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番外編
かわいい子には旅をさせよう 27
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シェラさんからの鞭の脅しと私からのご褒美という、文字通りのアメと鞭作戦のおかげかその後の植林作業の下準備はあっという間に終わった。
私の目の前には木枠の区切り通りに規則正しく植えられた小さな苗木がずらりと並んでいる。
「じゃあここからは私の出番ですね」
苗木の植えられた範囲と、植林作業をしていた騎士さん達の大半が私が力を使うのに邪魔にならないようその場から離れたのを確認する。
全ての騎士さんがその場から引き上げなかったのは、苗木が植えられた場所のところどころにシェラさんが持って来た魔法使いの杖を持った数人の騎士さん達に立ってもらっているからだ。
斜面に等間隔で立つ騎士さん達は「いつでもいいですよ!」と山すその下に立つ私に手を振ってくれている。
そして騎士さん達は手にしていた杖をいつも扱っている剣代わりにくるりと回すと勢いよくしっかりと地面に突き刺した。
地面に深々と突き刺した杖を両手で握りしめた騎士さん達がそのまま目を閉じて集中すれば、杖の上部に嵌めてある魔石がそれぞれ明るく輝き出す。
それを見たシェラさんが、
「今回同行している騎士達は騎士団の中でも選りすぐりの魔力量の多い者達です。魔力を使い、あの杖を媒介にしてユーリ様の御力がより深く地中へと浸透するお手伝いをしますからね。ぜひ彼らを思う存分利用なさってください。」
と説明してくれた。説明してくれたのはありがたいけど、人を利用しろとか相変わらずなんだかちょっぴり人聞きの悪い事を言うよね・・・。
ちょっと呆れながらも、説明してくれたことへは一応お礼を言う。
「ありがとうございます。えーと・・・大丈夫だとは思うんですけど、念のため私がやり過ぎた時の為に危ないと思ったらすぐにその場から逃げるように伝えてもらえますか?」
マールの町に植える金のリンゴを育てた時は数十本あった木に平等に力を注いだはずがその成長はまちまちだった。
一度にたくさんの植物を育てるのはあの時以来なので今回も苗木がどんな成長の仕方をするのかちょっと不安だ。
万が一にも、自ら志願して今回の視察任務について来てくれた騎士さん達に怪我をさせたりしたら、最終的には治癒能力で治せるとはいえ申し訳ない。
そんな懸念も含めてシェラさんにお願いすれば、僅かに眉をひそめて
「もし本当に万が一にでも危険が及ぶようなことがあっても、その程度を回避できないようであれば騎士の名折れなのですが・・・。ですがまあ、ユーリ様の優しいお心遣いの一つとして彼らには伝えておきましょう。」
そう言って二つ三つ、高低差のある口笛を吹いてくれた。
あ、これはあれだ。ダーヴィゼルドの山でデレクさんに指示を出していた騎士同士の暗号みたいなやつだ。
そう思い出していれば、斜面のあちこちに立つ騎士さん達が手を振って応えてくれた。
「ありがとうございますー!」
「俺たちのことはお気になさらず、思い切りどうぞ‼︎」
「気を付けまーす!」
と山びこのように口々に声も掛けてくれる。
その様子にとりあえず最低限の注意喚起は済んだと安心していれば、そんな私を見たシェラさんがアドバイスをしてくれた。
「ユーリ様、あまり騎士達に気を取られていては苗木を成長させるのに集中出来ないのでは?ここは一つ、苗木に集中するためにもあの植物について楽しい事を考えてみるのはいかがでしょう?」
「植物について楽しい事?」
あれは良質の紙の原料になるっていうだけで、あとは特に楽しいことなんて・・・と思っていたら
「ユーリ様の御力で、マールの町で採れる果実類はことごとく甘味が増したと聞いております。であれば、この苗木が成長してなる実もおいしくしてみませんか?」
そんな事を言われた。
「え?・・・あ、そういえば実もなるんでしたっけこれ。」
王都でリオン様達と話していた時にちらっとそんな話も出た気がする。
この植物は良質な紙の原料になり、その果実は小さなグミの実みたいなのが出来る。たけどその実の大きさに比べて種が大きくて味も苦いとかなんとか。
だから食用にするのは早々に諦めて、もっと質の良い紙の原料が取れるようにするにはどんなイメージで力を使えばいいのかとか、そっちの方の話に集中したような。
そっか。良質な紙の原料にするのとおいしい実が採れるのと、両方とも目指していいんだ。イリューディアさんの力ならきっと可能だ。
それに甘くておいしいグミの実みたいなのが採れたら子どもたちも喜ぶよね。
私の視界の先、斜面から離れた危なくないところには私達の作業を見物しに来ている町の人達がいる。
そこにはもちろんこの町の子ども達の姿も見えていた。あの子達の喜ぶ姿も見たい。
「・・・そうですね。どうせならこの苗木、大きくなったらおいしい実がなるようにしましょう!ありがとうございますシェラさん。」
いい提案だと頷けば、いつも私に注意されてばかりなのに褒められたのがどれだけ嬉しかったのか、
「ユーリ様のお役に立てて何よりです。」
とこれ以上ないほどの麗しい笑顔を向けられた。
おかげでその無駄に色気たっぷりな笑顔に慣れていない、見物しに来ていた町の人達が男女を問わずその色気にあてられて見惚れてしまっている。
「わりと距離があるのにすごい威力ですね・・・。」
本気で感心して思わずそう漏らせば、
「それが一番通じて欲しい方には全く通じていないところが残念でもあり、さすがオレの女神とも言うべきところですがね。」
とまたにっこりされた。
「そうやって誉め殺ししようとしても騙されませんよ?」
それに私にとってシェラさんは色気たっぷりで誰かれ構わず人を惑わす妖しいお兄さんというよりも、犯罪者への首スパンも躊躇しないちょっと危ない人、という初対面でのイメージの方が強いのだ。
そりゃあたまにはその誘惑めいた仕草にどうしていいか分からなくなる時もあるけれど、それ以上に私に接する人達への過剰な反応を制御するのに必死なので色仕掛けに引っかかる余裕もない。
じとりと睨んだ私にシェラさんは肩をすくめて
「こんなにも正直に思ったことしか伝えておりませんのに、未だそれが届いていないとは残念極まりないですね。」
おどけたようにやれやれと首を振った。やっぱりふざけている。だけどまあ、
「その軽口のおかげで、緊張しないで力を使えそうです」
ふざけているようなシェラさんの物言いにそう答えれば、
「軽口だなんて不本意な。オレはいつでも本気ですよ。」
なんて抗議の声が聞こえたけどそれに構わず目を瞑る。
シェラさんとのいつものやり取りをしたおかげでさっきまでの緊張はだいぶほぐれて肩の力が抜け、いい感じに力を使えそうになった。
目を瞑り、地面に膝をついてぺたりと両手で土に触れる。
「質の良い紙の原料になって、甘くておいしい大粒なグミの実もなりますように・・・!」
そしてその根は木枠に絡み、地中深くに潜り込み、隣り合う苗木同士とも絡み合いしっかりとこの地に根付いて地滑りや土砂崩れにも負けずに青々とした葉を茂らせますように。
そう願い、地面についた手から植えた苗木に向かって魔力が流れていくのをイメージする。
そうすればいつものように瞼の裏に光が溢れて、ついた手のひら全体が温かく感じてそのぬくもりが地面へと伝わっていくのを感じた。
私の目の前には木枠の区切り通りに規則正しく植えられた小さな苗木がずらりと並んでいる。
「じゃあここからは私の出番ですね」
苗木の植えられた範囲と、植林作業をしていた騎士さん達の大半が私が力を使うのに邪魔にならないようその場から離れたのを確認する。
全ての騎士さんがその場から引き上げなかったのは、苗木が植えられた場所のところどころにシェラさんが持って来た魔法使いの杖を持った数人の騎士さん達に立ってもらっているからだ。
斜面に等間隔で立つ騎士さん達は「いつでもいいですよ!」と山すその下に立つ私に手を振ってくれている。
そして騎士さん達は手にしていた杖をいつも扱っている剣代わりにくるりと回すと勢いよくしっかりと地面に突き刺した。
地面に深々と突き刺した杖を両手で握りしめた騎士さん達がそのまま目を閉じて集中すれば、杖の上部に嵌めてある魔石がそれぞれ明るく輝き出す。
それを見たシェラさんが、
「今回同行している騎士達は騎士団の中でも選りすぐりの魔力量の多い者達です。魔力を使い、あの杖を媒介にしてユーリ様の御力がより深く地中へと浸透するお手伝いをしますからね。ぜひ彼らを思う存分利用なさってください。」
と説明してくれた。説明してくれたのはありがたいけど、人を利用しろとか相変わらずなんだかちょっぴり人聞きの悪い事を言うよね・・・。
ちょっと呆れながらも、説明してくれたことへは一応お礼を言う。
「ありがとうございます。えーと・・・大丈夫だとは思うんですけど、念のため私がやり過ぎた時の為に危ないと思ったらすぐにその場から逃げるように伝えてもらえますか?」
マールの町に植える金のリンゴを育てた時は数十本あった木に平等に力を注いだはずがその成長はまちまちだった。
一度にたくさんの植物を育てるのはあの時以来なので今回も苗木がどんな成長の仕方をするのかちょっと不安だ。
万が一にも、自ら志願して今回の視察任務について来てくれた騎士さん達に怪我をさせたりしたら、最終的には治癒能力で治せるとはいえ申し訳ない。
そんな懸念も含めてシェラさんにお願いすれば、僅かに眉をひそめて
「もし本当に万が一にでも危険が及ぶようなことがあっても、その程度を回避できないようであれば騎士の名折れなのですが・・・。ですがまあ、ユーリ様の優しいお心遣いの一つとして彼らには伝えておきましょう。」
そう言って二つ三つ、高低差のある口笛を吹いてくれた。
あ、これはあれだ。ダーヴィゼルドの山でデレクさんに指示を出していた騎士同士の暗号みたいなやつだ。
そう思い出していれば、斜面のあちこちに立つ騎士さん達が手を振って応えてくれた。
「ありがとうございますー!」
「俺たちのことはお気になさらず、思い切りどうぞ‼︎」
「気を付けまーす!」
と山びこのように口々に声も掛けてくれる。
その様子にとりあえず最低限の注意喚起は済んだと安心していれば、そんな私を見たシェラさんがアドバイスをしてくれた。
「ユーリ様、あまり騎士達に気を取られていては苗木を成長させるのに集中出来ないのでは?ここは一つ、苗木に集中するためにもあの植物について楽しい事を考えてみるのはいかがでしょう?」
「植物について楽しい事?」
あれは良質の紙の原料になるっていうだけで、あとは特に楽しいことなんて・・・と思っていたら
「ユーリ様の御力で、マールの町で採れる果実類はことごとく甘味が増したと聞いております。であれば、この苗木が成長してなる実もおいしくしてみませんか?」
そんな事を言われた。
「え?・・・あ、そういえば実もなるんでしたっけこれ。」
王都でリオン様達と話していた時にちらっとそんな話も出た気がする。
この植物は良質な紙の原料になり、その果実は小さなグミの実みたいなのが出来る。たけどその実の大きさに比べて種が大きくて味も苦いとかなんとか。
だから食用にするのは早々に諦めて、もっと質の良い紙の原料が取れるようにするにはどんなイメージで力を使えばいいのかとか、そっちの方の話に集中したような。
そっか。良質な紙の原料にするのとおいしい実が採れるのと、両方とも目指していいんだ。イリューディアさんの力ならきっと可能だ。
それに甘くておいしいグミの実みたいなのが採れたら子どもたちも喜ぶよね。
私の視界の先、斜面から離れた危なくないところには私達の作業を見物しに来ている町の人達がいる。
そこにはもちろんこの町の子ども達の姿も見えていた。あの子達の喜ぶ姿も見たい。
「・・・そうですね。どうせならこの苗木、大きくなったらおいしい実がなるようにしましょう!ありがとうございますシェラさん。」
いい提案だと頷けば、いつも私に注意されてばかりなのに褒められたのがどれだけ嬉しかったのか、
「ユーリ様のお役に立てて何よりです。」
とこれ以上ないほどの麗しい笑顔を向けられた。
おかげでその無駄に色気たっぷりな笑顔に慣れていない、見物しに来ていた町の人達が男女を問わずその色気にあてられて見惚れてしまっている。
「わりと距離があるのにすごい威力ですね・・・。」
本気で感心して思わずそう漏らせば、
「それが一番通じて欲しい方には全く通じていないところが残念でもあり、さすがオレの女神とも言うべきところですがね。」
とまたにっこりされた。
「そうやって誉め殺ししようとしても騙されませんよ?」
それに私にとってシェラさんは色気たっぷりで誰かれ構わず人を惑わす妖しいお兄さんというよりも、犯罪者への首スパンも躊躇しないちょっと危ない人、という初対面でのイメージの方が強いのだ。
そりゃあたまにはその誘惑めいた仕草にどうしていいか分からなくなる時もあるけれど、それ以上に私に接する人達への過剰な反応を制御するのに必死なので色仕掛けに引っかかる余裕もない。
じとりと睨んだ私にシェラさんは肩をすくめて
「こんなにも正直に思ったことしか伝えておりませんのに、未だそれが届いていないとは残念極まりないですね。」
おどけたようにやれやれと首を振った。やっぱりふざけている。だけどまあ、
「その軽口のおかげで、緊張しないで力を使えそうです」
ふざけているようなシェラさんの物言いにそう答えれば、
「軽口だなんて不本意な。オレはいつでも本気ですよ。」
なんて抗議の声が聞こえたけどそれに構わず目を瞑る。
シェラさんとのいつものやり取りをしたおかげでさっきまでの緊張はだいぶほぐれて肩の力が抜け、いい感じに力を使えそうになった。
目を瞑り、地面に膝をついてぺたりと両手で土に触れる。
「質の良い紙の原料になって、甘くておいしい大粒なグミの実もなりますように・・・!」
そしてその根は木枠に絡み、地中深くに潜り込み、隣り合う苗木同士とも絡み合いしっかりとこの地に根付いて地滑りや土砂崩れにも負けずに青々とした葉を茂らせますように。
そう願い、地面についた手から植えた苗木に向かって魔力が流れていくのをイメージする。
そうすればいつものように瞼の裏に光が溢れて、ついた手のひら全体が温かく感じてそのぬくもりが地面へと伝わっていくのを感じた。
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