【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

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第九章 剣と使徒

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土砂降りの中を飛び出して走れば・・・と言っても
私は騎士さんの背中に張り付いていただけ
なんだけど、すぐに馬車一台分が通れそうな
わりとしっかりした道に出た。

「こっちです」

エル君を先頭に更に少し走れば、目の前にぼうっと
建物の灯りが見える。

3階建ての落ち着いた趣きのお屋敷だ。

その玄関の大きな両扉は開かれていて、中から
年若い侍女さんが2人こちらに顔を覗かせている。

そこめがけて飛び込めば、侍女さん達が柔らかな布を
手渡してくれたのでみんなでずぶ濡れになった
体を拭いた。

領事官さんが目を丸くしてキョロキョロしている。

「本当にお屋敷ですね。しかも立派な・・・
一体どなたがこんな辺鄙な所に、しかもいつの間に
建てたんでしょう。」

その時だ。

「ユーリ様⁉︎」

名前を呼ばれてびっくりする。そちらを見れば、
そこに立っていたのはトランタニアの領主代行の
シオンさんだった。

「え?シオンさん⁉︎」

向こうも驚いたように私達を見ている。

「急な雨に雨宿りをさせて欲しいと言う者がいると
聞いたのですが、まさかユーリ様達だったとは。
なぜこんな森の中にいるのですか?」

「私が加護を付けた牧草地がここのすぐ近く
だったんです!ここでシオンさんに会うなんて
思ってもみませんでした!」

「ここは私の別邸みたいなものなんです。
気分転換に来たり、今日のように仕事が立て込んで
出先から領主の館まで戻るのが億劫な時などには
よく使っております。」

そして使っている人間も少数の侍女さんだけなのだと
さっき私達を迎え入れてくれた2人の侍女さんを
ちらりと見やった。

すらりと背が高くスレンダーで涼やかな目元の
ハンサム系美少女と、少し小柄でちょっと垂れた
目元が愛らしい巻き毛のショートカットの
2人の女の子がぺこりとお辞儀をする。

屋敷に招き入れてくれた時も今も一言も喋らない
おとなしい子達だ。

2人が私達に挨拶したのを見てシオンさんが
話を続ける。

「とりあえず服を乾かしましょう。この天気では
しばらく足止めされてしまいますから。
その間に夕食でも取って、差し支えなければ
泊まっていかれたらどうですか?」

確かに雨はまだ止みそうにもない。でも今日は
日帰りの予定だった。どうしよう。

そんな私の迷いを断ち切るようにシオンさんは
にこにこと笑顔を浮かべて提案して来た。

「夕食後、雨の様子を見ながらそちらの護衛騎士の
1人を領事官に同行させて領主の館へ向かわせては
どうです?領主の館には魔導士もいますから、
王宮へ精霊を飛ばして連絡しておけば良いのでは。」

エル君をちらりと見れば、少し考え込んでいたけど
ユーリ様が僕から離れないなら好きにしていいです、
と他の人達には聞こえないように言われた。

「それじゃあ申し訳ないんですが、シオンさんの
お言葉に甘えてお世話になってもいいですか?」

そう言うと、シオンさんは嬉しそうなその微笑みを
深めて笑顔がより一層キツネっぽくなった。

「もちろん、よろしいですとも。癒し子様を
お迎えできるなど素晴らしい偶然です。
ああ、その従者の子は召使い達の部屋の一つを
使えるようにしますね。さっそく案内を・・・」

「あ、いえ!いいんです!エル君は私の従者で
王宮でもずっと私の部屋にいたから、近くに
いてもらわないと落ち着かないので!一緒の
お部屋で大丈夫です‼︎」

「従者と一緒の部屋ですか?しかしそれは・・・」

「お世話になるのはこちらですから迷惑は
かけたくないんです。お願いします。」

熱心に頼んだら、そこまで言うならとシオンさんは
渋々だけど了承してくれた。

エル君の言葉に素直に従ってみる。

ここに着いてから、いつもなら私と距離を取って
護衛をしているエル君がなぜか自分から離れるなと
言っているし、実際今もいつもより近くにいる。
何か思うところがあるみたいだ。

その後、スレンダー美少女な侍女さんに部屋に
ひとまず案内されると

「ユーリ様、あの乾燥リンゴの砂糖漬けを下さい。」

革袋ごとでいいので。そうエル君が私にこっそりと
話しかけて来た。

「え?」

「あれで僕、食後のお茶を淹れます。ユーリ様は
あれを入れたお茶、好きでしたよね?」

「好きですけど・・・なんでわざわざ。」

革袋を出し渋る私に、さらにエル君は言葉を重ねる。

「ついでにここの料理人にも少し分けて、
明日の朝それを入れたパンケーキを作るように
頼んできますから。」

リンゴ入りパンケーキかぁ。それはまだ試したことは
ないかも。少し心が動いた。

「仕方ないですねぇ。じゃあはい。」

革袋を渡せば、その中を確かめたエル君が

「ユーリ様思ったよりたくさんキノコとか
取って来てますね。こんなにどうするんですか。」

呆れながらそれを持ってまだ部屋にいた例の
スレンダー美少女に料理人の所へ案内を頼んで
部屋を出て行った。

さて、その間に私は着替えようかな。
さっきシオンさんに

『この屋敷にはユーリ様のような年頃の少女用の
服がありません。大変申し訳ありませんが、
服が乾くまでの間はこの屋敷のお仕着せを
着ていただいていてもよろしいですか?』

そう言われた。お仕着せってことはさっきの
侍女さん達が着ていた、黒い侍女用の服だよね。

ちなみにエル君もお仕着せを勧められていた。
断ってさっさと自分用の着替えをローブの
入っていた袋から取り出していたけどホントに
準備がいい。

お仕着せを着たエル君も可愛かったかもしれない。
女装姿になっちゃうけど、それを見られなくて
少し残念だと思ったのはここだけの話だ。

そして私も置いてあったお仕着せを手に取って
確かめる。それは胸元にリボンがついた
白いブラウスとその上から着る、スカートが
ふんわりと膨らんだ黒いワンピースだった。
ふくらんだスカートの中からはたっぷりの白い
レースとフリルが重なった内スカートが
テニスウェアのアンダーみたいに覗いていて
それもかわいい。

着てみると侍女さんとの違いはフリルのついた
エプロンをしているかしていないかくらいだ。

少し大きかったけど、これはあの目元の垂れた
小柄な侍女さんの替えの服かな?

それにしても。鏡でまじまじと見る。
すごくメイドさんっぽい。元の世界のメイド喫茶の
制服と言われればそれで通用しそうだ。

かわいいけど、アラサーの自分には無縁な服装なので
コスプレでもしたようでちょっとだけ恥ずかしい。

その時、部屋の扉がノックされて夕食の準備が
出来たそうですよ、と騎士さんが声を掛けてくれた。

騎士さん2人は私に与えられた部屋の前で
護衛をしてくれていた。

はい、と答えて部屋から出ると私のお仕着せ姿を
見た騎士さん達が絶句した。2人ともみるみる
顔が赤くなって来たからそんなに恥ずかしいものでも
見せたかな?と気になる。

若干のメイド服コスプレな感じは否めないけど、
私はわりとこのワンピース気に入ったんだけどなあ。

「えーと、どうです?あんまり似合わないですか?」

一応そう聞いてみたら、2人とも首をぶんぶん振って

「そんなことないです!よくお似合いです‼︎」

「こんなにも侍女姿がお似合いだなんて、
ぜひオレ達にお仕えして欲しいくらいです‼︎」

全力で褒められた。あまりにも必死で褒めてくるので
なんだか無理やり褒めさせたようで申し訳なくなる。

そんな2人に晩餐用の部屋の前まで護衛されて
中に入ると、先に待っていたシオンさんと
領事官さんにも目を丸くして驚かれた。

「ユーリ様、よくお似合いで!癒し子様に
お仕着せを着せるなど恐れ多いと思いましたが、
こんなにもお似合いだとは・・・!」

驚いた後にシオンさんは興奮したように頬を
紅潮させて褒めてくれた。
領事官さんも、失礼かも知れませんが本当に
よくお似合いですよ、と笑いながら言ってくれる。

ちなみにその部屋にはエル君も私の給仕のために
立って待っていてくれたんだけど、珍しく
驚いた顔をしている。冷たい目で呆れられたように
見られるよりかはマシかな?









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