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第十九章 聖女が街にやって来た

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「とりあえず、成長されたのであればそれに合わせたお召し物も必要ですね。殿下、ユーリ様をオレに手渡していただけますか?」

三人に無言で見つめられていたと思ったらシェラさんが口を開いた。

「着替えさせるならこのまま僕がもう一度ユーリを部屋まで連れて行くけど?」

それなのになぜ君に手渡さなきゃならないの?

そういうリオン様の疑問はごもっともだ。

するとリオン様の胸元に顔を埋めている私の背後で

「いえ、連れて行くのではなくて腰回りや肩など諸々のサイズを知りたいのです。」

とシェラさんがにこやかに言った。

そういえばシェラさん、目視やら抱きしめた感じやらで私の大体のサイズが分かるっていうおかしな特技があった。

思わずちらりと後ろを見れば、両手を広げて待っているシェラさんと目が合った。

そのままニコリと色気を含んだいつもの笑顔で微笑まれる。

「夜着の裾から覗くおみ足で身長がどれくらい伸びたのかは何となく推測できますが、手首周りや首周りも知りたいのでお願い致します。見たところ胸周りもきつそうですね?」

「見たところ⁉︎」

人の胸元とかいつのまにそんなに見てたの⁉︎と身を縮こまらせてリオン様にますますくっつけば

「シェラ、変なことを言わないで。正確なサイズを知りたければすぐシンシアを呼ぶから。あとユーリ、自分から僕にくっついてくれるのは嬉しいけどその格好と今の姿ではちょっと」

シェラさんを注意する強い口調のリオン様の声が、最後の方は少し声のトーンが落ちた。

「あっ、ひゃあ!ごめんなさい!」

意図せず胸を押し付ける格好になっていた。

しかもあの下着の色も透けて見えるくらい薄い夜着で。

今まではどんなにくっついても胸がないも同然だったので何とも思ってなかったけどさすがにこれはダメだ。

リオン様の鉄の意志を朝っぱらから挫いてしまう。

「あっ、危ないよ!」

「ユーリ!」

出来るだけ離れようと慌ててリオン様の胸元を両手でつっ張るように押す。

すると支えようとしてくれていたリオン様の腕からバランスを崩して、足を上に頭から逆さまに落ちそうになった。

すかさずレジナスさんが手を差し伸べてくれて頭を支えてくれた。

危なかった。

逆さまになりながらもレジナスさんの顔を上下逆に見ながら助かりましたとお礼を言う。

するとシェラさんが、

「・・・ユーリ様、それはあまりに際どいお姿では。扇情的で目のやり場に困ってしまいますね。」

と言った。逆さまに見えているシェラさんの顔は困っていると言いながらも目元に色気を滲ませていてどこか嬉しそうだ。

「レジナス、早くユーリを起こして」

聞こえてくるリオン様の声は困っていて、何がどうしたとレジナスさんの方も見ればその視線はちらりと私の足の方を見ると

「一度降ろしましょう!」

と見てはいけないものを見てしまったかのように視線を彷徨わせた。・・・私の足?

レジナスさんの視線に釣られて逆さまになったまま私も自分の足を見る。

落っこちそうになっていた私の足はリオン様の肩に乗って引っかかっている。

そしてあのやたらと軽くて薄手の夜着は当然ながら足の付け根までめくれ上がっていた。

レジナスさんとシェラさんにはかろうじて下着は見えていないけど、太ももは丸見えだ。

ていうかこれ、位置的にリオン様には私のパンツ、丸見え・・・!

ハッとしてリオン様を見れば、足のかかった方とは反対側に赤く染まった頬を俯けて目を閉じてくれていた。

さすが紳士で誠実な王子様、鉄の意志だ。

「早くユーリを降ろしてあげて」

リオン様に頼まれたレジナスさんも際どい格好・・・

というかほぼパンツ丸見えな姿勢の私を見ないようにしながらサッとリオン様の腕から私を降ろして椅子に座らせてくれた。

シェラさんは近くにあったひざ掛けを私に羽織らせてくれながら、

「胸元の生地の張り具合から推測するにあの大きなお姿より一回り・・・いや二回り小さめに詰めれば今ある大きいお姿用のドレスでもとりあえず何とかなりますかね?」

と呟いている。

こんな一瞬の目視で今の私の胸囲が分かるとかどうなってるの?

じとりとシェラさんを見ればその視線に気付いて、

「さきほど殿下の肩の上で腰回りまできちんと見えなかったのは残念でした。ひとまず体に沿ったラインのドレスではなくウエストを絞らないタイプのドレスを準備いたしますね。」

と言われるた。

恐ろしい。あれでシェラさんにもパンツ丸見え姿を見られていたらそれだけでウエストやお尻のサイズまで把握されてしまうところだった。

羽織ったひざ掛けを握りしめ、

「とりあえず私と他国から来ている方達との謁見や交流は中止ですよね・・・?」

と尋ねる。せっかくリオン様の役に立てると思ったのになあ。

「当分の間はそうだね。まあ少しくらいの変化があっても他国の者達は元々のユーリの姿は知らないし王宮の者達はユーリが前に一度同じような成長の仕方をしていて事情は分かるだろうから・・・。」

リオン様は考えながら説明してくれた。

「今の身長に合った服さえ出来上がればまた普段通りの生活で大丈夫だと思うよ。」

逆さまになったことで乱れた私の髪を整えながらそう続けてくれる。

「一応あとで大神殿やカティヤにも事の次第は伝えておこう。成長したということは、少しでもヨナス神の力から解放されて元の力を取り戻しそうだと考えてもいいのかな?」

髪も伸びたね、と言いながら私の両手を取って立ち上がらせるとリオン様はもう一度じっくりと私を見下ろした。

「背も少し高くなった。目線が近付いて嬉しいよ」

そのまま取られた手の甲に口付けられ、

「・・・それにしても愛情を受け取り、与えることでイリューディア神様の加護の力が高まってヨナス神の呪いの鎖が解かれるなら、元のあの姿に戻ってもらうためにはこれ以上何をすればいいんだろうね?」

とふと思い付いたように言われた。

「これ以上伴侶の数を増やすのもどうかと思うし。」

意味あり気に口付けた手の甲を撫でられる。

さっきまでの紳士で誠実なリオン様はどこに行っちゃったんだろうか。

そんなリオン様をシェラさんは面白そうに目を細めながら見つめて口を開く。

「殿下、いくらユーリ様が成長されたといっても実力行使はまだ早過ぎますよ。愛情ならば言葉でもたっぷりと与えることが出来ます。そうですよねユーリ様。」

続けられる言葉は少し不穏だ。

「愛情のこもった言葉をその耳元でたくさん囁いて差し上げますから、ぜひそれを全て受け止めて元の姿に戻るのを目指しましょうね。」

・・・実力行使か言葉責めか。

どっちを選んでも私にいいことはない、絶対に選びたくない二択だ。

「い、今こんなに大きくなったんなら当分の間はもう成長しないんじゃないかなって思います!」

助けてレジナスさん。

リオン様からさっと両手を引き抜きシェラさんの視界から見えなくなるようにレジナスさんの後ろに隠れる。

そんな私にリオン様は

「ごめんごめん、ユーリがあんまりにも美人さんになってしまったから、ついからかいたくなっちゃった」

と笑って許しを求めてきたけど、あれは絶対に冗談じゃなかったよね⁉︎














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