【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
565 / 776
番外編

指輪ものがたり 2

しおりを挟む
とりあえずなぜクレイトス公女のミアさんという人がシグウェルさんの婚約者になっているのかは本人に聞いてみることにして、さっそく王宮へ魔法陣の使用許可を求めることになった。

「コトがコトっすから、俺が直接王宮に行ってくるっす。リオン殿下の承認を得ることになるんでしょうけど、クレイトスは自治領とは言え一応小国と同程度の国扱いっすからねぇ。場合によっちゃイリヤ陛下の許可もいるかも知れないっす。」

そうなんだ。そんなところの公女様と塩対応なお見合いするとか、シグウェルさんも相当肝が座っている。

すぐ戻るっす、と言って書類を手にユリウスさんが消えたので戻るまでまたお茶でも飲んで待っていようかと思っていたら、思い出したようにシグウェルさんに

「そういえば君に渡す物があった」

と言われた。そのまま大きな執務机の引き出しをがらりと開けたシグウェルさんが取り出したのは紺色のビロード張りの小さな四角い箱だ。

「なんですかこれ?」

「前に君と話していた事から着想を得て作った指輪だ。」

話しながら開けられたその小箱の中にはシグウェルさんの髪の色のように美しい銀色の輝きを放つ円環の真ん中に、深く澄んだ色のアメジストが嵌っている。

「綺麗ですけど・・・なんでですか?」

ちなみに私の左手の薬指にはすでに金色の細い指輪が嵌っている。

結婚の誓いとして指輪を贈ったり嵌めたりする習慣は元々この国にはないけど、勇者様が持ち込んだ風習として王族だけは婚姻の証として互いに指輪をするようになったらしい。

だからあの四人と式を挙げた後も、私とリオン様だけが指輪をしている。

ただそれについてリオン様以外の三人は元々そういう習慣もないこともあってさして羨むでも気にするでもなかったんだけど・・・。

だからなぜ今頃シグウェルさんが私に指輪を贈ってくれたのかが謎だ。単なるプレゼントなのかな?

私が不思議そうな顔をしたものだから、なんだ覚えていないのか?とシグウェルさんは箱から指輪を取り出しながら説明を続けた。

「なぜ君が金のリンゴなどという発想に至ったのかという話題になった時に面白い話を教えてくれただろう?竜の命と本体とを分ける物語だ。」

「あっ!あれですか?」

思い出した。ふとした会話の中で、なぜ私がマールの町に植えるリンゴを金色にしたのかと聞かれたのだ。

それはシグウェルさんの思考の範疇から外れた思い付きだったらしく、その考えの元ネタを知りたかったらしい。

だから私は、それが私のいた世界に伝わるおとぎ話の一つだと教えた。

金のリンゴを守る竜の話を昔どこかで読んだ事があり、それからヒントを得たと話したのだ。

そのついでに、元の世界に伝わる竜にまつわるおとぎ話や物語に興味を持ったシグウェルさんに覚えているものをいくつか教えた記憶がある。

たしかその中の一つで、不死身の竜がさらってきたお姫様についうっかり自分の命を本体とは別の所に隠してるから不死身な事や、何にそれを隠したかを教えてしまって王子様に倒されたって話をした。

「でもそれがこの指輪とどんな関係が?」

「この指輪に俺の魔力の半分ほどを試しに入れてみた。全部入れることも出来るがさすがにほぼ魔力なしで過ごすのは生活に支障が出るからな。」

事もなげにそんな事を言いながら元から私の薬指に嵌っている指輪の上にそれを嵌める。

「えっ⁉︎」

シグウェルさんの魔力の半分⁉︎それって相当な量じゃないの?そんな事をして大丈夫なんだろうか。

青くなった私とは裏腹に、シグウェルさんは平然として重ね付けした指輪を嵌めた私の手を取り

「違和感なくサイズも合っているな。よく似合っている。」

と満足げに頷いている。

「ま、魔力の半分はやり過ぎですよ⁉︎あの竜の話は自分の本体が攻撃されても命は別の場所に隠しているから死なないってことであって、力を半減して隠しておく話じゃないですから!」

「だが俺は人間だからな、さすがに命は体から分離出来ない。分離可能なのは魔力だったからやってみたら出来たというだけだ。着想は君の話で、分離した魔力を何に預けるかはうちの家宝の『強欲の目』を参考にした。面白いだろう?」

強欲の目、って・・・。アレのせいで自分の体を竜に乗っ取らせたり私はグノーデルさんの力の一部に体を操作されたり、挙句の果てにパンツが脱げて危うく人間としての尊厳を失うところだったのに。

あんなことになってよくまだそれを利用した物を作ろうと思ったよね⁉︎

「つまり今のシグウェルさんは普段の半分しか魔力がないってことですか⁉︎」

「まあそうなるな。」

「何してるんですか!もし何かあったらどうするんですか⁉︎しかも魔導士団長なのに仕事にも支障が出たら・・・!」

慌てる私を前にシグウェルさんはのんびりしたもので

「そもそも普段から俺は自分の魔力の半分も使っていない。君やシェラザードと行ったリオネルの港町で使ったような、海を割るほど大掛かりな魔法を使えばさすがにだいぶ魔力は消費するが、ヨナス神の影響もほとんど消えた今ではそんな事態もそれほど起きないだろう?」

と言っている。

そう言われてみれば、シグウェルさんが自分の魔力の限界近くまで力を使ったことがあるのは、今まで記憶にある限りでは私を召喚して一人で儀式を支えきった時と、私と二人で星の砂に魔力を加えて私に魔力を受け渡した時ぐらいだ。

でもだからって私に自分の魔力の半分を預けるとかやり過ぎじゃない?それとも、それだけ信頼されてると思えばいいんだろうか。

「もし私が指輪を無くしたらどうするんですか・・・⁉︎」

そしたらシグウェルさんの魔力は永遠にその半分が戻らないままだ。なんて責任重大なんだろう。

「指から外さなければいいだけの話だと思うが。殿下から贈られた指輪も外す機会はないだろう?それと同じだ。」

「それはそうですけど・・・!」

「そう考えると互いの絆を形にして縛り付ける、目に見えた分かりやすい契約のようで婚姻時に指輪を贈る習慣というのもいい考えかも知れないな。」

ふむ、とシグウェルさんはなぜか納得したように頷いているけど。

いやいや、結婚指輪ってそんな互いの命を預ける物みたいにそこまで責任重大な意味もなければお互いを縛り付ける契約って呪いの魔道具的な物でもないはずだ。

だけど私に自分の魔力を預けたシグウェルさんはいたく満足そうで、せっかく贈られた指輪を責任が重過ぎていりませんと突き返すのも酷な話な気がする。

それにシグウェルさんの魔力さえ入っていなければ、これはこれで素敵な指輪だし一応私のことを考えて贈ってくれたプレゼントだ。

お礼だけは言わなければと、指輪の嵌った薬指をすり、と撫でた。

「指輪をプレゼントしてくれたこと自体は嬉しいです、ありがとうございます。とりあえずこのまま付けてみますけど、やっぱり落ち着かないって思った時は指輪はこのままで、せめて魔力だけはシグウェルさんに返させて下さいね?」

私なりの譲歩を提案すれば、

「仕方ない、面白いと思ったんだがな。元より君に負担をかけるつもりもないし、君の望むようにしよう。」

そう言って指輪を嵌めた指先に口付けられた。

よ、良かった。国一番の魔導士の魔力が国民の気付かないうちに半減してるとか恐ろし過ぎる。

しかもその理由が「小耳に挟んだおとぎ話が面白かったからそれを真似てみました」なんて軽いノリだから困る。

「ホントに、万が一ルーシャ国に何かあった時にどうするつもりなんですか・・・」

思わずボヤいたら、指先から顔を上げたシグウェルさんに

「その時は君の出番だろう?そのためにもグノーデル神様の力を使う練習は進んでいるのか?せっかくだからその成果を見せてもらおうか?」

と言われてしまった。しまった、余計な事を口にしたばかりにヤブヘビになってしまった。

「あ、それはその・・・絶賛努力中です・・・。発現は何とかできるようになったけど細かいコントロールはまだ・・・」

「どの程度の精度だ?ユリウスが戻ってくるまで見てやる、中庭に出ようか」

「エッ」

指輪の贈り物からまさかのスパルタの流れだ。

この間は空き瓶を何十本も準備されて延々とそれに雷を落とし続け正確に射抜く練習をさせられた。まさかまたそれ・・・?

エリス様を助ける時にイリューディアさんとグノーデルさん両方の力を無理やり引き出して使った私はその後、一年間眠り続けた。

そうして起きた時、グノーデルさんのあの雷の力をいつの間にか引き出して使えるようになっていたのだ。

それに気付いたきっかけは、シグウェルさんの薬で小さくなりレニ様の婚約者選びのお茶会に紛れ込んで癇癪を起こして雷を落としたことだ。

以来、シグウェルさんは今までの私の力とは違うグノーデルさんのその力に興味津々であれこれと私にその力を使った練習や実験をさせている。

さすがにエリス様の騒動の時のような「グノーデルさんの力とイリューディアさんの力を組み合わせた瞬時の破壊と再生」みたいなのはまだ出来ないけど、シグウェルさん的には私には最終的にそこまで到達してほしいらしい。

そのためにまずはグノーデルさんの破壊の力の基礎、落雷のコントロールから極めようということで時間のある時はスパルタ指導をされていた。

まさか今日もその流れになるとは思わなかったけど。

「まだお茶を飲み終わってないんですけど⁉︎」

「エルに中庭まで持って行かせればいい。どうせユリウスが申請許可を貰って来るまでには王宮をあちこちたらい回しにされて時間がかかる、行くぞ」

そう言われてずるずると引きずられていく。指輪の件といい本当に魔法バカだ。

「た、助けてエル君‼︎」

思わずエル君に助けを求めれば、

「往生際が悪いし、おとなげないです・・・」

とかぶりを振って断られた。しかもシグウェルさんにまで

「そもそも今日は俺に魔法指導を受けるためにここを訪れたんだろう?希望通りじゃないか。」

と指摘されてしまった。

「それは単に魔法理論的な話を聞いて見たいなって思っただけでスパルタ指導をされに来たんじゃないんですよ・・・!」

「魔法は実践が上達するための一番の近道だ」

無謀な魔法実験を繰り返す人が言うと妙に説得力がある。

「ま、魔法バカ過ぎますよ、単に私がグノーデルさんの力を使うところを見たいだけですよね⁉︎」

思わずそんな言葉が口をついて出れば

「まあそうとも言えるな。それがまた俺が新しい魔法を開発するきっかけになる。」

あっさりと肯定され、結局その日はユリウスさんが戻るまで魔法の実践修行めいた感じになったのは言うまでもない。




しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...