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第十二章 癒し子来たりて虎を呼ぶ
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それは本当に突然だった。
いつものようにベッドに入って、ルルーさんに
おやすみの挨拶をして目を閉じたら悪夢を見たのだ。
あの、神経質そうな細くて白い指が私の喉にかかる。
ヨナスの高笑いする声が聞こえた。その体を譲れ、
あの子の作ったものは全て私のものよと言う声が
頭の中に響く。
そこでハッと目が覚めた。まだ心臓がドキドキする。
思わずベッドから降りて、薄暗い中を鏡の前まで
歩いて行って自分の首元を確かめた。
あの首を絞められる感触が妙に生々しくて怖かった。
恐る恐る鏡を見れば、特に首にアザがあるとかは
ない。良かった、夢だった。
私の首にはあのヨナスのチョーカーがいつも通りに
くっついていて、真ん中の赤い石が静かに輝いて
いるだけだ。
ほっとしてもう一度ベッドに潜り込み二度寝をした。
・・・そしたらなんと、また同じような夢を見て
飛び起きた。
そんな事が三日連続であって、さすがにこれは
おかしいなと自分でも思い始める。
ちなみに、日中昼寝をしている時はそんな悪夢は
見ない。なので夜の睡眠不足は昼寝で補っていた
んだけど・・・
三日もそんな事が続いたら朝食の席でもリオン様に、
「ユーリ、まだ何だか眠そうだね?それに少し顔色が
悪くない?」
と言われてしまった。
「そ、そうですか⁉︎」
どうしよう。言った方がいいのかな。迷っていたら、
私をじいっと見つめていたリオン様が
「おいでユーリ。」
フォークを置いてそう微笑んだ。
え?まだ食べてる途中なんですけど・・・。
でもリオン様はにこにこして黙って待っている。
うっ、断りにくい。
仕方ないので自分の席を立ちリオン様のところへ
行くと、ひょいと抱き上げられてその体の前に
座らせられた。
例の、新しい座らせ方だ。背中がリオン様の胸元に
寄りかかるようにして座らせられて頭を撫でられ、
「心配ごとや気掛かりがあるなら遠慮しないで
何でも言っていいんだよ?」
そう言われた。その穏やかな話し方と、背中が
リオン様の体温でじんわりと暖まり気持ちよくて
寝不足の私はすぐに眠くなってくる。
うとうとしながら、この頃ヨナスの夢を見るという
ような事を話した。と、思う。
実は途中から本当に眠ってしまって覚えていない。
気付いた時には自分のベッドで寝ていたのだ。
話しながら寝てしまった私をリオン様が運んで
くれたらしい。
「お目覚めですか、ユーリ様。」
目をこすりながら起き上がったらエル君がいた。
「はい・・・。あれ?私、寝ちゃってたんですね。
朝ご飯、途中だったなあ。もしかしてもうお昼ご飯の
時間ですか?」
「こんな時まで食べ物のことを考えてるとか・・・。
今はまだお昼前ですが、リオン殿下が起きたら
執務室に来て欲しいって言ってましたよ。もし
読みかけの本でもあったら、それも持ってくるように
ともおっしゃっていました。」
なんだろう?珍しいな。不思議に思いつつ、
言われるがままにリオン様の執務室を訪れる。
「やあ、少しだけ顔がすっきりしたね。昼食は
ユーリの分もここに運ばせるから一緒に食べよう。」
私の顔色を見たリオン様は安心したように微笑み
そう言った。
「お昼を取ったらそのまま夕方までそこに座って、
持ってきた本でも読んでいて。今日はもう午前中の
うちにレニが来たから、午後は誰にも邪魔されずに
読書が出来ると思うよ。」
夕方までここにいて、それから僕と一緒に奥の院に
帰ろうね。そこまで言われてようやく、もしかして
リオン様は私を心配して一緒にいてくれようとして
いるのかなと思い当たった。
「なんだかすみません・・・。でも変ですね、
私にはカティヤ様の付けてくれた加護があるのに。」
「その事についてはカティヤにも相談してみようと
思っているけど、とりあえず今は夜眠れなかった分も
ゆっくり休むといいよ。」
ふんわりと微笑まれてそう言われたので申し訳ないと
思いながらも、リオン様の仕事の邪魔にならないよう
静かに読書をしていた。
お昼を食べて、3時のおやつの時間もリオン様は
私のためにお茶を淹れてくれて休憩しながら、
「どう?眠くなってきた?」
そんな事を聞いてくれたけど、眠るとヨナスの夢を
見るという緊張感からか全然眠くない。
このまま限界まで起きていて、気絶するように
眠れば朝まで夢も見ないで熟睡できないかな。
そんなことを言ったら、それは体に悪過ぎるでしょう
とリオン様に眉を顰められた。
「おやつを食べたら昼寝でもした方がいいと僕は
思うけどなあ。」
「リオン様が働いているところで寝るのはなんだか
申し訳なくて出来ないですよ!」
そう答えたらふうん、と考えたリオン様はそこで
レジナスさんの方を見た。
「レジナス、君、そこに座ってユーリを膝の上に
座らせてあげて。」
「は⁉︎」
「何言ってるんですかリオン様‼︎」
レジナスさんは目を丸くした。私も思わず声を上げる。
「レジナスは僕よりも体が大きいから、座り心地も
大きな椅子みたいに安定していて落ち着くと思うよ。
それにレジナスもユーリを膝の上に座らせたことが
ないでしょ?いい機会だよ。」
邪気のない笑顔でそう言うリオン様は本気だ。
「私、普通にソファに座って読書するだけで充分
なんですけど⁉︎」
「まあまあ」
私の言うことに聞く耳を持たずに、リオン様は
ひょいと私を抱き上げた。
「じゃあレジナス、そこに座って。」
「いや、しかし護衛は」
「エルもいるから大丈夫。さあ早く。」
戸惑うレジナスさんを強引にソファに座らせると、
リオン様は私をその膝の上に降ろした。
レジナスさん、腰の左右に帯剣していたのにそれも
リオン様にさっさと外されてしまっている。
「リオン様、剣まで取られると本当に護衛の意味が」
困っているレジナスさんのことは全くお構いなしに
リオン様は私に話しかけてきた。
「剣の音がユーリを邪魔するといけないからね。
どう、ユーリ。レジナスの膝の座り心地は。」
剣の音が邪魔?どういう意味かな?不思議に
思ったけど、初めて座ったレジナスさんの膝の
座り心地は悪くない。
「すごく安定してますね。」
緊張からかちょっと固いけど。リオン様もそう
思ったらしく、
「固いよレジナス。もっと力を抜いて、ソファに
背を預けて。ほら、ユーリもレジナスに寄りかかって
本を読んでいていいんだよ。」
そんな指示をしてくる。仕方がないので私も
レジナスさんも言われた通りにする。
「そうそう、それでいい。じゃあユーリはまた
気兼ねなく読書をするといいよ。」
「リオン様、俺はどうすれば」
確かに。剣まで取られてただ座らされ、私の椅子と
化したレジナスさんは手持ち無沙汰だろう。
「君はユーリの頭を撫でてあげるかお腹に手を回して
抱きしめてあげていて。」
なにそれ。一体リオン様はどうしちゃったんだろう。
すると、ちょっと考えたレジナスさんは私のお腹に
手を回して抱き締める方を選んだ。
その両腕の上に本を立てて読めば、レジナスさんの
腕はまるで読書台みたいだ。意外と読みやすい。
「なんかすみません・・・」
「リオン様の言うことだから仕方ないな。しかし、
どうしてまたこんな事を。」
二人で不思議に思っていたけど、そのままとりあえず
読書を続けていたら自分を包み込むようにして
座っているレジナスさんの体温でぽかぽかしてきて
眠くなってきた。うとうとする私の耳にリオン様の
小声が聞こえる。
「ああ、やっと眠りそうだね。レジナス、ユーリが
本を落とさないように気を付けてあげて。」
・・・もしかして私を眠らせるためにこんなことを
したのかな。剣が邪魔っていうのはその音で私が
目を覚さないように?
「ほんと・・・気を使わせてごめんなさい・・・」
睡魔に引き込まれながらやっとの思いでそう言えば、
「いいんだよ。ゆっくり休んで。」
リオン様の声が頭の上から降ってきて、髪の毛を
優しく撫でられる感触がした。そうして朝に続いて
再度私は眠り込んでしまったのだった。
いつものようにベッドに入って、ルルーさんに
おやすみの挨拶をして目を閉じたら悪夢を見たのだ。
あの、神経質そうな細くて白い指が私の喉にかかる。
ヨナスの高笑いする声が聞こえた。その体を譲れ、
あの子の作ったものは全て私のものよと言う声が
頭の中に響く。
そこでハッと目が覚めた。まだ心臓がドキドキする。
思わずベッドから降りて、薄暗い中を鏡の前まで
歩いて行って自分の首元を確かめた。
あの首を絞められる感触が妙に生々しくて怖かった。
恐る恐る鏡を見れば、特に首にアザがあるとかは
ない。良かった、夢だった。
私の首にはあのヨナスのチョーカーがいつも通りに
くっついていて、真ん中の赤い石が静かに輝いて
いるだけだ。
ほっとしてもう一度ベッドに潜り込み二度寝をした。
・・・そしたらなんと、また同じような夢を見て
飛び起きた。
そんな事が三日連続であって、さすがにこれは
おかしいなと自分でも思い始める。
ちなみに、日中昼寝をしている時はそんな悪夢は
見ない。なので夜の睡眠不足は昼寝で補っていた
んだけど・・・
三日もそんな事が続いたら朝食の席でもリオン様に、
「ユーリ、まだ何だか眠そうだね?それに少し顔色が
悪くない?」
と言われてしまった。
「そ、そうですか⁉︎」
どうしよう。言った方がいいのかな。迷っていたら、
私をじいっと見つめていたリオン様が
「おいでユーリ。」
フォークを置いてそう微笑んだ。
え?まだ食べてる途中なんですけど・・・。
でもリオン様はにこにこして黙って待っている。
うっ、断りにくい。
仕方ないので自分の席を立ちリオン様のところへ
行くと、ひょいと抱き上げられてその体の前に
座らせられた。
例の、新しい座らせ方だ。背中がリオン様の胸元に
寄りかかるようにして座らせられて頭を撫でられ、
「心配ごとや気掛かりがあるなら遠慮しないで
何でも言っていいんだよ?」
そう言われた。その穏やかな話し方と、背中が
リオン様の体温でじんわりと暖まり気持ちよくて
寝不足の私はすぐに眠くなってくる。
うとうとしながら、この頃ヨナスの夢を見るという
ような事を話した。と、思う。
実は途中から本当に眠ってしまって覚えていない。
気付いた時には自分のベッドで寝ていたのだ。
話しながら寝てしまった私をリオン様が運んで
くれたらしい。
「お目覚めですか、ユーリ様。」
目をこすりながら起き上がったらエル君がいた。
「はい・・・。あれ?私、寝ちゃってたんですね。
朝ご飯、途中だったなあ。もしかしてもうお昼ご飯の
時間ですか?」
「こんな時まで食べ物のことを考えてるとか・・・。
今はまだお昼前ですが、リオン殿下が起きたら
執務室に来て欲しいって言ってましたよ。もし
読みかけの本でもあったら、それも持ってくるように
ともおっしゃっていました。」
なんだろう?珍しいな。不思議に思いつつ、
言われるがままにリオン様の執務室を訪れる。
「やあ、少しだけ顔がすっきりしたね。昼食は
ユーリの分もここに運ばせるから一緒に食べよう。」
私の顔色を見たリオン様は安心したように微笑み
そう言った。
「お昼を取ったらそのまま夕方までそこに座って、
持ってきた本でも読んでいて。今日はもう午前中の
うちにレニが来たから、午後は誰にも邪魔されずに
読書が出来ると思うよ。」
夕方までここにいて、それから僕と一緒に奥の院に
帰ろうね。そこまで言われてようやく、もしかして
リオン様は私を心配して一緒にいてくれようとして
いるのかなと思い当たった。
「なんだかすみません・・・。でも変ですね、
私にはカティヤ様の付けてくれた加護があるのに。」
「その事についてはカティヤにも相談してみようと
思っているけど、とりあえず今は夜眠れなかった分も
ゆっくり休むといいよ。」
ふんわりと微笑まれてそう言われたので申し訳ないと
思いながらも、リオン様の仕事の邪魔にならないよう
静かに読書をしていた。
お昼を食べて、3時のおやつの時間もリオン様は
私のためにお茶を淹れてくれて休憩しながら、
「どう?眠くなってきた?」
そんな事を聞いてくれたけど、眠るとヨナスの夢を
見るという緊張感からか全然眠くない。
このまま限界まで起きていて、気絶するように
眠れば朝まで夢も見ないで熟睡できないかな。
そんなことを言ったら、それは体に悪過ぎるでしょう
とリオン様に眉を顰められた。
「おやつを食べたら昼寝でもした方がいいと僕は
思うけどなあ。」
「リオン様が働いているところで寝るのはなんだか
申し訳なくて出来ないですよ!」
そう答えたらふうん、と考えたリオン様はそこで
レジナスさんの方を見た。
「レジナス、君、そこに座ってユーリを膝の上に
座らせてあげて。」
「は⁉︎」
「何言ってるんですかリオン様‼︎」
レジナスさんは目を丸くした。私も思わず声を上げる。
「レジナスは僕よりも体が大きいから、座り心地も
大きな椅子みたいに安定していて落ち着くと思うよ。
それにレジナスもユーリを膝の上に座らせたことが
ないでしょ?いい機会だよ。」
邪気のない笑顔でそう言うリオン様は本気だ。
「私、普通にソファに座って読書するだけで充分
なんですけど⁉︎」
「まあまあ」
私の言うことに聞く耳を持たずに、リオン様は
ひょいと私を抱き上げた。
「じゃあレジナス、そこに座って。」
「いや、しかし護衛は」
「エルもいるから大丈夫。さあ早く。」
戸惑うレジナスさんを強引にソファに座らせると、
リオン様は私をその膝の上に降ろした。
レジナスさん、腰の左右に帯剣していたのにそれも
リオン様にさっさと外されてしまっている。
「リオン様、剣まで取られると本当に護衛の意味が」
困っているレジナスさんのことは全くお構いなしに
リオン様は私に話しかけてきた。
「剣の音がユーリを邪魔するといけないからね。
どう、ユーリ。レジナスの膝の座り心地は。」
剣の音が邪魔?どういう意味かな?不思議に
思ったけど、初めて座ったレジナスさんの膝の
座り心地は悪くない。
「すごく安定してますね。」
緊張からかちょっと固いけど。リオン様もそう
思ったらしく、
「固いよレジナス。もっと力を抜いて、ソファに
背を預けて。ほら、ユーリもレジナスに寄りかかって
本を読んでいていいんだよ。」
そんな指示をしてくる。仕方がないので私も
レジナスさんも言われた通りにする。
「そうそう、それでいい。じゃあユーリはまた
気兼ねなく読書をするといいよ。」
「リオン様、俺はどうすれば」
確かに。剣まで取られてただ座らされ、私の椅子と
化したレジナスさんは手持ち無沙汰だろう。
「君はユーリの頭を撫でてあげるかお腹に手を回して
抱きしめてあげていて。」
なにそれ。一体リオン様はどうしちゃったんだろう。
すると、ちょっと考えたレジナスさんは私のお腹に
手を回して抱き締める方を選んだ。
その両腕の上に本を立てて読めば、レジナスさんの
腕はまるで読書台みたいだ。意外と読みやすい。
「なんかすみません・・・」
「リオン様の言うことだから仕方ないな。しかし、
どうしてまたこんな事を。」
二人で不思議に思っていたけど、そのままとりあえず
読書を続けていたら自分を包み込むようにして
座っているレジナスさんの体温でぽかぽかしてきて
眠くなってきた。うとうとする私の耳にリオン様の
小声が聞こえる。
「ああ、やっと眠りそうだね。レジナス、ユーリが
本を落とさないように気を付けてあげて。」
・・・もしかして私を眠らせるためにこんなことを
したのかな。剣が邪魔っていうのはその音で私が
目を覚さないように?
「ほんと・・・気を使わせてごめんなさい・・・」
睡魔に引き込まれながらやっとの思いでそう言えば、
「いいんだよ。ゆっくり休んで。」
リオン様の声が頭の上から降ってきて、髪の毛を
優しく撫でられる感触がした。そうして朝に続いて
再度私は眠り込んでしまったのだった。
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