【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

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第十七章 その鐘を鳴らすのはわたし

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レニ様を私の部屋に案内してお茶を出しながら
コーンウェル領での話をしたり、レニ様がどんなに
普段勉強を頑張っているかやそのお母様で妊娠中の
ヴィルマ様の最近の様子を聞いたりと、あっという間
に時間は過ぎる。

最終的に「滞在が予定よりも長くなっていますよ!」
とゲラルドさんが迎えに現れたので渋々それに従って
帰るレニ様が、部屋にいる間も何かと私の側から
離れず世話をしてくれていたリース君とアンリ君を
ちらっと見て

「おまえ、伴侶じゃなくても自分の身の回りを
させる奴らまで顔で選んでいるんだな」

と言っていたのが解せない。大いなる誤解だ。

そんな、私に対して誤解したままのレニ様を見送り
部屋でくつろいでいるとレジナスさんがやって来た。

なんだか難しい顔をしながらリオン様のところへ
来て欲しいと言う。

「何かありましたか?」

「いや・・・何というか、とりあえずリオン様の話を
聞いてくれるか。」

そう言って心配そうに私を見た。レジナスさんが
こんな顔をするということは間違いなく私に関する
話があるんだろうとリオン様の部屋を訪ねれば、
ユリウスさん達はもう帰った後だった。

「ああユーリ、休んでいたのに悪いね。」

やっぱり難しい顔をしながら書類に目を落としていた
リオン様が顔を上げて微笑む。

「どうかしました?」

ソファへと促されて座れば、お茶を淹れてくれながら
リオン様はうーん、と悩みながら口を開いた。

「ユーリに魔物・・・と言うか邪気のようなものを
祓って欲しいっていう嘆願書が来ているんだ。」

へぇ。魔物祓い的なものはダーヴィゼルド以来の
お願いだ。

「私に出来ることならなんでもやりますよ!」

加護の力を弓矢に乗せて飛ばすのはまだまだ練習中
だけど、前よりは少しはましになってきている。

それに最近はシグウェルさんに教えてもらって
魔法陣を描く練習も始めた。

過去に飛ばされた時にキリウさんが使っているのを
見て便利そうだったからね。

魔石を鉱山の中から瞬間移動させたみたいな、
あんな事は出来ないけど人や物を守る魔法陣なら
私の加護の力とも相性が良くて出来るはずだと
シグウェルさんも色々と教えてくれている。

・・・まあ、『この用紙を3日で全部使い切るよう
魔法陣を描き写せ』とか言って分厚い紙の束を
渡してきたりと相変わらず魔法に関してはスパルタ
だけど。

「最近は魔法についても色々勉強してますからね、
頑張りますよ!」

張り切って言ったのにそれでもなんだかリオン様の
顔色は冴えない。

「リオン様?」

なんだろう、そんなに心配だなんてよっぽど遠い
地方からの要請なのかな。

「・・・さっきユリウスが遅れて顔を出したろう?
あれはユーリに嘆願書を出してきた地方について
調べてもらっていたからなんだけど。」

そういえばユリウスさん、色々あってとか何とか
言ってたっけ。

「事の始まりはそこにある神殿に数ヶ月前に賊が
入り、宝物や祭具が盗まれたことらしい。その
神殿は地方でも有名な、古くからある由緒正しい
神殿なんだけどね。」

リオン様はそこでため息をついた。

「その時の騒ぎで盗難の被害にあったものを確かめて
いたら、かろうじて盗まれはしなかったものの祭具の
一つがその時に壊れかけたらしいんだ。それが原因で
その土地にあった結界に綻びが出来て、今回のユーリ
への嘆願書に繋がったというわけだ。」

なるほど、でも私の力は物を直せないから祭具は
直すことはできない。

「じゃあ私はその結界の綻びを治すか、祭具を直す
魔導士さん達をお手伝いすればいいんですか?
あれ?でもさっきは私に邪気祓いがどうのって言って
ましたよね、その結界が壊れかけてるところから何か
悪い魔物のようなものでも出て来たとか?」

そこでリオン様は私の手を握って心配そうに見つめて
きた。

「地方にある神殿は大概がその地にある魔物や
悪い物から人々を守ったりそれを封印するために
ある。イリューディア神様やグノーデル神様を祀り、
その御力を分けていただいて魔を抑えるんだ。今回
賊の被害に遭ったのもイリューディア神様を古くから
信仰する神殿で、結界で抑えていたのは・・・」

私の手を取るリオン様の手にぎゅっと力が入った。

「ヨナス神を祀っていた古神殿だ。そこにはヨナスの
象徴として魔石があった。結界が綻びたせいでその
古神殿の魔石からヨナスの力が漏れ出てしまい、
周りに被害を与えているらしいんだ。だから今回
ユーリに嘆願書が来たんだよ。」

イリューディアさんの加護の力が強い私ならその
ヨナスの魔石の力を抑えて、もう一度結界を張り
直すことが出来るのではないか。

そういう話らしい。

「それって周りのものに影響は出てないんですか?
人が変わったり、動物が凶暴になったり・・・
それにそのヨナスを祀っていた魔石がどの程度
壊れているとか」

ダーヴィゼルドでは霧を吸い込んだカイゼル様は
手がつけられないくらい豹変した。

今回もそんなことになっていたら大変だ。

すると、

「分からないんだ」

リオン様が首を振った。

「分からない?」

どういう事だろう。

祭具が壊れて結界が綻び、そのせいで抑えられて
いたヨナスの力が漏れ出てきた。

何らかの影響がないわけがない。

「そのヨナスの古神殿がある辺りに今は誰も近づけて
いない。というか、それがある集落に調査に行った
者達が誰も戻って来ない」

「ええ⁉︎」

「騎士や傭兵、神官、魔導士・・・様々な者を派遣
していたんだけど、みんな古神殿のある小さな集落へ
足を踏み入れたきり出て来た者がいないんだ。」

それってかなり大ごとでは。え?ヨナスの力で
凶暴化した魔物に食べられちゃってるとかないよね?

だけどリオン様によるとそれすらも分からないと
言う。

ただ、薄い紫色の霧が立ち込めるその集落に足を
踏み入れた者達が戻って来ないだけ。

今のところ被害はそれ以上広がらないでいるけど、
壊れかけているイリューディアさんの祭具が完全に
壊れたりしたらヨナスの力を抑えている結界が
なくなってしまい、集落よりも広い範囲に悪影響が
出るかも知れないという話だった。

ユリウスさんがそこの魔導士や神官と連絡を取り
調べても分かるのはそこまでの事らしかった。

「・・・だけどそんな場所にユーリはなるべく
近付けたくないんだ。せっかく良くなったのに、
ユーリがまたヨナス神の影響を受けて眠れなく
なったり具合が悪くならないとも限らないでしょう?
心配でたまらない。」

だからもう一度、今度は宮廷魔導士団か中央騎士団、
もしくは王都の大神殿に仕える高位の神官を派遣して
状況を確かめたいと言う。

「その結果、もしかするとユーリにはそこへ行って
もらうかも知れないけど」

「ダメですよ!」

思わず声を上げてしまった。リオン様とレジナスさん
が難しい顔をしていた理由はこれか。

ヨナスの力の影響で私がまた体調を崩すのを心配
していたんだ。

「そんな悠長な事をしていて結界が本当に壊れたら
どうするんですか?あの力がその集落だけでなく
もっと広がって、もっとたくさんの人達が影響を
受けたら大変です!私が行くなら今のうちですよ!」

なにしろカイゼル様一人でもあれだけ大変だった
のだ。
もしそれがもっとたくさんの人達に広がったら?

その全部を元通りに出来るかまでは自信がない。

王都全部に癒しの力を使った時は三日間寝込んだ
けどその程度で済むだろうか。

そうなる前に、今のうちに。

「私、行きたいです!お願いします‼︎」

こういう時のためにイリューディアさんの力は
授かっているんだから。

「だけどユーリ、今回は本当に危険だよ。もし
君まで帰って来なかったりしたら」

リオン様の青い双眸がゆらゆらと揺らめいている。

私を思う個人的な気持ちと、助けを求める民に応え
なければならない王族としての責務との間で揺れて
いるように。

そんな私達を心配そうにじっと見ていたレジナスさん
が口を開いた。

「・・・リオン様にさえ許していただければ俺が
ユーリに同行を」

「その必要はありませんね。オレが行きます。」

軽いノックの音と共に現れたのはシェラさんだった。

イリヤ殿下の了承はすでに取り付けました、と
深刻な状況に似合わない、いつものあの色気のある
笑顔でシェラさんは署名入りの書類をリオン様へ
すいと差し出した。


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