【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
447 / 776
第十八章 ふしぎの海のユーリ

29(あるいはおまけの後日談・2)

しおりを挟む
伴侶の一人としてレジナスさんは私ともう少し仲を深めておいた方がいいと言ったシェラさんによってあれよあれよという間に話は進められた。

伴侶が複数いるっていうのは、そこまで伴侶同士で気を使いあうものなの?

良く分からない。分からないけど私の目の前のレジナスさんは明らかに困っていてちょっとかわいそうだ。

『いきなりの同衾であの男に何か出来るとは思いませんけどね』

と微笑んでいたシェラさんの言葉通り、レジナスさんは微動だにせず正座したままその雰囲気だけがそわそわと落ち着きがない。

おかげでそれを眺めていた私の方が少し冷静になった。

「なんかシェラさんが変なことを言い出したせいですみません・・・」

なんとなくそう謝れば、そこでやっとレジナスさんは顔を上げた。

「・・・っ、いやっ!ユーリが謝ることじゃない!シェラがおかしいんであって、決してユーリのせいではない‼︎」

必死にそう言ってくる。

と、そのままぬいぐるみを抱きしめて目の前に座っていた私を改めてきちんと見たからか、またビシリと固まった。

あ、そっか。

私は今、シェラさんがいくつかの候補の中からレジナスさんに選ばせたという夜着を着ている。

自分の選んだ夜着に私が身を包んでいるという事実にそこで改めて気付いたらしい。

ちなみに私の格好はそんなに固まられるほど目のやり場に困るとか露出が高いわけじゃない。

全体的に落ち着いた深い藍色で、胸元やスカートの裾部分に金色の刺繍が星を散りばめたように入っている足首までの長さのワンピースタイプの夜着だ。

一応、足さばきを良くして歩きやすくするためかスカート部分には膝の辺りからスリットが入っているけどそれだってこうして座っていれば全然分からない。

唯一色気を感じそうなのは肩から手首にかけてのシースルー素材の長袖だけど、それだって藍色の濃い色味のおかげでセクシーというほどではない。

さすがレジナスさん、私が恥ずかしく思わないものを選んでくれたらしい。

だからそこまで緊張して固まらなくてもいいと思うんだけど。

それにセクシーとか色気があるというのなら、それはむしろレジナスさんの方だ。

いつもの首元まで詰まった黒い騎士服をかっちりと着こなしている姿と違い、寝るためのくつろいだ
ラフな格好のレジナスさんは初めて見る。

ゆったりした生成りの生地の上下で、上に着ている方はそのボタンを何個か開けているのであのよく鍛えられた胸筋がちらりと見えていた。

その着崩したくつろいだ姿の方が私なんかよりもよっぽど色気があると思う。

そう思いながらしげしげとレジナスさんを見ていたら私のその視線に耐えられなくなったらしい。

おもむろにレジナスさんは立ち上がると数枚重ねてあった毛布の一枚を手に取ってベッドから降りた。

「どうかしましたか?」

「俺は椅子で寝るから気にしないでくれ」

私に背を向けているその耳が赤く染まっているのが見えた。

「椅子って言っても・・・」

この部屋にある家具は私のサイズに合わせて作られているし、多少ゆったりめで大きいソファだって体の大きなレジナスさんが横になるには窮屈だ。

私の言わんとしている事が分かったらしい。

「なんなら床でもいい。この部屋の分厚い絨毯敷きはその辺のベッドよりもずっと寝心地がいいから心配しなくて大丈夫だ。」

「何言ってるんですか!」

まだ何もないとはいえレジナスさんは仮にも私の旦那さんだ。

そんな人をベッドから追い出して床に転がして、私だけグースカ布団で寝るとか。

いや、旦那さんじゃなくてもレジナスさんを床に転がすとかない。

いつも私に優しくてこんなにも気を配ってくれるいい人にそんなこと出来るわけがない。

「そんなのダメですよ!」

夜なのであまり大きな声は出せないのでひそひそ声で私もベッドを降りてレジナスさんの元へと駆け寄った。

灯りの落ちた静かな室内にたたっ、と裸足の私の軽い足音が響くけどそれも厚い絨毯にすぐに音が吸い込まれてしまう。

レジナスさんの前に回り込み、羊を片手に抱えながらもう片方の手でレジナスさんの手を取った。

まあレジナスさんの手は大きくて掴みきれなかったので、手って言うか指を何本か掴んだだけになったけど。

「明日もお仕事でしょう?ちゃんと寝ないと!それにベッドは広いからレジナスさんが一緒でも大きさには充分余裕がありますから‼︎」

見上げて必死に説得する。話しながらベッドの方へ手を引こうとしたけど私の力ではびくともしない。

まあ分かっていたけどね。

「レジナスさんがベッドで寝ないなら、私もベッドで寝ませんからね!」

最後の手段だ。さすがに私のその言葉にレジナスさんも困惑した。

「いや、ユーリ。それは・・・」

「レジナスさんだけ布団から追い出して私だけぬくぬくとベッドに寝るなんてあり得ないです!
私もソファか床で寝るので、それでも良いならレジナスさんも床でどうぞ!」

まさか私の方から一緒に寝ようと誘うことになるとは思わなかったけど仕方ない。

これだけ誠実なレジナスさんなら添い寝をしても恥ずかしくないかも。

リオン様と違って夜中に羊のぬいぐるみを足元に追いやりわざと転がすこともないだろう。

ふぬぬ、ともう一度その手を引く。

やっぱり微動だにせず、逆に私が組体操の扇の形を作る両端の人のように体が斜めになった。

そんな私を見たレジナスさんは、分かった。とため息をつくと私をひょいと抱き上げてその片腕の上に座らせた。

「・・・ユーリが寝るまでちゃんと見守ろう。
それから、裸足で走るんじゃない。足元から体が冷えてしまう」

この言い方はあれだ、私が寝たのを確かめたら自分はベッドを抜け出して床に寝るつもりだね?

「ちゃんと休まないと仕事に支障が出ますよ⁉︎」

「大丈夫だ、任務柄三日は徹夜しても問題ないよう体は慣れている」

そんな事をうそぶかれたけど、寝ない自慢は中2までにして欲しい。

ベッドの上へとまた二人で戻り、すとんとその上に降ろされる。

レジナスさんは気を使って私からなるべく離れたところへ寝ようとしてくれたので二人の間に羊を置かなくても良さそうだ。

だけどそのまま私が寝たらベッドから抜け出し床で寝られても困る。

ちょっと考えて、私の方からレジナスさんの近くに寄った。

一緒に寝ましょうと誘うだけでなく自分の方からくっついて寝ることになるなんて、シェラさんと話していた時には想像もしなかった。

戸惑いながら横になっていたレジナスさんが、近付いた私に驚いて起き上がった。

「どうした⁉︎」

いや、どうしたと言われても。なぜ近付いたのかと聞いてくるその顔がうっすらと赤いのが暗がりの中でも分かる。

ていうか、そんな態度を取られるとまるで私の方がレジナスさんを襲ってるみたいなんですけど。

私が寝たら抜け出すつもりでしょ?と聞いたところでどうせ誤魔化されるので

「寝るまで手を繋いでもらっていてもいいですか?」

と片手にぬいぐるみを抱えたまま、もう片方の手を改めてレジナスさんに差し出す。

「そ、それくらいなら」

一瞬迷ったレジナスさんも、さすがにその程度のことは断らなかった。

よしよし。この手を振り払ってまで床には寝ないだろう。

まあ私が寝入ってしまった後はどうか分からないけどその頃にはレジナスさんも諦めてそのまま布団で寝てくれてるといいな。

自分の思い通りに事が運んだので満足してにんまりとほくそ笑む。我ながら悪い笑顔だと思う。

しっかり繋いだ手のぬくもりを確かめるとそのまま横を向いて、

「お休みなさいレジナスさん!絶対に手を離しちゃダメですよ?」

とおやすみの挨拶をする。

だけどレジナスさんはそんな私に

「・・・っ‼︎」

何も言わずに一度だけ目を合わせると、ふいと向こうを向いてしまった。

・・・拗ねちゃったかな?

しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

厄介払いされてしまいました

たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。 十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。 しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

処理中です...