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第十八章 ふしぎの海のユーリ
28(あるいはおまけの後日談)
「すまない、ユーリ。俺にもよく分からないがいつの間にかこういう事になってしまった」
・・・今、私の前にはレジナスさんがあの大きな体を縮こまらせるようにして正座している。
それも奥の院の私の部屋のベッドの上で。
目の前で膝の上にこぶしを握った両手をきちんと揃えて、まるで叱られた子どものように神妙な顔つきで下を向き正座で座っているレジナスさん。
あの広くて大人がゆうに6人は寝られそうなベッドの上に大柄なレジナスさんが座っているとそれだけでそのベッドがとたんに普通サイズの物に見えてくるから不思議だ。
羊のぬいぐるみを抱きしめながらレジナスさんを眺めつつぼんやりと私はそんなどうでもいい事を考えていた。現実逃避かな?
どうしてこうなった。
それは多分、私とレジナスさん二人が今思っていることだ。
確かきっかけはシェラさんの言葉だったと思う。
リオネルから帰って来て魔物討伐の事後処理報告だなんだと数日はバタバタしていた。
まあ私は今回最後にオマケ程度に加護の力を使っただけだったので、最初の予定通りわりとのんびり過ごせたと思う。
・・・多少はシェラさんに振り回されたような気がしないでもないけど、本人は満足しているようだしシグウェルさんも同様だ。
私の休暇としても、伴侶としての家族サービス的な休暇としても合格点じゃないのかな。
だけどその帰って来てからの慌ただしさがひと段落ついた頃だ。
シェラさんが、
「今回の休暇ではシグウェル魔導士団長もユーリ様と同衾・・・といかないまでも昼寝にて共寝を楽しまれましたし、これで後は一緒に寝ていないのはレジナスだけですね。」
と言い出した。
「一体なんの話です?」
シェラさんの淹れてくれた紅茶を飲む手が思わず止まってしまった。
そんな私を気にするふうでもなくシェラさんは楽しげにひょいひょいと私の目の前のお皿にスコーンを積み上げながら続ける。
「リオン殿下はユーリ様の体調が優れない時期に同衾されましたし、オレはモリー公国でユーリ様と同じ部屋で寝泊まりをし、その愛らしいお顔を毎朝毎晩堪能させていただきました。
シグウェル魔導士団長も先日のリオネルではユーリ様を抱きしめての昼寝を楽しんだ。となれば残るはレジナスです。」
丁寧に説明されたけど、言われるほどにこっちは恥ずかしくなってくる。
「だっ、だから私にレジナスさんとも一緒に寝ろって言うんですか⁉︎でも私、レジナスさんの膝の上で結構何回もお昼寝をしてますよ⁉︎」
それで充分じゃないだろうか。
そう言ったら、分かってませんねとシェラさんはエル君ばりにやれやれとかぶりを振った。
「あんな座椅子のような格好で身動き一つせず、ユーリ様のつむじしか見えない状態で共にいるのは一緒に寝たとか昼寝を楽しんだなどとは言いません。そういう点ではユーリ様の伴侶という立場の中でレジナスだけが一歩遅れているのです。これでは公平性にかけます。」
何かといえばいつもレジナスさんに意地悪をする人が何を言っているんだろう。
伴侶の公平性がどうとか、そんな事を気にする人だとは思わなかった。
何かウラでもあるのかな?と目を丸くしてその意図を汲み取ろうとシェラさんをじっと見つめてしまった。
そんな私にシェラさんは微笑む。
「オレも晴れてユーリ様の伴侶となったのですからその公平性や平等性はきっちりと守りますよ。同じ伴侶として先に認められているレジナスに対して順序を違えたり出し抜いたりすることはありません。それは全くもって美しくない行為ですからね。」
なるほど理解した。
変なところで美しさにこだわるシェラさんのポリシーが出たというわけだ。
「そういうことですか」
「そうですよ?だからオレがここに越すのに合わせてレジナスの部屋もユーリ様の向かいに移しましたでしょう?おかげで今までよりもずっとユーリ様のお部屋に通いやすくなるはずです。」
「あれもそういう事だったんですか⁉︎」
リオネルから帰って来たらなぜか私の向かいの空いていた部屋がレジナスさんの寝室になっていた。
その時は単純に、その方がリオン様の寝室にも近くて何かあったら駆けつけやすいからかな?
なんて思って私のことは一切勘定に入れてなかったんだけど。
そういえば、
『お部屋が近くなったからリオン様だけでなく私とも今までよりもたくさん会えますね!』
となんとなく言ったらそうだな、と返してくれたレジナスさんはどことなく落ち着きがなかった。
目が泳いでいて視線が合わなかったから何でだろうと思っていた。
まさかあれが私の部屋に通いやすくするためだったなんて。
・・・か、通いやすく。
それの意味するところが分からないわけじゃない。
それなのに私はのん気にも
「たくさん会えますね!=夜でもいつでも好きな時に私の部屋へどうぞ!」
的なことをレジナスさんに言ったということだ。
バカ。私のバカ。なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだろう。
今からでもあれは変な意味じゃなくて、とか言ってもいいのかな。
でもそんな事を言って、逆に私がそういうことを変に意識していると思われるのもなんだかなぁ、とグルグル考えだした時だった。
「つきましては二日後あたり、さっそく一度レジナスと一緒に寝てみるのはどうでしょう?」
シェラさんが爆弾をさらりと投げ込んで来た。
「⁉︎」
「確か二日後はリオン殿下が戴冠式の件で打ち合わせも兼ねてイリヤ殿下と夕食を取ることになっていたはずです。
ですのでレジナスも午後からは殿下の護衛の任務をイリヤ殿下の護衛騎士達に引き継いで定時で帰ってくるかと。
二人で夕食でも取って、ゆっくりしながら一晩過ごしてみればよいのでは?」
まさかシェラさんがそんな事を提案してくるなんて。
「え?ど、どうしちゃったんですか?いつもだったらそんな事になったら邪魔して来るのがシェラさんじゃないですか⁉︎」
「そうしたいのは山々ですが、レジナスにも一歩進んでもらわなければ、オレも先には進めませんので・・・。
それともオレが先行して口付けよりも先に進んでもよろしいので?ユーリ様さえお許しくださり、望んでいただけるのであればオレはいつでもその準備はでき」
「そこまでです!」
シェラさんがおかしな事を言い出したのでたまらずストップをかけた。
そういうことか。
つまりシェラさんは、私との関係を今よりも深めたいけどそれと同時に自分の信条として伴侶としての順番や公平性は守りたい。
そうすると現状レジナスさんだけがあの四人の中で私との仲が遅れているように見えるので置いてけぼりにならないように調整したいってことだ。
結局、一見レジナスさんのための提案に見えて実は自分自身のための話というだ。
「ちょっと考えさせてもらえませんか⁉︎」
突然あさってレジナスさんと一緒に寝てね!と言われても。
私も困るけどレジナスさんも困るだろう。
しかもシェラさんが自分のために勝手にコトを進めようとしているんだから。
「レジナスにはもう話してありますよ。あさってユーリ様が着られる夜着もいくつか候補を見せたので当日までには選んでおくはずです。」
「へ?」
空気の抜けたみたいな間抜けな声が自分から出た。
「は、はな、話した⁉︎」
「はい。あ、もちろんただ隣で一緒に寝るだけですからね?それ以上のことはどうか何もなさらないでください。
そうなったら、彼以外のオレ達三人も同じ段階まで進ませていただきます。何しろ伴侶は平等なのですから。」
まああの男がユーリ様といきなり同衾することになってすぐにどうこう出来るとは思いませんけどね。
シェラさんはそう薄く笑っていた。
・・・今、私の前にはレジナスさんがあの大きな体を縮こまらせるようにして正座している。
それも奥の院の私の部屋のベッドの上で。
目の前で膝の上にこぶしを握った両手をきちんと揃えて、まるで叱られた子どものように神妙な顔つきで下を向き正座で座っているレジナスさん。
あの広くて大人がゆうに6人は寝られそうなベッドの上に大柄なレジナスさんが座っているとそれだけでそのベッドがとたんに普通サイズの物に見えてくるから不思議だ。
羊のぬいぐるみを抱きしめながらレジナスさんを眺めつつぼんやりと私はそんなどうでもいい事を考えていた。現実逃避かな?
どうしてこうなった。
それは多分、私とレジナスさん二人が今思っていることだ。
確かきっかけはシェラさんの言葉だったと思う。
リオネルから帰って来て魔物討伐の事後処理報告だなんだと数日はバタバタしていた。
まあ私は今回最後にオマケ程度に加護の力を使っただけだったので、最初の予定通りわりとのんびり過ごせたと思う。
・・・多少はシェラさんに振り回されたような気がしないでもないけど、本人は満足しているようだしシグウェルさんも同様だ。
私の休暇としても、伴侶としての家族サービス的な休暇としても合格点じゃないのかな。
だけどその帰って来てからの慌ただしさがひと段落ついた頃だ。
シェラさんが、
「今回の休暇ではシグウェル魔導士団長もユーリ様と同衾・・・といかないまでも昼寝にて共寝を楽しまれましたし、これで後は一緒に寝ていないのはレジナスだけですね。」
と言い出した。
「一体なんの話です?」
シェラさんの淹れてくれた紅茶を飲む手が思わず止まってしまった。
そんな私を気にするふうでもなくシェラさんは楽しげにひょいひょいと私の目の前のお皿にスコーンを積み上げながら続ける。
「リオン殿下はユーリ様の体調が優れない時期に同衾されましたし、オレはモリー公国でユーリ様と同じ部屋で寝泊まりをし、その愛らしいお顔を毎朝毎晩堪能させていただきました。
シグウェル魔導士団長も先日のリオネルではユーリ様を抱きしめての昼寝を楽しんだ。となれば残るはレジナスです。」
丁寧に説明されたけど、言われるほどにこっちは恥ずかしくなってくる。
「だっ、だから私にレジナスさんとも一緒に寝ろって言うんですか⁉︎でも私、レジナスさんの膝の上で結構何回もお昼寝をしてますよ⁉︎」
それで充分じゃないだろうか。
そう言ったら、分かってませんねとシェラさんはエル君ばりにやれやれとかぶりを振った。
「あんな座椅子のような格好で身動き一つせず、ユーリ様のつむじしか見えない状態で共にいるのは一緒に寝たとか昼寝を楽しんだなどとは言いません。そういう点ではユーリ様の伴侶という立場の中でレジナスだけが一歩遅れているのです。これでは公平性にかけます。」
何かといえばいつもレジナスさんに意地悪をする人が何を言っているんだろう。
伴侶の公平性がどうとか、そんな事を気にする人だとは思わなかった。
何かウラでもあるのかな?と目を丸くしてその意図を汲み取ろうとシェラさんをじっと見つめてしまった。
そんな私にシェラさんは微笑む。
「オレも晴れてユーリ様の伴侶となったのですからその公平性や平等性はきっちりと守りますよ。同じ伴侶として先に認められているレジナスに対して順序を違えたり出し抜いたりすることはありません。それは全くもって美しくない行為ですからね。」
なるほど理解した。
変なところで美しさにこだわるシェラさんのポリシーが出たというわけだ。
「そういうことですか」
「そうですよ?だからオレがここに越すのに合わせてレジナスの部屋もユーリ様の向かいに移しましたでしょう?おかげで今までよりもずっとユーリ様のお部屋に通いやすくなるはずです。」
「あれもそういう事だったんですか⁉︎」
リオネルから帰って来たらなぜか私の向かいの空いていた部屋がレジナスさんの寝室になっていた。
その時は単純に、その方がリオン様の寝室にも近くて何かあったら駆けつけやすいからかな?
なんて思って私のことは一切勘定に入れてなかったんだけど。
そういえば、
『お部屋が近くなったからリオン様だけでなく私とも今までよりもたくさん会えますね!』
となんとなく言ったらそうだな、と返してくれたレジナスさんはどことなく落ち着きがなかった。
目が泳いでいて視線が合わなかったから何でだろうと思っていた。
まさかあれが私の部屋に通いやすくするためだったなんて。
・・・か、通いやすく。
それの意味するところが分からないわけじゃない。
それなのに私はのん気にも
「たくさん会えますね!=夜でもいつでも好きな時に私の部屋へどうぞ!」
的なことをレジナスさんに言ったということだ。
バカ。私のバカ。なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだろう。
今からでもあれは変な意味じゃなくて、とか言ってもいいのかな。
でもそんな事を言って、逆に私がそういうことを変に意識していると思われるのもなんだかなぁ、とグルグル考えだした時だった。
「つきましては二日後あたり、さっそく一度レジナスと一緒に寝てみるのはどうでしょう?」
シェラさんが爆弾をさらりと投げ込んで来た。
「⁉︎」
「確か二日後はリオン殿下が戴冠式の件で打ち合わせも兼ねてイリヤ殿下と夕食を取ることになっていたはずです。
ですのでレジナスも午後からは殿下の護衛の任務をイリヤ殿下の護衛騎士達に引き継いで定時で帰ってくるかと。
二人で夕食でも取って、ゆっくりしながら一晩過ごしてみればよいのでは?」
まさかシェラさんがそんな事を提案してくるなんて。
「え?ど、どうしちゃったんですか?いつもだったらそんな事になったら邪魔して来るのがシェラさんじゃないですか⁉︎」
「そうしたいのは山々ですが、レジナスにも一歩進んでもらわなければ、オレも先には進めませんので・・・。
それともオレが先行して口付けよりも先に進んでもよろしいので?ユーリ様さえお許しくださり、望んでいただけるのであればオレはいつでもその準備はでき」
「そこまでです!」
シェラさんがおかしな事を言い出したのでたまらずストップをかけた。
そういうことか。
つまりシェラさんは、私との関係を今よりも深めたいけどそれと同時に自分の信条として伴侶としての順番や公平性は守りたい。
そうすると現状レジナスさんだけがあの四人の中で私との仲が遅れているように見えるので置いてけぼりにならないように調整したいってことだ。
結局、一見レジナスさんのための提案に見えて実は自分自身のための話というだ。
「ちょっと考えさせてもらえませんか⁉︎」
突然あさってレジナスさんと一緒に寝てね!と言われても。
私も困るけどレジナスさんも困るだろう。
しかもシェラさんが自分のために勝手にコトを進めようとしているんだから。
「レジナスにはもう話してありますよ。あさってユーリ様が着られる夜着もいくつか候補を見せたので当日までには選んでおくはずです。」
「へ?」
空気の抜けたみたいな間抜けな声が自分から出た。
「は、はな、話した⁉︎」
「はい。あ、もちろんただ隣で一緒に寝るだけですからね?それ以上のことはどうか何もなさらないでください。
そうなったら、彼以外のオレ達三人も同じ段階まで進ませていただきます。何しろ伴侶は平等なのですから。」
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シェラさんはそう薄く笑っていた。
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