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番外編
かわいい子には旅をさせよう 46
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「そっ・・・そろそろ次の温泉に行きます!」
意味ありげに頬を撫でるシェラさんに見つめられているのがなんだかいたたまれなくなったので、がばりと起き上がる。
「おや、オレはまだ来たばかりだといいますのに」
「シェラさんはどうぞごゆっくり!私は浸かる方の温泉も気になるので、そっちに行ってきます!」
「まさか、ユーリ様だけを向かわせるわけがないでしょう?マリーからもユーリ様のお世話をくれぐれもよろしくと言われておりますのに」
そう言ったシェラさんも私の後を追ってテントの中から出て来る。
いやマリーさん、ホントにシェラさんに私のお風呂のお世話を頼んだんだ!?それでいいの?護衛とは言え一応シェラさんも男の人なんですけど2人だけで温泉って。
そう思った私の気持ちを知ってか知らずか、シェラさんはちなみに、と続けた。
「残念ながらオレとユーリ様の2人きりではありませんよ。湯には入らないものの、マリーもしっかりお側に控えますので。」
「そ、そうなんですね」
「ユーリ様が湯当たりしないように、川で冷やしている最中の果実水を頃合いを見て渡してくれる手はずになっております。それにお湯から上がられたユーリ様のお着替えの手伝いまでオレがやったら、さすがにリオン殿下に怒られますからねぇ」
いや本当に残念ですが。なんて言ったシェラさんは大袈裟に首を振っている。
まあ確かに、シェラさんに濡れた湯浴み着を脱がされて着替えさせられるのはない。さすがに恥ずかし過ぎる。
それはいつものようにマリーさんが手伝ってくれるんだと分かってちょっと安心した。
温泉のせいで滑りやすくなっている岩場に渡された板張りを慎重に歩いて温泉へと向かいながらホッとする。
「ユーリ様、お気を付けください。そこに手すりを作っておりますのでしっかり掴まってくださいね」
黄土色に濁っている温泉へと降りて行く私の後ろからシェラさんが声を掛けてくれた。
なるほど、階段状の板張りを降りた先には頑丈そうな木製の手すりもあった。
そこまで行くと板張りはなくなり岩でうまい具合に作られた階段状の段差に、もうもうと湯気をあげている温泉が寄せては返す波のようにちゃぷちゃぷと揺れている。
そこへそっと足先をつければ僅かにピリピリとした。水で薄めてあってもまだ酸性度は強いみたい。それに思ったよりも熱いかも。
温泉の刺激と温度を確かめながら慎重にゆっくりと少しずつ浸かる。
そのままお湯の中、段差のある岩場に腰掛ければちょうど私の肩先が少し出るくらいまでの深さだった。
「いかがです?熱すぎませんか?」
背後のシェラさんに気遣うように聞かれたので振り返って頷く。
「大丈夫です!ただやっぱり肌に刺激を感じるのであまり長くは浸からない方がいいと思います。肌の弱い人はすぐ真っ赤になっちゃうかも。」
これだとせっかくマリーさんが差し入れてくれるはずの果実水を待たずにここから出なきゃいけないかも。
そう話したら「でしたら」とシェラさんがすぐ隣を指し示した。そこも岩場を円形に組んで作ってある温泉になっていた。
私が今入っているここと違うのは、すぐ側の岩と岩の間からそこへ勢い良く水が注がれ続けていることだ。
「ユーリ様が今入られているそこよりも、より多くの水を引き込んで温泉の濃度を薄めてあるそちらはいかがでしょう?刺激も少なく温度も低いはずです」
それはいい。岩盤浴だけでなく温度の違う二つの温泉に浸かれるなんて最高だ。
と、そこへ私達から遅れてやって来たマリーさんが、さっきシェラさんが川で冷やしてくれていた果実水の入ったビンとグラスを乗せたお盆を手に現れた。
「ユーリ様、温泉から上がって飲まれますか?・・・あら?どちらへ?」
シェラさんの教えてくれたもう一つの温泉へ移動しかけていた私を見たマリーさんが小首を傾げる。
「マリーさん!それ、こっちへお願いします!」
お願いしながらさっきと同じように慎重にもう一つの温泉へと足をつける。
うん、さっきよりもピリピリ感が少ないしちょっとだけぬるい。これなら少し長めに浸かれそう。
温泉の中の岩に腰掛ければそこもちょうど私の肩のあたりまでお湯がくる。
マリーさんを手招きして果実水を注いだグラスをお盆ごと受け取り、それをお湯に浮かべた。
温泉の中へと勢い良く注ぎ込む水の影響で揺れる水面に、グラスの乗ったお盆はゆらゆらと揺れているけどなんとかひっくり返さないように慎重にそこからグラスを取って冷たい果実水を飲む。
「おいしい~!」
気分だけは温泉に浸かりながらお酒を呑んでいる風だ。
これ、一度やってみたかったんだ。
大自然を眺めながら露天風呂につかってお酒を楽しむやつ。
湯浴み着を着たままの入浴だし飲んでるのはジュースで思っていたのとはちょっと違うけどまあ良しとしよう。
フンフンと上機嫌で果実水を飲んでいたら、突然何かが頭に触れてまとめていた髪がばさりと落ちて来た。
何ごとかと思ったら、すぐ後ろからシェラさんの艶のある声が降って来る。
「どうぞユーリ様はそのまま景色をお楽しみください。その間にオレはこの美しいお髪を洗わせていただきますので」
「え?あ、洗う?」
「酸性度の薄めてあるお湯ですから髪を洗っても傷める心配はないかと。それに例のオピルスの生息地の泥も持参しております。ですから来た時よりも美しく艶のあるお髪で戻られることでしょう」
そう言いながらすでにその手は例の猫耳部分もほどいてすいすいと櫛で梳き始めていた。
後ろにいるからよく見えないけど、どうやらシェラさんは私を両足の間に挟む格好で一段高い岩場に腰掛けているらしい。
「水面にゆらめくユーリ様の髪の美しさとなめらかな手触りはどれほど極上の絹糸でも敵わないですねぇ」
「あ、ありがとうございます」
まあなんたってこの体はイリューディアさんが張り切って作り上げたものだからね。
元の自分とはかけ離れた容姿なので褒められると、気が引ける反面イリューディアさんの良い仕事っぷりを讃えられているのが嬉しい気もする。
そんな複雑な心境でもにょもにょとお礼を言えば、
「オレに触れられてそのように恥ずかしげなお顔を見せられるのもたまりませんね。マリーがいて良かった、もしいなければ自制出来ずにこの豊かな黒髪ごと抱きしめていたかも知れません」
なんて冗談まで言っている。そしてそんなシェラさんにマリーさんが
「ダメですよシェラザード様。どうしてもと仰るので、あくまでもユーリ様のお世話としてリオン殿下には内緒で騎士様には到底させられない事をしていただいているんですから。」
と釘を刺している。いや、リオン様に内緒って。
「それ大丈夫なんですか!?」
もしバレたら私の侍女から外されたり王宮勤めを辞めさせられたりしない?
でもマリーさんは
「私がお仕えしているのはユーリ様ですから。ユーリ様のお幸せを考えて、その楽しそうだったり幸せそうなお顔を見られる事ならそれを優先しますよ!」
と胸を張ってにっこり笑顔を向けられた。
「それがお風呂のお世話をするシェラさんとそれを受け入れている私ってなんか違わないですか・・・?」
「あらまあ、シェラザード様にお世話をされながらお話しているユーリ様はいつもとても楽しそうですのに。ご自分ではお分かりになっていないんですね!」
「ええ・・・?」
いや全然?マリーさんの言葉に首を傾げれば、私の背後でシェラさんまでくすりと笑った気配がする。
「無意識にオレとの時間を楽しんでくれていたならそれほど光栄で嬉しいことはありませんね。せっかくマリーが殿下には内緒の特別な時間を設けてくれた事ですし、ユーリ様のお世話に集中してありがたくこの時間を大切にしましょうか」
そう言って私の髪を櫛削り、泥パックを施す手付きがより一層優しくなった。
まずい、この手付きはあれだ。疲れている時に美容院で髪を洗われるとリラックスし過ぎて眠くなるやつ。
私も今日はついさっきまで頑張って水を湧き出させて結構魔力を使っている。
なので、いくらおやつを食べていてもその魔力は完全に回復し切っていなくてまだ多少の疲労感は残っているのだ。
そこでこんな風に髪を触られたら絶対眠くなって来る。
そんな事を思いながら早くもウトウトしかけていた私の耳にシェラさんの
「今回の視察はユーリ様との特別な思い出があり過ぎて、報告書に書くのを我慢するのが難しいものばかりですねぇ・・・。後で今日の分のユリウス副団長の報告書も見せてもらい整合性を取らなければ」
という、何やら良からぬ呟きが聞こえてきた。
え、それってまさか報告書の改ざんとか誤魔化しってやつでは?
それこそ後でリオン様にバレた時、しこたま怒られるやつだ。
しかもユリウスさんまで巻き込まれている。あともしかするとついでに私まで怒られるやつ。
「シ、シェラさん、私のお世話にかこつけて不正はダメですよ!?」
本能的に危険を察知して思わず声を上げたけど、当の本人は
「なんのことですか?」
とうそぶいている。限りなく危険だ。
え?これ王都に帰って早々リオン様に詰められるってことはない?
リオン様からのラブレターもどきを受け取ったつい昨日までは「早く帰りたいなぁ」とリオン様達や奥の院のことを懐かしく思っていたのに。
今はなんだか帰るのが怖い。なんならもうちょっとだけここに滞在して温泉で現実逃避したい気分だ。
「・・・なんだか王都に帰りたくなくなってきました・・・」
思わずそうこぼしたら、
「おや奇遇ですね、オレもですよ。ユーリ様も同じお気持ちとは嬉しいことこの上ないですねぇ」
とシェラさんに返された。
いや、シェラさんの思ってるそれと私の気持ちは絶対違うから。
人の気も知らないで、と帰った時のことを考えると今の今までリラックスしていた温泉気分も吹き飛んでしまうようだった。
意味ありげに頬を撫でるシェラさんに見つめられているのがなんだかいたたまれなくなったので、がばりと起き上がる。
「おや、オレはまだ来たばかりだといいますのに」
「シェラさんはどうぞごゆっくり!私は浸かる方の温泉も気になるので、そっちに行ってきます!」
「まさか、ユーリ様だけを向かわせるわけがないでしょう?マリーからもユーリ様のお世話をくれぐれもよろしくと言われておりますのに」
そう言ったシェラさんも私の後を追ってテントの中から出て来る。
いやマリーさん、ホントにシェラさんに私のお風呂のお世話を頼んだんだ!?それでいいの?護衛とは言え一応シェラさんも男の人なんですけど2人だけで温泉って。
そう思った私の気持ちを知ってか知らずか、シェラさんはちなみに、と続けた。
「残念ながらオレとユーリ様の2人きりではありませんよ。湯には入らないものの、マリーもしっかりお側に控えますので。」
「そ、そうなんですね」
「ユーリ様が湯当たりしないように、川で冷やしている最中の果実水を頃合いを見て渡してくれる手はずになっております。それにお湯から上がられたユーリ様のお着替えの手伝いまでオレがやったら、さすがにリオン殿下に怒られますからねぇ」
いや本当に残念ですが。なんて言ったシェラさんは大袈裟に首を振っている。
まあ確かに、シェラさんに濡れた湯浴み着を脱がされて着替えさせられるのはない。さすがに恥ずかし過ぎる。
それはいつものようにマリーさんが手伝ってくれるんだと分かってちょっと安心した。
温泉のせいで滑りやすくなっている岩場に渡された板張りを慎重に歩いて温泉へと向かいながらホッとする。
「ユーリ様、お気を付けください。そこに手すりを作っておりますのでしっかり掴まってくださいね」
黄土色に濁っている温泉へと降りて行く私の後ろからシェラさんが声を掛けてくれた。
なるほど、階段状の板張りを降りた先には頑丈そうな木製の手すりもあった。
そこまで行くと板張りはなくなり岩でうまい具合に作られた階段状の段差に、もうもうと湯気をあげている温泉が寄せては返す波のようにちゃぷちゃぷと揺れている。
そこへそっと足先をつければ僅かにピリピリとした。水で薄めてあってもまだ酸性度は強いみたい。それに思ったよりも熱いかも。
温泉の刺激と温度を確かめながら慎重にゆっくりと少しずつ浸かる。
そのままお湯の中、段差のある岩場に腰掛ければちょうど私の肩先が少し出るくらいまでの深さだった。
「いかがです?熱すぎませんか?」
背後のシェラさんに気遣うように聞かれたので振り返って頷く。
「大丈夫です!ただやっぱり肌に刺激を感じるのであまり長くは浸からない方がいいと思います。肌の弱い人はすぐ真っ赤になっちゃうかも。」
これだとせっかくマリーさんが差し入れてくれるはずの果実水を待たずにここから出なきゃいけないかも。
そう話したら「でしたら」とシェラさんがすぐ隣を指し示した。そこも岩場を円形に組んで作ってある温泉になっていた。
私が今入っているここと違うのは、すぐ側の岩と岩の間からそこへ勢い良く水が注がれ続けていることだ。
「ユーリ様が今入られているそこよりも、より多くの水を引き込んで温泉の濃度を薄めてあるそちらはいかがでしょう?刺激も少なく温度も低いはずです」
それはいい。岩盤浴だけでなく温度の違う二つの温泉に浸かれるなんて最高だ。
と、そこへ私達から遅れてやって来たマリーさんが、さっきシェラさんが川で冷やしてくれていた果実水の入ったビンとグラスを乗せたお盆を手に現れた。
「ユーリ様、温泉から上がって飲まれますか?・・・あら?どちらへ?」
シェラさんの教えてくれたもう一つの温泉へ移動しかけていた私を見たマリーさんが小首を傾げる。
「マリーさん!それ、こっちへお願いします!」
お願いしながらさっきと同じように慎重にもう一つの温泉へと足をつける。
うん、さっきよりもピリピリ感が少ないしちょっとだけぬるい。これなら少し長めに浸かれそう。
温泉の中の岩に腰掛ければそこもちょうど私の肩のあたりまでお湯がくる。
マリーさんを手招きして果実水を注いだグラスをお盆ごと受け取り、それをお湯に浮かべた。
温泉の中へと勢い良く注ぎ込む水の影響で揺れる水面に、グラスの乗ったお盆はゆらゆらと揺れているけどなんとかひっくり返さないように慎重にそこからグラスを取って冷たい果実水を飲む。
「おいしい~!」
気分だけは温泉に浸かりながらお酒を呑んでいる風だ。
これ、一度やってみたかったんだ。
大自然を眺めながら露天風呂につかってお酒を楽しむやつ。
湯浴み着を着たままの入浴だし飲んでるのはジュースで思っていたのとはちょっと違うけどまあ良しとしよう。
フンフンと上機嫌で果実水を飲んでいたら、突然何かが頭に触れてまとめていた髪がばさりと落ちて来た。
何ごとかと思ったら、すぐ後ろからシェラさんの艶のある声が降って来る。
「どうぞユーリ様はそのまま景色をお楽しみください。その間にオレはこの美しいお髪を洗わせていただきますので」
「え?あ、洗う?」
「酸性度の薄めてあるお湯ですから髪を洗っても傷める心配はないかと。それに例のオピルスの生息地の泥も持参しております。ですから来た時よりも美しく艶のあるお髪で戻られることでしょう」
そう言いながらすでにその手は例の猫耳部分もほどいてすいすいと櫛で梳き始めていた。
後ろにいるからよく見えないけど、どうやらシェラさんは私を両足の間に挟む格好で一段高い岩場に腰掛けているらしい。
「水面にゆらめくユーリ様の髪の美しさとなめらかな手触りはどれほど極上の絹糸でも敵わないですねぇ」
「あ、ありがとうございます」
まあなんたってこの体はイリューディアさんが張り切って作り上げたものだからね。
元の自分とはかけ離れた容姿なので褒められると、気が引ける反面イリューディアさんの良い仕事っぷりを讃えられているのが嬉しい気もする。
そんな複雑な心境でもにょもにょとお礼を言えば、
「オレに触れられてそのように恥ずかしげなお顔を見せられるのもたまりませんね。マリーがいて良かった、もしいなければ自制出来ずにこの豊かな黒髪ごと抱きしめていたかも知れません」
なんて冗談まで言っている。そしてそんなシェラさんにマリーさんが
「ダメですよシェラザード様。どうしてもと仰るので、あくまでもユーリ様のお世話としてリオン殿下には内緒で騎士様には到底させられない事をしていただいているんですから。」
と釘を刺している。いや、リオン様に内緒って。
「それ大丈夫なんですか!?」
もしバレたら私の侍女から外されたり王宮勤めを辞めさせられたりしない?
でもマリーさんは
「私がお仕えしているのはユーリ様ですから。ユーリ様のお幸せを考えて、その楽しそうだったり幸せそうなお顔を見られる事ならそれを優先しますよ!」
と胸を張ってにっこり笑顔を向けられた。
「それがお風呂のお世話をするシェラさんとそれを受け入れている私ってなんか違わないですか・・・?」
「あらまあ、シェラザード様にお世話をされながらお話しているユーリ様はいつもとても楽しそうですのに。ご自分ではお分かりになっていないんですね!」
「ええ・・・?」
いや全然?マリーさんの言葉に首を傾げれば、私の背後でシェラさんまでくすりと笑った気配がする。
「無意識にオレとの時間を楽しんでくれていたならそれほど光栄で嬉しいことはありませんね。せっかくマリーが殿下には内緒の特別な時間を設けてくれた事ですし、ユーリ様のお世話に集中してありがたくこの時間を大切にしましょうか」
そう言って私の髪を櫛削り、泥パックを施す手付きがより一層優しくなった。
まずい、この手付きはあれだ。疲れている時に美容院で髪を洗われるとリラックスし過ぎて眠くなるやつ。
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なので、いくらおやつを食べていてもその魔力は完全に回復し切っていなくてまだ多少の疲労感は残っているのだ。
そこでこんな風に髪を触られたら絶対眠くなって来る。
そんな事を思いながら早くもウトウトしかけていた私の耳にシェラさんの
「今回の視察はユーリ様との特別な思い出があり過ぎて、報告書に書くのを我慢するのが難しいものばかりですねぇ・・・。後で今日の分のユリウス副団長の報告書も見せてもらい整合性を取らなければ」
という、何やら良からぬ呟きが聞こえてきた。
え、それってまさか報告書の改ざんとか誤魔化しってやつでは?
それこそ後でリオン様にバレた時、しこたま怒られるやつだ。
しかもユリウスさんまで巻き込まれている。あともしかするとついでに私まで怒られるやつ。
「シ、シェラさん、私のお世話にかこつけて不正はダメですよ!?」
本能的に危険を察知して思わず声を上げたけど、当の本人は
「なんのことですか?」
とうそぶいている。限りなく危険だ。
え?これ王都に帰って早々リオン様に詰められるってことはない?
リオン様からのラブレターもどきを受け取ったつい昨日までは「早く帰りたいなぁ」とリオン様達や奥の院のことを懐かしく思っていたのに。
今はなんだか帰るのが怖い。なんならもうちょっとだけここに滞在して温泉で現実逃避したい気分だ。
「・・・なんだか王都に帰りたくなくなってきました・・・」
思わずそうこぼしたら、
「おや奇遇ですね、オレもですよ。ユーリ様も同じお気持ちとは嬉しいことこの上ないですねぇ」
とシェラさんに返された。
いや、シェラさんの思ってるそれと私の気持ちは絶対違うから。
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