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閑話休題 ジュースがなければお酒を飲めばいい
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「ユーリ様が訓練に来る、だと・・・⁉︎」
思いがけない話に中央騎士団の訓練場はにわかにざわついた。
「見学のことか?」
「いや、ユーリ様ご自身が訓練されるらしい」
「なんで⁉︎」
「いつもレジナス様が側にいてお守りしているのにどうしてそんなことを?」
「それ、確かな情報なんだろうな?」
「ユーリ様に来て欲しいっていう願望が強過ぎて誰かが妄想したネタが一人歩きしたデマじゃ・・・」
いつのまにか訓練場で剣を振るって鍛錬している者は誰もいなくなっていた。
みんながたった今、騎士の一人が小耳に挟んだ噂話である
「癒し子ユーリ様が訓練をしにここに来るらしい」
という話題に夢中になっている。
「ウソじゃないって!さっき団長達が話していたからな。どこの演習場を使うか、とかここの場所の方が弓矢も練習できるからいいんじゃないか、とか!」
「マジか・・・」
「えっ、ユーリ様オレ達と一緒に基礎訓練とかすんの⁉︎剣とか持てるわけ?」
あの小さな体とどう見ても非力な握力では剣を持つどころかナイフ一本投げるのも大変そうなんですけど・・・?
と、ユーリがナイフ投げがうまくいかずに涙目で自分達を見上げてその教えを乞う可愛らしい姿を騎士達は夢想した。
「いい・・・」
「それはすごくいい・・・」
「ユーリ様の手を取って付きっきりでナイフ投げを教えてあげてぇなあ・・・‼︎」
いつも緊張感漂う訓練場に、その場にそぐわないほのぼのとした空気が流れた時だった。
「何をさぼってるんだお前達は」
団長のマディウスが副団長のトレヴェと一緒に現れた。
「団長‼︎」
皆の視線が二人に集まる。
「お、おう、どうした?」
いつになく真剣な表情で騎士達に迫られてマディウスは思わず気圧された。
「ユーリ様がここに来るって本当ですか⁉︎」
「しかも見学じゃなく訓練だとか!」
「指導は誰が⁉︎団長ですか、それともレジナス様?
まさかシェラザード隊長ってことは・・・⁉︎」
騎士の一人の言葉に周りからそれだけはやめてくれ!と声が上がった。
そんな騎士達をマディウスとトレヴェは呆れたように見回す。
「お前ら・・・それで訓練に身が入っていなかったのか・・・」
うーむとヒゲを撫でたマディウスに、トレヴェはため息をついて進言した。
「どうせ遅かれ早かれ分かることだ。こういうのはさっさとハッキリさせた方がいい。そうじゃないとこいつらも訓練に身が入らんだろう。」
その言葉に騎士達は期待を込めてマディウスを見る。
「分かった分かった、教えてやるよ。確かにユーリ様は数日後ここにいらっしゃる。なんでも体力不足を痛感したとかで、基礎体力を付けられるような基本的な訓練を受けにここに通いたいそうだ。」
マディウスのその言葉に、騎士達からうおぉ!という雄叫びのような喜びの声が上がった。
「いや、喜び過ぎだろお前ら・・・。それにユーリ様は遊びに来るんじゃない、軽いものとはいえ訓練をしに来るんだからな。お前らの相手をしているようなヒマはないぞ。」
そう釘を刺したマディウスだったが、
「団長、誰がユーリ様のご指導を⁉︎」
「これから指南役を選ぶんですか?」
「基礎ってことは走り込みですか、柔軟体操の相手役もいるなら俺が・・・!」
「弓はやりますか⁉︎馬術は?」
「休憩時間は話しかけてもいいんですか⁉︎」
一気に質問攻めに遭ってしまう。
詰め寄られて落ち着けお前ら!と声を上げているマディウスをトレヴェは面白そうに眺めて
「お前がそんなに騎士団の連中にモテているのは初めて見るな。」
とそのコワモテの顔を僅かに緩めて言うと、パンと大きく手を打った。
途端に今までの騒ぎがピタリと収まり皆がそちらに集中する。
「ユーリ様の指導はレジナスが行う。場合によってはシェラザード隊長が来るかも知れん。だからお前らの出る幕はひとっっつもないからな。以上だ、解散‼︎」
レジナス、という言葉に騎士達はなるほどと納得する空気になりシェラザード隊長、という単語に一気に落胆する雰囲気に変わった。
そして終わった・・・と足取りも重く騎士達はさっきまでの訓練に戻っていく。
「こいつら、どれだけシェラのことを目の敵にしているんだ?」
あからさまな態度の変化にトレヴェは呆れた。
それを見ていたマディウスが豪快に笑う。
「まあ少し前にユーリ様が見学に来た野営訓練の時にもシェラの奴はやたらとユーリ様にくっついていたし、その上あいつはちゃっかりユーリ様の伴侶の座にまで収まってしまっただろう?敬愛する癒し子様をいつの間にか横取りされた気分なんだろうよ。」
「まったく、まだここを訪れてもいない時からこんな騒ぎじゃユーリ様が本当に現れた時を考えると先が思いやられるな。」
はあ、とトレヴェはため息をついた。
その数日後だ。
「今日はよろしくお願いします!」
緊張の面持ちで小さな癒し子その人は集まった騎士団の面々の前でそう挨拶をするとぺこりと頭を下げた。
側には騎士団の者が尊敬してやまないレジナスと・・・
今日も無駄な色気を垂れ流しながら笑顔を見せる凶悪な美貌の持ち主であるシェラザード・イル・ザハリその人が癒し子をにこにこと見つめている。
・・・やっぱり付いてきた。
口には出さないけどその場の全員がそう思いながら自分たちの前に立つ三人を見ていた。
「今日から一週間、数時間程度だが毎日この演習場の片隅を借りたいと思う。面倒はかけないのでよろしく頼む。」
そう言ったレジナスがぺこりと頭を下げ、それを見たユーリもハッとすると慌ててそれに続いてまた頭を下げた。
なんだろう。子猫や子犬が親のすることを見て、たどたどしく真似ているような微笑ましい可愛らしさがある。
まだ挨拶をしただけなのにほのぼのとした空気が流れた。
と、それをぶった切るようにシェラザード
その人が
「あなた達、そんな風にいつまでも不躾にユーリ様を見ていたらその目を潰しますよ。注目をされてユーリ様が緊張しているのが分かりませんか?」
と恐ろしいことを口にした。
隣に立つレジナスがシェラ!と注意をしてユーリも
「何言ってるんですかシェラさん!」
とその袖を引いた。あっ、羨ましい。
たった今恐ろしいことを言われたばかりなのに、ユーリに服の袖を引かれて見上げられているというシチュエーションのシェラザードを皆が羨んだ。
「ですがユーリ様、こうも注目されていると思ったような運動をしにくいのでは?オレも来れる時はこうしてなるべく一緒に来ますが、そうでない時にもこういった不躾な視線に晒されているなど心配でたまりません。」
「物珍しさから注目されているのは今だけですよ、みんなすぐに慣れますから!私のためを思うのはありがたいですけどそういう脅しをするのはやめて下さい‼︎」
「脅しではなく本気なのですが・・・」
「ますます怖い‼︎」
ひえっ、と顔を青くしたユーリをシェラザードはうっとりと見つめ、
「そうやって必死にオレへ縋りつかれ見つめられているとたまらなく幸せを感じますね。」
と訳の分からないことを口にしている。やっぱりこの隊長はどこかおかしい。
そんな事を言われて熱を込めた目で見られたユーリも困惑してヘビに睨まれたカエルのように固まってしまっている。
と、
「ユーリを困らせるようなことを言うならお前は今すぐ小隊訓練に戻れ」
我らがレジナス様がそう言って見つめ合う二人の間に割って入りユーリを縦抱きにした。
「あなたは何をどさくさに紛れてユーリ様をそうして抱き上げているんですか」
「お前がおかしなことを言うからだろうが。ユーリはこのまま俺が運ぶ。」
「いやレジナスさん、助け舟は嬉しいんですけどこんな風にすぐ抱っこされるから私に体力がつかないんですよ・・・⁉︎」
癒し子を挟んで取り合っている、そんな三人のやり取りを目の前で見せられた騎士の面々はそこではたと、
・・・あれ?もしかして俺らこの人らがイチャついているのを見せられてたりする?もしかして一週間ずっとこんな感じのやつを見せられるのか?
ということに気付いてしまったのだった。
思いがけない話に中央騎士団の訓練場はにわかにざわついた。
「見学のことか?」
「いや、ユーリ様ご自身が訓練されるらしい」
「なんで⁉︎」
「いつもレジナス様が側にいてお守りしているのにどうしてそんなことを?」
「それ、確かな情報なんだろうな?」
「ユーリ様に来て欲しいっていう願望が強過ぎて誰かが妄想したネタが一人歩きしたデマじゃ・・・」
いつのまにか訓練場で剣を振るって鍛錬している者は誰もいなくなっていた。
みんながたった今、騎士の一人が小耳に挟んだ噂話である
「癒し子ユーリ様が訓練をしにここに来るらしい」
という話題に夢中になっている。
「ウソじゃないって!さっき団長達が話していたからな。どこの演習場を使うか、とかここの場所の方が弓矢も練習できるからいいんじゃないか、とか!」
「マジか・・・」
「えっ、ユーリ様オレ達と一緒に基礎訓練とかすんの⁉︎剣とか持てるわけ?」
あの小さな体とどう見ても非力な握力では剣を持つどころかナイフ一本投げるのも大変そうなんですけど・・・?
と、ユーリがナイフ投げがうまくいかずに涙目で自分達を見上げてその教えを乞う可愛らしい姿を騎士達は夢想した。
「いい・・・」
「それはすごくいい・・・」
「ユーリ様の手を取って付きっきりでナイフ投げを教えてあげてぇなあ・・・‼︎」
いつも緊張感漂う訓練場に、その場にそぐわないほのぼのとした空気が流れた時だった。
「何をさぼってるんだお前達は」
団長のマディウスが副団長のトレヴェと一緒に現れた。
「団長‼︎」
皆の視線が二人に集まる。
「お、おう、どうした?」
いつになく真剣な表情で騎士達に迫られてマディウスは思わず気圧された。
「ユーリ様がここに来るって本当ですか⁉︎」
「しかも見学じゃなく訓練だとか!」
「指導は誰が⁉︎団長ですか、それともレジナス様?
まさかシェラザード隊長ってことは・・・⁉︎」
騎士の一人の言葉に周りからそれだけはやめてくれ!と声が上がった。
そんな騎士達をマディウスとトレヴェは呆れたように見回す。
「お前ら・・・それで訓練に身が入っていなかったのか・・・」
うーむとヒゲを撫でたマディウスに、トレヴェはため息をついて進言した。
「どうせ遅かれ早かれ分かることだ。こういうのはさっさとハッキリさせた方がいい。そうじゃないとこいつらも訓練に身が入らんだろう。」
その言葉に騎士達は期待を込めてマディウスを見る。
「分かった分かった、教えてやるよ。確かにユーリ様は数日後ここにいらっしゃる。なんでも体力不足を痛感したとかで、基礎体力を付けられるような基本的な訓練を受けにここに通いたいそうだ。」
マディウスのその言葉に、騎士達からうおぉ!という雄叫びのような喜びの声が上がった。
「いや、喜び過ぎだろお前ら・・・。それにユーリ様は遊びに来るんじゃない、軽いものとはいえ訓練をしに来るんだからな。お前らの相手をしているようなヒマはないぞ。」
そう釘を刺したマディウスだったが、
「団長、誰がユーリ様のご指導を⁉︎」
「これから指南役を選ぶんですか?」
「基礎ってことは走り込みですか、柔軟体操の相手役もいるなら俺が・・・!」
「弓はやりますか⁉︎馬術は?」
「休憩時間は話しかけてもいいんですか⁉︎」
一気に質問攻めに遭ってしまう。
詰め寄られて落ち着けお前ら!と声を上げているマディウスをトレヴェは面白そうに眺めて
「お前がそんなに騎士団の連中にモテているのは初めて見るな。」
とそのコワモテの顔を僅かに緩めて言うと、パンと大きく手を打った。
途端に今までの騒ぎがピタリと収まり皆がそちらに集中する。
「ユーリ様の指導はレジナスが行う。場合によってはシェラザード隊長が来るかも知れん。だからお前らの出る幕はひとっっつもないからな。以上だ、解散‼︎」
レジナス、という言葉に騎士達はなるほどと納得する空気になりシェラザード隊長、という単語に一気に落胆する雰囲気に変わった。
そして終わった・・・と足取りも重く騎士達はさっきまでの訓練に戻っていく。
「こいつら、どれだけシェラのことを目の敵にしているんだ?」
あからさまな態度の変化にトレヴェは呆れた。
それを見ていたマディウスが豪快に笑う。
「まあ少し前にユーリ様が見学に来た野営訓練の時にもシェラの奴はやたらとユーリ様にくっついていたし、その上あいつはちゃっかりユーリ様の伴侶の座にまで収まってしまっただろう?敬愛する癒し子様をいつの間にか横取りされた気分なんだろうよ。」
「まったく、まだここを訪れてもいない時からこんな騒ぎじゃユーリ様が本当に現れた時を考えると先が思いやられるな。」
はあ、とトレヴェはため息をついた。
その数日後だ。
「今日はよろしくお願いします!」
緊張の面持ちで小さな癒し子その人は集まった騎士団の面々の前でそう挨拶をするとぺこりと頭を下げた。
側には騎士団の者が尊敬してやまないレジナスと・・・
今日も無駄な色気を垂れ流しながら笑顔を見せる凶悪な美貌の持ち主であるシェラザード・イル・ザハリその人が癒し子をにこにこと見つめている。
・・・やっぱり付いてきた。
口には出さないけどその場の全員がそう思いながら自分たちの前に立つ三人を見ていた。
「今日から一週間、数時間程度だが毎日この演習場の片隅を借りたいと思う。面倒はかけないのでよろしく頼む。」
そう言ったレジナスがぺこりと頭を下げ、それを見たユーリもハッとすると慌ててそれに続いてまた頭を下げた。
なんだろう。子猫や子犬が親のすることを見て、たどたどしく真似ているような微笑ましい可愛らしさがある。
まだ挨拶をしただけなのにほのぼのとした空気が流れた。
と、それをぶった切るようにシェラザード
その人が
「あなた達、そんな風にいつまでも不躾にユーリ様を見ていたらその目を潰しますよ。注目をされてユーリ様が緊張しているのが分かりませんか?」
と恐ろしいことを口にした。
隣に立つレジナスがシェラ!と注意をしてユーリも
「何言ってるんですかシェラさん!」
とその袖を引いた。あっ、羨ましい。
たった今恐ろしいことを言われたばかりなのに、ユーリに服の袖を引かれて見上げられているというシチュエーションのシェラザードを皆が羨んだ。
「ですがユーリ様、こうも注目されていると思ったような運動をしにくいのでは?オレも来れる時はこうしてなるべく一緒に来ますが、そうでない時にもこういった不躾な視線に晒されているなど心配でたまりません。」
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「ますます怖い‼︎」
ひえっ、と顔を青くしたユーリをシェラザードはうっとりと見つめ、
「そうやって必死にオレへ縋りつかれ見つめられているとたまらなく幸せを感じますね。」
と訳の分からないことを口にしている。やっぱりこの隊長はどこかおかしい。
そんな事を言われて熱を込めた目で見られたユーリも困惑してヘビに睨まれたカエルのように固まってしまっている。
と、
「ユーリを困らせるようなことを言うならお前は今すぐ小隊訓練に戻れ」
我らがレジナス様がそう言って見つめ合う二人の間に割って入りユーリを縦抱きにした。
「あなたは何をどさくさに紛れてユーリ様をそうして抱き上げているんですか」
「お前がおかしなことを言うからだろうが。ユーリはこのまま俺が運ぶ。」
「いやレジナスさん、助け舟は嬉しいんですけどこんな風にすぐ抱っこされるから私に体力がつかないんですよ・・・⁉︎」
癒し子を挟んで取り合っている、そんな三人のやり取りを目の前で見せられた騎士の面々はそこではたと、
・・・あれ?もしかして俺らこの人らがイチャついているのを見せられてたりする?もしかして一週間ずっとこんな感じのやつを見せられるのか?
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