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番外編
暇を持て余した貴族の優雅な遊び 1
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「ウソでしょう・・・?」
「どうしましょう、プリシラお嬢様」
呆然とした私の後ろで侍女のベスが泣きついて来た。
ユーリ様にアイデアをいただいて私が王都へ開店したレディのための淑女カフェは好評で、順調に店舗を増やした。
おかげさまで最初の店舗開設から約2年、今では王都内にその数も三店舗を数える。
そんな中降って湧いたトラブル。
一番貴族向けに展開していた二番目の店舗の様子がおかしいと出勤して来た店員からの連絡を受けて向かえば、果たして店舗内の金庫はすっからかんになっていた。
店内の目立つ装飾品もいくつか無くなっていたし、その後急いで連絡を取ったその店舗の店員達の数人とも連絡が取れない。
・・・店舗の鍵を持たせて店を任せていた責任者も含めてだ。
「私としたことが、してやられてしまいましたわね・・・!」
やられた。資金の持ち逃げと横領、店員の引き抜きだ。
採用する者の身元確認や普段の行動、各店舗の資金の動きには気を付けていたつもりだったのに。
この店舗の責任者は確か、どこぞの貴族のお屋敷で執事長を務めていたけど体調を崩したら辞めさせられたとかいう者を採用したんだったかしら。
今にして思えばちょっと嫌な目つきをしていたけど。
でもそれは体調を崩した程度で長年勤めた屋敷を解雇された事による人間不信だろうと思っていた。
私の店で手厚い福利厚生と高給があればしっかり働き、下の者達にもその洗練された所作を教えてくれるに違いないと信じていたのに。
「まさか最初から店の経営方法を盗んで他で自分も店を出すつもりだった・・・?」
出勤して来ず連絡の取れない数人はいずれも貴族の奥様やお嬢様方に人気が高い、この店の顔とも言える主要な者達ばかりだ。
店員を引き抜き、店の経営方法や売っている商品の仕入れ先も盗み終わったから持ち逃げした金目の物を売り捌きそれを元手にどこかで同じような店でも開くつもりなのかしら。
いずれは同じような店も出てくるだろうとは思っていたけどこうも卑怯な手を使われるとは思わなかった。
「私の落ち度ね・・・!」
怪しいとは思いつつ、好調な売り上げや人気店としての繁忙にかまけて管理を疎かにして油断した。そのツケだ。
「とりあえず他の店舗から人員と品物の調達を。なるべく普段と同じような対応をするのよ。お客様に迷惑はかけられないわ、分かったわねベス‼︎」
「は、はい‼︎」
私の言葉にベスと他のスタッフ達がバタバタと動き出す。
・・・癒し子ユーリ様が結婚式を挙げて数週間。
これまでも王都観光の立ち寄り先として人気のあった私の店は、ユーリ様の結婚式を見ようと王都を訪れた人達がついでに立ち寄ったその口コミもあり更に訪れる人が増えていた。
どんな女性も心を安らげ一人の乙女として夢のようなひと時を過ごせること、を目的とした私の店は観光で地方から訪れる人達、なかなか王都まで来れない人達にとっては人生で一度きりの大切な体験になることもあるだろう。
もしそれが今日だったら?
店員が引き抜かれたとか店の物を持ち逃げされたから店は開けない、予約はキャンセルしてまた次の機会を、なんてことは言いたくない。
絶対に普段と同じレベルを保って店を開かなくては。
幸いにも残って必死に働いてくれている者達は私のこの志を理解して頑張ってくれる者達ばかりだった。
おかげでお昼のピークまでは何とか乗り越えて、午後の軽食の営業時間前の一時間の休憩時間になった。
「問題はこの後の軽食の時間ね・・・」
昼までは他の二店舗同様、この店もわりと普通の対応で問題はない。
でも、より貴族らしくよりお嬢様気分を味わえるようにしたこの店舗はこの後の午後のティータイムの営業時間に特徴がある。
他の店舗の店員達よりも、より見目麗しくその所作も洗練された精鋭ともいえる特別な店員達がお客様対応をするのだ。
そして今回引き抜かれた店員達は、実は皆その特別な店員達だった。その穴を埋めるのは容易ではない。
他の店舗よりも高額な飲食代をいただく分、それ以上のサービスを。
そう、執事以上のまるで騎士にかしずかれているか王子様に愛を囁かれているかのような、まるで夢のように思い出に残るひと時を送ってもらうのがこの店の午後の時間のコンセプトなのだ。
それだけに他の店舗から回してくる付け焼き刃の人員の所作ではサービスの質を落とすかもしれない。
それでも何とかしなければ。
キリ、と爪を噛みどうしようかと考えを巡らせていた時だった。
カランカラン、と客の訪れを告げる店舗入り口の鐘が軽やかに鳴った。
「あ・・・申し訳ありません、ただいまの時間は休憩時間となっておりまして・・・⁉︎」
顔を上げ、来客を断ろうとした私の目に飛び込んで来たのは揃いの黒い騎士服を来た四、五人の騎士達だ。
無言で引き締まった表情のまま、有無を言わさずぞろぞろと店に入ってくると扉の両脇に並び、その手は剣の柄にかかっている。
「ひっ、プリシラお嬢様ぁ・・・‼︎」
ベスが私の後ろに隠れる。ちょっと、こういう時は主人を庇うのが侍女じゃなくって?
呆れながらも目の前の光景にさすがの私もおののく。
街の傭兵や駐在騎士じゃない。
この佇まいや隊服は間違いなく王宮の中央騎士団だ。
私の店に一体何が起きているのかしら?まさかあの逃げた店の責任者がさっそく何かやらかして騎士団がここに調査に来た?とばっちりで私まで連行されてしまうのかしら?
ドレスの内側で小さく足が震えた。
だけど私の後ろにはベスだけでなくこの店の店員たちもいる。
必死に仕事を覚えて店に貢献してくれているトランタニア領から採用した孤児たちも多い。そんな彼らを路頭に迷わすことだけはさせられない。
「王宮の騎士様方がこんな取るに足らない店になんのご用でして?何かお聞きになりたいことでもありましたらこちらから伺いましたのに」
精一杯の虚勢を張る。怯んではダメよプリシラ、この程度のこともうまく対処出来なければこの先大きな商談や交渉があった時も対応できないわ。
自分で自分を鼓舞して騎士達に話しかけていたその時だ。
並んだ騎士達の間の扉から、ぬうっとひときわ大きな影が店に入って来た。
背が高いせいで割と大きい作りのはずの扉も屈んで入って来たその様子に、一瞬クマでもやって来たのかと思ってしまった。
「ひィッ‼︎」
驚き過ぎたせいで思わず喉の奥で小さな悲鳴を上げてしまう。
だけどよく見ればちゃんと人間だった。
私の悲鳴も聞こえただろうに怖がられたその様子にもまるで慣れているかのように顔色ひとつ変えずに、その人は並んだ騎士達の前に立つ。
着ているのは他の騎士達と同じ黒い騎士服のようだけど、襟元や袖先、胸ポケットには金糸の刺繍が入っていてそれが他の騎士達よりも上品さを醸し出している。
それに、あら・・・?恐ろしげだけど整っているその顔も、よくよく見れば見覚えがある。
黒髪によく晴れた日の夕暮れのような瞳の色。
厳しい顔付きは前に遠くから見かけた時とはまるで違う表情だけど・・・。
そう。前に私がこの人を見たのはユーリ様の結婚式だ。
ニコラスやおバカなウィリアムと連れ立って、大神殿の前から出発するユーリ様の結婚式のパレードを見に行った。
イリューディア神様の大神殿の前、鳴り響く荘厳な鐘の音に雨あられと降り注いだカラフルな包み紙のキャンディ。
六頭立ての白馬に引かれた華やかな色とりどりの花と金で装飾された白く大きな馬車。
それに乗り込み手を振る、まるで女神様のように美しく微笑むユーリ様と四人のご伴侶の皆様方。
目の前に立つこの強面の男性は、間違いなくその中の一人だ。
そう、他国にもその名を知られたルーシャ国の誇る騎士の中の騎士、レジナス様。
・・・もっとも、あのパレードの時はこんな恐ろしげな顔ではなく優しい目でユーリ様を見つめて微笑んでいたけれど。
そんな人がなぜここに?
訳がわからないわ、と思っていたらカラン、とまた軽やかに鐘の音が来訪者を告げた。
レジナス様が脇に逸れてサッと頭を下げる。
「え?もしかして今は営業時間外じゃないかい?せっかくの休憩時間を邪魔したなんて悪いことをしたなあ。」
にこにこと優しげな微笑みを顔に浮かべ、吸い込まれそうなほど深い青の瞳を笑ませた見目麗しい男性は、ぽかんとしている私を含めて辺りをさっと見回した。
そうしてまた私の目を見つめると、にっこり微笑んで肩口まである柔らかそうなクリーム色の髪の毛を耳にかけた。その耳には上質で高級そうな、瞳の色と揃いの青い魔石のピアスがきらりと輝いている。
さらにその背後から
「ですが殿下、今しかここに立ち寄る時間はございませんし。ユーリ様の喜ぶ顔を見るにはここのケーキをお土産にするのが一番ですよ。オレの情報に間違いはありません」
紫色の髪の毛の、長めの前髪の奥から機嫌の良い猫のように金色の瞳を細めてその人はそう自分の目の前の男性に話しかけていた。
その左目の下の泣きぼくろがやけに艶っぽく特徴的な、その辺の女性よりもよっぽど色気のある男性だ。
・・・ちょっと待って、殿下って。それにこの紫色の髪の毛の人にも見覚えがある。
みんなあのパレードでユーリ様と幸せそうに微笑んでいたご伴侶様じゃないの!
私の店に一体何が起きているのかしら?
女は度胸がモットーの私も、さすがに自国の王子や有名な騎士を目の前にするとどうするべきか分からなくなってしまった。
「どうしましょう、プリシラお嬢様」
呆然とした私の後ろで侍女のベスが泣きついて来た。
ユーリ様にアイデアをいただいて私が王都へ開店したレディのための淑女カフェは好評で、順調に店舗を増やした。
おかげさまで最初の店舗開設から約2年、今では王都内にその数も三店舗を数える。
そんな中降って湧いたトラブル。
一番貴族向けに展開していた二番目の店舗の様子がおかしいと出勤して来た店員からの連絡を受けて向かえば、果たして店舗内の金庫はすっからかんになっていた。
店内の目立つ装飾品もいくつか無くなっていたし、その後急いで連絡を取ったその店舗の店員達の数人とも連絡が取れない。
・・・店舗の鍵を持たせて店を任せていた責任者も含めてだ。
「私としたことが、してやられてしまいましたわね・・・!」
やられた。資金の持ち逃げと横領、店員の引き抜きだ。
採用する者の身元確認や普段の行動、各店舗の資金の動きには気を付けていたつもりだったのに。
この店舗の責任者は確か、どこぞの貴族のお屋敷で執事長を務めていたけど体調を崩したら辞めさせられたとかいう者を採用したんだったかしら。
今にして思えばちょっと嫌な目つきをしていたけど。
でもそれは体調を崩した程度で長年勤めた屋敷を解雇された事による人間不信だろうと思っていた。
私の店で手厚い福利厚生と高給があればしっかり働き、下の者達にもその洗練された所作を教えてくれるに違いないと信じていたのに。
「まさか最初から店の経営方法を盗んで他で自分も店を出すつもりだった・・・?」
出勤して来ず連絡の取れない数人はいずれも貴族の奥様やお嬢様方に人気が高い、この店の顔とも言える主要な者達ばかりだ。
店員を引き抜き、店の経営方法や売っている商品の仕入れ先も盗み終わったから持ち逃げした金目の物を売り捌きそれを元手にどこかで同じような店でも開くつもりなのかしら。
いずれは同じような店も出てくるだろうとは思っていたけどこうも卑怯な手を使われるとは思わなかった。
「私の落ち度ね・・・!」
怪しいとは思いつつ、好調な売り上げや人気店としての繁忙にかまけて管理を疎かにして油断した。そのツケだ。
「とりあえず他の店舗から人員と品物の調達を。なるべく普段と同じような対応をするのよ。お客様に迷惑はかけられないわ、分かったわねベス‼︎」
「は、はい‼︎」
私の言葉にベスと他のスタッフ達がバタバタと動き出す。
・・・癒し子ユーリ様が結婚式を挙げて数週間。
これまでも王都観光の立ち寄り先として人気のあった私の店は、ユーリ様の結婚式を見ようと王都を訪れた人達がついでに立ち寄ったその口コミもあり更に訪れる人が増えていた。
どんな女性も心を安らげ一人の乙女として夢のようなひと時を過ごせること、を目的とした私の店は観光で地方から訪れる人達、なかなか王都まで来れない人達にとっては人生で一度きりの大切な体験になることもあるだろう。
もしそれが今日だったら?
店員が引き抜かれたとか店の物を持ち逃げされたから店は開けない、予約はキャンセルしてまた次の機会を、なんてことは言いたくない。
絶対に普段と同じレベルを保って店を開かなくては。
幸いにも残って必死に働いてくれている者達は私のこの志を理解して頑張ってくれる者達ばかりだった。
おかげでお昼のピークまでは何とか乗り越えて、午後の軽食の営業時間前の一時間の休憩時間になった。
「問題はこの後の軽食の時間ね・・・」
昼までは他の二店舗同様、この店もわりと普通の対応で問題はない。
でも、より貴族らしくよりお嬢様気分を味わえるようにしたこの店舗はこの後の午後のティータイムの営業時間に特徴がある。
他の店舗の店員達よりも、より見目麗しくその所作も洗練された精鋭ともいえる特別な店員達がお客様対応をするのだ。
そして今回引き抜かれた店員達は、実は皆その特別な店員達だった。その穴を埋めるのは容易ではない。
他の店舗よりも高額な飲食代をいただく分、それ以上のサービスを。
そう、執事以上のまるで騎士にかしずかれているか王子様に愛を囁かれているかのような、まるで夢のように思い出に残るひと時を送ってもらうのがこの店の午後の時間のコンセプトなのだ。
それだけに他の店舗から回してくる付け焼き刃の人員の所作ではサービスの質を落とすかもしれない。
それでも何とかしなければ。
キリ、と爪を噛みどうしようかと考えを巡らせていた時だった。
カランカラン、と客の訪れを告げる店舗入り口の鐘が軽やかに鳴った。
「あ・・・申し訳ありません、ただいまの時間は休憩時間となっておりまして・・・⁉︎」
顔を上げ、来客を断ろうとした私の目に飛び込んで来たのは揃いの黒い騎士服を来た四、五人の騎士達だ。
無言で引き締まった表情のまま、有無を言わさずぞろぞろと店に入ってくると扉の両脇に並び、その手は剣の柄にかかっている。
「ひっ、プリシラお嬢様ぁ・・・‼︎」
ベスが私の後ろに隠れる。ちょっと、こういう時は主人を庇うのが侍女じゃなくって?
呆れながらも目の前の光景にさすがの私もおののく。
街の傭兵や駐在騎士じゃない。
この佇まいや隊服は間違いなく王宮の中央騎士団だ。
私の店に一体何が起きているのかしら?まさかあの逃げた店の責任者がさっそく何かやらかして騎士団がここに調査に来た?とばっちりで私まで連行されてしまうのかしら?
ドレスの内側で小さく足が震えた。
だけど私の後ろにはベスだけでなくこの店の店員たちもいる。
必死に仕事を覚えて店に貢献してくれているトランタニア領から採用した孤児たちも多い。そんな彼らを路頭に迷わすことだけはさせられない。
「王宮の騎士様方がこんな取るに足らない店になんのご用でして?何かお聞きになりたいことでもありましたらこちらから伺いましたのに」
精一杯の虚勢を張る。怯んではダメよプリシラ、この程度のこともうまく対処出来なければこの先大きな商談や交渉があった時も対応できないわ。
自分で自分を鼓舞して騎士達に話しかけていたその時だ。
並んだ騎士達の間の扉から、ぬうっとひときわ大きな影が店に入って来た。
背が高いせいで割と大きい作りのはずの扉も屈んで入って来たその様子に、一瞬クマでもやって来たのかと思ってしまった。
「ひィッ‼︎」
驚き過ぎたせいで思わず喉の奥で小さな悲鳴を上げてしまう。
だけどよく見ればちゃんと人間だった。
私の悲鳴も聞こえただろうに怖がられたその様子にもまるで慣れているかのように顔色ひとつ変えずに、その人は並んだ騎士達の前に立つ。
着ているのは他の騎士達と同じ黒い騎士服のようだけど、襟元や袖先、胸ポケットには金糸の刺繍が入っていてそれが他の騎士達よりも上品さを醸し出している。
それに、あら・・・?恐ろしげだけど整っているその顔も、よくよく見れば見覚えがある。
黒髪によく晴れた日の夕暮れのような瞳の色。
厳しい顔付きは前に遠くから見かけた時とはまるで違う表情だけど・・・。
そう。前に私がこの人を見たのはユーリ様の結婚式だ。
ニコラスやおバカなウィリアムと連れ立って、大神殿の前から出発するユーリ様の結婚式のパレードを見に行った。
イリューディア神様の大神殿の前、鳴り響く荘厳な鐘の音に雨あられと降り注いだカラフルな包み紙のキャンディ。
六頭立ての白馬に引かれた華やかな色とりどりの花と金で装飾された白く大きな馬車。
それに乗り込み手を振る、まるで女神様のように美しく微笑むユーリ様と四人のご伴侶の皆様方。
目の前に立つこの強面の男性は、間違いなくその中の一人だ。
そう、他国にもその名を知られたルーシャ国の誇る騎士の中の騎士、レジナス様。
・・・もっとも、あのパレードの時はこんな恐ろしげな顔ではなく優しい目でユーリ様を見つめて微笑んでいたけれど。
そんな人がなぜここに?
訳がわからないわ、と思っていたらカラン、とまた軽やかに鐘の音が来訪者を告げた。
レジナス様が脇に逸れてサッと頭を下げる。
「え?もしかして今は営業時間外じゃないかい?せっかくの休憩時間を邪魔したなんて悪いことをしたなあ。」
にこにこと優しげな微笑みを顔に浮かべ、吸い込まれそうなほど深い青の瞳を笑ませた見目麗しい男性は、ぽかんとしている私を含めて辺りをさっと見回した。
そうしてまた私の目を見つめると、にっこり微笑んで肩口まである柔らかそうなクリーム色の髪の毛を耳にかけた。その耳には上質で高級そうな、瞳の色と揃いの青い魔石のピアスがきらりと輝いている。
さらにその背後から
「ですが殿下、今しかここに立ち寄る時間はございませんし。ユーリ様の喜ぶ顔を見るにはここのケーキをお土産にするのが一番ですよ。オレの情報に間違いはありません」
紫色の髪の毛の、長めの前髪の奥から機嫌の良い猫のように金色の瞳を細めてその人はそう自分の目の前の男性に話しかけていた。
その左目の下の泣きぼくろがやけに艶っぽく特徴的な、その辺の女性よりもよっぽど色気のある男性だ。
・・・ちょっと待って、殿下って。それにこの紫色の髪の毛の人にも見覚えがある。
みんなあのパレードでユーリ様と幸せそうに微笑んでいたご伴侶様じゃないの!
私の店に一体何が起きているのかしら?
女は度胸がモットーの私も、さすがに自国の王子や有名な騎士を目の前にするとどうするべきか分からなくなってしまった。
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