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番外編
かわいい子には旅をさせよう 38
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「うわぁユーリ様、フワフワのドレスでおひめさまみたい!」
「ねこちゃんだ!かわいい~!」
「それ、ほんもののネコちゃんのお耳みたい!」
・・・キラキラした目で見上げてくるのは、昨日川沿いの並木まで案内してくれた子ども達だ。
猫耳ヘアやフリルたっぷりのいかにも貴族のお姫様、みたいなドレスが気になるのか私を抱き上げているシェラさんの周りをぐるぐる回りながらついて来ている。
「さわってもいいですか?」
なんて事を聞いてくる子もいたけどシェラさんはそんな子に触れられないよう、僅かに私を高く抱え直しながら
「高貴なお姫様は簡単に触れることは出来ないものなのですよ。それはオレのようにその栄誉と資格を得た者だけの特権なのです。ですからあなた達もよく学び、よく鍛錬をして大きくなってからぜひ王宮とユーリ様の元へ仕えに来てくださいね。」
子ども相手にも無駄に色気のある笑顔を振りまきながらそんな事を言っている。
えーとそれってつまり、「おととい来やがれ」をやんわりと遠巻きに言ってないかな?
子ども相手でも容赦ないなあ・・・いや、大人げない?なんて思いながら私も子ども達へにっこり笑いかけた。
「今日はこれからまだ整備途中の温泉を視察に行くんです。熱いお湯で火傷をしたり、ひどい匂いのする霧で具合が悪くなるかも知れないので危ないからついて来ちゃダメですよ!」
昨日までとは違って予想外に自然の危険に晒されるかも知れないので、子ども達がついて来ないように念を押した。
ええー!と不満そうな声は上げたものの、子ども達はシェラさんと一緒に馬へ二人乗りをした私を素直に見送ってくれる。
「ユーリ様はだいじょうぶなんですか?」
「はやく帰ってきてそのねこちゃんのお耳、もう一度よくみせてくださいね」
「気をつけて行ってきてね!」
口々に見送りの言葉をかけてくれたのでそれに元気よく行ってきます、と手を振って出発した。
今日これから見に行く、ユリウスさんが整備している温泉の源泉近くはまだ道路が整っていないらしく馬車よりも馬で向かう方が早いという。
なのでシェラさんは
「オレはユーリ様と一緒の馬で向かうのであなた達はその後をついて来なさい」
と、3人だけ残した私の護衛の騎士さんに声をかけるとその同行を待たずにさっさと出発した。
「彼らに合わせている時間が惜しいですからね。滞在も明日までですし、早く移動しましょう」
なんて言って馬を走らせれば、あっという間に3人の騎士さん達はおいてけぼりだ。
「あっ、くそ!また隊長に出し抜かれた!」
「ユーリ様も乗せてるのになんであんなに速いんだよ」
「猫耳ユーリ様と二人っきりにさせてたまるか、追いつけ!」
背中に受ける、そんな騎士さん達の慌てた声もどんどん小さくなっていく。
「シェラさん、護衛の騎士さん達を引き離したら護衛の意味がないと思うんですけど!?」
「目的地は一緒ですから後ほど合流すれば良いだけですよ。それに何度でも言わせていただきますが、ユーリ様を思いユーリ様のためにだけ動く専属護衛に、オレ以上の適任者はおりませんしオレだけで充分です」
「ええ・・・?」
私の背後で手綱を操っているのでその姿は見えないけど、シェラさんが誇らしげに胸を張ってそう言っているだろうことはよく分かる。
だけど相変わらず私に対して盲信的って言うか自負心が強いって言うか・・・
「私なんかの護衛にそんなに気負って自分にプレッシャーを与えなくてもいいんですよ?肩に力が入りすぎじゃないですか?」
ユリウスさんの所へ行って、足だけでも温泉に浸かれるようならシェラさんも一緒にそれを楽しんでもらってもいいかも。
あったかい温泉のお湯で、そのちょっと肩に力の入ったところをリラックスして欲しい。
そう思って
「向こうを視察してもし温泉に入れるようならシェラさんも付き合ってくださいね!」
と言ったら一瞬、なぜか不自然な間があってから
「ユーリ様・・・。それはこの上なく嬉しいお誘いですが、さすがに護衛がその主人と同じ湯に浸かるのはどうかと思いますよ」
と返された。あれ、シェラさんが私をたしなめるなんて珍しい。
でもまあ、言われてみればそうかも。レジナスさんだっていくらリオン様の護衛だからと言って、同じお風呂に入るなんて聞いた事ないし。そんな護衛はないか。
でもどうせならシェラさんにも温泉を楽しんで欲しいんだけどなあ。
「あっ、そうだ!それならその時だけシェラさんは私の護衛じゃなくてただの人になればいいんじゃないですか?」
「それはどういう意味で・・・?」
「だから、どうせ後からあの3人の騎士さん達も合流するでしょ?そうしたら護衛はあの騎士さん達に任せて、シェラさんは私の温泉仲間みたいな・・・ええと一緒に温泉を楽しむ、騎士さんじゃないただの人になるみたいな?」
どうせここでの滞在もあと少し。それならほんの一瞬、数時間だけでも普通の人に戻って温泉を楽しんで、少しはその肩の力を抜いてみてもいいんじゃない?
そんな気持ちで言ったら、馬の歩みを緩めたシェラさんが大事な内緒話でもするように背後から私に身を寄せて囁いた。
「ユーリ様・・・。ご自分が何を仰っているのか分かっていますか?オレが護衛騎士としてではなく、ただの一人の男としてその隣にいるお許しをいただいてしまえばさすがに自制心が持たないかも知れませんよ?」
「え?」
何それ、騎士さんとしての礼儀正しさを守らなくていいならそんなに温泉ではしゃいじゃうの?そんなはっちゃけたシェラさん、全然想像できない。
「シェラさんのそんな姿、全然イメージ出来ないんですけど」
馬がゆっくりになったので後ろを振りむく余裕が出来た私が振り返れば、身を寄せていたシェラさんの顔が思っていたよりも近くで微笑んでいる。
「それはそうでしょう。ユーリ様に嫌われたり怖がられたりしないよう、騎士らしくあれとオレがどれだけ気を遣って自制し手加減していることか」
「そうなんですか!?」
怖がらせないようにって言うけど、王都の夜に初めて見た時に盗賊の首スパンとか普通なら相当怖がられることをもうやってると思うんですけど。
「まさかそんなに手加減してたなんて・・・。」
「そうですよ?清らかなうら若き乙女であるユーリ様にはまだ刺激が強過ぎて早いと思い我慢しているオレの努力を褒めていただきたいものです」
「なんでそこで急に褒めを要求してくるのかはよく分かりませんけど、私には刺激が強過ぎるとか勿体ぶられると気になります・・・!」
一体どんなに普段よりも振り切った姿が見られるんだろう、と思わせぶりな笑顔で目を細めているシェラさんに言えば、
「好奇心は猫をも殺す、という言葉を伝えたのは勇者様でしたかねぇ・・・。ユーリ様のその可愛らしい好奇心が、文字通りご自身を死ぬほど深い沼の底に引きずり込んで後悔する事になるかも知れませんよ?」
「沼?」
急に話が見えなくなった。何かにハマることを沼にハマった、とか言うけどそういう意味?と小首を傾げれば
「沼というか言葉を変えれば快楽とい」
「そこまでっす!!」
あの無駄に垂れ流しな色気のある笑顔を深めたシェラさんが話している途中、突然ユリウスさんの声が割り込んできた。
「えっ?」
そちらを見れば、ペンを片手にユリウスさんがシェラさんに向かってそれをまるで剣のようにビシリと突きつけている。
「さっきから建物に入って来ないで馬上で何を話しているかと思えば、なんていかがわしい口説き文句でユーリ様に迫ってるんすか!」
あれ?いつの間に着いていたんだろう。馬がゆっくりになったのは目的地が近かったからだったのかな?それにしても。
「いかがわしい口説き文句って何ですかユリウスさん。私はただ、温泉を一緒に楽しめたらいいなって話をシェラさんとしてただけで」
するとユリウスさんはなぜか顔を赤くして目を見開いた。
「どこがっすか!?途中からしか聞いてなかったけどこの人は絶対そんな話はしてないっすよ!」
「ええ・・・?そうですか?ユリウスさんの気のせいじゃないですか、ねぇシェラさん」
と同意を求めれば、私を馬から降ろしてくれながら
「連日の慣れない作業で彼も疲れているんでしょう。ユーリ様との会話を楽しんでいたオレにそんな言いがかりを付けるとはよほど欲求不満に違いありません」
とシェラさんは頷いている。
「はぁ!?何でアンタじゃなく俺の方がいやらしいみたいに言ってるんすか、風評被害っす!騎士のくせにマジで口から先に生まれて来たみたいな人っすね!」
心外だとばかりにシェラさんに文句を言ったユリウスさんは今度は私に向き直った。
「ユーリ様も!情緒が死んでてそっち方面に残念なばっかりに、この人に上手いこと言いくるめられてしまわないように気を付けるっすよ!リオン殿下に怒られるような事になるのだけは勘弁して欲しいっす!」
「なんですか、まるで人をお菓子に釣られて知らない人についていくみたいな言い方して。そりゃあシェラさんには揚げ足を取られることも多いですけど、私だって気を付けてるんですからね?」
あと情緒が死んでるは余計だ。
そう簡単にシェラさんには騙されないですよ!とその腕の中で縦抱っこされながら胸を張れば、その様子にユリウスさんはなぜか
「ああ・・・ダメだこれ、いつか絶対取り返しのつかない事になるヤツ!結婚詐欺にあっても気付かないタイプっす!」
と失礼にも頭を抱えた。対してシェラさんは
「そのように愛らしく誇られては、この先どのようにしてユーリ様を籠絡しようかますます楽しみになってしまいますね。」
とふんわりと私に微笑む。
「籠絡ってなんですか、シェラさんまた私を何か騙そうとしてます?」
身構えて聞けば
「騙すなどとんでもない。オレはいつでもユーリ様には一途に正直な気持ちしか言っておりませんよ?」
と返された。するとそれを聞いたユリウスさんがすかさずまた
「その正直さが一番いかがわしいんすよ!」
と突っ込みを入れたのだった。
「ねこちゃんだ!かわいい~!」
「それ、ほんもののネコちゃんのお耳みたい!」
・・・キラキラした目で見上げてくるのは、昨日川沿いの並木まで案内してくれた子ども達だ。
猫耳ヘアやフリルたっぷりのいかにも貴族のお姫様、みたいなドレスが気になるのか私を抱き上げているシェラさんの周りをぐるぐる回りながらついて来ている。
「さわってもいいですか?」
なんて事を聞いてくる子もいたけどシェラさんはそんな子に触れられないよう、僅かに私を高く抱え直しながら
「高貴なお姫様は簡単に触れることは出来ないものなのですよ。それはオレのようにその栄誉と資格を得た者だけの特権なのです。ですからあなた達もよく学び、よく鍛錬をして大きくなってからぜひ王宮とユーリ様の元へ仕えに来てくださいね。」
子ども相手にも無駄に色気のある笑顔を振りまきながらそんな事を言っている。
えーとそれってつまり、「おととい来やがれ」をやんわりと遠巻きに言ってないかな?
子ども相手でも容赦ないなあ・・・いや、大人げない?なんて思いながら私も子ども達へにっこり笑いかけた。
「今日はこれからまだ整備途中の温泉を視察に行くんです。熱いお湯で火傷をしたり、ひどい匂いのする霧で具合が悪くなるかも知れないので危ないからついて来ちゃダメですよ!」
昨日までとは違って予想外に自然の危険に晒されるかも知れないので、子ども達がついて来ないように念を押した。
ええー!と不満そうな声は上げたものの、子ども達はシェラさんと一緒に馬へ二人乗りをした私を素直に見送ってくれる。
「ユーリ様はだいじょうぶなんですか?」
「はやく帰ってきてそのねこちゃんのお耳、もう一度よくみせてくださいね」
「気をつけて行ってきてね!」
口々に見送りの言葉をかけてくれたのでそれに元気よく行ってきます、と手を振って出発した。
今日これから見に行く、ユリウスさんが整備している温泉の源泉近くはまだ道路が整っていないらしく馬車よりも馬で向かう方が早いという。
なのでシェラさんは
「オレはユーリ様と一緒の馬で向かうのであなた達はその後をついて来なさい」
と、3人だけ残した私の護衛の騎士さんに声をかけるとその同行を待たずにさっさと出発した。
「彼らに合わせている時間が惜しいですからね。滞在も明日までですし、早く移動しましょう」
なんて言って馬を走らせれば、あっという間に3人の騎士さん達はおいてけぼりだ。
「あっ、くそ!また隊長に出し抜かれた!」
「ユーリ様も乗せてるのになんであんなに速いんだよ」
「猫耳ユーリ様と二人っきりにさせてたまるか、追いつけ!」
背中に受ける、そんな騎士さん達の慌てた声もどんどん小さくなっていく。
「シェラさん、護衛の騎士さん達を引き離したら護衛の意味がないと思うんですけど!?」
「目的地は一緒ですから後ほど合流すれば良いだけですよ。それに何度でも言わせていただきますが、ユーリ様を思いユーリ様のためにだけ動く専属護衛に、オレ以上の適任者はおりませんしオレだけで充分です」
「ええ・・・?」
私の背後で手綱を操っているのでその姿は見えないけど、シェラさんが誇らしげに胸を張ってそう言っているだろうことはよく分かる。
だけど相変わらず私に対して盲信的って言うか自負心が強いって言うか・・・
「私なんかの護衛にそんなに気負って自分にプレッシャーを与えなくてもいいんですよ?肩に力が入りすぎじゃないですか?」
ユリウスさんの所へ行って、足だけでも温泉に浸かれるようならシェラさんも一緒にそれを楽しんでもらってもいいかも。
あったかい温泉のお湯で、そのちょっと肩に力の入ったところをリラックスして欲しい。
そう思って
「向こうを視察してもし温泉に入れるようならシェラさんも付き合ってくださいね!」
と言ったら一瞬、なぜか不自然な間があってから
「ユーリ様・・・。それはこの上なく嬉しいお誘いですが、さすがに護衛がその主人と同じ湯に浸かるのはどうかと思いますよ」
と返された。あれ、シェラさんが私をたしなめるなんて珍しい。
でもまあ、言われてみればそうかも。レジナスさんだっていくらリオン様の護衛だからと言って、同じお風呂に入るなんて聞いた事ないし。そんな護衛はないか。
でもどうせならシェラさんにも温泉を楽しんで欲しいんだけどなあ。
「あっ、そうだ!それならその時だけシェラさんは私の護衛じゃなくてただの人になればいいんじゃないですか?」
「それはどういう意味で・・・?」
「だから、どうせ後からあの3人の騎士さん達も合流するでしょ?そうしたら護衛はあの騎士さん達に任せて、シェラさんは私の温泉仲間みたいな・・・ええと一緒に温泉を楽しむ、騎士さんじゃないただの人になるみたいな?」
どうせここでの滞在もあと少し。それならほんの一瞬、数時間だけでも普通の人に戻って温泉を楽しんで、少しはその肩の力を抜いてみてもいいんじゃない?
そんな気持ちで言ったら、馬の歩みを緩めたシェラさんが大事な内緒話でもするように背後から私に身を寄せて囁いた。
「ユーリ様・・・。ご自分が何を仰っているのか分かっていますか?オレが護衛騎士としてではなく、ただの一人の男としてその隣にいるお許しをいただいてしまえばさすがに自制心が持たないかも知れませんよ?」
「え?」
何それ、騎士さんとしての礼儀正しさを守らなくていいならそんなに温泉ではしゃいじゃうの?そんなはっちゃけたシェラさん、全然想像できない。
「シェラさんのそんな姿、全然イメージ出来ないんですけど」
馬がゆっくりになったので後ろを振りむく余裕が出来た私が振り返れば、身を寄せていたシェラさんの顔が思っていたよりも近くで微笑んでいる。
「それはそうでしょう。ユーリ様に嫌われたり怖がられたりしないよう、騎士らしくあれとオレがどれだけ気を遣って自制し手加減していることか」
「そうなんですか!?」
怖がらせないようにって言うけど、王都の夜に初めて見た時に盗賊の首スパンとか普通なら相当怖がられることをもうやってると思うんですけど。
「まさかそんなに手加減してたなんて・・・。」
「そうですよ?清らかなうら若き乙女であるユーリ様にはまだ刺激が強過ぎて早いと思い我慢しているオレの努力を褒めていただきたいものです」
「なんでそこで急に褒めを要求してくるのかはよく分かりませんけど、私には刺激が強過ぎるとか勿体ぶられると気になります・・・!」
一体どんなに普段よりも振り切った姿が見られるんだろう、と思わせぶりな笑顔で目を細めているシェラさんに言えば、
「好奇心は猫をも殺す、という言葉を伝えたのは勇者様でしたかねぇ・・・。ユーリ様のその可愛らしい好奇心が、文字通りご自身を死ぬほど深い沼の底に引きずり込んで後悔する事になるかも知れませんよ?」
「沼?」
急に話が見えなくなった。何かにハマることを沼にハマった、とか言うけどそういう意味?と小首を傾げれば
「沼というか言葉を変えれば快楽とい」
「そこまでっす!!」
あの無駄に垂れ流しな色気のある笑顔を深めたシェラさんが話している途中、突然ユリウスさんの声が割り込んできた。
「えっ?」
そちらを見れば、ペンを片手にユリウスさんがシェラさんに向かってそれをまるで剣のようにビシリと突きつけている。
「さっきから建物に入って来ないで馬上で何を話しているかと思えば、なんていかがわしい口説き文句でユーリ様に迫ってるんすか!」
あれ?いつの間に着いていたんだろう。馬がゆっくりになったのは目的地が近かったからだったのかな?それにしても。
「いかがわしい口説き文句って何ですかユリウスさん。私はただ、温泉を一緒に楽しめたらいいなって話をシェラさんとしてただけで」
するとユリウスさんはなぜか顔を赤くして目を見開いた。
「どこがっすか!?途中からしか聞いてなかったけどこの人は絶対そんな話はしてないっすよ!」
「ええ・・・?そうですか?ユリウスさんの気のせいじゃないですか、ねぇシェラさん」
と同意を求めれば、私を馬から降ろしてくれながら
「連日の慣れない作業で彼も疲れているんでしょう。ユーリ様との会話を楽しんでいたオレにそんな言いがかりを付けるとはよほど欲求不満に違いありません」
とシェラさんは頷いている。
「はぁ!?何でアンタじゃなく俺の方がいやらしいみたいに言ってるんすか、風評被害っす!騎士のくせにマジで口から先に生まれて来たみたいな人っすね!」
心外だとばかりにシェラさんに文句を言ったユリウスさんは今度は私に向き直った。
「ユーリ様も!情緒が死んでてそっち方面に残念なばっかりに、この人に上手いこと言いくるめられてしまわないように気を付けるっすよ!リオン殿下に怒られるような事になるのだけは勘弁して欲しいっす!」
「なんですか、まるで人をお菓子に釣られて知らない人についていくみたいな言い方して。そりゃあシェラさんには揚げ足を取られることも多いですけど、私だって気を付けてるんですからね?」
あと情緒が死んでるは余計だ。
そう簡単にシェラさんには騙されないですよ!とその腕の中で縦抱っこされながら胸を張れば、その様子にユリウスさんはなぜか
「ああ・・・ダメだこれ、いつか絶対取り返しのつかない事になるヤツ!結婚詐欺にあっても気付かないタイプっす!」
と失礼にも頭を抱えた。対してシェラさんは
「そのように愛らしく誇られては、この先どのようにしてユーリ様を籠絡しようかますます楽しみになってしまいますね。」
とふんわりと私に微笑む。
「籠絡ってなんですか、シェラさんまた私を何か騙そうとしてます?」
身構えて聞けば
「騙すなどとんでもない。オレはいつでもユーリ様には一途に正直な気持ちしか言っておりませんよ?」
と返された。するとそれを聞いたユリウスさんがすかさずまた
「その正直さが一番いかがわしいんすよ!」
と突っ込みを入れたのだった。
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