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第十四章 追録:黒豹は闇夜に歩く
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小さく鼻歌を歌いながらバロイ国の宮殿に広がる
森林の中をオレは歩く。
馬で駆け、王宮の近くにそれは結んでから早速
エルから聞いていた毒虫の捕獲器を覗けば中には
何匹もそれが入っていた。
前足と体の間にあるコブのような節の間に気を付けて
極細の針をぷつりと刺せば、中からは黒い汁が溢れ
出して来る。
それを注意深く小瓶に入れて、また別の捕獲器を
覗く。そうして小瓶の中身を黒い液体で満たしてから
今度は温室へと向かった。
探すのは百合のような大ぶりの白い花弁に紫色の筋が
放射状に広がる奇妙な柄の花だ。
見つけ出してその中心を確かめれば、緑がかった金色
の花粉がびっしりとついている。
持参した小さな匙でその花粉を救い取り紙に落として
集めてからそれを丁寧にたたんだ。
ぐるりと辺りを見回せばエルから聞いていた第二殿下
の部屋に飾られていることが多い・・・おそらく殿下
お気に入りの花だろうそれがたくさん栽培されている
のも見付ける。
「美しい花ですね、できればユーリ様に持ち帰って
あげたいものです。」
今度はそれを花瓶に挿せる程度手折り、エルに聞いて
いた第二殿下の宮殿内へ忍び込む。
エルの話ではこの時間帯、第二殿下は人払いをして
配下の者達とあれこれ話し合っていると言う。
それなら寝室に今は誰もいないはず。
寝室側のバルコニーから第二殿下の寝室へと直接
入り込めば、さっき温室で手折ってきたのと同じ花が
枕元に飾られていた。
自分の持ち込んだものと入れ替えれば新たに花瓶に
飾られたそれは元からあったものよりも色鮮やかで
美しい。
今は暗くて分かりにくいが、朝になれば思わずその
甘く優しい香りを感じたくて顔を寄せるだろう。
そうでなくてもバルコニーに近いのだ、朝になって
侍女が窓を開け放てばそこから吹き込む爽やかな朝の
風は花の香りと共に花粉もベッドへと運ぶ。
懐の紙を取り出して、そこから慎重に花粉を小匙に
取ると枕元へ飾った花の中心へと落とした。
念のため室内の別の場所に飾られている他の花にも
同じようにそれを振りかけた。
それから室内を見渡して、非常時に使うであろう
薬箱も見つける。
箱を開ければ中には液体状のものから塗り薬まで
一揃い綺麗に収められていた。
「さて、どれを使うのか・・・」
かぶれた肌を治すならやはり塗り薬だろうか?
懐から小瓶を取り出して中の黒い液体を塗り薬の
入れ物へとたらす。
さっき毒虫から集めてきたそれはかなりの濃度に
なったのか、とろりと粘度を持ってしたたった。
薄い水色の塗り薬に落ちた黒は、ぐるりとひとまぜ
すればあっという間に塗り薬の中に混じってしまい
その色を消す。
念のため、液体状の飲み薬の方にもそれを入れて
振り混ぜておいた。
後は帰りに第二殿下専用の水源に全て入れてしまう
つもりだ。水で薄まるだろうから、数日も寝込まない
だろう。
しかもこの王宮にはユーリ様にお願いしてバロイ国
への献上品にした、例の軽い病や怪我が治る加護の
ついたワインがある。
あれで治されてしまえばこんな嫌がらせは数日どころ
か半日も持たない。
それを思えばこんなのは本当に軽い子どものいたずら
だ。憂さ晴らしにもならない。
それ以前に、本当はこんな子どものいたずらじみた
まどろっこしいことは嫌いなのだが。
首を取ってくるのがダメなら階段に細い針金でも
張っておけば足を引っ掛けた殿下が勝手にそこから
転げ落ちてくれるし、うまくいけば足の一本も切り
落とせるかもしれないのに。
血を見ないような仕返しなど、何とも加減が難しい。
そう思いながらあと他に出来ることはないだろうかと
考えていた時だ。
寝室に繋がる私室から第二殿下らしい女性の声が
聞こえてきた。
「癒し子が現れたですって⁉︎」
がちゃんと乱暴に置いたらしい茶器の鳴る音とその
声を荒げた様子に、そっと様子を伺う。
こちらからはその後ろ姿しか見えないが思わず
立ち上がったらしいその背には、ユーリ様と同じ
ようなまっすぐで長い髪の毛がさらさらと流れた。
薬花よりも僅かに青みの強いその髪色に、合間から
垣間見えるほっそりとした白い腕や豊かな胸、細く
くびれた腰といい傍目に見れば誰もが目を惹かれる
随分と美しい姫君に違いない。
・・・ユーリ様をその目にした事がない者であれば、
であるが。
「あり得ないわ。公国にはルーシャ国ほど遠い国と
転移魔法で道を繋げるような魔導士はいないはず!
それにルーシャ国からも魔導士は一人も同行して
いないと確認済みよ。それなのに一体なぜ・・・‼︎」
テーブルの上で拳を握った手が怒りのあまり震えて
いるのがこちらからも窺い知れた。
「し、しかし事実なのです!今日の昼間のことです。
目にもまばゆい光が公国の宮殿の一角に満ち溢れ、
見たこともないような光の柱が立ったのです。それを
目にした者達が急ぎその場に駆けつけますと・・・」
言い訳をするように早口でまくし立てていた男は
そこで一度息をついてから続けた。
「・・・いたのです。そこに今まで見たこともない
ほど神々しい光を纏った美しい女性が。開け放たれた
両開きの扉の前に、リオン殿下がこちらで側に置いて
片時も離そうとしなかったあの小柄なベール姿の少女
を伴って佇んでおりました。」
それを聞いてテーブルを囲んでいた別の男が意見を
した。
「確かにリオン殿下が伴っていた者は癒し子が殿下へ
託した侍女らしいと言う話だが、たったそれだけで
その者が癒し子とお前は判断したのか?」
「あれは直にその姿を見た者でなければ分かります
まい。少しきつくこちらを見つめる宝石のような瞳の
美しさといい、口元に浮かべた微笑みといい、一度
目にすれば惹きつけられてやまない形容しがたい
神々しさと優美さはとても同じ人間とは思えません、
あれはまるで地上に舞い降りた女神です!」
熱に浮かされたように男はユーリ様を称える言葉を
紡いでいる。なかなか良いことを言うではないか。
ただし男がユーリ様を褒め称えるほどに第二殿下の
機嫌は悪くなっていくが。
「・・・どうして癒し子が?」
殿下は怒りを鎮めようとしたのかさっきまでとは
打って変わって低い声を出した。
間者の男に意見した者が考えながらもしかして、と
また発言するようだ。
「癒し子は嫉妬深さのあまりリオン王子殿下を一人で
視察に出すのを渋り、自分に似た者を供に付けたと
聞いております。我が国での滞在が伸びて帰りが遅い
のを、何かあったのかと疑った癒し子が嫉妬のあまり
自らの力を使って公国へ乗り込んできたのでは?」
何しろ神に選ばれた召喚者です、魔導士など介さず
とも転移できるのでは?
その言葉に間者の男が首を傾げる。
「しかし癒し子は嫉妬深いと言いますが実際目にして
みると微塵もそんな様子はありませんでしたよ?
怒っている風でもなく、むしろ人々に笑顔を向けよう
とした癒し子を独占したいとばかりにリオン王子殿下
の方から周囲にまるで見せつけるかのような口付けを
しておりました。周りは気にせず自分だけ見るように
とまでおっしゃり、癒し子を抱えると片時も視線を
外さずに自分の部屋へ運ばれたほどです。あれでは
逆に癒し子よりもリオン王子殿下の方が嫉妬深くも
見えましたが。」
そんな男と間者のやり取りに、殿下がきつく睨んだ
気配がした。
「・・・まるでリオン王子を取り込もうとした私の
策のせいで癒し子が現れたとでも言いたいみたいね?
それにお前も。私の手練手管は癒し子の前では全く
無意味だった上に、噂と違いリオン王子の方が癒し子
に夢中だとでも言うつもり?」
「いっ、いえ‼︎決してそのようなことは・・・!」
失言に気付いた男達は青くなってぺこぺこ頭を下げて
いたが、あの間者の男は頭を上げると言いにくそうに
また口を開いた。
「それでその・・・実は先ほどこちらに戻って来る
前に公子の様子を確かめて来ましたら、部屋から出て
本を抱えエーリク閣下の書斎へ足取りも軽く駆けて
行くところをこの目で見ました・・・。」
「何ですって?まさか癒し子の力なの⁉︎」
落ち着こうとしていた殿下の声がまた高くなった。
面白いほど動揺してくれる。こんなにも頭に血が
昇っていれば、オレがした細工にも気付かず簡単に
引っかかってくれるだろう。
「は、はい。恐らくは・・・。宴席の様子も最初の
方だけ見て来ましたが、その場で癒し子は噂に名高い
癒しの力を使いました。柱の陰から覗いていた私も
その力の恩恵に預かったのか体の重苦しさがすっかり
消え失せてしまいましたので公子もその力で回復して
しまったかと・・・」
ユーリ様は晩餐会の席で城下まで及ぶほどの力を使う
つもりだとオレにも教えてくれていた。
なるほどその言葉通りのことを行ったらしい。
その美しくも偉大な力の発露を見られなかったのが
残念だ。
「あんなにも時間をかけて、しかもわざわざメイスと
取引をしてまで手に入れた物を使ったというのに
一瞬で治してしまうなんて・・・!」
ぎり、と歯を食い縛る音が聞こえてくるようだった。
・・・さて、王位争いの計画の一端にも組み込んで
いたことが水の泡となったわけだがどうするかな?
寝室の壁に身を預けながら様子を見ていたら、
「・・・癒し子が治せるのは人や動物よね?馬車や
崖崩れの類いにも対処出来るのかしら。」
とんでもない事を言い出した。
確かに、ユーリ様のお力は生きる者全般だが逆に
言えば物は直せない。
それはユーリ様自身もおっしゃっていた。
まさかルーシャ国への帰り道で襲おうとでも言う
のだろうか。
どうやら子どもじみたいたずらの仕返しだけで帰る
わけにはいかなくなったようだった。
森林の中をオレは歩く。
馬で駆け、王宮の近くにそれは結んでから早速
エルから聞いていた毒虫の捕獲器を覗けば中には
何匹もそれが入っていた。
前足と体の間にあるコブのような節の間に気を付けて
極細の針をぷつりと刺せば、中からは黒い汁が溢れ
出して来る。
それを注意深く小瓶に入れて、また別の捕獲器を
覗く。そうして小瓶の中身を黒い液体で満たしてから
今度は温室へと向かった。
探すのは百合のような大ぶりの白い花弁に紫色の筋が
放射状に広がる奇妙な柄の花だ。
見つけ出してその中心を確かめれば、緑がかった金色
の花粉がびっしりとついている。
持参した小さな匙でその花粉を救い取り紙に落として
集めてからそれを丁寧にたたんだ。
ぐるりと辺りを見回せばエルから聞いていた第二殿下
の部屋に飾られていることが多い・・・おそらく殿下
お気に入りの花だろうそれがたくさん栽培されている
のも見付ける。
「美しい花ですね、できればユーリ様に持ち帰って
あげたいものです。」
今度はそれを花瓶に挿せる程度手折り、エルに聞いて
いた第二殿下の宮殿内へ忍び込む。
エルの話ではこの時間帯、第二殿下は人払いをして
配下の者達とあれこれ話し合っていると言う。
それなら寝室に今は誰もいないはず。
寝室側のバルコニーから第二殿下の寝室へと直接
入り込めば、さっき温室で手折ってきたのと同じ花が
枕元に飾られていた。
自分の持ち込んだものと入れ替えれば新たに花瓶に
飾られたそれは元からあったものよりも色鮮やかで
美しい。
今は暗くて分かりにくいが、朝になれば思わずその
甘く優しい香りを感じたくて顔を寄せるだろう。
そうでなくてもバルコニーに近いのだ、朝になって
侍女が窓を開け放てばそこから吹き込む爽やかな朝の
風は花の香りと共に花粉もベッドへと運ぶ。
懐の紙を取り出して、そこから慎重に花粉を小匙に
取ると枕元へ飾った花の中心へと落とした。
念のため室内の別の場所に飾られている他の花にも
同じようにそれを振りかけた。
それから室内を見渡して、非常時に使うであろう
薬箱も見つける。
箱を開ければ中には液体状のものから塗り薬まで
一揃い綺麗に収められていた。
「さて、どれを使うのか・・・」
かぶれた肌を治すならやはり塗り薬だろうか?
懐から小瓶を取り出して中の黒い液体を塗り薬の
入れ物へとたらす。
さっき毒虫から集めてきたそれはかなりの濃度に
なったのか、とろりと粘度を持ってしたたった。
薄い水色の塗り薬に落ちた黒は、ぐるりとひとまぜ
すればあっという間に塗り薬の中に混じってしまい
その色を消す。
念のため、液体状の飲み薬の方にもそれを入れて
振り混ぜておいた。
後は帰りに第二殿下専用の水源に全て入れてしまう
つもりだ。水で薄まるだろうから、数日も寝込まない
だろう。
しかもこの王宮にはユーリ様にお願いしてバロイ国
への献上品にした、例の軽い病や怪我が治る加護の
ついたワインがある。
あれで治されてしまえばこんな嫌がらせは数日どころ
か半日も持たない。
それを思えばこんなのは本当に軽い子どものいたずら
だ。憂さ晴らしにもならない。
それ以前に、本当はこんな子どものいたずらじみた
まどろっこしいことは嫌いなのだが。
首を取ってくるのがダメなら階段に細い針金でも
張っておけば足を引っ掛けた殿下が勝手にそこから
転げ落ちてくれるし、うまくいけば足の一本も切り
落とせるかもしれないのに。
血を見ないような仕返しなど、何とも加減が難しい。
そう思いながらあと他に出来ることはないだろうかと
考えていた時だ。
寝室に繋がる私室から第二殿下らしい女性の声が
聞こえてきた。
「癒し子が現れたですって⁉︎」
がちゃんと乱暴に置いたらしい茶器の鳴る音とその
声を荒げた様子に、そっと様子を伺う。
こちらからはその後ろ姿しか見えないが思わず
立ち上がったらしいその背には、ユーリ様と同じ
ようなまっすぐで長い髪の毛がさらさらと流れた。
薬花よりも僅かに青みの強いその髪色に、合間から
垣間見えるほっそりとした白い腕や豊かな胸、細く
くびれた腰といい傍目に見れば誰もが目を惹かれる
随分と美しい姫君に違いない。
・・・ユーリ様をその目にした事がない者であれば、
であるが。
「あり得ないわ。公国にはルーシャ国ほど遠い国と
転移魔法で道を繋げるような魔導士はいないはず!
それにルーシャ国からも魔導士は一人も同行して
いないと確認済みよ。それなのに一体なぜ・・・‼︎」
テーブルの上で拳を握った手が怒りのあまり震えて
いるのがこちらからも窺い知れた。
「し、しかし事実なのです!今日の昼間のことです。
目にもまばゆい光が公国の宮殿の一角に満ち溢れ、
見たこともないような光の柱が立ったのです。それを
目にした者達が急ぎその場に駆けつけますと・・・」
言い訳をするように早口でまくし立てていた男は
そこで一度息をついてから続けた。
「・・・いたのです。そこに今まで見たこともない
ほど神々しい光を纏った美しい女性が。開け放たれた
両開きの扉の前に、リオン殿下がこちらで側に置いて
片時も離そうとしなかったあの小柄なベール姿の少女
を伴って佇んでおりました。」
それを聞いてテーブルを囲んでいた別の男が意見を
した。
「確かにリオン殿下が伴っていた者は癒し子が殿下へ
託した侍女らしいと言う話だが、たったそれだけで
その者が癒し子とお前は判断したのか?」
「あれは直にその姿を見た者でなければ分かります
まい。少しきつくこちらを見つめる宝石のような瞳の
美しさといい、口元に浮かべた微笑みといい、一度
目にすれば惹きつけられてやまない形容しがたい
神々しさと優美さはとても同じ人間とは思えません、
あれはまるで地上に舞い降りた女神です!」
熱に浮かされたように男はユーリ様を称える言葉を
紡いでいる。なかなか良いことを言うではないか。
ただし男がユーリ様を褒め称えるほどに第二殿下の
機嫌は悪くなっていくが。
「・・・どうして癒し子が?」
殿下は怒りを鎮めようとしたのかさっきまでとは
打って変わって低い声を出した。
間者の男に意見した者が考えながらもしかして、と
また発言するようだ。
「癒し子は嫉妬深さのあまりリオン王子殿下を一人で
視察に出すのを渋り、自分に似た者を供に付けたと
聞いております。我が国での滞在が伸びて帰りが遅い
のを、何かあったのかと疑った癒し子が嫉妬のあまり
自らの力を使って公国へ乗り込んできたのでは?」
何しろ神に選ばれた召喚者です、魔導士など介さず
とも転移できるのでは?
その言葉に間者の男が首を傾げる。
「しかし癒し子は嫉妬深いと言いますが実際目にして
みると微塵もそんな様子はありませんでしたよ?
怒っている風でもなく、むしろ人々に笑顔を向けよう
とした癒し子を独占したいとばかりにリオン王子殿下
の方から周囲にまるで見せつけるかのような口付けを
しておりました。周りは気にせず自分だけ見るように
とまでおっしゃり、癒し子を抱えると片時も視線を
外さずに自分の部屋へ運ばれたほどです。あれでは
逆に癒し子よりもリオン王子殿下の方が嫉妬深くも
見えましたが。」
そんな男と間者のやり取りに、殿下がきつく睨んだ
気配がした。
「・・・まるでリオン王子を取り込もうとした私の
策のせいで癒し子が現れたとでも言いたいみたいね?
それにお前も。私の手練手管は癒し子の前では全く
無意味だった上に、噂と違いリオン王子の方が癒し子
に夢中だとでも言うつもり?」
「いっ、いえ‼︎決してそのようなことは・・・!」
失言に気付いた男達は青くなってぺこぺこ頭を下げて
いたが、あの間者の男は頭を上げると言いにくそうに
また口を開いた。
「それでその・・・実は先ほどこちらに戻って来る
前に公子の様子を確かめて来ましたら、部屋から出て
本を抱えエーリク閣下の書斎へ足取りも軽く駆けて
行くところをこの目で見ました・・・。」
「何ですって?まさか癒し子の力なの⁉︎」
落ち着こうとしていた殿下の声がまた高くなった。
面白いほど動揺してくれる。こんなにも頭に血が
昇っていれば、オレがした細工にも気付かず簡単に
引っかかってくれるだろう。
「は、はい。恐らくは・・・。宴席の様子も最初の
方だけ見て来ましたが、その場で癒し子は噂に名高い
癒しの力を使いました。柱の陰から覗いていた私も
その力の恩恵に預かったのか体の重苦しさがすっかり
消え失せてしまいましたので公子もその力で回復して
しまったかと・・・」
ユーリ様は晩餐会の席で城下まで及ぶほどの力を使う
つもりだとオレにも教えてくれていた。
なるほどその言葉通りのことを行ったらしい。
その美しくも偉大な力の発露を見られなかったのが
残念だ。
「あんなにも時間をかけて、しかもわざわざメイスと
取引をしてまで手に入れた物を使ったというのに
一瞬で治してしまうなんて・・・!」
ぎり、と歯を食い縛る音が聞こえてくるようだった。
・・・さて、王位争いの計画の一端にも組み込んで
いたことが水の泡となったわけだがどうするかな?
寝室の壁に身を預けながら様子を見ていたら、
「・・・癒し子が治せるのは人や動物よね?馬車や
崖崩れの類いにも対処出来るのかしら。」
とんでもない事を言い出した。
確かに、ユーリ様のお力は生きる者全般だが逆に
言えば物は直せない。
それはユーリ様自身もおっしゃっていた。
まさかルーシャ国への帰り道で襲おうとでも言う
のだろうか。
どうやら子どもじみたいたずらの仕返しだけで帰る
わけにはいかなくなったようだった。
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