七人の魔族と森の小さな家

サイカ

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14 許せない

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 -- ルウ --


 ハル、少し出掛けてくる。


サイドテーブルに水差しとコップを置いて、ハルがいつも僕にしているように頭を撫でてから部屋を出る。

家を出て浮遊魔法を使い移動する。

一晩様子を見ながら魔力を流してみたりしたけれど朝になってもハルの傷は治らないし熱は下がらなかった。

それどころかますます酷くなっている気がする。


戻るつもりはなかったけれど城へ向かう。

泣き虫で鬱陶しかったけれどレトは人間の作る薬に詳しかった。

ライオスは子供の姿でも一番力が強かったしアレスはよく本を読んでいて人間の生活にも詳しいはずだ。

グレンは寡黙な奴だけれど部屋にあるもので色々と作っていたから手先が器用なのだろう。

ロゼッタとミアは人間の女の生活に必要な知識があるはずだ。
それに……街へ行った時に人間の女と話しているハルは楽しそうだった。

魔力を吸われ続けているからみんながどのくらいの魔力量なのか得意な魔法はあるのかは知らないけれど、僕が抜けた後も生きているなら魔力量は多い方だろう。

姿を消して結界を破り再び城のあの部屋へ行く。

間抜けな人間どもはまだ結界内で僕を探しているのかそれとも……

そっと部屋の窓を開けると……いた。

僕が抜けた分の負担が増えたからか最後に見たときよりも小さくなっている気がする。

それに前よりも酷い扱いをされているようだ……けれども六人全員生きている。

人間がいないことを確認してから姿を見せる。

「ルシエル……やぁ……外はどう……?」

アレスが弱々しく微笑む。

「うぅ……少し……うっうぅ……大きくなっ……た……?」

レトは泣き虫だ。
ライオスとグレンは床に寝ころがり興味がない様子。

ロゼッタとミアは部屋の隅で身を寄せあっている。

「みんなを連れていく」

そう言ったけれど反応はない。

「外……に? ここよりは……ましかも……でも」

マカラシャは外せないし外に居場所はないと言うのだろう。

外に出れば人間の子供よりも弱く、マカラシャを見られたら殺されて奪われるかそのまま城に連れていかれて金と交換される。

そうなると今よりも酷い目にあうとわかっている。

まずはここにいる全員を治癒する。

「ありがとう」

ようやくみんなが僕を見る。

「ル、ルシエル、きみ……もう片方のマカラシャは……」

アレスが目を見開きそう言うとみんなが集まってきた。

「後で話す、行くぞ」

誰も行くとは行っていなかったけれど全員の姿を消し浮遊魔法で窓から外へ出る。

こうして城からはマカラシャも魔力を搾取される魔族もいなくなった。

マカラシャをつけている限り魔力は奪われ続けるけれども。

「先に言っておく、ハルは僕のだからな」

森の家に移動しながら釘を刺しておく。
みんなはなんの事かわからないという顔をしている。


ハルが傷つくのが許せない
ハルが苦しんでいるのが許せない
僕の魔法が効なかいハルが許せない
苦しいのに僕に微笑むハルが許せない
僕を頼らないハルが許せない
何もできない自分が許せないっ

許せない許せない許せない許せないっ

僕一人では無理なのだ……

完全に魔力が回復するまでは……いや、人間に関する知識が足りない。

興味がなかったし知る必要もなかった……まさかこんなことになるなんて……こんなことになって気が付くなんて……

ハル……僕はハルに…………

今足りないところはみんなに補ってもらおう。
そのために連れ出したのだから。

「お前、顔怖いぞ……」

ライオスが何なんだと言いたげな顔でこちらを見ている。
他のみんなも訝しげな表情でこちらを見ている。

「もうすぐ着く」

森の家が見えてきた。ハルは目を覚ましただろうか。
家の中を物珍しそうに見て回る彼らを置いて寝室へ急ぐ。

ハルは僕が家を出るときと変わらずベッドで寝ていたけれど顔は赤く呼吸は浅い。

水も飲んでいないし食事も取れていないから長引けばどんどん弱ってしまう。

こんな時……どうしたらいいかわからない。
ハルは僕を森で拾ってから色々してくれたのに……

「…………その人は?」

いつの間にかみんなが部屋の入り口に集まっていた。

「そいつを殺してここに住むのか?」

ライオスが近づいてくる。

「違う」

ロゼッタとミアも恐る恐る部屋に入ってきて

「放っておいても死にそう……」

と小さな声で話している。

「……彼女は人間だよね?」

アレスとレトとグレンは警戒して部屋には入って来ない。

「レト……少しみてくれないか」

近くにくるように頼む。

「うぇっ!?……に……人間なんだよね?」

レトがアレスと僕を交互に見る。

「頼むよ……」

レトがため息をつき泣きそうになりながら近づいてくる。

「だ、大丈夫だよね、突然殴ったりしない……よね」

あぁ、

「彼女はそんなことはしない」

アレスとグレンも部屋に入りレトの側へ行く。
布団をめくりハルの身体についた傷を見せる。

「ち……治癒魔法は使わないの?」

もっともな疑問だ。

「彼女には効かないんだ……」

みんなが驚く。

「治癒魔法が? ありえないよ。きみくらいの魔力があればこんな傷くらい……」

それに

「もしそれが本当なら治すのは無理だろう、魔族から直接治癒を受けて効かないなんて……」

そうなのだ……わかっている。でも……

「レト、何か気付いた事はないか」

何でもいいんだ。他のみんなも気付いたことがあれば教えて欲しい

「何で……何で私達が人間を助けなくちゃいけないの? 死ねばいいのよ。一人でも減ってくれたら私は嬉しいわ」

ロゼッタが僕を睨みミアも頷く。

「彼女なんだよ。僕のマカラシャを外したのは」

はぁ!? とライオスが大きな声を出す。

「本当か? ありえない。無理だろ」

信じられない、とみんなも疑いの目を向けてくる。

「本当だよ。僕も驚いた。疑うなら彼女を治して試せばいいだろう」

みんなが顔を見合せてそれもそうかと頷く。

「もし嘘だったり、私達を利用しようとしたら人間のやり方で殺すわ」

ロゼッタがそう言いミアが頷く。
レトが真剣にハルを見始める。

「手と……腕と……肩にも傷があるね……それから足にも」

これは……

「薬を塗ったの……かな」

そう言ってハルの手に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。

「作った薬を見せてくれる?」

ハルが採ってきた薬草と作って置いてある薬を見せるとやっぱり……とレトが呟く。

「材料と作り方を間違えている」

薬草は似ているものが多いから、と。

「ルシエルの治癒が効かないのに薬草が効くとも思えないけれど、効きそうな薬を作ってくる」

今はそれしか思い付かないらしい。

「その人、汗をたくさんかいているみたいだから着替えと薬を洗い流すついでに身体を綺麗にしてあげた方がいい」

とアレスが教えてくれた。

「わかった。それは僕がする」

とりあえずみんなには、ハルのために作ったけれど食べられなかった食事と簡単なものを作って出しておく。

みんなが食事をしている間に僕はハルがいつもしているように布団を干す。

魔法で綺麗にできるけれどハルはいつもお日様の匂いがして寝るとき気持ちがいいと言い外に干す。

正直僕にはよくわからない……けれども確かに外に干した日の布団はフカフカで気持ちがいい。

それからハルを風呂へ連れていき一緒に入る。

風呂もそうだ。
魔法を使えば風呂に入らなくても身体も服も綺麗にできる。

でもハルは風呂が好きだ。
僕も……ハルと入るようになってからは好きになった。


僕の身体が……元に戻ってきている。

ハルへの執着心を自覚してから魔力の回復が早くなっている。

ハルのために魔力を使いたい……

薬を洗い流しハルがいつもしてくれるように髪を洗い身体を綺麗にする。

身体についた傷が腫れていて痛々しい……
ハルの身体に魔力を流すことはできるのに、どうして治癒だけできないのか……

こことは違う世界から来た……からか?

ハルを抱きかかえながらお湯に浸かると、僕に身を預けたハルが深く息をする。

風呂をもう少し大きくしておくか……
大人二人はさすがに入れないかもしれない。

いつもなら暖炉の前で髪を乾かしながらハルがいれてくれたお茶を一緒に飲んでハルの話をきいているのだけれど……魔法で全身乾かし着替えさせる。

みんなは食事を終えて家の中を見て回っている。

ハルをベッドに寝かせるとレトが薬を持ってきた。
薬は僕が塗ると言い、礼を言って受けとる。

レトが部屋を出てからハルの熱い身体に薬を塗り込む。

お願いだから早く目を覚まして……


治れ……治れ……治れ……治れっ………………

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