でしたら
そこから水を引き込むことになるでしょうね。」
見れば馬車ですぐの場所でここからも近い。
どうせまだレジナスさんも合流しないし時間もある。
ピクニック気分で寄ってみようかな。
王宮からついて来てくれている護衛騎士さん達にも
許可してもらい、牧場予定地には良い牧草が
育つよう加護を付けてから早速向かう。
もし後からレジナスさんが追い付いても、
レジナスさんならきっと馬車の車輪跡から
私達を追って来れるだろう。
「雨が降ってこないうちに戻る方がいいと
思いますけど。」
なんてエル君は言っている。
「大丈夫ですよ、サッと見てくるだけですから!」
ヘーキヘーキ、と渋るエル君を押し切った。
そうして牧場予定地の中を突っ切って少し行った先の
鬱蒼とした森の前で馬車を止めてもらう。
「泉はこの先ですのでご案内します。」
そう言った領事官さんに馬車を降りて徒歩で
ついて行く。騎士さん2人も馬を馬車の近くに
繋いで徒歩だ。
歩きながら途中でキノコを見つけたり野営訓練の
見学の時にシェラさんが採取していたジャガイモ
みたいなイモも見つけた。
ハンカチに包んで、乾燥リンゴを入れている革袋に
こっそりそれを入れているとエル君に呆れられる。
「ユーリ様、そんなの取ってどうするんですか?」
いや、確かにもう王宮に帰るだけなんだけどさ。
王宮の庭園でキャンプ飯作りをしたら
怒られるだろうか。
そんな事をしながら更に進むと
「うわあ、綺麗なお花がいっぱい!」
その森の中には青紫の小さな花がたくさん
咲いていた。それを手に取ろうとしたらエル君が
ぱしっと私の手を掴んだ。
「ダメですユーリ様。これはジグリスです。
手折った茎から流れる露に触れればかぶれます。」
「ジグリス?」
領事官さんも頷く。
「よくご存知ですね。これはトランタニアにしか
ない花で、根っこを粉末にして薬にするんですが
摂取量を間違えれば毒にもなってしまうし、
その茎から流れる露はうっかり触るとかぶれて
しまうんですよ。お気を付け下さい。」
ツユクサみたいに小さくて可愛い花なのに
そんなだとは。慌てて手を引っ込める。
もしここを牧草地の一環として整備するなら
ジグリスは危ないので一掃することになる、なんて
説明を領事官さんはしてくれた。
その時だった。遠くの空で雷が低く鳴った。
「ほら、だから言ったじゃないですか。もう
戻りましょう。」
エル君が持って来た荷物入れから撥水加工のされた
ローブを取り出して私と領事官さんに手渡して
くれた。領事官さんの分まで準備している手際の
良さに感心する。
ちなみに騎士さん達は当然自分達の分のローブを
持ってきている。
「泉まで辿り着けなくて残念です・・・。
必要なら牧草地に水場を作るためにまた来ますから
呼んで下さいね!」
領事官さんにそう話している間にも、風が強く
なってくる。急ぎましょう、とエル君が促して
くれた時にはパラパラと大きな雨粒が落ち始めた。
「うわ‼︎」
あっという間にそれは白い糸を引いたような雨に
変わると土砂降りになって、私達のすぐ近くで
雷の音がした。
みんなで大きな木の下に避難するけどこの
土砂降りでは完全には雨を避けきれない。
撥水加工をしてあるローブも濡れ始めていた。
「だから言ったじゃないですか!」
雨音に負けないような大声を珍しくエル君が
上げた。いや・・・なんて言うかゴメン。
もう、と言いながらもエル君はしゃがみ込んで
地面を見ている。
「エル君?何してるんですか?」
「さっき歩いている時に馬車の車輪跡が見えました。
もしかすると作業用の小屋があってそこに向かう
荷運びの馬車が通っているかもしれません。
こんな木の下にいて濡れてしまうよりも、
その小屋に走る方がましだと思います。」
そう話してまた地面を一生懸命見ている。
車輪跡なんてあったっけ?よく見てるなあ。
「しかしここは荒れた土地の中にある森ですよ?
作業なんてする必要がない土地ですし、小屋が
あるなんて話は聞いたことがありませんが・・・」
私が加護を付ける土地を選んでくれた領事官さんが
首を傾げている。じゃあエル君が見た車輪跡は
何かの見間違いかな?と思った時だった。
エル君があった、と声を上げるとローブの
フードを被って私達を見た。
「見つけました。少し走ってあの車輪跡が
どこまで続いているか確かめてきます。」
そう言って土砂降りの中を飛び出すとすぐに
その姿は見えなくなった。
「大丈夫かな、どうせなら走って馬車まで
戻った方がいいんじゃ・・・」
と、思ったけどダメだ。馬車一台の中に私や
エル君、体の大きな騎士さん2人に領事官さん
全員は入り切れない。
結局、このまま濡れながらいつ止むか分からない
雨をやり過ごすか、エル君が見付けてくるだろう
作業小屋に避難して雨が止むのを待つかの
どちらかしかなさそうだった。
どれくらい待っただろう?
そんなに長い時間はかからなかったと思う。
バシャバシャと足音が聞こえたかと思うと
濡れながらエル君が戻ってきた。
「この先に、思ったより立派なお屋敷がありました。
そこまでの道も硬めで泥に足を掬われずに行けます。
お屋敷の人にお願いして立ち寄らせてもらうことに
したので行きましょう。ユーリ様は騎士の背中に
おんぶしてもらって下さい。僕が案内するので
走りますよ。多少濡れますがそれはお屋敷で
乾かしてもらえますから。」
私よりも小さいのにエル君が有能過ぎる。
こんな短時間で雨宿り出来る場所を見つけて来て
そのお屋敷の人に緊急避難先として話まで
付けてくるなんて。
そんなエル君の言葉を聞いて領事官さんは
不思議そうな顔をした。
「屋敷ですか?こんな辺鄙な森の中に?おかしいな、
一体いつの間に・・・と言うか、どう考えても
不便なのに何のために・・・」
呟いていたけど、このままここで濡れていても
仕方がない。早く行きますよ、とエル君に
促されて私達は土砂降りの中に思い切って
飛び出した。
すでに私は目的の3つ目である牧場予定地まで
着いてしまった。
私と一緒に王宮から同行していた2人の行政官さんは
孤児院に残って国からの補助金支給のための書類を
作ったり手続きをしたりしているから、もし
レジナスさんが孤児院に行けば私達はもう農地や
牧場予定地へ向かったと教えてくれるはずだ。
早く追いついて来ないと、この牧場予定地にも
加護を付け終わって王宮へ帰っちゃうよ。
そう思っていたらエル君に話しかけられた。
「曇ってきたし空気も湿ってきた気がします。
雨が降るかも知れませんから、早くした方が
いいと思います。」
空を見上げれば確かにさっきよりも雲が出ている。
「でもここ、見た感じだと水場がないので水場も
確認しておきたいんですよね・・・。」
目の前の景色をぐるりと見る。
雄大に広がる草がまばらに生えた土地には
小高い丘もあり、納屋らしい小さな小屋が一つ。
ところどころに小さな森林が見えている。
本当は小さな小川でも流れていてくれれば
魚釣りも楽しめるかもしれないと思うのは
流石に欲張りだろうか。
同行してくれている領事官さんがえーと、と言って
簡単な地図を見せてくれる。
「今いるここのすぐ近くにある森の中に確か
泉があったと思います。もし水場をご希望でしたら
そこから水を引き込むことになるでしょうね。」
見れば馬車ですぐの場所でここからも近い。
どうせまだレジナスさんも合流しないし時間もある。
ピクニック気分で寄ってみようかな。
王宮からついて来てくれている護衛騎士さん達にも
許可してもらい、牧場予定地には良い牧草が
育つよう加護を付けてから早速向かう。
もし後からレジナスさんが追い付いても、
レジナスさんならきっと馬車の車輪跡から
私達を追って来れるだろう。
「雨が降ってこないうちに戻る方がいいと
思いますけど。」
なんてエル君は言っている。
「大丈夫ですよ、サッと見てくるだけですから!」
ヘーキヘーキ、と渋るエル君を押し切った。
そうして牧場予定地の中を突っ切って少し行った先の
鬱蒼とした森の前で馬車を止めてもらう。
「泉はこの先ですのでご案内します。」
そう言った領事官さんに馬車を降りて徒歩で
ついて行く。騎士さん2人も馬を馬車の近くに
繋いで徒歩だ。
歩きながら途中でキノコを見つけたり野営訓練の
見学の時にシェラさんが採取していたジャガイモ
みたいなイモも見つけた。
ハンカチに包んで、乾燥リンゴを入れている革袋に
こっそりそれを入れているとエル君に呆れられる。
「ユーリ様、そんなの取ってどうするんですか?」
いや、確かにもう王宮に帰るだけなんだけどさ。
王宮の庭園でキャンプ飯作りをしたら
怒られるだろうか。
そんな事をしながら更に進むと
「うわあ、綺麗なお花がいっぱい!」
その森の中には青紫の小さな花がたくさん
咲いていた。それを手に取ろうとしたらエル君が
ぱしっと私の手を掴んだ。
「ダメですユーリ様。これはジグリスです。
手折った茎から流れる露に触れればかぶれます。」
「ジグリス?」
領事官さんも頷く。
「よくご存知ですね。これはトランタニアにしか
ない花で、根っこを粉末にして薬にするんですが
摂取量を間違えれば毒にもなってしまうし、
その茎から流れる露はうっかり触るとかぶれて
しまうんですよ。お気を付け下さい。」
ツユクサみたいに小さくて可愛い花なのに
そんなだとは。慌てて手を引っ込める。
もしここを牧草地の一環として整備するなら
ジグリスは危ないので一掃することになる、なんて
説明を領事官さんはしてくれた。
その時だった。遠くの空で雷が低く鳴った。
「ほら、だから言ったじゃないですか。もう
戻りましょう。」
エル君が持って来た荷物入れから撥水加工のされた
ローブを取り出して私と領事官さんに手渡して
くれた。領事官さんの分まで準備している手際の
良さに感心する。
ちなみに騎士さん達は当然自分達の分のローブを
持ってきている。
「泉まで辿り着けなくて残念です・・・。
必要なら牧草地に水場を作るためにまた来ますから
呼んで下さいね!」
領事官さんにそう話している間にも、風が強く
なってくる。急ぎましょう、とエル君が促して
くれた時にはパラパラと大きな雨粒が落ち始めた。
「うわ‼︎」
あっという間にそれは白い糸を引いたような雨に
変わると土砂降りになって、私達のすぐ近くで
雷の音がした。
みんなで大きな木の下に避難するけどこの
土砂降りでは完全には雨を避けきれない。
撥水加工をしてあるローブも濡れ始めていた。
「だから言ったじゃないですか!」
雨音に負けないような大声を珍しくエル君が
上げた。いや・・・なんて言うかゴメン。
もう、と言いながらもエル君はしゃがみ込んで
地面を見ている。
「エル君?何してるんですか?」
「さっき歩いている時に馬車の車輪跡が見えました。
もしかすると作業用の小屋があってそこに向かう
荷運びの馬車が通っているかもしれません。
こんな木の下にいて濡れてしまうよりも、
その小屋に走る方がましだと思います。」
そう話してまた地面を一生懸命見ている。
車輪跡なんてあったっけ?よく見てるなあ。
「しかしここは荒れた土地の中にある森ですよ?
作業なんてする必要がない土地ですし、小屋が
あるなんて話は聞いたことがありませんが・・・」
私が加護を付ける土地を選んでくれた領事官さんが
首を傾げている。じゃあエル君が見た車輪跡は
何かの見間違いかな?と思った時だった。
エル君があった、と声を上げるとローブの
フードを被って私達を見た。
「見つけました。少し走ってあの車輪跡が
どこまで続いているか確かめてきます。」
そう言って土砂降りの中を飛び出すとすぐに
その姿は見えなくなった。
「大丈夫かな、どうせなら走って馬車まで
戻った方がいいんじゃ・・・」
と、思ったけどダメだ。馬車一台の中に私や
エル君、体の大きな騎士さん2人に領事官さん
全員は入り切れない。
結局、このまま濡れながらいつ止むか分からない
雨をやり過ごすか、エル君が見付けてくるだろう
作業小屋に避難して雨が止むのを待つかの
どちらかしかなさそうだった。
どれくらい待っただろう?
そんなに長い時間はかからなかったと思う。
バシャバシャと足音が聞こえたかと思うと
濡れながらエル君が戻ってきた。
「この先に、思ったより立派なお屋敷がありました。
そこまでの道も硬めで泥に足を掬われずに行けます。
お屋敷の人にお願いして立ち寄らせてもらうことに
したので行きましょう。ユーリ様は騎士の背中に
おんぶしてもらって下さい。僕が案内するので
走りますよ。多少濡れますがそれはお屋敷で
乾かしてもらえますから。」
私よりも小さいのにエル君が有能過ぎる。
こんな短時間で雨宿り出来る場所を見つけて来て
そのお屋敷の人に緊急避難先として話まで
付けてくるなんて。
そんなエル君の言葉を聞いて領事官さんは
不思議そうな顔をした。
「屋敷ですか?こんな辺鄙な森の中に?おかしいな、
一体いつの間に・・・と言うか、どう考えても
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