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68 手紙
しおりを挟むレト……苦し…………
「あっ、ハ、ハルっごめん!」
プハァーー
「大丈夫、レトもやっぱり男の子だね」
力が強い。
さっき何て言ったのかきこうと思ったけれど……男の子……と呟いた後は……私の声は聞こえていないみたい。
突然ドアが開いてグレンが入ってきた。
「レト、ハル」
レトにはグレンの声も聞こえていないみたい……大丈夫かな……
「ハル、一緒にきて欲しい」
グレンにそう言われ、レトをチラリと見ると薬草をプチプチとむしりながらブツブツと何か言っている。
「レトは大丈夫だから、行こう」
グレンに手を引かれ
「レト、また後でね」
と聞こえているかわからないけれど声をかけてグレンと別館を出る。
「グレン、どこへ行くの?」
私の手を引き歩き続ける……
「いいところ」
いいところ……
森の中を少し歩くと……
「ブランコだ!」
わぁ! 森の中に突然ブランコ!
「グレンが作ったの?」
うん、と頷き乗ってみてと言うグレン。
ブランコなんて久しぶり。
ブランコに乗るとゆっくりと前後に揺れ出す。
どうやらグレンが魔力を使っているみたい。
しばらく揺られて楽しんでいると突然身体がフワリと浮かびグレンの腕の中に着地する。
「グレン?」
少しの無言の後……
「ハル、このまま少し話をさせて」
ゴクリ……すごく真剣な声……
「男っていうのは魔族、人間にかかわらず…………」
から始まり男というものについて語られた。
なぜ……大体知っている内容だし……
グレンの腕が緩み両手で私の頬を包む。
「わかった?」
と……目の前にグレンの綺麗な顔。
「うん、男性も大変なんだね……」
一瞬……珍しくキョトンとしたような表情を見せたかと思ったら、
「そうだね、そうなんだよ」
と、これまた珍しく笑い出すグレン。
「ハルはハルのままでいて」
そう言ってもう一度私を抱き締めてから戻ろうか、と言い家へ向かって歩くとロゼッタとミアがみんなの家の前に立っていた。
おやつを作ろうと言うので一緒に家の中に入る。
グレンは部屋に戻ると言うのでロゼッタとミアと私でキッチンに立つ。
「ハル、今日は……何か変わったことはあった?」
怖いめにあったりとか……しなかった? とロゼッタが小さな声で聞いてくる。
「ん? 変わったこと? 特には……大きい鳥籠に入ったりブランコに乗ったり」
二人はブランコに乗ったことある? と聞くとロゼッタはため息をつきミアは首をふる。
「そっか、それなら今度グレンに乗せてもらおう」
ミアは嬉しそうに頷きロゼッタはそうね、と言い
「ねぇ、ハル。魔族は本に書いてある通りでもあるし違う部分もある。必要以上に怖がって欲しくはないけれど気を付けて欲しいのよ」
またため息をつき
「人間にも……」
と人間である私に気を遣ってか小さな声で付け加える。
どうして突然そんなことを……
ロゼッタを見るとすごく真剣な表情……
「……私がいた世界には魔力がなくて魔族もいなかったっていう話しはしたよね」
二人ともコクリと頷く。
「だから魔族とか人間とか考えたことはなくて……」
まずはここから。こっちの世界では魔族か人間かでしっかりと線引きをしているみたいだけれど……
「ロゼッタはロゼッタだしミアはミア、私は私」
二人が私を見つめる。
「それにね、本に書いてあったような魔族の特徴……あれも人間と魔族の違いみたいに書いてあるけれどそんなに違わないよ」
あれ……? 二人とも目を見開いている……
「だ、だって、いるよ? 人間にも……そうじゃない人の方が多いかもしれないけれど、魔族だってそうでしょう……?」
みんな優しいし案外世話焼きだと思う。
街に住んでいる人達だって優しい人が多い。
「人間にしろ魔族にしろ人によるんだよ」
たぶん……と最後まで強く言えなかった私をみてロゼッタが呆れたような顔をする。
「でも……心配してくれてありがとうね」
フフフッと笑うと
「っ……ハルの心配なんかしていないわよっ!」
ロゼッタの例のやつが発動してクッキーの生地をバンバンとテーブルに叩きつける。
ミアはギュッと抱きついてきた……動きにくい。
二人にクッキーを焼いてもらっている間にお茶の準備をしてみんなを呼ぶ。
私の大切な人達と大切な場所…………
幸せな気持ちが溢れてくるいい休日を過ごすことができた。
そして休み明け、エイダンの家へ行き……
「ごめんなさい」
と謝る。
「謝らなければならないのはこちらだよ。酒を飲ませてしまったからね」
それは私がちゃんと断らなかったからで、私もあんなことになるなんて思っていなかったから……
「酒は好きだと言っていたよね、次は一番弱いものから試した方がいいかもしれない。あの酒は強いから」
そうだね……でもルウに言われた通り、外ではもう……
そういえば……エイダンはルウに会って……いるんだよね?
ルウはエリオットのことは何も言っていなかったけれど会ってはいないのかな。
エリオットは今日もお城に行くらしく一度実家に帰るために今朝早くに出たらしい。
「ハル、これを」
手紙?
「城で茶会があった日にイーライから預かっていたんだ」
騎士団長の……?
渡しそびれてごめん、と……それは私が寝てしまったから……
「それから今日、私は研究所へ行かなければならないんだ」
一人にしてしまうけれど大丈夫かな……と心配性なエイダン。
「大丈夫だよ」
と頷くと、少し考えてから
「もしかしたらイーライがここへ来るかも知れないから、出かけることになったときのために鍵を預けておくね」
夕食までには帰るから、と渡された鍵。
出かけることになるかな?
そんなことより、
「エイダン、朝食を食べていくよね? 急いで用意するから」
急がなくてもいいよ、と言ってくれたけれどもお弁当も作りたいから少し急ぐ。
エイダンが荷物を纏めている間に朝食を作り、食べている間にお弁当が完成する。
ふぅ、朝から完璧な段取りだった。
「これ、お昼に食べてね」
と渡すと
「ハルッ……」
ありがとう、と抱きしめられた……そんなに……?
今朝の残りとかも入っているただのお弁当だよ……
「大袈裟だなぁ……」
と背中をポンポン。
「ハル……」
腕を緩めて私の頬に触れる。
「行って……くるよ……」
そう言った後もしばらく私の頬に触れた手は離れず……
ようやく渋々という感じで家を出て職場へ向かって行った。
いってらっしゃいエイダン……
在宅ワークの方が好きなのかな……
とりあえずエイダンに渡されたイーライからの手紙を読んでみると、お茶のお誘いだった。
わざわざ手紙にしてくれたんだ……お城で会ったときに気軽に誘ってくれたら……いや、お城で仕事中だったからか。
こういうのって返事はどうしたら……お城に行く予定なんてないし……まぁ、後で書いて準備しておけばエイダンかエリオットがお城に行くときに渡してもらえるか頼んでみよう。
さて、後片付けを済ませて、今日は天気がいいから洗濯物を外に干そう。
午前中でいつも通り家事を終わらせて昼食を一人で食べていると……
「静かだ……」
少しだけ寂しくなる。
食器を片付けて午後は森の中を少し散歩してから本でも読もうかな。
服を着こんでドアを開けると
「ぅわぁっ!」
目の前にイーライが……
「す、すまない、ノックをしようと……」
イーライも驚いている……
「こっちこそごめん」
思わず笑ってしまうとイーライも笑う。
「出かけるの?」
うん、
「少し散歩をしようかと……イーライは仕事中?」
騎士団長の制服に帯剣しているし
「あぁ、見回りついでに寄ったんだ」
他に騎士は見当たらないけれど一人で……?
「エイダンは研究所へ行っているしエリオットはお城に行っているから今日は誰もいないよ」
そう言うとイーライが笑って
「ハルがいる」
爽やか。
「私も散歩に付き合ってもいいかな」
仕事中じゃ……
「いいけど……いいの?」
イーライが笑って頷く。
二人で森を歩いているとイーライが手紙のことを聞いてきた。
「返事を急かすつもりではないのだが……」
どうだろうか、と
「もちろん、お茶くらいいいよ」
他にも誰か誘っているのかな
「お店はどうする? もしいいところを知っているなら」
お任せしてもいいかな?
「場所はうちで……」
うち?
「私の実家でだよ」
実家……イーライ……侯爵家……
し、しまった……元の世界の感覚で考えていた。
一気に話しに重みが……
「や、やっぱり私」
「楽しみだな、美味しい茶と菓子を用意しておく」
あ……うん。
「あ……の、イーライの家って大きいの?」
ん? と首を傾げて
「この森のエイダンの家よりは大きいが……そんなに身構えることはないよ」
と言われてそのまま日時も決まってしまった……
あれ? 侯爵家に行くことに……
友達とお茶をするのってもっと気軽なものかと……と考えていると、パカパカと森の奥から足音が聞こえた気がして視線を向ける。
ガサッ…………ブルル……
あ、アオだ。ここまで出てくるのは珍しいんじゃないかな。
「おーい、ア」
「ハルッ! 下がって!!」
え? えぇ!? 剣を抜いている!
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