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53 国王ノイガルト 王妃エイベル
――― 国王ノイガルト ―――
ノヴァルトの執務室へ妻のエイベルと共に向かう。
息子のノヴァルトは外見は父である私に似ているが、性格……と言うより性質は母のエイベルに似ている。
ノヴァルトが急用と言うならよっぽどの事だろう。
このタイミングだ。ノシュカトの事で何かあったのだろう。
エイベルもそう思っているようで顔色が悪い。
妻の手を取りノヴァルトの執務室へ入る。
少し後にノクトとオリバーも来た。これで全員揃った様でノヴァルトが口を開く。
「父上、母上、ノクト、オリバー約束してください。これから話すことを口外しないと。ノシュカトにも関係があることです」
やはりノシュカトに関係することか。しかし口外するなとはどういう事だ。
エイベルは覚悟を決めたように言った。
「……あなたがそう言うのならよっぽどの事なのでしょう。あなたの言う通り口外はしないし……あなた1人には背負わせないわ」
やはりエイベルとノヴァルトは似ている。
どんな内容であれ、家族で背負っていく覚悟は昔から変わらない。
エイベルは私の妻になるまでは大変な思いをしている。誰にも相談できない辛さを知っているからこその言葉だ。
ノクトとオリバーも頷く。
騎士団長のオリバーも幼い頃から私達の子供達と育ち信頼も厚い。彼ならば大丈夫だろう。
皆が約束をすると執務室の奥の部屋のドアが開きノシュカトが現れた。
皆驚いているがエイベルが真っ先に歩みよりノシュカトを抱きしめ泣いている。
ノシュカト、よく生きていてくれた。抱きしめあっている二人を私は抱きしめた。
ノクトとオリバーは驚いていたが、どういう事かとノヴァルトを見ている。
皆ソファーに掛けてから、ノシュカトが経緯を話し始めた。
ノシュカトはひどいケガを負ったまま穴の中で2日間も動けなかったらしい。
エイベルが震えている。
雨が上がってからの捜索では私達は確実にノシュカトを失っていただろう。
しかし……そう簡単に治るはずのないケガは一体どうしたのだろう。そして目覚めたときはベッドに寝ていたと言っていたが、今までどこに居たのだろう。
この辺りに口止めの理由があるのか。
ここでノシュカトの話しは一旦終わったようだ。
疑問も疑念も残し、理解も追いつかないまま今度はノヴァルトの話しに耳を傾ける。
「覚えていますか…………」
勿論覚えている。ノヴァルトが幼い頃熱を出し、どの医者に診てもらっても原因がわからず日に日に弱っていく姿を。
あの時も、今回のノシュカトの事でも私達が出きる事もなく息子を失うかも知れないと思った。
そんなことにはならなかったのだが……
今思えばどちらも奇跡のようではないか…………
※※※※※※※※※※※※
――― 王妃 エイベル ―――
ノシュカトが生きていてくれた!
信じてはいたけれど……話を聞くと本当に危ないところだったようでとても怖かった。
密猟者はなんて残酷な罠を仕掛けるのでしょう。
ノシュカトを抱きしめひとしきり泣くと今度は怒りが沸いてくる。
密猟者はいなくならない。どんなに罰則を厳しくしても。
動物達を欲しがり金を出す貴族がいるから。
こちらが諦める訳にはいかないのでまた何か対策を考えなければならないでしょう。
突然、ノヴァルトが幼い頃の事を話し始めた。よく覚えている。
あの時も怖かったから。
ノヴァルトの話しは、ノシュカトの話を聞いて疑問に思った幾つかの事と、口止めをする理由とどこかで繋がるのだろうけれど……一体どう繋がるのかまだわからない。
あの時……ノヴァルトは不思議な事を言っていた気がする。
女神様……確かノヴァルトはそう言っていた。
この世の人では持ち得ない黒髪に黒い瞳の美しい女性だったと……
しかし誰もその姿を見た者はおらず……
熱に浮かされて弱った身体でそんな事を言うものだから、本当に死んでしまうのではないかと思い泣いてしまった。それからノヴァルトはいつの間にか女神様の話しはしなくなっていた。
確か……そう……その頃からノヴァルトの熱が下がり始めて食事も取れるようになったのだった。
城の医師達も原因がさっぱりわからないと言っていた。
今回のノシュカトが無事に帰って来られた事にその女神様が関係していると言うこと?
おそらく私の考えも及ばない話をこれから聞かされるのでしょう。
それでも私はノヴァルトとノシュカトの話を信じる。
確かに不思議な事は起こっているのだから。
私に……私達にとっては奇跡のような事が……
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