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番外編
指輪ものがたり 2
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とりあえずなぜクレイトス公女のミアさんという人がシグウェルさんの婚約者になっているのかは本人に聞いてみることにして、さっそく王宮へ魔法陣の使用許可を求めることになった。
「コトがコトっすから、俺が直接王宮に行ってくるっす。リオン殿下の承認を得ることになるんでしょうけど、クレイトスは自治領とは言え一応小国と同程度の国扱いっすからねぇ。場合によっちゃイリヤ陛下の許可もいるかも知れないっす。」
そうなんだ。そんなところの公女様と塩対応なお見合いするとか、シグウェルさんも相当肝が座っている。
すぐ戻るっす、と言って書類を手にユリウスさんが消えたので戻るまでまたお茶でも飲んで待っていようかと思っていたら、思い出したようにシグウェルさんに
「そういえば君に渡す物があった」
と言われた。そのまま大きな執務机の引き出しをがらりと開けたシグウェルさんが取り出したのは紺色のビロード張りの小さな四角い箱だ。
「なんですかこれ?」
「前に君と話していた事から着想を得て作った指輪だ。」
話しながら開けられたその小箱の中にはシグウェルさんの髪の色のように美しい銀色の輝きを放つ円環の真ん中に、深く澄んだ色のアメジストが嵌っている。
「綺麗ですけど・・・なんでですか?」
ちなみに私の左手の薬指にはすでに金色の細い指輪が嵌っている。
結婚の誓いとして指輪を贈ったり嵌めたりする習慣は元々この国にはないけど、勇者様が持ち込んだ風習として王族だけは婚姻の証として互いに指輪をするようになったらしい。
だからあの四人と式を挙げた後も、私とリオン様だけが指輪をしている。
ただそれについてリオン様以外の三人は元々そういう習慣もないこともあってさして羨むでも気にするでもなかったんだけど・・・。
だからなぜ今頃シグウェルさんが私に指輪を贈ってくれたのかが謎だ。単なるプレゼントなのかな?
私が不思議そうな顔をしたものだから、なんだ覚えていないのか?とシグウェルさんは箱から指輪を取り出しながら説明を続けた。
「なぜ君が金のリンゴなどという発想に至ったのかという話題になった時に面白い話を教えてくれただろう?竜の命と本体とを分ける物語だ。」
「あっ!あれですか?」
思い出した。ふとした会話の中で、なぜ私がマールの町に植えるリンゴを金色にしたのかと聞かれたのだ。
それはシグウェルさんの思考の範疇から外れた思い付きだったらしく、その考えの元ネタを知りたかったらしい。
だから私は、それが私のいた世界に伝わるおとぎ話の一つだと教えた。
金のリンゴを守る竜の話を昔どこかで読んだ事があり、それからヒントを得たと話したのだ。
そのついでに、元の世界に伝わる竜にまつわるおとぎ話や物語に興味を持ったシグウェルさんに覚えているものをいくつか教えた記憶がある。
たしかその中の一つで、不死身の竜がさらってきたお姫様についうっかり自分の命を本体とは別の所に隠してるから不死身な事や、何にそれを隠したかを教えてしまって王子様に倒されたって話をした。
「でもそれがこの指輪とどんな関係が?」
「この指輪に俺の魔力の半分ほどを試しに入れてみた。全部入れることも出来るがさすがにほぼ魔力なしで過ごすのは生活に支障が出るからな。」
事もなげにそんな事を言いながら元から私の薬指に嵌っている指輪の上にそれを嵌める。
「えっ⁉︎」
シグウェルさんの魔力の半分⁉︎それって相当な量じゃないの?そんな事をして大丈夫なんだろうか。
青くなった私とは裏腹に、シグウェルさんは平然として重ね付けした指輪を嵌めた私の手を取り
「違和感なくサイズも合っているな。よく似合っている。」
と満足げに頷いている。
「ま、魔力の半分はやり過ぎですよ⁉︎あの竜の話は自分の本体が攻撃されても命は別の場所に隠しているから死なないってことであって、力を半減して隠しておく話じゃないですから!」
「だが俺は人間だからな、さすがに命は体から分離出来ない。分離可能なのは魔力だったからやってみたら出来たというだけだ。着想は君の話で、分離した魔力を何に預けるかはうちの家宝の『強欲の目』を参考にした。面白いだろう?」
強欲の目、って・・・。アレのせいで自分の体を竜に乗っ取らせたり私はグノーデルさんの力の一部に体を操作されたり、挙句の果てにパンツが脱げて危うく人間としての尊厳を失うところだったのに。
あんなことになってよくまだそれを利用した物を作ろうと思ったよね⁉︎
「つまり今のシグウェルさんは普段の半分しか魔力がないってことですか⁉︎」
「まあそうなるな。」
「何してるんですか!もし何かあったらどうするんですか⁉︎しかも魔導士団長なのに仕事にも支障が出たら・・・!」
慌てる私を前にシグウェルさんはのんびりしたもので
「そもそも普段から俺は自分の魔力の半分も使っていない。君やシェラザードと行ったリオネルの港町で使ったような、海を割るほど大掛かりな魔法を使えばさすがにだいぶ魔力は消費するが、ヨナス神の影響もほとんど消えた今ではそんな事態もそれほど起きないだろう?」
と言っている。
そう言われてみれば、シグウェルさんが自分の魔力の限界近くまで力を使ったことがあるのは、今まで記憶にある限りでは私を召喚して一人で儀式を支えきった時と、私と二人で星の砂に魔力を加えて私に魔力を受け渡した時ぐらいだ。
でもだからって私に自分の魔力の半分を預けるとかやり過ぎじゃない?それとも、それだけ信頼されてると思えばいいんだろうか。
「もし私が指輪を無くしたらどうするんですか・・・⁉︎」
そしたらシグウェルさんの魔力は永遠にその半分が戻らないままだ。なんて責任重大なんだろう。
「指から外さなければいいだけの話だと思うが。殿下から贈られた指輪も外す機会はないだろう?それと同じだ。」
「それはそうですけど・・・!」
「そう考えると互いの絆を形にして縛り付ける、目に見えた分かりやすい契約のようで婚姻時に指輪を贈る習慣というのもいい考えかも知れないな。」
ふむ、とシグウェルさんはなぜか納得したように頷いているけど。
いやいや、結婚指輪ってそんな互いの命を預ける物みたいにそこまで責任重大な意味もなければお互いを縛り付ける契約って呪いの魔道具的な物でもないはずだ。
だけど私に自分の魔力を預けたシグウェルさんはいたく満足そうで、せっかく贈られた指輪を責任が重過ぎていりませんと突き返すのも酷な話な気がする。
それにシグウェルさんの魔力さえ入っていなければ、これはこれで素敵な指輪だし一応私のことを考えて贈ってくれたプレゼントだ。
お礼だけは言わなければと、指輪の嵌った薬指をすり、と撫でた。
「指輪をプレゼントしてくれたこと自体は嬉しいです、ありがとうございます。とりあえずこのまま付けてみますけど、やっぱり落ち着かないって思った時は指輪はこのままで、せめて魔力だけはシグウェルさんに返させて下さいね?」
私なりの譲歩を提案すれば、
「仕方ない、面白いと思ったんだがな。元より君に負担をかけるつもりもないし、君の望むようにしよう。」
そう言って指輪を嵌めた指先に口付けられた。
よ、良かった。国一番の魔導士の魔力が国民の気付かないうちに半減してるとか恐ろし過ぎる。
しかもその理由が「小耳に挟んだおとぎ話が面白かったからそれを真似てみました」なんて軽いノリだから困る。
「ホントに、万が一ルーシャ国に何かあった時にどうするつもりなんですか・・・」
思わずボヤいたら、指先から顔を上げたシグウェルさんに
「その時は君の出番だろう?そのためにもグノーデル神様の力を使う練習は進んでいるのか?せっかくだからその成果を見せてもらおうか?」
と言われてしまった。しまった、余計な事を口にしたばかりにヤブヘビになってしまった。
「あ、それはその・・・絶賛努力中です・・・。発現は何とかできるようになったけど細かいコントロールはまだ・・・」
「どの程度の精度だ?ユリウスが戻ってくるまで見てやる、中庭に出ようか」
「エッ」
指輪の贈り物からまさかのスパルタの流れだ。
この間は空き瓶を何十本も準備されて延々とそれに雷を落とし続け正確に射抜く練習をさせられた。まさかまたそれ・・・?
エリス様を助ける時にイリューディアさんとグノーデルさん両方の力を無理やり引き出して使った私はその後、一年間眠り続けた。
そうして起きた時、グノーデルさんのあの雷の力をいつの間にか引き出して使えるようになっていたのだ。
それに気付いたきっかけは、シグウェルさんの薬で小さくなりレニ様の婚約者選びのお茶会に紛れ込んで癇癪を起こして雷を落としたことだ。
以来、シグウェルさんは今までの私の力とは違うグノーデルさんのその力に興味津々であれこれと私にその力を使った練習や実験をさせている。
さすがにエリス様の騒動の時のような「グノーデルさんの力とイリューディアさんの力を組み合わせた瞬時の破壊と再生」みたいなのはまだ出来ないけど、シグウェルさん的には私には最終的にそこまで到達してほしいらしい。
そのためにまずはグノーデルさんの破壊の力の基礎、落雷のコントロールから極めようということで時間のある時はスパルタ指導をされていた。
まさか今日もその流れになるとは思わなかったけど。
「まだお茶を飲み終わってないんですけど⁉︎」
「エルに中庭まで持って行かせればいい。どうせユリウスが申請許可を貰って来るまでには王宮をあちこちたらい回しにされて時間がかかる、行くぞ」
そう言われてずるずると引きずられていく。指輪の件といい本当に魔法バカだ。
「た、助けてエル君‼︎」
思わずエル君に助けを求めれば、
「往生際が悪いし、おとなげないです・・・」
とかぶりを振って断られた。しかもシグウェルさんにまで
「そもそも今日は俺に魔法指導を受けるためにここを訪れたんだろう?希望通りじゃないか。」
と指摘されてしまった。
「それは単に魔法理論的な話を聞いて見たいなって思っただけでスパルタ指導をされに来たんじゃないんですよ・・・!」
「魔法は実践が上達するための一番の近道だ」
無謀な魔法実験を繰り返す人が言うと妙に説得力がある。
「ま、魔法バカ過ぎますよ、単に私がグノーデルさんの力を使うところを見たいだけですよね⁉︎」
思わずそんな言葉が口をついて出れば
「まあそうとも言えるな。それがまた俺が新しい魔法を開発するきっかけになる。」
あっさりと肯定され、結局その日はユリウスさんが戻るまで魔法の実践修行めいた感じになったのは言うまでもない。
「コトがコトっすから、俺が直接王宮に行ってくるっす。リオン殿下の承認を得ることになるんでしょうけど、クレイトスは自治領とは言え一応小国と同程度の国扱いっすからねぇ。場合によっちゃイリヤ陛下の許可もいるかも知れないっす。」
そうなんだ。そんなところの公女様と塩対応なお見合いするとか、シグウェルさんも相当肝が座っている。
すぐ戻るっす、と言って書類を手にユリウスさんが消えたので戻るまでまたお茶でも飲んで待っていようかと思っていたら、思い出したようにシグウェルさんに
「そういえば君に渡す物があった」
と言われた。そのまま大きな執務机の引き出しをがらりと開けたシグウェルさんが取り出したのは紺色のビロード張りの小さな四角い箱だ。
「なんですかこれ?」
「前に君と話していた事から着想を得て作った指輪だ。」
話しながら開けられたその小箱の中にはシグウェルさんの髪の色のように美しい銀色の輝きを放つ円環の真ん中に、深く澄んだ色のアメジストが嵌っている。
「綺麗ですけど・・・なんでですか?」
ちなみに私の左手の薬指にはすでに金色の細い指輪が嵌っている。
結婚の誓いとして指輪を贈ったり嵌めたりする習慣は元々この国にはないけど、勇者様が持ち込んだ風習として王族だけは婚姻の証として互いに指輪をするようになったらしい。
だからあの四人と式を挙げた後も、私とリオン様だけが指輪をしている。
ただそれについてリオン様以外の三人は元々そういう習慣もないこともあってさして羨むでも気にするでもなかったんだけど・・・。
だからなぜ今頃シグウェルさんが私に指輪を贈ってくれたのかが謎だ。単なるプレゼントなのかな?
私が不思議そうな顔をしたものだから、なんだ覚えていないのか?とシグウェルさんは箱から指輪を取り出しながら説明を続けた。
「なぜ君が金のリンゴなどという発想に至ったのかという話題になった時に面白い話を教えてくれただろう?竜の命と本体とを分ける物語だ。」
「あっ!あれですか?」
思い出した。ふとした会話の中で、なぜ私がマールの町に植えるリンゴを金色にしたのかと聞かれたのだ。
それはシグウェルさんの思考の範疇から外れた思い付きだったらしく、その考えの元ネタを知りたかったらしい。
だから私は、それが私のいた世界に伝わるおとぎ話の一つだと教えた。
金のリンゴを守る竜の話を昔どこかで読んだ事があり、それからヒントを得たと話したのだ。
そのついでに、元の世界に伝わる竜にまつわるおとぎ話や物語に興味を持ったシグウェルさんに覚えているものをいくつか教えた記憶がある。
たしかその中の一つで、不死身の竜がさらってきたお姫様についうっかり自分の命を本体とは別の所に隠してるから不死身な事や、何にそれを隠したかを教えてしまって王子様に倒されたって話をした。
「でもそれがこの指輪とどんな関係が?」
「この指輪に俺の魔力の半分ほどを試しに入れてみた。全部入れることも出来るがさすがにほぼ魔力なしで過ごすのは生活に支障が出るからな。」
事もなげにそんな事を言いながら元から私の薬指に嵌っている指輪の上にそれを嵌める。
「えっ⁉︎」
シグウェルさんの魔力の半分⁉︎それって相当な量じゃないの?そんな事をして大丈夫なんだろうか。
青くなった私とは裏腹に、シグウェルさんは平然として重ね付けした指輪を嵌めた私の手を取り
「違和感なくサイズも合っているな。よく似合っている。」
と満足げに頷いている。
「ま、魔力の半分はやり過ぎですよ⁉︎あの竜の話は自分の本体が攻撃されても命は別の場所に隠しているから死なないってことであって、力を半減して隠しておく話じゃないですから!」
「だが俺は人間だからな、さすがに命は体から分離出来ない。分離可能なのは魔力だったからやってみたら出来たというだけだ。着想は君の話で、分離した魔力を何に預けるかはうちの家宝の『強欲の目』を参考にした。面白いだろう?」
強欲の目、って・・・。アレのせいで自分の体を竜に乗っ取らせたり私はグノーデルさんの力の一部に体を操作されたり、挙句の果てにパンツが脱げて危うく人間としての尊厳を失うところだったのに。
あんなことになってよくまだそれを利用した物を作ろうと思ったよね⁉︎
「つまり今のシグウェルさんは普段の半分しか魔力がないってことですか⁉︎」
「まあそうなるな。」
「何してるんですか!もし何かあったらどうするんですか⁉︎しかも魔導士団長なのに仕事にも支障が出たら・・・!」
慌てる私を前にシグウェルさんはのんびりしたもので
「そもそも普段から俺は自分の魔力の半分も使っていない。君やシェラザードと行ったリオネルの港町で使ったような、海を割るほど大掛かりな魔法を使えばさすがにだいぶ魔力は消費するが、ヨナス神の影響もほとんど消えた今ではそんな事態もそれほど起きないだろう?」
と言っている。
そう言われてみれば、シグウェルさんが自分の魔力の限界近くまで力を使ったことがあるのは、今まで記憶にある限りでは私を召喚して一人で儀式を支えきった時と、私と二人で星の砂に魔力を加えて私に魔力を受け渡した時ぐらいだ。
でもだからって私に自分の魔力の半分を預けるとかやり過ぎじゃない?それとも、それだけ信頼されてると思えばいいんだろうか。
「もし私が指輪を無くしたらどうするんですか・・・⁉︎」
そしたらシグウェルさんの魔力は永遠にその半分が戻らないままだ。なんて責任重大なんだろう。
「指から外さなければいいだけの話だと思うが。殿下から贈られた指輪も外す機会はないだろう?それと同じだ。」
「それはそうですけど・・・!」
「そう考えると互いの絆を形にして縛り付ける、目に見えた分かりやすい契約のようで婚姻時に指輪を贈る習慣というのもいい考えかも知れないな。」
ふむ、とシグウェルさんはなぜか納得したように頷いているけど。
いやいや、結婚指輪ってそんな互いの命を預ける物みたいにそこまで責任重大な意味もなければお互いを縛り付ける契約って呪いの魔道具的な物でもないはずだ。
だけど私に自分の魔力を預けたシグウェルさんはいたく満足そうで、せっかく贈られた指輪を責任が重過ぎていりませんと突き返すのも酷な話な気がする。
それにシグウェルさんの魔力さえ入っていなければ、これはこれで素敵な指輪だし一応私のことを考えて贈ってくれたプレゼントだ。
お礼だけは言わなければと、指輪の嵌った薬指をすり、と撫でた。
「指輪をプレゼントしてくれたこと自体は嬉しいです、ありがとうございます。とりあえずこのまま付けてみますけど、やっぱり落ち着かないって思った時は指輪はこのままで、せめて魔力だけはシグウェルさんに返させて下さいね?」
私なりの譲歩を提案すれば、
「仕方ない、面白いと思ったんだがな。元より君に負担をかけるつもりもないし、君の望むようにしよう。」
そう言って指輪を嵌めた指先に口付けられた。
よ、良かった。国一番の魔導士の魔力が国民の気付かないうちに半減してるとか恐ろし過ぎる。
しかもその理由が「小耳に挟んだおとぎ話が面白かったからそれを真似てみました」なんて軽いノリだから困る。
「ホントに、万が一ルーシャ国に何かあった時にどうするつもりなんですか・・・」
思わずボヤいたら、指先から顔を上げたシグウェルさんに
「その時は君の出番だろう?そのためにもグノーデル神様の力を使う練習は進んでいるのか?せっかくだからその成果を見せてもらおうか?」
と言われてしまった。しまった、余計な事を口にしたばかりにヤブヘビになってしまった。
「あ、それはその・・・絶賛努力中です・・・。発現は何とかできるようになったけど細かいコントロールはまだ・・・」
「どの程度の精度だ?ユリウスが戻ってくるまで見てやる、中庭に出ようか」
「エッ」
指輪の贈り物からまさかのスパルタの流れだ。
この間は空き瓶を何十本も準備されて延々とそれに雷を落とし続け正確に射抜く練習をさせられた。まさかまたそれ・・・?
エリス様を助ける時にイリューディアさんとグノーデルさん両方の力を無理やり引き出して使った私はその後、一年間眠り続けた。
そうして起きた時、グノーデルさんのあの雷の力をいつの間にか引き出して使えるようになっていたのだ。
それに気付いたきっかけは、シグウェルさんの薬で小さくなりレニ様の婚約者選びのお茶会に紛れ込んで癇癪を起こして雷を落としたことだ。
以来、シグウェルさんは今までの私の力とは違うグノーデルさんのその力に興味津々であれこれと私にその力を使った練習や実験をさせている。
さすがにエリス様の騒動の時のような「グノーデルさんの力とイリューディアさんの力を組み合わせた瞬時の破壊と再生」みたいなのはまだ出来ないけど、シグウェルさん的には私には最終的にそこまで到達してほしいらしい。
そのためにまずはグノーデルさんの破壊の力の基礎、落雷のコントロールから極めようということで時間のある時はスパルタ指導をされていた。
まさか今日もその流れになるとは思わなかったけど。
「まだお茶を飲み終わってないんですけど⁉︎」
「エルに中庭まで持って行かせればいい。どうせユリウスが申請許可を貰って来るまでには王宮をあちこちたらい回しにされて時間がかかる、行くぞ」
そう言われてずるずると引きずられていく。指輪の件といい本当に魔法バカだ。
「た、助けてエル君‼︎」
思わずエル君に助けを求めれば、
「往生際が悪いし、おとなげないです・・・」
とかぶりを振って断られた。しかもシグウェルさんにまで
「そもそも今日は俺に魔法指導を受けるためにここを訪れたんだろう?希望通りじゃないか。」
と指摘されてしまった。
「それは単に魔法理論的な話を聞いて見たいなって思っただけでスパルタ指導をされに来たんじゃないんですよ・・・!」
「魔法は実践が上達するための一番の近道だ」
無謀な魔法実験を繰り返す人が言うと妙に説得力がある。
「ま、魔法バカ過ぎますよ、単に私がグノーデルさんの力を使うところを見たいだけですよね⁉︎」
思わずそんな言葉が口をついて出れば
「まあそうとも言えるな。それがまた俺が新しい魔法を開発するきっかけになる。」
あっさりと肯定され、結局その日はユリウスさんが戻るまで魔法の実践修行めいた感じになったのは言うまでもない。
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