【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

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挿話 突撃・隣の夕ごはん

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鏡の前に立った私は自分の姿を確かめる。
サイドを綺麗に編み込んだ髪の毛は後ろであの
レジナスさんからプレゼントされたリンゴの花の
髪留めで留めてある。

服装は赤いワンピースでそんなにスカートの
広がらないものだ。

靴もヒールの高くない歩きやすいもの。

ちらりと後ろのテーブルを見ればそこにはこれから
馬車に積む、プリシラさんのお店で手に入れた
モリー公国の香油セット、それから魔石を細かく
砕いて組み合わせたあのコースターをラッピング
した物が置いてある。

まだ試作品だけどとても綺麗で出来がいいので
それもお願いして貰ったのだ。

ユリウスさんのお母様、喜んでくれるかな?

そう。今日はこれからユリウスさんの家の夕食会へ
出掛けるのだ。

リオン様からの差し入れの高級なワインはすでに
馬車へつけてあるし、プリシラさんのカフェのあの
フルーツタルトも今頃ユリウスさんの家へ届けられて
いるだろう。

「この格好なら庭園に出ても歩きやすいですかね?」

くるくる回って後ろ姿や横から見た感じもチェック
しつつ、傍らのルルーさんに確かめる。

「ユーリ様の可愛らしさも充分伝わりますし、それ位
のスカート丈であればお庭の草木に引っ掛けて汚す
ようなことも動きにくいという事もないですよ。」

満足そうに頷いたルルーさんがオッケーを出して
くれた。

ユリウスさんからの招待状には、今回はガーデン
パーティー風に庭園での夕食会にするので気軽な
服装でという指定があった。

「ガーデンパーティーって初めてなので楽しみです、
どんな感じなんでしょうね?」

お供をしてくれるマリーさんとエル君に聞けば

「バイラル家の侍女から事前に仕入れた情報ですと、
この時期のバイラル邸の庭園ではユリウス様の魔法
実験で育てられた月光花が夜になると花開いてそれは
もう幻想的な風景らしいですよ。」

マリーさんが楽しそうに教えてくれた。またいわゆる
侍女の情報網というやつかな?

「それをユーリ様に見せたいと言うことなんですね」

なるほどとエル君も頷いている。だから『夕食会』で
『ガーデンパーティー風』なんだ。

ユリウスさんの家へと向かう馬車の中で月光花に
ついても教えてもらう。

昼間に浴びた太陽の光を溜め込んだ花の蕾は、夜に
なると月の光で花開いて昼間に溜め込んだ日光を淡く
放出するという。

淡い青色や真っ白な光を放つ様子は暗い山道を行く
旅人の道しるべ代わりにもなるので街灯のように
山道に沿って植えられることもあるとか。

それがユリウスさんの家にあるのは、王宮からの
依頼でより明るく輝く品種の月光花が欲しいと言われ
開発している試作品を植えているかららしい。

ほほう、と興味深く二人の話を聞いていたらやがて
馬車のスピードが落ちてゆっくりと止まった。

「着きましたね」

エル君とマリーさんが先に降り、それに続いて私も
馬車の扉に手をかけたら

「ようこそおいで下さいましたユーリ様。この日を
心待ちにしておりましたよ。」

柔らかな男の人の声がした。ふと見れば、赤毛を
綺麗な三つ編みにした整った顔立ちの男の人がいた。

整った顔立ちながらその顔に浮かんでいる微笑みは
そばかすはないもののユリウスさんや団長さんの
ように人好きのする笑顔だ。

「ゲラルドさん!」

「いつも愚弟が迷惑をかけております。その上、
レニ殿下にもよくお付き合い頂きユーリ様には
感謝申し上げます。」

ゲラルドさんが大声殿下の側近でユリウスさんの
すぐ上のお兄さんだと知ったのはつい最近の話だ。

レニ様がどうして私がシグウェルさんの顔に弱い事や
シグウェルさんを伴侶に選んだのを知っているのかが
不思議で、レニ様に誰からそんなことを聞いたのか
問い詰めたら教えてくれた。

ユリウスさん経由で情報を仕入れたゲラルドさんが
レニ様に教えていたらしい。

『お前は面食いだから顔が良くないと相手にされない
ってゲラルドが言ってたぞ!だから遊びに抜け出して
服を汚すな、見た目にも気をつかえってなんでか俺が
説教された!ていうか近いなお前、もっと離れろ!』

レニ様の情報源を問い詰めるために目の前に迫ったら
そう言って顔を赤くしながら教えてくれたっけ。

「ゲラルドさん、あんまりレニ様に変な情報を
与えないで下さいね・・・?」

ゲラルドさんに手を取ってもらい馬車を降りれば
ああ、とおかしそうにクスッと笑われた。

「レニ殿下のやる気を引き出すにはユーリ様のお名前
を出すのが一番効果的でして。そのためにも日々
ユーリ様の最新の情報をレニ殿下には与える必要が
ありますのでつい。大変申し訳ございません。」

つまり私はレニ様に勉強させるための、馬の鼻先に
ぶら下げられたニンジン・・・?

「普段からご迷惑をおかけしている詫びになるか
どうかは分かりませんが、今日はぜひ我が家の食事と
庭園の景色をお楽しみ下さい。それからリオン殿下
からも過分な贈り物をいただきそちらについても
お礼申し上げます。」

「団長さんの好きそうなお酒を選んだってリオン様は
話してました。お口に合えば嬉しいです!」

私の言葉にゲラルドさんは苦笑いする。

「うちの父は飲めればなんでも良い、という人間
ですので殿下にはかえって気を遣わせてしまって
申し訳ないくらいです。・・・さあ、それでは庭園に
ご案内いたしましょう。失礼致します。」

言うが早いか、ゲラルドさんは私をひょいと縦抱きに
した。

「なんでですか⁉︎」

「レジナスがいつもそのようにして移動しています
でしょう?一度自分も体験して見たかったんです。
それにレニ殿下へ自慢でき・・・話のタネになります
からね。」

抱かれて目線が揃いまじまじと見つめられた。

「なるほど、ユーリ様の瞳はとてもお美しい不思議な
お色をしておりますね。リオン殿下やレジナスが
いつも縦抱きにしてそのお顔を間近で見たがるのも
理解できます。」

ふんふん頷いて納得したような顔のゲラルドさんが
エル君とマリーさんを後ろに従えて歩き出そうと
した時だった。

「それは私の役目だろう?」

知らない誰かの声に呼び止められた。

「兄上」

ゲラルドさんが声の主を見る。

そこに立っていたのはレジナスさんと同じくらい
大きな体格の男の人だった。

「わざわざ玄関先まで出迎えに来られたのですか」

ゲラルドさんが兄と呼んだということは、この人が
最近まで他国へ軍事訓練に出ていたバイラル家の
長男ダリウスさんだ。

ゲラルドさんやユリウスさんと違ってその髪色は
赤毛というより茶色に近い。

体格自体は団長さんに似て大柄だ。なんとなく
レジナスさんを連想させるような体の大きさだけど
切れ長の瞳や通った鼻筋などの端正な顔立ちは軍人
らしい厳しさを感じさせずにむしろ上品な貴族っぽさ
さえ漂っている。

初めて会うのでつい観察するように不躾にも見つめて
しまったけど、そんな私に動じることもなく薄く
微笑むとダリウスさんは礼を取ってくれた。

「癒し子ユーリ様には初めてお目にかかります。
バイラル家の長男、ダリウスと申します。いつも
うちの父や弟達が世話になっております。」

そんなダリウスさんにゲラルドさんが訝しげに
声を掛けた。

「兄上、出迎えに来た上に先ほどのそれは自分の
役目という言葉は一体・・・?」

するとダリウスさんは顔を上げ、ゲラルドさんの
手からサッと私を奪い取った。

「あっ!」

鮮やかなその手口にゲラルドさんが驚いた。
私もびっくりだ。いつのまにかダリウスさんの腕に
縦抱きにされているのもそうだけど、どうして
初対面のダリウスさんがそんなことを?

そう思っていた私の気持ちが伝わったのかまた
にこりと微笑まれた。

「ユーリ様は中央騎士団の者達にとって女神のような
存在だときいております。それならば騎士団と同じく
国の軍事を担う我々ルーシャ国の軍人や兵士に
とっても女神に等しい方です。それ相応の敬意を
持って接しなければ。それに俺はこの家の長男です、
ここはゲラルドよりも年長の俺が案内して然るべき
ですから。」

そう言って、問題ないな?と牽制するようにチラリと
ゲラルドさんを見やった。

「そこは弟に譲ってもいいだろ、長男だったら
我慢しろよ・・・‼︎」

年長者の横暴だ、と悔しそうに呟くゲラルドさんは
丁寧な物言いが外れている。あれ、こっちが地かな?











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