【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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第十一章 働かざる者食うべからず

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どうしておじさんみたいな男の人が私の髪飾りを
気にするんだろう?

不思議に思いつつも髪飾りを触りながら答える。

「これですか?これはプレゼントしてもらった
んです!素敵でしょう?」

私の答えにおじさんが目を細めて微笑んだ。

「気に入ってるのかい?」

「もちろん!普段使いで付けて欲しいとは言われて
るんですけど、あんまりにも素敵で勿体ないので
なかなか付けられないんですよ!」

なるほどねぇ、と頷いたおじさんが更に聞いてくる。

「それをくれた人はお嬢さんの人なのかい?」

・・・いい人?一瞬、言葉の意味を掴み損ねたけど、
おじさんの微笑む顔が妙にからかうようなニヤリと
した笑顔なのを見てハッとする。恋人からの
プレゼントとかどうかってことか!

そう思ったら、これをくれた時の頬をうっすらと
赤くしながら照れてはにかむように微笑んでいた
レジナスさんの顔を思い出してしまった。

「えーと・・・そ、そうです?」

なぜか疑問形で返してしまった。顔が熱い。
レジナスさんが今ここにいなくて良かった。

するとおじさんは、そうか!と言ってなぜか喜んだ。

「ちなみに、お嬢さんは魔導士かな?」

なぜか話が髪飾りから私の職業的なものに飛躍した。

どういう意味だろうかと思いつつ、まあこれ位なら
答えてもどうと言うことはないだろうと話す。

「いえ、魔導士ではないです。魔法はほんの少しだけ
使えますけど・・・」

イリューディアさんから授かっている癒しと豊穣の力
くらいしか私は使えないので返事に困る。

この世界に来てから、魔導士さんや神官さん達に
魔法の手ほどきを受けたけど、他の人達みたいに
氷を作ったり火を出したり、それこそ幻影魔法を
かけるなんてことは全然出来なかった。

どうやら私の使える力はイリューディアさんの加護の
力一択・・・それに関係する事象に特化している
らしい。

だから魔法を使えます!と胸を張って言えるかと
いえば微妙なところだ。

だけどそんな私の返答にもおじさんはまた満足そうに
そうかと頷いている。一体何なんだろう。

首を傾げていた私におじさんは更に笑顔を深めて

「ちなみにお嬢さん、騎士に知り合いはー・・・」

「ちょっとイーゴリさん‼︎」

何か言いかけたらニックさんに割り込まれた。

「なんだニック」

「この忙しい時にうちの従業員にちょっかい
出さないでくれます⁉︎いくら常連でも怒りますよ?
はい、リリちゃん!これ厨房に下げて来て‼︎」

ニックさんにお客さんのテーブルから下げたお皿の山
が乗ったお盆を渡される。

「落っことさないようにね!」

その声を背中に慎重に厨房へと足を運べば、私の後ろ
ではニックさんとイーゴリさんというその常連さん?
がまだわーわー話していた。

「おいおいニック、邪魔するなんてあの子のことが
気になるのか?」

「う、うるさいな!今日が初日の子に変なこと
しないでくれるかなあ⁉︎」

「顔が赤いぞ、狼狽えんなって」

さすがバイトリーダー、新人が絡まれていると
思ったら自分がからかわれるのも厭わないで私との
間に入ってくれたんだ。いい人だ。

そう思いながら厨房を覗けば、ちょうどコックさんが
さばいた魚の中身を選り分けているところだった。

いらないところで食べられる部分をくれたらそれを
集めて賄いパスタ的なものを作れそうだ。

そういえばお腹がすいた。カフェでも結局ケーキは
全部食べないうちにここに引きずられて来たから
働き詰めでまだなんにも食べていない。

食べたいなあ、おいしそうだなあ、とお魚をさばいて
いるところを見ていたら、コックさんの選り分けた
魚の内臓的なものが目についた。

あれは・・・いわゆるタラコでは?

そういえば白身魚のフライやムニエルなんかが
メニューにあった。その魚卵だろうか。

まじまじと見つめる私には気付かず、コックさんは
それを掴むとゴミ箱に投げ入れようとした。

「あっ‼︎」

思わず大きな声が出て、そのコックさんだけでなく
厨房の全員の注目を集めてしまう。

「どうかしたか?」

不思議そうに聞かれた。

「いえ、あの・・・それは食べないでそのまま
捨てちゃうんですか?」

「そりゃそうだ、いいとこ家畜のエサかなあ。」

何を言ってるんだと奇妙なものを見る目で見られた。

「ちょっと見せて下さい!」

コックさんの手にあるそれを見る。やっぱりそれは
どう見てもタラコだ。

やった!賄いでタラコスパゲティが食べられる。

ウキウキして、食べるのでこれ下さい!と言ったら
ギョッとされた。

「え⁉︎家畜のエサだぞ?大丈夫か⁉︎」

そんなに正気を疑わなくても。

「だってタラコスパゲティが出来ますよ?
私はイカと生クリームを合わせたクリームソースの
ものが好きなのでお願いします、作って下さい‼︎」

頭を下げる。だってこの世界の厨房、繊細な火力
調整に火の魔法を使ったりするから私にはムリだ。

そうして頭を下げてまで廃棄物を食べたいと言う私に
コックさんだけでなく厨房全体がざわついた。

なんでそんなに騒ぐのかな?捨てるはずのものを
食べたいと言ったのが、そこまでおかしいと思われる
ことなんだろうかと考えて、ふと気付く。

そっか、この国の食事が欧米風ならそもそも元から
魚卵を食べる習慣がないのか。

そりゃあ頭がおかしいと思われても仕方ないかぁ。

確かヨーロッパの方でも、海沿いの一部地域以外では
カラスミを作るかキャビアやイクラ以外のものは
捨てたり日本に輸出しているって前にテレビで
見た気がする。

バラエティ番組で、イタリアかどこかでタラコや
明太子のスパゲティを作ってみせたら向こうの
人達に意外だって言われて人気だったのも見たことが
あるし。

「こんなツブツブで生臭いのを本当に食べるのか?」

もう一度、念をおされるように聞かれたので頷く。

「バターと少しのお酒で和えて、熱い茹でたての
スパゲティに絡めるんです。ちょっとだけチャンユー
とマヨソースを混ぜると味に深みが出ておいしいし、
生臭さも気にならないですよ!」

「おい、随分と嬉しそうだな?こんな家畜のエサを
食べて喜んでいたなんて、嬢ちゃんここに来る前は
よっぽど貧しかったんだなあ・・・」

可哀想な子を見る目で厨房の人達に同情された。

「ご、誤解です!ホントにおいしいんですってば‼︎
ウソじゃないです、試しに作ってみて下さい!
私が責任持って食べますから‼︎」

ええ・・・とざわつく厨房に、何やってんだと
さっきまで軽口の応酬をしていたニックさんと、
イーゴリさんというあのおじさんが顔を覗かせた。

さすが常連、厨房にも顔を出すんだ。

必死でコックさんにお願いする私を眺めながら、
ニックさん達は他の人達から今の私のやり取りを
聞いていた。

「なるほどねぇ。俺の生まれの港町では確かに
たまに酒のツマミに魚の卵を食べたりしてたけど、
お嬢さんのいうような料理は見たことも食べたことも
ないなあ」

イーゴリさんがふうん、と顎を撫でた。やっぱり
この人は海の近くの出身だったらしい。

「でも俺だって、本店にいたけど向こうでもそんな
食べ方してなかったですよ?」

ニックさんも困惑していた。

よし、とイーゴリさんが頷いてコックさんに

「とりあえず、お嬢さんの言う料理を作ってみて
くれるか?なんだか俺も気になってきた。」

そう言うと常連さんの頼みなら、とコックさんも
渋々承知してくれる。

「絶対おいしいから大丈夫ですよ!まずかったら
今日の私のチップは全部みんなで分けていいです‼︎」

後で泣いて謝っても知らないぞ。そう思いながら
私は胸を張った。




■■■■■■■■■■■■■■■

いつも読んでいただきありがとうございます。
9月末は仕事が今年度の中間決算期で一時的に
繁忙期に入るため、ここまでで一旦お話を休止します。

再開は10/1(土)になりますので、申し訳ありませんがしばしお待ちください。
(仕事に目処がつけば9/30の夜にも更新します)

再開しましたらまたぜひ読みに来て下さいませ。
よろしくお願いいたします!
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