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番外編
なごり雪 6
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もしかすると次にセビーリャ族の襲撃に遭うかもしれないという村に行くという話をヒルダ様にもしたら案の定すごく心配された上に恐縮された。
「せっかく保養に来ていただいているのにそのような事をしていただくのは・・・。」
なんて言われたけど。いえいえ、これくらいやらせて欲しい。毎日おいしいご飯をご馳走になっている上にあちこち見物に行かせてもらっているし。
ダーヴィゼルドの騎士さん達に付けた怪我をしにくくなる守りの加護も、あまり強いものにして改造強化人間を作らないようにと加減をしたからお世話になっているお礼代わりになっているのか疑問だったところだ。
「それに王都から来ている騎士がわざわざ村を気にして見に来てくれるだけでなく癒し子まで足を運んだとなれば、村の人達に少しは安心感を与えられるかなあと思ったりして。」
ついでに井戸に加護を付けたり、例のパンがたくさん出てくる加護のついたパン籠も寄付してこようかと。そう説明すればヒルダ様は少し考え込んだ末に許可を出してくれた。
政務もあるのでヒルダ様やカイゼル様達は同行が出来ないけれど、その代わりにお城の騎士さん達をバルドル様が手配してくれてレジナスさん達と出掛けることになったのだ。
「公爵城よりも少し標高が高く空気も薄いので、馬でなくこちらで行きます。ユーリ様はオレと一緒にどうぞ。」
ヒルダ様の許可が降り、お城から馬車で半日ほど平原を行った先で降りたところでそうシェラさんに促された先を見る。
するとそこにはモフモフの真っ白な毛に覆われた、アルパカと馬を足して二で割ったような動物がいた。
「え?もう着いたんじゃないんですか?」
人懐っこいモフモフに顔を擦り寄せられながら聞けば
「ここから更に山腹を一時間ほど登ります。ですので季節は夏に近いとはいえ冷気が増しますのでお体を冷やさないようにお気を付けください。」
と、暖かな毛布のようなストールでぐるりと体を巻かれてしまった。まさか夏場に毛布を被ることになるとは思わなかった。
「俺の方が体温が高いからユーリは俺と二人乗りで行く方がいいと思うんだが」
さっさと馬からアルパカもどきへの乗り換えの準備をしているシェラさんにレジナスさんが申し出たけど「いえいえお気遣いなく」と当のシェラさんはにべもない。
「オレの方がユーリ様との二人乗りは慣れておりますからね、特にクーヤに乗るのは初めてですからなおさらオレと一緒の方がいいでしょう。」
とまで念押しをしている。ていうかこのアルパカもどき、クーヤっていうんだ。
へえ、と思いながら撫でていれば
「クーヤはおとなしいですが高地に順応した動物で体力もあり肺活量は馬以上に優れております。ですので空気の薄い土地では荷運びのために馬以上に重宝されているんですよ。もちろん、毛皮も貴重な衣服の材料です。ただし、体力があり山登りにも適している動物なだけに脚力の強さも馬以上です。決してクーヤの後ろには立たないで下さいね、蹴られでもしたら大変なことになりますから。」
と注意事項を伝えられた。なるほど、おとなしい分怖がりで驚いたりした時は危険なのかも。
気を付けます、とシェラさんに頷きレジナスさんには
「行きはシェラさんと一緒に乗りますけど帰りはレジナスさんのクーヤに乗せて下さいね!」
とフォローする。伴侶は平等に、ってやつだ。
すると気持ちしょんぼりしていたようにも見えたレジナスさんも、私の言葉に目元を和らげて小さく微笑んでくれた。なぜかないはずの尻尾が大きく振られているように見える。
これで良し。どうもシェラさんはレジナスさんへの対抗心が強過ぎるんだよねぇ・・・。
だからシェラさんへと向き直って
「ダメですよシェラさん、あんまりレジナスさんに意地悪をするようだと慰めるために私はシェラさんの側から離れてずっとレジナスさんと一緒にいますからね?」
とこっそり伝える。するとシェラさんはクーヤに私を乗せながら
「申し訳ありません、意地悪をしているつもりはなかったのですが。ただオレは、愛するオレの女神と二人でこの美しい景色を楽しみたかっただけなのです。それがユーリ様を悲しませたなら不本意ですし心から申し訳なく思います。」
許していただけますか?そう言って、取った私の手首の内側へ口付けながらあの色気ダダ漏れな流し目で下から見上げてきた。
・・・他の人達には背中を向けてこっそりと私に話しているから会話の中身は私達二人以外には聞こえず、ハタから見ればただ私とシェラさんがいちゃついているようにしか見えない。
だからその様子に付いてきた護衛の騎士さん達も見ていていいのか気まずそうにするしレジナスさんも
「おい・・・!」
何をやってるんだお前は、とまたシェラさんに注意している。すると
「ユーリ様にオレの気持ちを伝えておりました」
とシェラさんは飄々とした態度で言うとヒラリとクーヤにまたがって私の後ろに座る。あれ?これ、またわざとレジナスさんを煽ったな⁉︎
「そんなことしちゃダメって言ったばっかりじゃないですか!」
「今回はレジナスに向けて何かしたわけではなくユーリ様と話していただけですが、それでもダメでしょうか?何とも難しいものですねぇ・・・ああ、しっかり手綱を握って下さい。クーヤは歩き方にクセがあって慣れるまでは馬よりも揺れるように感じますから」
そんなことを言いながら厚いストールごと背後からぎゅうと抱きすくめられた。
「言い訳ばっかり・・・!」
「愛しているという言葉に嘘もありませんし言い訳でもないですよ、オレの女神。」
抱きしめられた耳元で柔らかな声がそっと囁く。
「・・・なんかうまく誤魔化されているような気がします!」
気恥ずかしくなって思わず声を上げれば私達の後からクーヤを走らせていたレジナスさんも
「どうしたユーリ、またシェラにおかしな事を言われたのか⁉︎何を言われた?」
と慌ててクーヤを並べて来た。
「失礼ですね、おかしな事など何も言っておりませんよ。いつも通り愛を囁いただけです。」
「クーヤに乗り慣れていないユーリにお前のおかしな戯言を囁くんじゃない!」
「あなたも言えばいいんです。ユーリ様はオレ達が争わず仲良くする事をお望みですからね、伴侶同士諍いなどなくきちんとユーリ様のみを見つめているのだと伝える良い機会です。」
「それがおかしな事だと言ってるんだ、見ろ、ユーリの顔が赤くなっている!」
そう言うレジナスさんもうっすらと赤い。
すると、わあわあ話しているそんな私達にエル君も自分の乗るクーヤをそっと並べて来て
「ユーリ様、ヒルダ様やバルドル様達が同行されない代わりについて来ている護衛のダーヴィゼルドの騎士達にこの訪問で起きた出来事全てがヒルダ様に報告されるって分かってますか?」
・・・暗に公衆の面前でいちゃつくのは控えろと注意されたけど、いちゃついてもいないし事態を引っ掻き回しているのはシェラさんだし!
「せっかく保養に来ていただいているのにそのような事をしていただくのは・・・。」
なんて言われたけど。いえいえ、これくらいやらせて欲しい。毎日おいしいご飯をご馳走になっている上にあちこち見物に行かせてもらっているし。
ダーヴィゼルドの騎士さん達に付けた怪我をしにくくなる守りの加護も、あまり強いものにして改造強化人間を作らないようにと加減をしたからお世話になっているお礼代わりになっているのか疑問だったところだ。
「それに王都から来ている騎士がわざわざ村を気にして見に来てくれるだけでなく癒し子まで足を運んだとなれば、村の人達に少しは安心感を与えられるかなあと思ったりして。」
ついでに井戸に加護を付けたり、例のパンがたくさん出てくる加護のついたパン籠も寄付してこようかと。そう説明すればヒルダ様は少し考え込んだ末に許可を出してくれた。
政務もあるのでヒルダ様やカイゼル様達は同行が出来ないけれど、その代わりにお城の騎士さん達をバルドル様が手配してくれてレジナスさん達と出掛けることになったのだ。
「公爵城よりも少し標高が高く空気も薄いので、馬でなくこちらで行きます。ユーリ様はオレと一緒にどうぞ。」
ヒルダ様の許可が降り、お城から馬車で半日ほど平原を行った先で降りたところでそうシェラさんに促された先を見る。
するとそこにはモフモフの真っ白な毛に覆われた、アルパカと馬を足して二で割ったような動物がいた。
「え?もう着いたんじゃないんですか?」
人懐っこいモフモフに顔を擦り寄せられながら聞けば
「ここから更に山腹を一時間ほど登ります。ですので季節は夏に近いとはいえ冷気が増しますのでお体を冷やさないようにお気を付けください。」
と、暖かな毛布のようなストールでぐるりと体を巻かれてしまった。まさか夏場に毛布を被ることになるとは思わなかった。
「俺の方が体温が高いからユーリは俺と二人乗りで行く方がいいと思うんだが」
さっさと馬からアルパカもどきへの乗り換えの準備をしているシェラさんにレジナスさんが申し出たけど「いえいえお気遣いなく」と当のシェラさんはにべもない。
「オレの方がユーリ様との二人乗りは慣れておりますからね、特にクーヤに乗るのは初めてですからなおさらオレと一緒の方がいいでしょう。」
とまで念押しをしている。ていうかこのアルパカもどき、クーヤっていうんだ。
へえ、と思いながら撫でていれば
「クーヤはおとなしいですが高地に順応した動物で体力もあり肺活量は馬以上に優れております。ですので空気の薄い土地では荷運びのために馬以上に重宝されているんですよ。もちろん、毛皮も貴重な衣服の材料です。ただし、体力があり山登りにも適している動物なだけに脚力の強さも馬以上です。決してクーヤの後ろには立たないで下さいね、蹴られでもしたら大変なことになりますから。」
と注意事項を伝えられた。なるほど、おとなしい分怖がりで驚いたりした時は危険なのかも。
気を付けます、とシェラさんに頷きレジナスさんには
「行きはシェラさんと一緒に乗りますけど帰りはレジナスさんのクーヤに乗せて下さいね!」
とフォローする。伴侶は平等に、ってやつだ。
すると気持ちしょんぼりしていたようにも見えたレジナスさんも、私の言葉に目元を和らげて小さく微笑んでくれた。なぜかないはずの尻尾が大きく振られているように見える。
これで良し。どうもシェラさんはレジナスさんへの対抗心が強過ぎるんだよねぇ・・・。
だからシェラさんへと向き直って
「ダメですよシェラさん、あんまりレジナスさんに意地悪をするようだと慰めるために私はシェラさんの側から離れてずっとレジナスさんと一緒にいますからね?」
とこっそり伝える。するとシェラさんはクーヤに私を乗せながら
「申し訳ありません、意地悪をしているつもりはなかったのですが。ただオレは、愛するオレの女神と二人でこの美しい景色を楽しみたかっただけなのです。それがユーリ様を悲しませたなら不本意ですし心から申し訳なく思います。」
許していただけますか?そう言って、取った私の手首の内側へ口付けながらあの色気ダダ漏れな流し目で下から見上げてきた。
・・・他の人達には背中を向けてこっそりと私に話しているから会話の中身は私達二人以外には聞こえず、ハタから見ればただ私とシェラさんがいちゃついているようにしか見えない。
だからその様子に付いてきた護衛の騎士さん達も見ていていいのか気まずそうにするしレジナスさんも
「おい・・・!」
何をやってるんだお前は、とまたシェラさんに注意している。すると
「ユーリ様にオレの気持ちを伝えておりました」
とシェラさんは飄々とした態度で言うとヒラリとクーヤにまたがって私の後ろに座る。あれ?これ、またわざとレジナスさんを煽ったな⁉︎
「そんなことしちゃダメって言ったばっかりじゃないですか!」
「今回はレジナスに向けて何かしたわけではなくユーリ様と話していただけですが、それでもダメでしょうか?何とも難しいものですねぇ・・・ああ、しっかり手綱を握って下さい。クーヤは歩き方にクセがあって慣れるまでは馬よりも揺れるように感じますから」
そんなことを言いながら厚いストールごと背後からぎゅうと抱きすくめられた。
「言い訳ばっかり・・・!」
「愛しているという言葉に嘘もありませんし言い訳でもないですよ、オレの女神。」
抱きしめられた耳元で柔らかな声がそっと囁く。
「・・・なんかうまく誤魔化されているような気がします!」
気恥ずかしくなって思わず声を上げれば私達の後からクーヤを走らせていたレジナスさんも
「どうしたユーリ、またシェラにおかしな事を言われたのか⁉︎何を言われた?」
と慌ててクーヤを並べて来た。
「失礼ですね、おかしな事など何も言っておりませんよ。いつも通り愛を囁いただけです。」
「クーヤに乗り慣れていないユーリにお前のおかしな戯言を囁くんじゃない!」
「あなたも言えばいいんです。ユーリ様はオレ達が争わず仲良くする事をお望みですからね、伴侶同士諍いなどなくきちんとユーリ様のみを見つめているのだと伝える良い機会です。」
「それがおかしな事だと言ってるんだ、見ろ、ユーリの顔が赤くなっている!」
そう言うレジナスさんもうっすらと赤い。
すると、わあわあ話しているそんな私達にエル君も自分の乗るクーヤをそっと並べて来て
「ユーリ様、ヒルダ様やバルドル様達が同行されない代わりについて来ている護衛のダーヴィゼルドの騎士達にこの訪問で起きた出来事全てがヒルダ様に報告されるって分かってますか?」
・・・暗に公衆の面前でいちゃつくのは控えろと注意されたけど、いちゃついてもいないし事態を引っ掻き回しているのはシェラさんだし!
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