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しおりを挟むザイダイバ王国でのエリアス陛下とシュゼット様の結婚式からリアザイアへ戻り1ヶ月が過ぎた頃私は西の国レクラス王国へ行ってみようと決めた。
レクラス王国にしたのは何となくで特に理由はない。
観光でもいいのだけれど、せっかくなので他の国でも働いてみたい。今度は街で働いてみるのもいいかもしれない。
お城でその事を伝えると行ってみるのもいいと思う、と言ってくれた。ただし……
「女性は口説かれやすいから気を付けるのだよ」
と心配そうにノバルトに言われた。
…………? ナンパされるということ?
「トーカはちょっとアレだからな。口説かれているのにも気が付かないかもしれないが……まぁ、心配だな」
ノクト……アレってなんだ……
「心配だよ! 特にあの国は身分に関係なくこういう事に関しては積極的なところがあるからね。観光して帰って来るだけじゃダメなの?」
ぐっ……ノシュカトに可愛く言われるとそうしようかなって流されそうになる……
「初めは軽い感じで声をかけられて、うっかり応じて気に入られてしまったらそこから執着されてしまったり……と言う話も聞いたことがあるよ」
オリバー……軽いのか重いのかどっちなんだろうね……
お国柄なのか……元の世界で言うイタリアみたいなイメージでいいのかな? 執着心は知らないけれど。
まぁこちらがしっかりしていれば大丈夫だよね。
それから私がザイダイバに行っていると知って皆さんが私に預けてくれたアクセサリーをお返ししようとしたら、それはあげたものだから持っておくようにと言われた。
「どこかで役に立つかもしれないからね」
ノバルトに優しく微笑まれ思わず受け取ってしまった……
「皆さん、ありがとうございます」
こうして私の事を気にかけてくれて本当にありがたい。
「ところでトーカさんレクラス王国に行くのはいいのだけれど今まで通り週末か……来られる日はこちらにも来てくれるのでしょう?」
皆さんから学ぶ事はまだたくさんあるからそう言ってもらえて嬉しい。
「ありがとうございます。これからも今まで通りお願いします」
そういう訳で働く場所は変われどお城へお邪魔する頻度は変わらない。
それからノシュカトに
「私の家のゲートの鍵は開けておくから作業部屋とか自由に使ってね」
と伝えておいた。
そう、作業部屋。
ザイダイバで見た植物研究室を参考にして家の庭に新しく植物研究所……と言っても建物は広めの平屋の戸建てみたいな可愛らしい感じ。
庭や温室の植物を採取してすぐに研究に取りかかれていいと思う。
少しでも研究が進む環境を整えておきたい。
メリッサメイド長にはどう伝えようか……
さすがにまた長期休暇となると迷惑だと思うし……
退職になっちゃうかなぁ……
相談してみよう。
仕事終わりにメリッサメイド長にお話をしにいくと
「聞いていますよ」
と言われた。
「王妃様からノアの働き方については私に任せるとおっしゃって頂いています。退職をする必要はありません。いつでも戻って来て下さい」
待遇の良さよっ! い、いいのかな……
「そもそも正規の募集で入った訳では無いですし、募集もかけていない時期に来られたので人手は足りていますからね」
うっ……いろいろバレている……ごめんなさい。
「ですが、貴方はよく働いてくれますし教えがいもあります。とても助かっていますよ」
それにメアリが寂しがりますからね。と呟くメリッサメイド長……そっちが本音ですか……
どちらにしろ私も嬉しいし有り難い。お城での仕事は楽しいしいろいろと学べる。
また戻れるなら戻りたいと思っていたから有り難くメリッサメイド長のいう通りにさせてもらうことにした。
メアリにもこの事を伝えにいくと帰って来たばかりなのに……としゅんとされた……可愛い先輩だ。
「ちゃんと帰って来てね? 一緒に街でお買い物とかお茶とかもしたいし……その……ノアが良ければだけれど……」
え? 可愛いんですけど……もうっ!
「行きましょう! すぐにでも!」
そう、すぐにでも。
と、言うわけでレクラス王国へ行く前にメアリと一緒にリアザイアの王都の街へ行くことにした。
思い返してみると……この世界に来てから女の子と街を歩くのは初めてかも。楽しみ!
メアリのお休みの日に使用人用の部屋のある建物の1階で待ち合わせをして、お城から出ている街へ向かう馬車に一緒に乗って出発した。
街を歩きながら屋台で買ったものを食べたり可愛い雑貨屋さんやお洋服屋さんお化粧品なんかもみて回ったりした。
歩き疲れた頃、メアリがカフェに入ってお茶にしましょう、と言ってくれたので近くのカフェに入り席に着きメアリは紅茶とケーキを、私はコーヒーとケーキを注文した。
店内は若者から年配の方まで様々な年齢のお客さんがお茶を楽しんでいた。
周りから聞こえてくる話はザイダイバの話題が多い気がする。
「恐ろしい話よね。魔獣に国を襲わせるなんて。大型の魔獣が500体はいたらしいわよ」
……話が大きくなっている。
「本当に……でも騎士団の活躍は素晴らしいものだわ。両国とも魔獣が街にたどり着く前に討伐してくださったそうよ」
「素敵よねぇ……リアザイアの騎士団は自国を守った後ザイダイバへ援軍として向かいザイダイバの騎士団と共に戦ったというじゃない?」
最近騎士団の人気がさらに上がっているらしい。
「それにあのお話、ザイダイバのエリアス陛下とシュゼット王妃様のお話! シュゼット王妃様の口付けでエリアス陛下にかけられた呪いが解けたとか。まるであの物語のよう……憧れるわぁ真実の愛……」
「私、ザイダイバに行ってみたいわ! トンネルで繋がったから前よりは行きやすくなったはずよ。それに温泉の街が新しくできたらしいし面白そうだわ!」
「新しい出会いもあるかもしれないわねっ」
楽しそうに笑い合う彼女達。
「ノア? ザイダイバのお話が気になるの?」
「あ……うん。話題になっているよね」
メアリが声をひそめて
「そうね、私達はお城で働いているからどんなことがあったのかもう少し詳しく知っているし今回の事を企てた貴族達がどうなったのかも……」
「貴族達……」
「そう、結局ほとんどの貴族は処刑されたらしいわ。最後まで自分勝手な言葉を叫ぶ者やもっと上手くやれたはずだと後悔の言葉を口にする者、現実を受け入れる事が出来ずに狂ってしまう者……聞くのも見るのも耐えられないような状況だったそうよ……」
一度は彼らを殺すことを考えてしまったのに……こうやって彼らの身に起こったことを聞いてショックを受けてしまうなんて……
「彼らがしてしまった事を考えれば仕方のないことね……ザイダイバの皆様も大変な思いをされたと思うわ」
そうだ。私でさえこんな気持ちになってしまうのだからエリアス陛下は……ザイダイバの皆さんは……それでも決断したのだ。
店員さんが紅茶とコーヒーとケーキを持って来てくれた。
「それにしても真実の愛の口付けなんて本当にあるのね。ノアにはそういう……大切な人はいるのかしら」
メアリがうっすら頬を染めながら紅茶を一口飲みこちらをチラリとみる。
…………突然の恋バナッきた―――――っ!!
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