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番外編
夢で会えたら 14
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「・・・あらまあさすが親子ですわね、とろけるような笑顔で美味しそうにパイを食べるお顔が二人ともそっくりですわ。」
アントン様とソフィア様に迎えられお茶を出されて一休みしていたら、出されたアップルパイを食べた私とシャル君を見比べたソフィア様がクスクスと小さな笑いをこぼした。
「え?そうですか?」
思わず口元にフォークを当てたまま隣のシャル君を見れば、シャル君もきょとんとした顔で私と同じように小さな口元にフォークを当てたままこちらを見返している。
「ほら、そっくりですわ!お二人ともなんて可愛らしいんでしょう‼︎」
ソフィア様がさらに笑いをこぼし、それにリオン様も本当だ、と同調して笑った。
シャル君はなぜ笑われているのかイマイチよく分かってないみたいだったけど、私とそっくりだと言われたのが嬉しいのか
「アップルパイおいしいですね!」
と無邪気に私に笑いかけてくれた。そんな風にして小休憩を挟んだ後はさっそく選女の泉へと向かうことになった。
前回あそこを訪れた時と同じように、私とリオン様、シャル君が乗る馬車の御者はレジナスさんが担当した。
同行してくれるシェラさんとシグウェルさんはそれぞれ馬に乗って、元々護衛役でついて来ているエル君やデレクさんと一緒に周囲の警戒もしてくれている。
ガタゴトと進む馬車の中、
「どの辺りでみんなと別れて一人で鹿さんを追いかけたか覚えていますか?」
とシャル君に尋ねれば、
「んーと、馬車をおりてここからは歩きだよっていわれたんです。それでとうさまやかあさま達がいずみへのお供えものとかをじゅんびしている間にラーズとふたりであそんでて・・・」
一生懸命思い出しながらそう教えてくれた。それを聞いたリオン様が
「ということは選女の泉のかなり近くだね。泉への小道は整備されているから迷いようがないけれど鹿を追いかけて茂みの中に迷い込めば、今のシャルの背丈だと他の者達はすぐには探し出せなかっただろうなあ。」
そう言ってシャル君の頭を撫でた。
「問題は時間の流れですよね。私とレニ様の時は半日以上を過去で過ごして、戻って来た時こちらでは数時間が経っているだけでしたけど・・・。今回は数日をこちらで過ごしているのでシャルが向こうに戻った時にどれ位の時間が経っているのか・・・」
突然姿を消したシャル君が長時間見つからないなんて、未来の私達は相当心配しているに違いない。
願わくば、シャル君が消えてからそんなに時間が経っていないで欲しいけど。
シャル君の手を握りながら、心の中でそっとイリューディアさんに祈った。
と、その時馬車がカタンと小さく揺れてゆっくりと止まった。どうやらここで降りるらしい。
外に出れば、馬を降りたシグウェルさんが
「シャル、これを」
と言って懐から白い雌鹿の顔が形どられたブローチを取り出した。
少し前に別邸で見た時もかなり完成していると思ったけど、今シグウェルさんがシャル君に付けてあげているそれはその時よりも更に精巧な完成品になっていた。
前に見た時より少し小ぶりなサイズのブローチになったのに、頭上には細やかに彫られた花冠まで被っている柔らかな顔付きの雌鹿の目には青い魔石が嵌め込まれている。
「あ、これがあの時私が加護を付けた魔石なんですね?」
「そうだ。俺もシャルに対しての他者からの攻撃や魔法を防ぐ簡単な防護魔法をかけておいたから、帰る途中で何かの邪魔が入っても支障はないはずだ。」
頷きながらシャル君の胸元へブローチを付けたシグウェルさんはこれでよし、とその小さな肩をぽんと叩いた。そしてアドバイスをする。
「シャル、ここへ来た時のように白い雌鹿を見たらまっすぐそれを追いかけろ。俺達の方は振り返らずにな。君の事を心配しているだろう皆のことを思い、そこへ帰るんだと強く願って鹿について行け。そうすればきっとすぐに君の本来の両親や弟達に会えるだろう。」
その言葉にシャル君がシグウェルさんを見上げる。
「ここのとうさまたちとはここでお別れなの・・・?ちょっとさびしいです。」
さすがに一人で行けと言われて心細いのかその青い瞳が揺れている。
するとシェラさんも膝をついてシャル君に目線を合わせた。
「おやおや、シャルの瞳は真っ青で殿下譲りですがこうしてよく見るとユーリ様のように金色の光もその中に煌めいていて綺麗ですね。まるで深く澄んだ泉に日の光が差し込み輝いているかのような美しさです。きっと未来のオレもこの愛らしいお顔や美しい瞳を見られずにいて、とても心配しているはずですよ。それにオレの養父もです。将来有望な剣の教え子が姿を消したのですからね。ぜひとも、早くその愛らしいお顔を見せて未来のオレ達を安心させてもらえませんか?」
「おじいさまも待ってますか?」
その言葉にレジナスさんもその大きな手をシャル君の小さな頭に乗せて優しく撫でる。
「ベルゲン様だけじゃない、俺もだ。シャルが帰ってこなければせっかく選んだ馬も贈れないし乗馬も教えられないからな。」
「レジーとうさまがおしえてくれるんですか⁉︎」
「剣を教えられないからな、乗馬は必ず俺が教えるはずだ。シャルに何も教えられないのは寂しい。」
「うれしいです、レジーとうさまに剣を教えてもらっているラーズがちょっぴりうらやましかったの。」
さっきまで不安気に揺れていたシャル君の瞳が少し明るさを取り戻した。その様子に私の手を引いてシャル君へ近付いたリオン様が
「シャル、みんな君の事が大好きだよ。みんな君を愛している。それはこの先、君にどんなに兄弟が増えても変わらない。だから少しも不安に思うことはない。それにほら、ここで過ごした分シャルは他の兄弟達よりもたくさんの愛情を特別に受け取ったんだよ。それを覚えていてね。君のことが大好きな僕達のこと、ここで過ごした思い出を忘れずにしっかり未来に持ち帰ってね。」
そう言い含めるように伝えた。相変わらず四歳児に話すには難しい内容だと思うんだけど、シャル君は真剣にそれに耳を傾けていた。
私も頑張れという思いを込めてシャル君をぎゅっと抱きしめる。
「シャルに会えて良かったです。ここに来てくれてありがとう」
そう言えば、抱きしめた懐から顔を出したシャル君が
「ボク、ここにきて良かったの?かあさま達をひとりじめしたいって思ったからここに迷いこんでみんなに心配かけたわるいこじゃなかった?」
と聞いてきた。
「とっても良い子ですよ!それにもし悪い子だったとしても大丈夫、そのおかげで私達はシャルに会えたんですから!」
私のその言葉にシェラさんが目を細め、シャル君も
「あ!シェラとうさまがいってたことですね?すこしわるい子のほうがいろんなものを見れるって」
と答えた。
「すごい、よく覚えてましたね!でもあんまり悪いことしちゃダメですよ?」
一応釘を刺しておく。こんなにリオン様似で頭の良い子が悪巧みに長けた成長をしたら大変だ。
そんな私にシャル君は分かりました!と大きく頷いた。私達の気持ちを伝えたら不安は解消されたらしい。
「早くかえって、ラーズにもかあさまやとうさま達と一緒にすごしたことを教えてあげたいです」
と、帰る方に気持ちが向いてきている。よし、これなら。
「・・・どうかイリューディアさんの導きで、シャル君が安全に元の時間に戻れますように。精霊さん達がその手助けをしてくれますように。」
以前リオン様の目を治した時のように、祈りを込めて祝福をするようにシャル君の小さな額に口付ける。
新年のこの時期、イリューディアさんの力は一年で最も強くなるという。
それならきっと、私の力も私を手助けしてくれる精霊達の力もきっと良い方へ強く働いてくれるだろう。
閉じた瞼の裏に明るい光を、シャル君に口付けた額と自分の唇に穏やかで暖かな熱を感じる。
その時、横の茂みでがさりと大きな音がした。
目を開けてそちらを見る。私だけでなくリオン様達も含め全員が見たその茂みの暗がりに、不釣り合いなほど真っ白に輝く動物らしいものの耳がぴょこんと飛び出て揺れていた。
ガサガサ、と更に茂みは揺れてその動物らしいものは耳だけでなく顔も覗かせた。それを見てハッと息を呑む。
「白い雌鹿です・・・!」
こちらをジッと見つめるその瞳はどこまでも青く澄んでいて理知的な光をたたえていた。
「あのときの鹿さん!」
シャル君が私の胸元からパッと身を起こした。
すると鹿はその声に反応したのか、私達に背を向けてくるりと踵を返した。
慌ててシャル君に声を掛ける。
「シャル、ついて行って!」
きっとあれがイリューディアさんの使いだ。そう思えるほど神秘的な雰囲気をしている。
促した私にシャル君は掴まっていた手に一瞬ぎゅっと力が入ったようだった。
だけど
「かあさま、ずっとだいすき!また会おうね‼︎」
心を決めたようにそう言うと立ち上がった。
そして茂みの向こうへ姿を消そうとしていた鹿を追いかける。シグウェルさんが教えた通り、こちらは振り向かない。
「またすぐに会えますからね!」
その小さな背中に声を掛けるけど、すぐにその姿は見えなくなった。
シャル君が姿を消したその茂みを私達はしばらくの間、みんな自然と無言で見守ってしまう。
するとそれほど間を置かずして、私達から少し離れた森の向こうが突然明るい光に包まれた。それはまるで私が癒しの力を使った時のようだった。
もしかしてあれがシャル君が元の時間に戻った証なんだろうか。そう思っていたらシグウェルさんも
「・・・シャルの魔力の気配が消えた。どうやら戻ったらしいな。」
と頷いた。その表情や態度はいつも通りの冷静なものだったけど、言葉には僅かに寂しそうなものが含まれていたと思うのはきっと私の気のせいだけじゃないと思う。
アントン様とソフィア様に迎えられお茶を出されて一休みしていたら、出されたアップルパイを食べた私とシャル君を見比べたソフィア様がクスクスと小さな笑いをこぼした。
「え?そうですか?」
思わず口元にフォークを当てたまま隣のシャル君を見れば、シャル君もきょとんとした顔で私と同じように小さな口元にフォークを当てたままこちらを見返している。
「ほら、そっくりですわ!お二人ともなんて可愛らしいんでしょう‼︎」
ソフィア様がさらに笑いをこぼし、それにリオン様も本当だ、と同調して笑った。
シャル君はなぜ笑われているのかイマイチよく分かってないみたいだったけど、私とそっくりだと言われたのが嬉しいのか
「アップルパイおいしいですね!」
と無邪気に私に笑いかけてくれた。そんな風にして小休憩を挟んだ後はさっそく選女の泉へと向かうことになった。
前回あそこを訪れた時と同じように、私とリオン様、シャル君が乗る馬車の御者はレジナスさんが担当した。
同行してくれるシェラさんとシグウェルさんはそれぞれ馬に乗って、元々護衛役でついて来ているエル君やデレクさんと一緒に周囲の警戒もしてくれている。
ガタゴトと進む馬車の中、
「どの辺りでみんなと別れて一人で鹿さんを追いかけたか覚えていますか?」
とシャル君に尋ねれば、
「んーと、馬車をおりてここからは歩きだよっていわれたんです。それでとうさまやかあさま達がいずみへのお供えものとかをじゅんびしている間にラーズとふたりであそんでて・・・」
一生懸命思い出しながらそう教えてくれた。それを聞いたリオン様が
「ということは選女の泉のかなり近くだね。泉への小道は整備されているから迷いようがないけれど鹿を追いかけて茂みの中に迷い込めば、今のシャルの背丈だと他の者達はすぐには探し出せなかっただろうなあ。」
そう言ってシャル君の頭を撫でた。
「問題は時間の流れですよね。私とレニ様の時は半日以上を過去で過ごして、戻って来た時こちらでは数時間が経っているだけでしたけど・・・。今回は数日をこちらで過ごしているのでシャルが向こうに戻った時にどれ位の時間が経っているのか・・・」
突然姿を消したシャル君が長時間見つからないなんて、未来の私達は相当心配しているに違いない。
願わくば、シャル君が消えてからそんなに時間が経っていないで欲しいけど。
シャル君の手を握りながら、心の中でそっとイリューディアさんに祈った。
と、その時馬車がカタンと小さく揺れてゆっくりと止まった。どうやらここで降りるらしい。
外に出れば、馬を降りたシグウェルさんが
「シャル、これを」
と言って懐から白い雌鹿の顔が形どられたブローチを取り出した。
少し前に別邸で見た時もかなり完成していると思ったけど、今シグウェルさんがシャル君に付けてあげているそれはその時よりも更に精巧な完成品になっていた。
前に見た時より少し小ぶりなサイズのブローチになったのに、頭上には細やかに彫られた花冠まで被っている柔らかな顔付きの雌鹿の目には青い魔石が嵌め込まれている。
「あ、これがあの時私が加護を付けた魔石なんですね?」
「そうだ。俺もシャルに対しての他者からの攻撃や魔法を防ぐ簡単な防護魔法をかけておいたから、帰る途中で何かの邪魔が入っても支障はないはずだ。」
頷きながらシャル君の胸元へブローチを付けたシグウェルさんはこれでよし、とその小さな肩をぽんと叩いた。そしてアドバイスをする。
「シャル、ここへ来た時のように白い雌鹿を見たらまっすぐそれを追いかけろ。俺達の方は振り返らずにな。君の事を心配しているだろう皆のことを思い、そこへ帰るんだと強く願って鹿について行け。そうすればきっとすぐに君の本来の両親や弟達に会えるだろう。」
その言葉にシャル君がシグウェルさんを見上げる。
「ここのとうさまたちとはここでお別れなの・・・?ちょっとさびしいです。」
さすがに一人で行けと言われて心細いのかその青い瞳が揺れている。
するとシェラさんも膝をついてシャル君に目線を合わせた。
「おやおや、シャルの瞳は真っ青で殿下譲りですがこうしてよく見るとユーリ様のように金色の光もその中に煌めいていて綺麗ですね。まるで深く澄んだ泉に日の光が差し込み輝いているかのような美しさです。きっと未来のオレもこの愛らしいお顔や美しい瞳を見られずにいて、とても心配しているはずですよ。それにオレの養父もです。将来有望な剣の教え子が姿を消したのですからね。ぜひとも、早くその愛らしいお顔を見せて未来のオレ達を安心させてもらえませんか?」
「おじいさまも待ってますか?」
その言葉にレジナスさんもその大きな手をシャル君の小さな頭に乗せて優しく撫でる。
「ベルゲン様だけじゃない、俺もだ。シャルが帰ってこなければせっかく選んだ馬も贈れないし乗馬も教えられないからな。」
「レジーとうさまがおしえてくれるんですか⁉︎」
「剣を教えられないからな、乗馬は必ず俺が教えるはずだ。シャルに何も教えられないのは寂しい。」
「うれしいです、レジーとうさまに剣を教えてもらっているラーズがちょっぴりうらやましかったの。」
さっきまで不安気に揺れていたシャル君の瞳が少し明るさを取り戻した。その様子に私の手を引いてシャル君へ近付いたリオン様が
「シャル、みんな君の事が大好きだよ。みんな君を愛している。それはこの先、君にどんなに兄弟が増えても変わらない。だから少しも不安に思うことはない。それにほら、ここで過ごした分シャルは他の兄弟達よりもたくさんの愛情を特別に受け取ったんだよ。それを覚えていてね。君のことが大好きな僕達のこと、ここで過ごした思い出を忘れずにしっかり未来に持ち帰ってね。」
そう言い含めるように伝えた。相変わらず四歳児に話すには難しい内容だと思うんだけど、シャル君は真剣にそれに耳を傾けていた。
私も頑張れという思いを込めてシャル君をぎゅっと抱きしめる。
「シャルに会えて良かったです。ここに来てくれてありがとう」
そう言えば、抱きしめた懐から顔を出したシャル君が
「ボク、ここにきて良かったの?かあさま達をひとりじめしたいって思ったからここに迷いこんでみんなに心配かけたわるいこじゃなかった?」
と聞いてきた。
「とっても良い子ですよ!それにもし悪い子だったとしても大丈夫、そのおかげで私達はシャルに会えたんですから!」
私のその言葉にシェラさんが目を細め、シャル君も
「あ!シェラとうさまがいってたことですね?すこしわるい子のほうがいろんなものを見れるって」
と答えた。
「すごい、よく覚えてましたね!でもあんまり悪いことしちゃダメですよ?」
一応釘を刺しておく。こんなにリオン様似で頭の良い子が悪巧みに長けた成長をしたら大変だ。
そんな私にシャル君は分かりました!と大きく頷いた。私達の気持ちを伝えたら不安は解消されたらしい。
「早くかえって、ラーズにもかあさまやとうさま達と一緒にすごしたことを教えてあげたいです」
と、帰る方に気持ちが向いてきている。よし、これなら。
「・・・どうかイリューディアさんの導きで、シャル君が安全に元の時間に戻れますように。精霊さん達がその手助けをしてくれますように。」
以前リオン様の目を治した時のように、祈りを込めて祝福をするようにシャル君の小さな額に口付ける。
新年のこの時期、イリューディアさんの力は一年で最も強くなるという。
それならきっと、私の力も私を手助けしてくれる精霊達の力もきっと良い方へ強く働いてくれるだろう。
閉じた瞼の裏に明るい光を、シャル君に口付けた額と自分の唇に穏やかで暖かな熱を感じる。
その時、横の茂みでがさりと大きな音がした。
目を開けてそちらを見る。私だけでなくリオン様達も含め全員が見たその茂みの暗がりに、不釣り合いなほど真っ白に輝く動物らしいものの耳がぴょこんと飛び出て揺れていた。
ガサガサ、と更に茂みは揺れてその動物らしいものは耳だけでなく顔も覗かせた。それを見てハッと息を呑む。
「白い雌鹿です・・・!」
こちらをジッと見つめるその瞳はどこまでも青く澄んでいて理知的な光をたたえていた。
「あのときの鹿さん!」
シャル君が私の胸元からパッと身を起こした。
すると鹿はその声に反応したのか、私達に背を向けてくるりと踵を返した。
慌ててシャル君に声を掛ける。
「シャル、ついて行って!」
きっとあれがイリューディアさんの使いだ。そう思えるほど神秘的な雰囲気をしている。
促した私にシャル君は掴まっていた手に一瞬ぎゅっと力が入ったようだった。
だけど
「かあさま、ずっとだいすき!また会おうね‼︎」
心を決めたようにそう言うと立ち上がった。
そして茂みの向こうへ姿を消そうとしていた鹿を追いかける。シグウェルさんが教えた通り、こちらは振り向かない。
「またすぐに会えますからね!」
その小さな背中に声を掛けるけど、すぐにその姿は見えなくなった。
シャル君が姿を消したその茂みを私達はしばらくの間、みんな自然と無言で見守ってしまう。
するとそれほど間を置かずして、私達から少し離れた森の向こうが突然明るい光に包まれた。それはまるで私が癒しの力を使った時のようだった。
もしかしてあれがシャル君が元の時間に戻った証なんだろうか。そう思っていたらシグウェルさんも
「・・・シャルの魔力の気配が消えた。どうやら戻ったらしいな。」
と頷いた。その表情や態度はいつも通りの冷静なものだったけど、言葉には僅かに寂しそうなものが含まれていたと思うのはきっと私の気のせいだけじゃないと思う。
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